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Ⅵ
美しき伯爵と母国語
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『そっちは、日本語だとやたら丁寧だよな? どっちが素のしゃべりに近いんだ?』
「丁寧なのは、”ニホン”で仕事をするために会話を習ったからだろう。でも”ニホンジン”だって、仕事と私事で話し方が変わるだろ?」
ほとんどの日本人の話す英語は教科書みたいに固いらしい。
まあネイティブじゃなきゃそんなもんか。
『でもロロの話し方は貴族らしくないっていうか、かなり砕けて聞こえてるよ?』
と言うと。
さも心外そうに片方の眉を上げた。
「Broken? そこまで酷い? ……私なりに親しみを込めてお話しさせて頂いていたつもりなのですがね?」
おお、貴族っぽい発音だ。ちゃんと敬語も話せたんだ。
ブロークンっていうのは、それが母国語じゃない人が使う、発音や文法に誤りがある言葉って意味だとか。
そこまで崩れてる、って言ったつもりはなかったんだけど。
言葉って、難しいな……。
*****
『考えてみれば、”ニホンゴ”と”English language”、母国語の違う二人がこうして同じ異世界の言葉で話してるのって面白いな』
それもこれも、この恐るべしストーカーが追いかけてきたからなんだけど。
ロロは首を傾げて。
「”ニホンゴ”といえば……、ああ、そうだったのか」
一人でなんか納得したように頷いている。
『何?』
何だか嫌な予感がしないでもないけど。一応訊いてみる。
「あんたが”イヤ”とか”イイ”って言ってたの、”ニホンゴ”だったんだな」
ひぎぃ!?
俺、そんなこと言ってた!?
「あと、”スゴイ”とか。……思わずこっちの言葉を忘れるほど、悦かったんだ?」
やたらエロい視線を送られる。
ニヤニヤすんなっての!
こいつの視線、目で犯されてる気がするのって、気のせいじゃないんだろうな。
見られてるだけで、悪い意味じゃないぞわぞわっていうか。
何だか妙な気分になってくる。
「……おっと、今すぐ押し倒してあんたの可愛い声を聴きたいとこだが。そろそろあいつが乱入しそうだ」
ベッドサイドに置いてあった懐中時計を見て、残念そうに肩をすくめた。
本当だ。やばい。
もう、朝ご飯の時間を過ぎてる。
あんまり遅くなると、アンドレが扉を蹴破って入って来かねない。
「夜まで待ってろ。 色々思い出した分、17歳の俺よりもめちゃくちゃ可愛がってやるから」
エロい顔して尻を撫でるな。
『うっせえ、このエロエロ大魔神!』
「ははは、やっぱりこっちがいい」
わりと容赦なく手を叩き落としたのに。嬉しそうに笑ってる。
*****
ロロは、着替えのために鏡の前へ行って。
改めて自分の姿を見て、訝しげな顔をしながら首を傾げている。
今朝、完全に前世の記憶が戻ったばかりだ。現在の自分の姿に、違和感があるんだろう。
俺も、鏡に映る自分の姿を見ると、未だに違和感というか。信じられないと思うし。
いっそカラーリングがまるっきり違えば、異世界に生まれ変わった別物だって納得できるのかね?
青い髪とかオレンジの瞳とか、ファンタジー世界っぽい。
ロロの前世の姿が金髪碧眼とかだったら、あまりの変化にびっくりするだろうな。
でも、イギリス人って黒い髪も多いんだっけ?
『ロロは前世では、どんな姿だったんだ?』
着替えを手伝ってもらいながら、直球で訊いてみる。
肌着までは自分でも着られるんだけど。正装のデザインが複雑というか。後ろに紐があったり、一人じゃ着られないよう作られてる。
手の込んだ服が高貴なる身分である証みたいな感じ?
