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幸見
”ケモノ”と精霊魔法
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”ケモノ”とは。
悪神の力により、守護獣を取り込んで、その力を悪いことに使う教団。というか、犯罪者の集団のことらしい。
悪の教団みたいな感じかな?
彼らは、自ら人であることを捨てたので、”ケモノ”を自称している。
その姿は、獣人というよりほぼ獣である。
”力”も相当強く、1人だけでも、その辺の騎士団をひとつ潰せるくらいの力を持っているそうだ。
特に、教祖というか、ボスのヒグマはとても強くて。
王国騎士団最強といわれているアレックスですら勝てないだろう、と言われてるそうだ。
ボスは、騎士団ごとシルヴェスター王国を潰そうと、計画を立てているらしい。
この世界で最大最強の騎士団をもつ首都、シルヴェスター王国。
最後の砦というべき騎士団がやつらの手に落ちれば、無法地帯になってしまう。
この世はもうおしまいだ、って話だけど。
*****
「戦うの、アレックスじゃないよ?」
『え?』
「アレックスは、あくまでも俺のサポート役で。戦うのは俺、”救世の神子”だって言ってた」
王様が。
確か、そんなことを言っていた。
俺にそんな力があるかどうかは知らないけど。
そのために召喚されたわけだし。
現に、願っただけで、傷を治せる力を持っている。
『王は、こんなちびっこを、あんな怖ろしい”ケモノ”と戦わせようとしてるのか!?』
ルーファスは怒ってるけど。
誰がちびっこだよ。どいつもこいつも。
確かにこの世界じゃ、小さい方みたいだけど。
『ユキミは戦わせないし、俺は勝つ』
アレックス?
振り向くと、後ろにアレックスとアーノルドがいた。
いつの間にか戦闘を終えていて。馬車の後部で話を聞いていたようだ。
*****
「……どうしたの!? 血がついてる」
鎧に、血がいっぱい。
『いや、これは返り血だ。俺のじゃない』
そうか。良かった。
返り血がつくってことは、相手は無事じゃないだろうけど。
俺にとっては、アレックスの無事のほうが大事だ。
『……やつらを、返り討ちにしたのか。相当数、いたはずだぞ?』
『ああ。全員の”ケモノ”を引っぺがして、天に還してやった』
アレックスは、驚くルーファスに、にやりと笑ってみせた。
活躍、見たかったのにな。
残念だ。
『そんな……ことが……!?』
『何でそんなパワーアップしてんの!?』
それって、とんでもないことらしい。
ルーファスだけじゃなく、イアソンも驚いてる。
佐野の守護獣を目覚めさせてたし。眠らせたりも可能なんじゃないの?
昔はできなかった、ということかな?
『ツガイを手にした狼は、とてつもなく強いのですよ。ヒグマにだって負けるものですか』
アーノルドは笑顔でアレックスの背中を叩いた。
こっちの鎧は洗ったように真っ白だけど、剣は血塗れだった。
逆にこわい。
『そうか……』
ルーファスは、がっくりと肩を落として。
自分の罪を認め、自供した。
敵と通じて、情報を流していたこと。
誰か1人は殺せ、と命じられていたことを。
そして。
もう移動しているかもしれないが、と。敵の潜伏場所も吐いた。
*****
アレックスは、ルーファスのことを怪しい、とは思ってたけど。
行き先に敵が待っているなら同じことだろうと思って、あえて放置していたという。
イアソンは、本当は馬に乗れるけど、俺の警護とルーファスの監視も兼ねて馬車に乗り込んでいたらしい。
スウェーンは馬を操っているから、護衛の手が足りないだろう、と。
『でも、まいったよ。まさかぼくが庇うだろうこと前提で、神子を狙うなんてさあ。想定外だったよ』
まさかこんな小さな子を狙わないだろうと油断していて、危うく死ぬとこだった、と笑ってる。
いやいや。笑えないよ。
『笑い事じゃない。お前は自分を過信しすぎる。だから武器を持てと言ったんだ』
アレックスに叱られてる。
イアソン、アレックスよりも年上らしいのに……。
『だが、咄嗟に魔法弾を撃てたのは凄いと思う。無詠唱で撃てるようになったんだな』
『まあ、威力の低いヤツだけはね。練習したから。武器に当てようと思ったんで軌道がずれたのも、結果的に幸いだったかな? 死なないで情報吐いてくれたし』
あれで、威力低いんだ……。
「無詠唱って、そんなにすごいことなの?」
『ああ。精霊の力を借りる場合や、魔力の行き先を指示するのに必要だ。昨日、唱えていただろう?』
アレックスがやってた、守護獣召喚。
呪文が、俺には日本語変換されて聞こえてただけなのか。
言霊みたいなものかな?
言葉には、見えない力がある。
使いようによっては、人を傷つけることも可能だ。だから、悪い言葉を発してはいけない、悪いことを言えば、必ず自分に返って来るものだ、と教えられた。
「精霊が、力を貸してくれるんだ?」
っていうか、精霊、実在するんだ。
この世界。
『そう。火の精霊、水の精霊、風の精霊、土の精霊。四大精霊たちか、かれらの眷属に力を分けてもらう魔術だよ』
精霊魔法は、イアソンが専門分野らしい。
ルーファスにぶつけたのは、火の精霊と契約して、その力を借りたものだという。
だから軽いものでも威力は強力なんだそうだ。
「俺がお願いしても、来てくれるかなあ?」
偉大なる自然の力といえば。
あれができそうだし。
イアソンが頷いた。
『手順を踏めば、大丈夫だと思うよ』
そうなんだ。
じゃあ。
さっそく、試してみるか。
悪神の力により、守護獣を取り込んで、その力を悪いことに使う教団。というか、犯罪者の集団のことらしい。
悪の教団みたいな感じかな?
