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おまけ
第一回コスプレ大会 Ⅰ
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という訳で。
どういう訳だかはわからないが、ロロの熱烈な猛プッシュにより、ルミエール王国主催、仮面舞踏会という名のコスプレ大会が催されることになったのだった。
この世界には娯楽小説の類はないけど、古来からの伝承やら伝説なら存在していた。
字が読めるのは貴族階級や神職くらいなので、歴史書の他に一般国民から口伝を募集したら、かなりの数の話が集まった。
そのうち、面白い話は本してまとめるつもりだ。
剣と魔法のファンタジー世界なもんだから、ドラゴンやら妖精やらも存在する。
悪い怪物を退治した英雄譚も。
おかげでコスプレのネタには事欠かない。
本物の鎧とかドレスだと、コスプレとは何か違うような気がするものの。
こういうお遊びもいいよね、って皆に広く教えるためにはいいかも。
貴族だけじゃなく、一般国民も気軽にできるようになるには、相当時間がかかりそうだけど。
*****
で。
この会の様子は魔法石で、国内だけでなく他の国にも中継することに決まったとか。
俺とロロの結婚式の様子を生中継して以来、今まで交流のなかった国からも同盟の申し込みが殺到。
そうして友好国になった国と物資の輸出入もするようになって。それが国益になったり。
良いことずくめで、ちょっと怖いくらいだ。
今回の”仮面舞踏会”という企画も、かなり期待が寄せられてるらしい。
注目されるのは緊張するし、大勢からコスプレを見られるのは恥ずかしいけど。
多少恥ずかしくても、我慢しないとな。
魔素の少ない一般国民にも豊かな生活をさせたい。
そのためなら、多少のヨゴレも辞さない。
『この際、ドレスでも何でも着てやろうじゃん!』
「え? 衣裳、ドレスでも良いって。……本当か?」
ロロが驚いて、紙の束を机からばらまいた。
相当動揺したみたいだ。
紙に描かれているのは、件のコスプレ大会用のデザイン案らしい。
先日やった結婚式の時の衣装もロロのデザインだったし。飾りつけとかもそうだって。
さすが元社長。多才だなあ。
『うん。なんか結婚式でも、俺のドレス姿を期待してた国民が多かったらしいし。いいよ?』
なるべく、期待には応えたい。
この容姿なら、女装も似合うだろうし。
って。”完全体”だから、男でもあり女でもあるんだよな。
あしゅら男爵みたいに半分で切り替えても面白いかも。でもあっちは服の色が左右で違うくらいだっけ?
などと考えてたら。
ロロは紙の束を手にしたままフリーズしていた。
妄想で頭の中がいっぱいになってるようだ。
瞳孔が開いててこわい。
*****
ロロってば、だいぶ俺のこと好きすぎない?
前世でそれまでの勝ち組人生を投げ出して、この異世界まで転生した俺のことを追いかけてきたくらいだ。相当好かれてるんだろう。
でも、何でそこまで好かれてるのか、未だに理解できない。
運命の相手だとか、魂の輝きがどうのこうの言ってたけど。意味分かんない。
だって、モテモテなイケメン英国人で、貴族の家系で社長さんだった前世ネーム・ヘンリーさんがだよ?
今の、人形みたいに整った容姿ならともかく。
典型的な胴長短足日本人で、底辺オタクの地味なおっさん平社員だった俺に一目惚れって。やっぱり信じられないよな。
それを言うと、愛の深さを思い知れ! とばかりにえっちなお仕置きされるから言わないけど。
「よし、これだ!」
長考から抜け出したロロは、一気にデザイン画を描き上げた。
『何? 美女と野獣みたいな感じ?』
ロロは、その手があったか、というような顔をした。
しまった。自分からネタを与えてしまった。
「……それもいいな。だが、最初はこの世界での伝説からがいいと思う」
確かに、よく知られた話のほうがわかりやすくていいか。
どういう訳だかはわからないが、ロロの熱烈な猛プッシュにより、ルミエール王国主催、仮面舞踏会という名のコスプレ大会が催されることになったのだった。
この世界には娯楽小説の類はないけど、古来からの伝承やら伝説なら存在していた。
字が読めるのは貴族階級や神職くらいなので、歴史書の他に一般国民から口伝を募集したら、かなりの数の話が集まった。
そのうち、面白い話は本してまとめるつもりだ。
剣と魔法のファンタジー世界なもんだから、ドラゴンやら妖精やらも存在する。
悪い怪物を退治した英雄譚も。
おかげでコスプレのネタには事欠かない。
本物の鎧とかドレスだと、コスプレとは何か違うような気がするものの。
こういうお遊びもいいよね、って皆に広く教えるためにはいいかも。
貴族だけじゃなく、一般国民も気軽にできるようになるには、相当時間がかかりそうだけど。
*****
で。
この会の様子は魔法石で、国内だけでなく他の国にも中継することに決まったとか。
俺とロロの結婚式の様子を生中継して以来、今まで交流のなかった国からも同盟の申し込みが殺到。
そうして友好国になった国と物資の輸出入もするようになって。それが国益になったり。
良いことずくめで、ちょっと怖いくらいだ。
今回の”仮面舞踏会”という企画も、かなり期待が寄せられてるらしい。
注目されるのは緊張するし、大勢からコスプレを見られるのは恥ずかしいけど。
多少恥ずかしくても、我慢しないとな。
魔素の少ない一般国民にも豊かな生活をさせたい。
そのためなら、多少のヨゴレも辞さない。
『この際、ドレスでも何でも着てやろうじゃん!』
「え? 衣裳、ドレスでも良いって。……本当か?」
ロロが驚いて、紙の束を机からばらまいた。
相当動揺したみたいだ。
紙に描かれているのは、件のコスプレ大会用のデザイン案らしい。
先日やった結婚式の時の衣装もロロのデザインだったし。飾りつけとかもそうだって。
さすが元社長。多才だなあ。
『うん。なんか結婚式でも、俺のドレス姿を期待してた国民が多かったらしいし。いいよ?』
なるべく、期待には応えたい。
この容姿なら、女装も似合うだろうし。
って。”完全体”だから、男でもあり女でもあるんだよな。
あしゅら男爵みたいに半分で切り替えても面白いかも。でもあっちは服の色が左右で違うくらいだっけ?
などと考えてたら。
ロロは紙の束を手にしたままフリーズしていた。
妄想で頭の中がいっぱいになってるようだ。
瞳孔が開いててこわい。
*****
ロロってば、だいぶ俺のこと好きすぎない?
前世でそれまでの勝ち組人生を投げ出して、この異世界まで転生した俺のことを追いかけてきたくらいだ。相当好かれてるんだろう。
でも、何でそこまで好かれてるのか、未だに理解できない。
運命の相手だとか、魂の輝きがどうのこうの言ってたけど。意味分かんない。
だって、モテモテなイケメン英国人で、貴族の家系で社長さんだった前世ネーム・ヘンリーさんがだよ?
今の、人形みたいに整った容姿ならともかく。
典型的な胴長短足日本人で、底辺オタクの地味なおっさん平社員だった俺に一目惚れって。やっぱり信じられないよな。
それを言うと、愛の深さを思い知れ! とばかりにえっちなお仕置きされるから言わないけど。
「よし、これだ!」
長考から抜け出したロロは、一気にデザイン画を描き上げた。
『何? 美女と野獣みたいな感じ?』
ロロは、その手があったか、というような顔をした。
しまった。自分からネタを与えてしまった。
「……それもいいな。だが、最初はこの世界での伝説からがいいと思う」
確かに、よく知られた話のほうがわかりやすくていいか。
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