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幸見
守護獣とは
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町に着いたようだ。
町、といっても。
想像したより、規模が大きかった。
王都から、そんなに離れてないからかな? わりと活気があるし。
危ない敵の潜伏地があるとは思えない感じ。
そこが狙い目だったり?
『ユキミ、起きてるか?』
アレックスが顔を出して。
手を差し出してきたので、抱きつく。
『ん? どうした?』
頬ずりされる。
こうして、腕の中にいると安心するのは。
惹かれあってるからなのかな?
「何でもない」
俺ってこんなに甘えん坊だったのか。
知らなかった。
『あのさあ、もっと神子と色々話をしたほうがいいと思うよロリ狼』
イアソンが目をすがめてアレックスを見ていた。
『何だその語尾は?』
『そうですよエロロリ狼坊っちゃん』
『スウェーンまで、何なんだ!?』
さあ。
何だろうね?
*****
守護獣というものは、そのへんの獣が死んだ後に守りにつく、とかそういうことではなくて。
神格を得た獣だけが、守護獣になるらしい。
ほとんどは、同じ家系で同じ守護獣を引き継いでいくもので、その加護が大きいほど強くなり、人体にも影響を及ぼすとか。
それが祟り神みたいになったのが”ケモノ”ってところかな。
そういえば。一部の神社も、恨みを持って死んだ人が悪霊になったのを、神として崇めることによって、その力をご利益にするってところもある。
菅原道真とか平将門とかが有名だ。
うちは神社だし、元は寺と一緒だったから、墓地も神域にあたる。
死はケガレという考え方もあるけど。
蛇神とか製鉄の神様は人柱を好むから、そうとは限らない。
昔は刀を打つとき、柱に死体をくくりつけてたっていうくらいだ。
神域に埋めて。祈りを捧げたから。
ミケやケンスケも、神格を持ったのかな?
『元々の獣の力も影響するという。そのミケとやらは、よほどこの世に執着があったんだろう。ユキミと、もっと一緒にいたいと思っていたんだろうな』
アレックスは言った。
ミケは。
最後まで生きようと頑張っていた。
その力が、今、こうして出ているんだ。
そう考えると、この猫耳も猫しっぽも、愛おしく思えてくる。
……執着、か。
「あっちにイヌガミっていう、ものすごく強い神様がいて。生きた犬の首だけ出して埋めて、目の前で餌を置いて、飢え死にする寸前に首を切って作るとか聞いた気が……」
あれも、使い方を間違えば術者も命を奪われるくらいの力を持つっていうけど。
食べ物の恨みはおそろしい。
『うええ、異世界って残酷な神様の作り方するんだな……』
ティグリスはドン引きだった。
巨体を震わせてる。
アレックスも同じ犬属なせいか、痛ましい、といった顔で。
*****
『いや、ボスの羆も、そのようにして作られた”ケモノ”らしいよ』
イアソンは、例の小屋から回収したメモの暗号を解読したようだ。
メモを取り出して、テーブルに置いた。
『しかも、それを量産しようと計画してる』
全員、押し黙ってしまう。
凄まじい恨みを持つ、怖ろしい祟り神だ。
それを。
大量に作り出そうとしてるなんて。
「まあ、成仏してもらうしかないよね」
神様なら、祈るしかない。
『可愛いにゃんこのお願いなら、きいてくれるだろうな』
いや、アレックスじゃあるまいし。
そんな。
『確かに』
何で全員納得してるの!?
