底辺オタクがチート性能ガチ盛りなフタナリ美形に転生~魔法王国の王様に俺はなる!

篠崎笙

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美しき伯爵、告白する

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「私は、この身体はともかく、精神的には男として育って来た。性認識もそうだ」
ここまでは理解しているな? と念を押して。


「想像してみろ。自分は幼少の頃から国王になることを目指していたとして。例えば……そうだな。ヴェルソー侯から、自分が国王になるので、王配になって欲しいと言われたらどうする?」

「断るに決まってる」
即答だった。


「ああ。私も断る」

「……?」
何で? って顔をしてる。たぶん、お前と同じ理由だぞ?


*****


勝手に例に挙げて、その上で断るとかアレクサンドルには申し訳ないが。

国王になるために、男に身体を差し出すとかあり得ない。多少イケメンでも無理。
枕営業じゃん。倫理的にねえわ。


「もしヴェルソー侯が本気で国王を目指せば、こちらはやや不利になるだろう。だが、私は自分の身を犠牲にしてまで、王座が欲しいとは思っていない」

よく考えたら、別に国王にならなくても、オタク文化を広めるのは可能なんだよな。
世にも美しい伯爵サマが広めたって、宣伝効果はそう変わりないだろう。

「な……っ!?」
俺が王座を得るために、仕方なく自分に身を任せたものとばかり思ってたロロは、呆然としている。


思い返してみれば。
他人の体温を気持ち悪く感じて、素肌が触れることを嫌っていたのは前世からだった。

夏の満員電車で腕が触れ合おうものなら鳥肌ものだった。
それを回避するために、二時間早起きして早い電車に乗ることも厭わなかったくらいだ。会社は幸い、徒歩圏内に社員寮があって助かったっけ。

馴染みのあるアンドレですら、素肌に触られるのだけは駄目だった。

子供だった時は、抱き上げられるのも服の着替えを手伝われるのも仕方ないと諦めてたけど。
触れるのは服の上からだったんで、何とか我慢できた。


10歳くらいからは、肌着を脱ぎ着するのは自分でやるようになったし。
風呂も一人で入るようになった。

世話好きなアンドレが、そのことに対しては文句も言わず、素直に引き下がったのは。俺の身体が半分、女でもあったせいだったんだろう。


*****


15歳の時、自分の身体のことを知って。
男から触られるのを、これまで以上に忌避するようになったのは、俺の身体が半分女になっていたせいで。本能的なものなのかも、と納得したものの。

パーティーで、義理としてダンスの相手をさせられて。

女の子と腕を組んだ時も、嫌悪感を覚えた。
俺の腕に、わざと胸のふくらみを押し付けられたんだ。

普通の男ならラッキーと思うところなんだろうが。
剥き出しの欲望を感じて、ぞわっと来た。

それも、俺が半分女になって同族嫌悪みたいなものかな、と思ってた。
でも、違った。

他人から触られるのが苦手というか。接触恐怖症になってたんだ。


そんな俺が。
どんな理由があろうと、好きでもない相手と肌を合わせるなんて、無理だったんだ。

でも。
唯一、ロロだけは大丈夫だった。

運動で汗をかいた状態で抱き着いてこられても。口では気持ち悪いとか言いながら、そうは感じてなかった。
小さい頃から知ってる、弟みたいなもんだから大丈夫なのかと思った。


下手に前世を思い出したせいで、ややこしく考えすぎてた。

人嫌いで偏屈な、変わった男だったから。同じ男相手にそんな感情を抱いてしまったことを、素直に認めたくなかったのかもしれない。
男だ女だなんて分類は、関係なかったんだ。


ただ、単純に。
いつの間にか、ロロのことが好きになっていた。


それだけの話だ。


*****


ロロの想いに応えるべく。
ちゃんと、自分の気持ちを伝えなくちゃいけない。

少し膨らんでしまった胸に手を当てて。
「この身体に触れていいのは世界でただ一人。お前だけだ」


これが今の俺に言える、精一杯の告白だ。

冗談でアイラブユーとかは言えるけど。本気で「愛してる」、なんて言えるわけがない。
だって俺、心は日本男児ですし。
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