底辺オタクがチート性能ガチ盛りなフタナリ美形に転生~魔法王国の王様に俺はなる!

篠崎笙

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ローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェの人生

La main dans la main.(手に手をとって)

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英司は自分のことを、世間から非難の目を浴びるほど、変わった趣味のオタクだと思い、卑下しているようだが。
読書傾向から見ても、一般成人男性の嗜好からそう離れてもいない。ぬるい方だとも言える。

世の中の”オタク”の中には、もっと悪質な、現実に被害を及ぼすような趣味を持つ人間もいる。


英司は暴力や猟奇殺人、食人などの異食などといったアングラな趣味は持っていない。
むしろ、ヘンリーの所属していた魔術結社でやっていた儀式のほうがよほど邪悪だった。

こちらの世界では、創作でしかありえないような妄想を実現するのも可能だ。
しかし、英司は現実と創作は別物だと考えている。
たとえ実現可能であっても、被害者の心情を思いやり、実行しない。


その辺りも、神の選定する魂にふさわしいと思われたのだろう。


*****


アンリが国王になることが決定した。

俺はアンリと、国王になったら何をしたいか、という話をした。
アンリはこの国の民の生活を向上させ、”ジャパニーズオタクカルチャー”を普及したいと言った。

それは、ヘンリー相手だからそう言ったのだろうが。
この世界に、日本なんて国は存在しない。英国もだ。言語はフランス語に酷似しているが、フランスも存在しない。
文化や衣食住など、元の世界のものと遠く離れず類似しているのは、地球とこの世界の神は同じ神だからだ。
環境が変わり過ぎる世界へ飛ばさないだけの分別はあるようだ。

細かく言えば、地球には神が無数に存在しており、トゥトゥ神はその中のひとつだ。

ヘンリーが信仰していたのは、そのうちキリスト教から悪魔と認定された旧世界の神だが。ここでは関係ないので、アンリには言わなかった。

とにかく、この世界では日本は存在しないので。
そのをこちらの人間にも理解できるよう、説明しなくてはならない。


アンリの考えは。
魔素を持っている者も持っていない者も、娯楽が足りない。
歴史書や指南書はあるのだが、小説やマンガ、絵本がない。そもそも魔素を持たない一般人は字が読めない。
生活だけで精一杯な者たちに教育を施し識字率を上げ、本を読む余裕を、娯楽を与えたいというのだ。

俺……いや、ヘンリーが興味を持った日本の文化。
麻薬に蝕まれた不良少年すら更生させたそれを、この世界に広める。

この改革によって、この世界は大きく変わるだろう。より良い方へ。


そうか。
だからこそ、神は英司を選んだのか。

確かに、異世界に生まれ変わってこんな無茶な改革をしようなんて考えるのは英司くらいだ。無いなら、作ればいいだって? 無茶苦茶だ。

なんと素晴らしい考えだろう! さすがは俺が愛した魂、運命の人だ。


*****


を初勅とするため。
もう一歩踏み込んだ内容にしようと話し合った。俺には通じても、他の者を納得させないと、議会を通すのは難しい。

平民にも学校に通わせ、最低限の知識を教え、識字率を上げる。
学校は全面的に国が支援し、教科書は支給、生徒には昼食を出す。それ目当てでもいい。興味を持てば。
この国の歴史を学び、一般教養を得れば、国を愛する気持ちも育つ。
衛生観念を知れば、病気にかかる貧民も減る。


[俺の野望も叶って、魔素のない人の生活レベルが向上、犯罪率、死亡率も下がる。完璧じゃね?]
子供のように笑うアンリ。

「ああ、完璧だな」


この笑顔を守りたいと、心から思った。
俺が支えてみせる。


その後、大臣たちや諸貴族からの意見も聞くため、会議を開いた。

アンリの提案は、ほとんどの大臣から手放しで歓迎されたが。
支配層である貴族からは不満の声が上がった。知恵を付けた農民は小賢しくなり逆らい、税を渋るようになると。
その可能性も、確かにある。
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