*****
『他に、聞いておきたいことはある?』
イアソンは、俺が昨日こっちに来たばっかりだと聞いてから、かなり親身になって。
色々と教えてくれている。
今は特に、わからなくて困ったことはないかな。
家具や道具の使い方、食事も。だいたい同じような感じだ。スマフォとかテレビとか、電気製品がないくらいで。
魔法については、まだよくわからないけど。詳しく聞いても、使えるかどうかわからないし。
王様の言ってたことがわからなかったのは、予備知識が一切なかったせいだし。
アレックスってば、一切説明ナシに連れてくから。
「んー、今のとこ、思いつかない」
というか、何を聞くべきなのかがわからない。
『まあ、いつでも何でも聞いてよ。わかることなら答えるからさ』
イアソンって頭良いし、頼りになるなあ。
「うん。ありがとう」
はじめの印象と違って、優しくていい人だ。
『はあ、これは精霊も二つ返事できいちゃうのわかるよ……』
イアソンはふにゃっとした笑顔で。
『な? な? そうだろ』
何でアレックスがご機嫌なんだろう。
*****
『神子さま、俺のしっぽ見るか』
ティグリスが寄って来た。
「出せるの?」
『ああ』
と、出してみせた。
虎の耳と、虎柄のしっぽ。
髪は茶色と金なのに、ホワイトタイガーなんだ?
へえ、虎の耳って、後ろ、黒いんだ。
しっぽ、長いし太いんだな。身体が大きいから、よけいに大きいのかな?
「みゃっ!」
大きなしっぽに巻かれた。
びっくりした。
……あ、ふかふかだ。
ぜんぜん獣臭くないのは、人でもあるからかな?
「しっぽ、触られても平気なの?」
『ああ。ツガイじゃないし、平気だぞ』
そうか。
ツガイじゃなければ、触っても問題ないんだ。
なら遠慮なくもふらせてもらおう。
わあ、虎のしっぽ、もふもふだ。
同じネコ科だしな。
『くっ……、見せられるものが鳥しかいない……!』
アーノルドががっくりと膝をついてる。
どうしたの、聖騎士……。
『これくらいは嗜みでしょう』
スウェーンの耳がウサギになった。
「えっ、スウェーン、ウサミミ出せたの!?」
『従者の嗜みです』
みんな違うって首横に振ってるけど。
触って良いっていうので、もふらせてもらう。
ウサミミ、ふわふわして気持ち良い。
茶色のウサギなのか。
*****
『ああ、猫ちゃん……』
何故かティグリスも膝をついてた。
『何やってんだお前ら……』
アレックスは呆れ顔だった。
イアソンは、腹抱えて笑ってる。
そんなこんなで。
夕食兼会議も終わったので、部屋に戻った。
町、といっても。
想像したより、規模が大きかった。
王都から、そんなに離れてないからかな? わりと活気があるし。
危ない敵の潜伏地があるとは思えない感じ。
そこが狙い目だったり?
『ユキミ、起きてるか?』
アレックスが顔を出して。
手を差し出してきたので、抱きつく。
『ん? どうした?』
頬ずりされる。
こうして、腕の中にいると安心するのは。
惹かれあってるからなのかな?
「何でもない」
俺ってこんなに甘えん坊だったのか。
知らなかった。
『あのさあ、もっと神子と色々話をしたほうがいいと思うよロリ狼』
イアソンが目をすがめてアレックスを見ていた。
『何だその語尾は?』
『そうですよエロロリ狼坊っちゃん』
『スウェーンまで、何なんだ!?』
さあ。
何だろうね?
*****
守護獣というものは、そのへんの獣が死んだ後に守りにつく、とかそういうことではなくて。
神格を得た獣だけが、守護獣になるらしい。
ほとんどは、同じ家系で同じ守護獣を引き継いでいくもので、その加護が大きいほど強くなり、人体にも影響を及ぼすとか。
それが祟り神みたいになったのが”ケモノ”ってところかな。
そういえば。一部の神社も、恨みを持って死んだ人が悪霊になったのを、神として崇めることによって、その力をご利益にするってところもある。
菅原道真とか平将門とかが有名だ。
うちは神社だし、元は寺と一緒だったから、墓地も神域にあたる。
死はケガレという考え方もあるけど。
蛇神とか製鉄の神様は人柱を好むから、そうとは限らない。
昔は刀を打つとき、柱に死体をくくりつけてたっていうくらいだ。
神域に埋めて。祈りを捧げたから。
ミケやケンスケも、神格を持ったのかな?
