異世界でチート過ぎる三毛猫にされた俺は、オオカミ騎士から溺愛されてます。

篠崎笙

文字の大きさ
上 下
21 / 52
幸見

いのちの選別

しおりを挟む
不謹慎だろうけど、何だかわくわくしてきた。

怖いもの見たさというか、好奇心かな?
あ。でも、俺もある意味最強みたいに言われたな。


あ、ひょっとして、系だったりするのかも。
小熊って可愛いもんな。ぬいぐるみみたいで。

パンダとかも、クマが白黒模様なだけだっていうのに、めちゃくちゃ人気あるし。
あれ、真っ白にしてみるとけっこうマヌケな顔なんだよね……。

俺はレッサーパンダの方が好きだな。しっぽ、もふもふだし。
威嚇のポーズ、すごいかわいいから。


「ヒグマって、かわいい小熊だった?」
実際にボスを見たっていうジャスパーに聞いてみる。

『いや、ティグリスよりでかい、かわいくない、大きなクマだった』


なんだ……。
そっち系の最強じゃなかったか。

『心配するな。ユキミが世界で一番可愛い』

いや、別にそんな心配はしてないよ、アレックス……。

見上げたら、にこーっと笑った。
ああ、俺、この人のこと大好きだな、と思う。

ツガイだからかな?


「えへへ、」
アレックスの腕にすりすりする。

『俺もかわいいツガイが欲しい……』
ジャスパーのぼやきが聞こえた。


*****


『ようこそいらっしゃい。シルヴェスター王国騎士団の皆様方』


目的地付近に着いたら、声が聞こえた。
誰もいないのに。

『”シルフの伝言”という風魔法だよ』

イアソンが教えてくれた。
人が来たら発動するように仕掛けてあったものらしい。

『仲間の多くを失い、こちらは大損害です。平和的に話し合いをしたいので、この先の建物へ来て欲しいのですが』

これは。
あからさまな。

「罠だね!」

『そこをあえて行くのが男だよね』

イアソン。
楽しそうだな。


『昨日過信して致命傷喰らったばかりだろうが……』
『精霊系の攻撃魔法なら無効化できるだろうが、警戒はしような?』
アレックスとジャスパーにたしなめられてる。


しばらく行ったら。
丸太で組まれた、大きな平屋建ての家があった。

馬を降りて。

『火薬のにおいも、爆弾のにおいもしないな』

先を行くアレックスとジャスパーが危険物の有無を確認してる。
犬コンビ……。


『罠などありませんよ。どうぞお入りください』
家の中から、顔が羊の人が出てきた。

毛が黒くて、角が大きくて、全体的にもこもこしてる。
羊って、なんか目が怖いよな……。瞳孔が横で。


って、あれ? 目、真っ黒だ。


*****


小屋の中は広かった。
大きな絨毯が敷いてあって、あまり物は置いてない。

広間かな? そこに、よれよれの魔法使いっぽいローブを着た人たちが十数人いて。
大人しく座って、こちらの様子を伺っている。

敵意はなさそう。
というか、何か、怯えられてる……?


『わたしの名はオウィス。領主をしておりました』
オウィスは一礼した。

『領主が何故、”ケモノ”に?』
オウィスに聞いたのは、アーノルドだ。

『脅されて、入らされたのです。強い獣を求めていたようで。従わなければ、死を選べと言われてね』
耳をぴくりと動かして。

『そこの特級魔術師のあなた……最近仲間入りした、ジャッカルでは? 偽装で潜入していたのでしたか……さすが特級ですね』


うっかり捕まっていたジャスパーは、得意げな顔をしてみせた。
そういうことにしておくのかな、と思ったら。

『いや、本当に捕まって、グレゴリーの手で”ケモノ”にされた。だが、元に戻してもらったのだ。……元に戻る方法を知りたくないか?』

ローブの集団がざわついた。


アレックスが人間の姿に戻りたい、という人を選別して。
外に出てるように言った。

『イアソン、ユキミを頼む。一緒に外のやつらを戻して・・・やって欲しい』


え、俺も外に出るの?
説得は?



*****


『討伐とかに慣れてくると。だいたい、匂いというか。……わかってくるんだよね。この人、何人くらい人を殺してるな、っていうの』
イアソンが呟いた。

『騎士団は、国を護るためなら、何でも・・・するんだよ。王の命令なら、女子供がいる村でも、焼き払ったりしなくちゃいけない』
アレックスたちが残った家を見て。

『ぼくたちは、だよ。正義の味方じゃない』


ああ。
領主や、中に残っている人たちは、罪人なのか。

投獄では済まない、即、処刑しなくてはいけないようなレベルの。


何だっけ。
一人を殺せば殺人者だが、百万人を殺せば英雄、だっけ?

古い映画のセリフじゃないけど。


戦争とか、そういう使命によるものは、人殺しとは違うんじゃないかな。
個人の罪の意識に多少差があっても。

もちろん、他に強盗とか、過剰に拷問とかしたら、そいつも罪人だとカウントするべきだ。
自分勝手な欲望で人を傷付ける人は、相応の罰を受けるべきだと俺は思う。

罪を許すのは、優しさじゃない。
罪人を許してあげる優しい自分が好きなだけだ。

それを誰が裁くかっていうのは、難しいことだと思う。

国や人、時代によって倫理観は違う。
正当防衛とか、情状酌量とかの問題もあるし。


でも、ここは。
精霊や神が、現実として存在している異世界だ。

どうしようもない間違いをおかせば、最後には、神様が裁いてくれることだろう。
俺は、そのために召喚されてきたんだよな?


*****


「大丈夫だよ。俺だって、別に清廉潔白ってわけじゃないし」
回りくどく言わなくても。傷付いたりしないのに。

『え?』
「直接じゃないけど。何人か、死なせてるし」

俺が精霊にお願いして、土石流で潰しちゃった人たち。
もしかしたら、改心可能な人もいたかもしれなかったのに。

『でも、それは、』


「……じゃあ、元の姿に戻すよ~」
外に出てた人たちに言って。

守護獣を元の姿に戻るよう、祈ると。
全員、人の姿になった。


『ありがとう!』
『一生このままかと』
『感謝します』
涙ながらに感謝された。


ヒグマに捕まって、”ケモノ”にされた魔術師や、魔法師たちだった。
隣国の人もいたようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

俺がイケメン皇子に溺愛されるまでの物語 ~ただし勘違い中~

空兎
BL
大国の第一皇子と結婚する予定だった姉ちゃんが失踪したせいで俺が身代わりに嫁ぐ羽目になった。ええええっ、俺自国でハーレム作るつもりだったのに何でこんな目に!?しかもなんかよくわからんが皇子にめっちゃ嫌われているんですけど!?このままだと自国の存続が危なそうなので仕方なしにチートスキル使いながらラザール帝国で自分の有用性アピールして人間関係を築いているんだけどその度に皇子が不機嫌になります。なにこれめんどい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...