「前世での俺? 金髪に青い目。こっちじゃ魔素が薄いとされる姿だった」
俺の服の紐を縛りながら言った。
『もっと詳しく』
考えてみれば、そっちは俺の顔とか知ってるのに。
俺だけ知らないってのも癪だ。
裸だけじゃなく、同人誌の趣味まで知られちゃったんだから。
「丁寧なのは、”ニホン”で仕事をするために会話を習ったからだろう。でも”ニホンジン”だって、仕事と私事で話し方が変わるだろ?」
ほとんどの日本人の話す英語は教科書みたいに固いらしい。
まあネイティブじゃなきゃそんなもんか。
『でもロロの話し方は貴族らしくないっていうか、かなり砕けて聞こえてるよ?』
と言うと。
さも心外そうに片方の眉を上げた。
「Broken? そこまで酷い? ……私なりに親しみを込めてお話しさせて頂いていたつもりなのですがね?」
おお、貴族っぽい発音だ。ちゃんと敬語も話せたんだ。
ブロークンっていうのは、それが母国語じゃない人が使う、発音や文法に誤りがある言葉って意味だとか。
そこまで崩れてる、って言ったつもりはなかったんだけど。
言葉って、難しいな……。
*****
『考えてみれば、”ニホンゴ”と”English language”、母国語の違う二人がこうして同じ異世界の言葉で話してるのって面白いな』
それもこれも、この恐るべしストーカーが追いかけてきたからなんだけど。
ロロは首を傾げて。
「”ニホンゴ”といえば……、ああ、そうだったのか」
一人でなんか納得したように頷いている。
『何?』
何だか嫌な予感がしないでもないけど。一応訊いてみる。
「あんたが”イヤ”とか”イイ”って言ってたの、”ニホンゴ”だったんだな」
ひぎぃ!?
俺、そんなこと言ってた!?
「あと、”スゴイ”とか。……思わずこっちの言葉を忘れるほど、悦かったんだ?」
やたらエロい視線を送られる。
ニヤニヤすんなっての!
こいつの視線、目で犯されてる気がするのって、気のせいじゃないんだろうな。
見られてるだけで、悪い意味じゃないぞわぞわっていうか。
何だか妙な気分になってくる。
「……おっと、今すぐ押し倒してあんたの可愛い声を聴きたいとこだが。そろそろあいつが乱入しそうだ」
ベッドサイドに置いてあった懐中時計を見て、残念そうに肩をすくめた。
本当だ。やばい。
もう、朝ご飯の時間を過ぎてる。
あんまり遅くなると、アンドレが扉を蹴破って入って来かねない。
「夜まで待ってろ。 色々思い出した分、17歳の俺よりもめちゃくちゃ可愛がってやるから」
エロい顔して尻を撫でるな。
『うっせえ、このエロエロ大魔神!』
「ははは、やっぱりこっちがいい」
わりと容赦なく手を叩き落としたのに。嬉しそうに笑ってる。
*****
ロロは、着替えのために鏡の前へ行って。
改めて自分の姿を見て、訝しげな顔をしながら首を傾げている。
今朝、完全に前世の記憶が戻ったばかりだ。現在の自分の姿に、違和感があるんだろう。
俺も、鏡に映る自分の姿を見ると、未だに違和感というか。信じられないと思うし。
いっそカラーリングがまるっきり違えば、異世界に生まれ変わった別物だって納得できるのかね?
青い髪とかオレンジの瞳とか、ファンタジー世界っぽい。
ロロの前世の姿が金髪碧眼とかだったら、あまりの変化にびっくりするだろうな。
でも、イギリス人って黒い髪も多いんだっけ?
『ロロは前世では、どんな姿だったんだ?』
着替えを手伝ってもらいながら、直球で訊いてみる。
肌着までは自分でも着られるんだけど。正装のデザインが複雑というか。後ろに紐があったり、一人じゃ着られないよう作られてる。
手の込んだ服が高貴なる身分である証みたいな感じ?
「前世での俺? 金髪に青い目。こっちじゃ魔素が薄いとされる姿だった」
俺の服の紐を縛りながら言った。
『もっと詳しく』
考えてみれば、そっちは俺の顔とか知ってるのに。
俺だけ知らないってのも癪だ。
裸だけじゃなく、同人誌の趣味まで知られちゃったんだから。
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