『元々の獣の力も影響するという。そのミケとやらは、よほどこの世に執着があったんだろう。ユキミと、もっと一緒にいたいと思っていたんだろうな』
アレックスは言った。
ミケは。
最後まで生きようと頑張っていた。
その力が、今、こうして出ているんだ。
そう考えると、この猫耳も猫しっぽも、愛おしく思えてくる。
……執着、か。
「あっちにイヌガミっていう、ものすごく強い神様がいて。生きた犬の首だけ出して埋めて、目の前で餌を置いて、飢え死にする寸前に首を切って作るとか聞いた気が……」
あれも、使い方を間違えば術者も命を奪われるくらいの力を持つっていうけど。
食べ物の恨みはおそろしい。
『うええ、異世界って残酷な神様の作り方するんだな……』
ティグリスはドン引きだった。
巨体を震わせてる。
アレックスも同じ犬属なせいか、痛ましい、といった顔で。
*****
『いや、ボスの羆も、そのようにして作られた”ケモノ”らしいよ』
イアソンは、例の小屋から回収したメモの暗号を解読したようだ。
メモを取り出して、テーブルに置いた。
『しかも、それを量産しようと計画してる』
全員、押し黙ってしまう。
凄まじい恨みを持つ、怖ろしい祟り神だ。
それを。
大量に作り出そうとしてるなんて。
「まあ、成仏してもらうしかないよね」
神様なら、祈るしかない。
『可愛いにゃんこのお願いなら、きいてくれるだろうな』
いや、アレックスじゃあるまいし。
そんな。
『確かに』
何で全員納得してるの!?
*****
『他に、聞いておきたいことはある?』
イアソンは、俺が昨日こっちに来たばっかりだと聞いてから、かなり親身になって。
色々と教えてくれている。
今は特に、わからなくて困ったことはないかな。
家具や道具の使い方、食事も。だいたい同じような感じだ。スマフォとかテレビとか、電気製品がないくらいで。
魔法については、まだよくわからないけど。詳しく聞いても、使えるかどうかわからないし。
王様の言ってたことがわからなかったのは、予備知識が一切なかったせいだし。
アレックスってば、一切説明ナシに連れてくから。
「んー、今のとこ、思いつかない」
というか、何を聞くべきなのかがわからない。
『まあ、いつでも何でも聞いてよ。わかることなら答えるからさ』
イアソンって頭良いし、頼りになるなあ。
「うん。ありがとう」
はじめの印象と違って、優しくていい人だ。
『はあ、これは精霊も二つ返事できいちゃうのわかるよ……』
イアソンはふにゃっとした笑顔で。
『な? な? そうだろ』
何でアレックスがご機嫌なんだろう。
*****
『神子さま、俺のしっぽ見るか』
ティグリスが寄って来た。
「出せるの?」
『ああ』
と、出してみせた。
虎の耳と、虎柄のしっぽ。
髪は茶色と金なのに、ホワイトタイガーなんだ?
へえ、虎の耳って、後ろ、黒いんだ。
しっぽ、長いし太いんだな。身体が大きいから、よけいに大きいのかな?
「みゃっ!」
大きなしっぽに巻かれた。
びっくりした。
……あ、ふかふかだ。
ぜんぜん獣臭くないのは、人でもあるからかな?
「しっぽ、触られても平気なの?」
『ああ。ツガイじゃないし、平気だぞ』
そうか。
ツガイじゃなければ、触っても問題ないんだ。
なら遠慮なくもふらせてもらおう。
わあ、虎のしっぽ、もふもふだ。
同じネコ科だしな。
『くっ……、見せられるものが鳥しかいない……!』
アーノルドががっくりと膝をついてる。
どうしたの、聖騎士……。
『これくらいは嗜みでしょう』
スウェーンの耳がウサギになった。
「えっ、スウェーン、ウサミミ出せたの!?」
『従者の嗜みです』
みんな違うって首横に振ってるけど。
触って良いっていうので、もふらせてもらう。
ウサミミ、ふわふわして気持ち良い。
茶色のウサギなのか。
*****
『ああ、猫ちゃん……』
何故かティグリスも膝をついてた。
『何やってんだお前ら……』
アレックスは呆れ顔だった。
イアソンは、腹抱えて笑ってる。
そんなこんなで。
夕食兼会議も終わったので、部屋に戻った。
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