彼らは、自ら人であることを捨てたので、”ケモノ”を自称している。
その姿は、獣人というよりほぼ獣である。
”力”も相当強く、1人だけでも、その辺の騎士団をひとつ潰せるくらいの力を持っているそうだ。
特に、教祖というか、ボスのヒグマはとても強くて。
王国騎士団最強といわれているアレックスですら勝てないだろう、と言われてるそうだ。
ボスは、騎士団ごとシルヴェスター王国を潰そうと、計画を立てているらしい。
この世界で最大最強の騎士団をもつ首都、シルヴェスター王国。
最後の砦というべき騎士団がやつらの手に落ちれば、無法地帯になってしまう。
この世はもうおしまいだ、って話だけど。
*****
「戦うの、アレックスじゃないよ?」
『え?』
「アレックスは、あくまでも俺のサポート役で。戦うのは俺、”救世の神子”だって言ってた」
王様が。
確か、そんなことを言っていた。
俺にそんな力があるかどうかは知らないけど。
そのために召喚されたわけだし。
現に、願っただけで、傷を治せる力を持っている。
『王は、こんなちびっこを、あんな怖ろしい”ケモノ”と戦わせようとしてるのか!?』
ルーファスは怒ってるけど。
誰がちびっこだよ。どいつもこいつも。
確かにこの世界じゃ、小さい方みたいだけど。
『ユキミは戦わせないし、俺は勝つ』
アレックス?
振り向くと、後ろにアレックスとアーノルドがいた。
いつの間にか戦闘を終えていて。馬車の後部で話を聞いていたようだ。
*****
「……どうしたの!? 血がついてる」
鎧に、血がいっぱい。
『いや、これは返り血だ。俺のじゃない』
そうか。良かった。
返り血がつくってことは、相手は無事じゃないだろうけど。
俺にとっては、アレックスの無事のほうが大事だ。
『……やつらを、返り討ちにしたのか。相当数、いたはずだぞ?』
『ああ。全員の”ケモノ”を引っぺがして、天に還してやった』
アレックスは、驚くルーファスに、にやりと笑ってみせた。
活躍、見たかったのにな。
残念だ。
『そんな……ことが……!?』
『何でそんなパワーアップしてんの!?』
それって、とんでもないことらしい。
ルーファスだけじゃなく、イアソンも驚いてる。
佐野の守護獣を目覚めさせてたし。眠らせたりも可能なんじゃないの?
昔はできなかった、ということかな?
『ツガイを手にした狼は、とてつもなく強いのですよ。ヒグマにだって負けるものですか』
アーノルドは笑顔でアレックスの背中を叩いた。
こっちの鎧は洗ったように真っ白だけど、剣は血塗れだった。
逆にこわい。
『そうか……』
ルーファスは、がっくりと肩を落として。
自分の罪を認め、自供した。
敵と通じて、情報を流していたこと。
誰か1人は殺せ、と命じられていたことを。
そして。
もう移動しているかもしれないが、と。敵の潜伏場所も吐いた。
*****
アレックスは、ルーファスのことを怪しい、とは思ってたけど。
行き先に敵が待っているなら同じことだろうと思って、あえて放置していたという。
イアソンは、本当は馬に乗れるけど、俺の警護とルーファスの監視も兼ねて馬車に乗り込んでいたらしい。
スウェーンは馬を操っているから、護衛の手が足りないだろう、と。
『でも、まいったよ。まさかぼくが庇うだろうこと前提で、神子を狙うなんてさあ。想定外だったよ』
まさかこんな小さな子を狙わないだろうと油断していて、危うく死ぬとこだった、と笑ってる。
いやいや。笑えないよ。
『笑い事じゃない。お前は自分を過信しすぎる。だから武器を持てと言ったんだ』
アレックスに叱られてる。
イアソン、アレックスよりも年上らしいのに……。
『だが、咄嗟に魔法弾を撃てたのは凄いと思う。無詠唱で撃てるようになったんだな』
『まあ、威力の低いヤツだけはね。練習したから。武器に当てようと思ったんで軌道がずれたのも、結果的に幸いだったかな? 死なないで情報吐いてくれたし』
あれで、威力低いんだ……。
「無詠唱って、そんなにすごいことなの?」
『ああ。精霊の力を借りる場合や、魔力の行き先を指示するのに必要だ。昨日、唱えていただろう?』
アレックスがやってた、守護獣召喚。
呪文が、俺には日本語変換されて聞こえてただけなのか。
言霊みたいなものかな?
言葉には、見えない力がある。
使いようによっては、人を傷つけることも可能だ。だから、悪い言葉を発してはいけない、悪いことを言えば、必ず自分に返って来るものだ、と教えられた。
「精霊が、力を貸してくれるんだ?」
っていうか、精霊、実在するんだ。
この世界。
『そう。火の精霊、水の精霊、風の精霊、土の精霊。四大精霊たちか、かれらの眷属に力を分けてもらう魔術だよ』
精霊魔法は、イアソンが専門分野らしい。
ルーファスにぶつけたのは、火の精霊と契約して、その力を借りたものだという。
だから軽いものでも威力は強力なんだそうだ。
「俺がお願いしても、来てくれるかなあ?」
偉大なる自然の力といえば。
あれができそうだし。
イアソンが頷いた。
『手順を踏めば、大丈夫だと思うよ』
そうなんだ。
じゃあ。
さっそく、試してみるか。
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