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ローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェの人生
Je me marie.(結婚します)
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いよいよ本日のメインイベント。
俺たちの結婚式だ。
敷地内、城の横に併設されている王族専用の大聖堂へ向かう。
天井がガラスで作られていて、差し込む光が神の光のように神々しいとのこと。
急遽撮影係を任命されたアンドレや、結婚立会人の前国王、厳選された招待客はもうすでに中で待っている。
アンリの衣裳には、この世界にないデザインと技術を駆使したため、王室の服飾係から猛烈なラブコールをいただいてしまったが。
俺は王佐であり王配であってデザイナーではないので、アンリの服だけなら協力することにした。
花嫁と花婿は別々の部屋で待機し、身を清めてから衣装を着ける。
トルソーに着せた衣裳までなら見たが。着た姿を見ていないので、楽しみだ。
*****
この世界での結婚は、結婚前は禁欲をし。
別々の扉から教会……俺たちは大聖堂に入り。部屋の中央に差し込んだ光の中で合流し、立会人の前で誓いの言葉を述べるだけ、である。他に儀式はない、至極簡単なものだが。
俺は今日、その概念を吹っ飛ばすつもりだ。
お互い準備が済んだとの合図が来たので、扉の前へ立った。
近衛騎士が扉を開け、中に入ると。
対面にある扉から、俺の花嫁が入って来るのが見えた。
招待客らが「おお……」、と声を上げて見惚れてる。見るな。
俺の嫁はいつ見ても綺麗だが。今日は特別美しいから仕方ないか。
日本のオタクは、自分の”推し”を”俺の嫁”と呼ぶそうなので、俺の最推しはアンリだからアンリは俺の嫁だ。
そして今日、俺の嫁がリアルに俺の嫁になる。何だか訳が分からなくなってきた。
アンリは目の細かい黒いレースのヴェールを被り、顔を隠している。
うっすらと目鼻立ちが見えるが、それがまた蠱惑的だ。
腰までの短いマントを肩で留めているのは青い石のブローチ。これは前世での俺の瞳と同じ色、という悪戯心で入れた差し色だ。
ブラウスは繊細なレースでできたフリルで胸を覆い、大きく胸の開いたジレで胸があるように見せている。
アンリの華奢な身体のラインがわかるようにタイトなシルエットのパンツスーツ。ハーフブーツはハイヒールで、普段よりも腰を上向きにさせることでヒップラインをより綺麗に見せている。
黒一色ではなく、金糸で飾られた襟や袖も派手過ぎず邪魔をしていない。
我ながら天才なんじゃないかと思うくらい完璧な仕上がりだ。縫ったのは王室の服飾係だが。
俺はアンリと対になるように銀糸の刺繍が入った服にした。
金と銀が対なのも、この世界ではないことだが。
*****
天窓から差し込む光の中、合流した。
光の中、輝くような美貌の青年が、こちらを見上げている。
今日、本当にアンリが俺と結婚するなんて。
まるで夢のようだ。
アンリは、俺に見惚れているような表情をしていた。
どうやらアンリは俺の顔が好きらしい。
ヘンリーとしては少々複雑だが、俺は嬉しい。
ヘンリーとはあまりに違う容姿なので、前世の記憶を思い出してから、鏡で自分の姿を見る度に少々違和感を覚えたものだ。
欧米系からアジア系というか。野性味ある美形になっていたのだから仕方ない。
前にアンリがターバンが似合いそうだと言っていたが。確かにインド人の俳優に似ているかもしれない。
英司もベビーフェイスで愛らしかったが。
アンリは人形の如く整った顔で中身が素朴だというギャップの激しい美人である。
どちらも魅力的で、どちらも愛しい。
「見つめ合うのは儀式の後でゆっくりと」
咳払いをし、立会人オーレリアンが注意した。
二人で並ぶように立会人の方を向く。
「私、アンリ・アントワーヌ・ガブリエル・ド・ジュスタンはローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェと婚姻を結び、伴侶になることを誓う」
