異世界でチート過ぎる三毛猫にされた俺は、オオカミ騎士から溺愛されてます。

篠崎笙

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幸見

”力”の使い方

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『ねえねえ、アレクセイは、性器も犬みたいだった? ツガイなら、見たよね?』


イアソンは、興味津々だった。
シモ関係の話に。

赤い瞳が、好奇心できらきらしてる。
『きみも、猫っぽい性器になってるもんなの? 瞳は猫だよね? もっと良く見せてよ』


研究者気質なんだろうけど。完全にセクハラだ、これ。
若く見えるのに。中身はおっさんかな?

「じゃあ、イアソンは馬並みなの?」
セクハラで返してやると。

目をまたたかせて。

『……まいったな。一本取られたよ』
苦笑してる。


じゃあ、違うんだ……。


*****


『馬並みじゃないけど。角は出せるんだよ。滅多に出さないけどね』

ユニコーンの角は、万病を癒すとか。
すごいな。

『それがさあ、角は魔力を通すための媒体で、角自体に癒しの効果があるわけじゃないのに、角を削ろうとする馬鹿が後をたたなくてさー。いつの間にか格闘技が得意になっちゃったわけよ』
ほら、と。盛り上がった筋肉を見せた。


すごいガチガチの筋肉だった。
ひょろっとして見えるのに。隠れマッチョだ。

医療魔法が使えて、攻撃魔法も使えて。さらに格闘技も強い。

こんな人がいるのに、アレックスが騎士の中で一番強いって。
どれだけの腕なんだろう。


「あのさ、アレックスって、何が……っ、」
ん?

急に、馬車が停まって。
スウェーンが弓矢を装備して、慌てて馬車を降りるのが見えた。

何かあったのかな?


後ろにいるルーファスが落ち着きなく、そわそわしてるようだ。

顔色が悪いな。
どうしたんだろ?

ルーファスは手を、腰の辺りにやった。


『危ない!』


え?
イアソン?

の、背中が。目の前に。


ずるずると、崩れるように倒れて。

見えたのは。
顔半分が焼けただれたルーファスが、もがき苦しんでる姿。

片目が白濁して。
顎の骨が、一部むき出しになってる。

非現実的な光景だ。


ごぼごぼと、あふれてる。
あれは、血?


*****


え、これ。この血。

本物?
今、何が起こったんだ?

見ると。
倒れたイアソンの胸には、ナイフが刺さっていた。

まさか、これ。
「ルーファスに、やられたの!?」

イアソンは力なく頷いた。
『……急所は、ずらしたつもり、だけど。……やばい、かも』

苦しそうに、咳をしながら言った。口から、明るい色の血を吐いてる。
この血は、動脈だろう。肺を傷つけたのかな?


そうか。
咄嗟に、俺を庇ってくれたんだ。

だから。


「イアソン、ナイフを抜くよ。ちょっと我慢して」

『え、ちょっ、待っ、そのまま抜いたら、大出血……、ぐ、』
ナイフを指で挟むように手を当て。

すぐに治るように願いながら、ナイフを引き抜いた。
あふれかけた血は、すぐに止まった。


『……嘘だろ……詠唱ナシで、一瞬で、完治……? 何だよ、ぼく、必要ないじゃん……』
へらへら笑ってるけど。

身体を張って、助けてくれた。

「イアソンのお陰で、俺は無事だよ。ありがとう」
『どういたしまして。アレクセイから、目を離すなって言われてたのに。油断したなあ……』


苦悶の声が聞こえた。

あ。
ルーファス。

あの傷で、生きてたんだ。
ルーファスの倒れてるところへ行こうとしたら。

イアソンに袖を引かれた。
『そいつ、多分敵の内通者だよ? 助ける気?』


あいにく、俺はそんなに優しくない。

「内通者なら、なおさら生かしておかないと。情報吐かせなきゃ。あれじゃ、しゃべれないし」
顎の骨、見えちゃってるもんな。


『ひ、非情……!?』


*****


イアソンは、ルーファスを縛り上げた。

ルーファスの怪我は、酷い状態だ。
白濁してた片目は破裂して、中から白っぽい液体があふれ出てきてる。

黒く焦げた肉の隙間から出てる黄色いの。これ、リンパ液かな。
うわ、グロい……。

よくこれで生きてるな、って感じだ。
ここまで酷いことになってると、かえって現実感が薄れるようだ。出来の悪いB級ホラーみたいに見える。

焦げたにおいに、思わず息を止める。


正直、触りたくないけど。
イアソンの攻撃魔法で焼けただれた顔に手を当てると、一瞬で元通りになった。

要領はわかってきた。
治るように願いながら触れれば、治せるようだ。


怪我が治ったルーファスは、すぐに正気を取り戻した。

『俺は何も喋らないぞ……殺せ……!』
睨まれた。


素直に話してくれる気はないのか。
困ったな。


*****


「何か、自白剤的なものはないの?」

『自白ねえ……拷問して吐かせるくらい?』
拷問か。


「じゃあイアソンが魔法で攻撃して、俺が治すのはどうかな? 話したい気になるまで」

『神聖なる医療魔法をそんなことに使おうと考える人、はじめて見たよ!!』
ドン引きされた。

えー。
マンガとかで、よく見るけどな。


ルーファスは、怯えきった顔で俺を見た。
『”ケモノ”だ! やつらに協力すれば、俺と、家族の命だけは助けてくれると、約束したんだ!』


実行する前に話してくれてよかった。
本気じゃなかったけど。

家族を人質に取られたのかな?


『……馬鹿だな。やつらが約束なんて守るわけないだろ。”ケモノ”にされるか、殺す順番が最後になるだけだよ』

イアソンが呆れたように言って。
ルーファスは、がっくりと顔を伏せた。


『いくら、銀狼のアレクセイでも。勝てるわけないじゃないか。あっちには……がいる……』
がたがた震えている。


「あのさ。そもそも”ケモノ”って何なの?」

『え?』
『……は?』

イアソンはともかく。
ルーファスにまで、呆れ顔をされた。
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