異世界でチート過ぎる三毛猫にされた俺は、オオカミ騎士から溺愛されてます。

篠崎笙

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幸見

オオカミのツガイ

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『ユキミ。……ここに、俺のを挿れたいんだが。いいか?』
囁かれる。


ここって。

お尻に?
俺のって。何を?

あ。
指、抜かれちゃう。やだ。

しっぽが、勝手にアレックスの腕に絡まって。
引き留めようと動いてる。


『ユキミ。嫌なら嫌だと言ってくれ。……いいのか?』

や、耳、はむはむしないで。

「ふにゃあん、」

甘えた、猫みたいな声が出てる。
これ、俺の声なのか?


熱いのが、当たってる。

アレックスの……これを、入れるの?
これ、指より、気持ちいいの?

だったら。


コンコン、とノックの音がして。

『アレクセイさま、神子様。お食事の準備が……』
スウェーンが部屋に入って来て。

全員、固まった。


……って。


俺。
いったい、何を。


*****


スウェーンは、魔女が使うような箒を手にして。
キッとまなじりを上げた。

『坊っちゃま……! まだ幼い神子様に! なんてことをなさいますか!』


しっぽを逆立てながら、慌てて逃げるアレックスを追い回して。
容赦なく、べしべし叩いてるんだけど。ご主人様を箒で叩く従者とは……。

坊ちゃま? って。アレックスのこと?

まあいいや。
スウェーンがアレックスを追い回してる隙に、慌てて服を着た。


『ちょ、違、誤解だ。ユキミはもう16だぞ。立派な大人だし、ツガイだし。合意だ!』

スウェーンが驚いたように俺の方を見た。
『えっ、16歳なんですか?』

「16歳だけど。異世界だとまだ未成年で、大人じゃないよ」

普通に未成年に淫行した罪で捕まると思う。
合意でも。


『ほら! やっぱり子供じゃないですか! 坊っちゃまのロリ狼!』
アレックスは、お尻を箒でべしべし叩かれてる。

その人、国で一番強くて偉い騎士様なのでは……?


あと、犬じゃなくて、狼だったんだ……。
どう違うんだろ。


*****


スウェーンは若く見えるけど26歳で。
10年前からアレックス坊っちゃまの面倒をみているという。

道理で叱り方に年季があると思った。


『この方は、昔から可愛いものに目がなかったので、危ないとは思っていたのです』

飼い猫を可愛がりすぎて、ストレスでハゲさせたこともあるんですよ、と耳打ちされる。
どれだけだ。
ひどいことをする……。

『危ないとはなんだ。合意だと言ってる』

アレックスは拗ねた様子で、箒でぼさぼさにされたしっぽのブラッシングをしている。
自分で触るのは、平気なんだよな……。

『ツガイにしっぽを掴まれたのだ。仕方ないだろう』


もう獣化……動物の耳やしっぽを出せるような力の強い人は、そんな大勢はいないそうだ。

以外の人に触られても、別に何ともないけど。
ツガイになる相手から獣の尾を掴まれると、性欲のスイッチが入ってしまって、どうしようもなくなる。
そうなるのが、ツガイであるあかしだそうだ。


そういえば、俺もそうだった。

身体の力が抜けて、気持ち良くなっちゃって、まともにものを考えられなくなった。
……じゃあ、アレックスが、俺のツガイになる相手なのか。

狼のツガイっていうのは、一生のうち、1人だけ。
生涯かけて愛す、特別な相手なんだとか。


*****


『異世界人の神子様に、そのようなことが、おわかりになるわけがないでしょうに』
スウェーンは常識人だな。

確かに、知らなかった。


『……嫌だったか……?』
アレックスが、悲しそうな顔をしてこっちを見てる。

耳もへたれてる。
あ、その耳って動くんだ。動くとこ、初めて見た気がする。

「別に、嫌ではなかったけど……」

気持ちよかったし。
ツガイならしょうがないんじゃないかな、と。


『ほら。ツガイだし、何の問題もないだろうが』
途端にドヤ顔してるよこの人。

スウェーンはあからさまに呆れた顔してご主人様を見てる。


意外と面白いな、この人たち。
と。

きゅるる、と音が。


俺の腹の虫だった。
恥ずかしい……。おやつ食べたのに。

でも、考えてみれば、ここでは昼頃みたいだけど。
日本時間ではもうとっくに夕食の時間も過ぎたあたりだった。下校時にこっち来たんだもんな。


『そうでした。お食事の支度が出来ておりますので、食堂へどうぞ』
スウェーンは笑顔で俺を案内した。

坊っちゃまはさらっとシカトされているけど、気にしてないようだ。

どうやらこういうやり取りは日常茶飯事みたい。
仲良いんだ。


へえ、食堂とか、別にあるんだ。
さすが大邸宅。


*****


ああ、ご飯美味しい。


食事は、異世界といってもあまり変わらないようだ。洋風だけど。
パンもあるし、肉も、野菜も普通にある。

むしろこっちの方が美味しい気がするのは、食材が上等なものだからか?

食器も、洋食に使う食器そのままだ。
ただし、かなり高級そう。


「熱っ」
スープがまだ熱かった。

耳やしっぽがそうなったように、舌も猫になったのかも。

『大丈夫か? 火傷してないか? どれ、』
アレックスは、隣にべったりくっついて座ってる。

俺の舌をみて。
大丈夫そうだ、と水をくれた。


パーティーでも開くのかってくらい、やたら広い食堂の、片側10人は軽く座れそうな、大きなテーブルで。
2人で椅子を真横にくっつけて並んで座ってるのって、かなりおかしな状況じゃないのかな……?

食事を運んでくる給仕係の人も、困惑した顔してるし。


何だか、アレックスの俺に対する態度がやたら甘々になっている。
それは、俺がツガイだと判明したせいだろうか?


*****


狼というのは、ツガイを見つけると、更に強くなる種族らしい。

俺はまだ、アレックスがどれだけ強いのかは知らないけど。
俺が渾身の力で蹴飛ばしても、びくともしなかったなあ、くらいしか。


『ほら、』
ふうふう冷まして、スープを飲ませようとしてくる。

自分で出来るけど。
まあいいか。ツガイらしいし。嬉しそうだし。

甘やかされるのも悪くないもんだ。


『美味いか?』
「うん」

何だろうな、この緩みきった顔は。
とてもこの国最強の騎士様には見えない。

近くに控えているスウェーンは、もはや無言だった。
ご主人様に向ける視線が冷たい。

俺と目が合うと、笑ってくれるけど。


従者は主人と同じ席で食事をしないんだそうだ。
従者って大変なんだな。
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