まずは国王であるアンリが誓いの言葉を告げる。
立会人は、大袈裟なくらい鷹揚に頷いてみせた。
次は俺だ。
俺たちの結婚式だ。
敷地内、城の横に併設されている王族専用の大聖堂へ向かう。
天井がガラスで作られていて、差し込む光が神の光のように神々しいとのこと。
急遽撮影係を任命されたアンドレや、結婚立会人の前国王、厳選された招待客はもうすでに中で待っている。
アンリの衣裳には、この世界にないデザインと技術を駆使したため、王室の服飾係から猛烈なラブコールをいただいてしまったが。
俺は王佐であり王配であってデザイナーではないので、アンリの服だけなら協力することにした。
花嫁と花婿は別々の部屋で待機し、身を清めてから衣装を着ける。
トルソーに着せた衣裳までなら見たが。着た姿を見ていないので、楽しみだ。
*****
この世界での結婚は、結婚前は禁欲をし。
別々の扉から教会……俺たちは大聖堂に入り。部屋の中央に差し込んだ光の中で合流し、立会人の前で誓いの言葉を述べるだけ、である。他に儀式はない、至極簡単なものだが。
俺は今日、その概念を吹っ飛ばすつもりだ。
お互い準備が済んだとの合図が来たので、扉の前へ立った。
近衛騎士が扉を開け、中に入ると。
対面にある扉から、俺の花嫁が入って来るのが見えた。
招待客らが「おお……」、と声を上げて見惚れてる。見るな。
俺の嫁はいつ見ても綺麗だが。今日は特別美しいから仕方ないか。
日本のオタクは、自分の”推し”を”俺の嫁”と呼ぶそうなので、俺の最推しはアンリだからアンリは俺の嫁だ。
そして今日、俺の嫁がリアルに俺の嫁になる。何だか訳が分からなくなってきた。
アンリは目の細かい黒いレースのヴェールを被り、顔を隠している。
うっすらと目鼻立ちが見えるが、それがまた蠱惑的だ。
腰までの短いマントを肩で留めているのは青い石のブローチ。これは前世での俺の瞳と同じ色、という悪戯心で入れた差し色だ。
ブラウスは繊細なレースでできたフリルで胸を覆い、大きく胸の開いたジレで胸があるように見せている。
アンリの華奢な身体のラインがわかるようにタイトなシルエットのパンツスーツ。ハーフブーツはハイヒールで、普段よりも腰を上向きにさせることでヒップラインをより綺麗に見せている。
黒一色ではなく、金糸で飾られた襟や袖も派手過ぎず邪魔をしていない。
我ながら天才なんじゃないかと思うくらい完璧な仕上がりだ。縫ったのは王室の服飾係だが。
俺はアンリと対になるように銀糸の刺繍が入った服にした。
金と銀が対なのも、この世界ではないことだが。
*****
天窓から差し込む光の中、合流した。
光の中、輝くような美貌の青年が、こちらを見上げている。
今日、本当にアンリが俺と結婚するなんて。
まるで夢のようだ。
アンリは、俺に見惚れているような表情をしていた。
どうやらアンリは俺の顔が好きらしい。
ヘンリーとしては少々複雑だが、俺は嬉しい。
ヘンリーとはあまりに違う容姿なので、前世の記憶を思い出してから、鏡で自分の姿を見る度に少々違和感を覚えたものだ。
欧米系からアジア系というか。野性味ある美形になっていたのだから仕方ない。
前にアンリがターバンが似合いそうだと言っていたが。確かにインド人の俳優に似ているかもしれない。
英司もベビーフェイスで愛らしかったが。
アンリは人形の如く整った顔で中身が素朴だというギャップの激しい美人である。
どちらも魅力的で、どちらも愛しい。
「見つめ合うのは儀式の後でゆっくりと」
咳払いをし、立会人オーレリアンが注意した。
二人で並ぶように立会人の方を向く。
「私、アンリ・アントワーヌ・ガブリエル・ド・ジュスタンはローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェと婚姻を結び、伴侶になることを誓う」
まずは国王であるアンリが誓いの言葉を告げる。
立会人は、大袈裟なくらい鷹揚に頷いてみせた。
次は俺だ。
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