底辺オタクがチート性能ガチ盛りなフタナリ美形に転生~魔法王国の王様に俺はなる!

篠崎笙

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美しき国王と王佐、指輪の交換をする

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手袋を外されて。
手の甲にキスをされる。

周囲から、何だ? 何が始まったんだ? というような興味津々な視線を感じる。


俺にはわかった。
あっちでは結婚式のスタンダードである、指輪の交換だ。

ロロは、小さな箱を懐から取り出した。
いつの間にそんなものを用意したんだろう。サプライズだ。


*****


「これは、首輪や足枷の代わりに、相手が自分のものであることを示す印だ」
皆に聞こえるように言って。

俺の左手の薬指に、指輪をはめた。


銀色の指輪。
これ、プラチナかな? こっちの世界では、魔法の触媒として黄金より高額取引されてる金属だ。

うわ、外れない魔法が付与されてる。呪いの指輪かよ!


そして。
俺にも小さな箱を渡された。

そんな、捨てられた子犬が懇願するみたいな目をしなくてもいいのに。
今更、拒むわけないだろ?

子犬どころか、本性は獰猛なオオカミのくせして。


俺もロロの左手を取って、薬指に指輪をはめて。
ついでに、絶対に外れない魔法を付与してやる。お返しだ、ざまあみろ。

お互い、太ったら大惨事だな!

「アンリ……、」
心から、幸せそうな顔をしてる。


全くもう。
そんな顔されたら、こっちも照れるだろ。


*****


盛大な拍手。


「!?」
いつの間にか立ち上がっていたロロに抱き締められて、がっつりチューをかまされていた。

いや、拍手すんな! 泣いてる人もいるし!
アンドレは、なんか違う意味で泣いてるみたいだけど。


今の儀式は何だ、と。中継を見ていた国民だけでなく。各国からも問い合わせが殺到しているという。
何で他の国にまで中継されてるんだ……?

こっちの結婚式でも、ロロの誓いの言葉と指輪の交換がスタンダードになりそうな雰囲気だ。
あと、キスも!?

オタクカルチャーを広めるより先に。ちょっと悔しい。


「それでは、後はよろしく」
そう言って。ロロは俺を抱き上げた。

俺のマントが腰までしかないのは、こうして抱き上げる時に邪魔になりそうだったからか。
こいつ、どこまで用意周到なんだ。


「おお……」
「奇跡だ」

「神よ……」
周囲から、感嘆の声が上がった。


天窓から、虹色の光が差し込んでいるのに気付いた。

これは、滅多にない現象で。
神様がこの結婚を祝福してくれているしるしだそうだ。


ええ……。
神様、この結婚を祝福してくれちゃうの?

この人、別の世界から追いかけてくるようなとんでもないストーカーですよ?


まあ俺も、こいつのことを受け入れちゃってる時点でアレなんだけどな。
割れ鍋に綴じ蓋ってやつ?


*****


ロロは俺をお姫様抱っこしたまま、歩いて城の寝室へ向かうつもりなようだ。
移動魔法を使えばいいのに。


「この人は俺のものだって、見せつけて歩きたいんだ」
すました顔でそんなこと言って。

「疲れたら、言え」

「アンリは軽いから大丈夫だ」
降りると思ったのか、絶対に降ろさない、というように腕に力が入った。

「違う。……回復魔法、かけてやるから」
と言ったら。

ロロは、驚いたように目を瞬かせて。

「ありがとう」
心から幸せそうに笑った。


……全く、しょうがない奴だ。

困った奴だが。
俺も、こいつのことは悲しい顔をさせるより、こういう風に、幸せいっぱいな顔にしてやりたいと思う。


前世の俺じゃ、こんなこと、考えもしなかっただろう。
人付き合いを避けていて。人を好きになったりするような心の余裕もなかった。

でも、今は。

こいつが嬉しそうだと、俺も嬉しいし。
胸があったかいような、何だかくすぐったい気持ちになるんだ。

自分が誰かを幸せな気持ちにさせることができるなんて、幸せなことなんだな。


そんな幸せを。
ロロが。ヘンリーが教えてくれたんだ。

それと、俺を大切に思ってくれている周りの人たちが。


生まれ変わって良かったと、心から思える。
新しい人生をありがとう。
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