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Ⅲ
少年伯爵ローランの思い出
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ロロは初め、俺のことは男装している少女だと思ったそうだ。
「それまで、白い肌をこれほど美しいと感じたことはなかった」
はにかんだように笑う。
まあ、色白の肌なんて、この世界では有難がられないもんな。むしろ残念がられる。
元の世界じゃ「色の白いは七難隠す」って言われたもんだが。
ガングロヤマンバギャルとか、当時は嫌われてたっけ。でもあれメイクなんだっけ? 今は一周回ってオタクに優しいギャルなんていう非実在ギャルが局地的に流行ってたけど。
ねえよ。夢見んな。
こっちは日光に当たっても何故か日焼けとかしないし、色の白い者が色を濃くするのは重罪になるんだよな。逆はアリだけど。
*****
「その人の周囲だけ、輝いて見えた。それが”陛下のお気に入り”だと噂のベリエ伯爵だと聞いて。こんな綺麗なのに男だったのか、とびっくりした」
でも、ロロは俺が男だと知っても、それほどショックではなかったようだ。
この世界では、男同士の結婚もアリだもんな。
ただし、伯爵同士の結婚は、ほぼありえない。
子孫に爵位を継続させるため、嫡子である以上、子供を作る必要があるからだ。
俺は兄弟がいないし。ロロは長男だ。
本来なら、立場的に結婚が許されない間柄になる。
ロロは、俺と出会うその時まで、自分が国王になろう、などという野望は抱いてなかったそうだ。
伯爵のまま、安泰に一生を過ごすつもりだったという。
国王なんて職業、面倒くさそうだったので。
なまじ代々貴族の家系から生まれてきてしまったため、間近で骨肉相食む貴族同士のドロドロした醜い争いを見てきたせいもあった。
でも、誰かの下に仕えるのはまっぴら御免だと思っていた。
その時、自分の心を奪った、ただ一人。
その人になら、仕えたい。傍にいたいと思った。
そう、誰であろう。俺だ。
当時8歳。
初めての恋のときめきに胸を焦がしたロロ少年が思いついた作戦は。
”アンリのことを王様にして、自分がアンリの王佐、つまり王の補佐役の座に収まること”だった。
それなら、ずっと一緒に居られると思ったからだ。
だけどいきなり今知り合ったばかりの伯爵から「将来は是非この国の国王になって、自分を王佐にして欲しい」なんて言われたら、何か悪だくみでもしてるのかと疑われるだろう、と考えたロロは。
まずは”国王の座を狙うライバル”として接することに決めたのだった。
なんと小賢しい8歳児だろう。おそろしい子……!
*****
まさか、ロロがそんなことを考えてたなんて、全然気づかなかった。
ライバル宣言してる割には友好的で、人懐っこい子供だなあ、とは思ってたけど。
俺が国王になったら、王佐の座を狙う者は星の数ほどいるだろうと想定して。
王佐の座に収まるために、王佐としての勉強だけでなく、国王の仕事を理解するための勉強もしつつ、心身を鍛え。
周囲の貴族を着々と支配下に置いて。決して自分のことは軽視できないよう、心を多く占める存在になろう、と努力したという。
顔を覚えてもらうために、三日と置かず通って。
俺が国王になるために、領主としての仕事だけでなく、寸暇を惜しんで帝王学、マナーやダンスなどの教養を学んだり、折れそうなくらい細い手足なのに、頑張って剣を振ってたり。
日々努力してる姿を見て、更に惚れたとか。
アラヤダ照れる。
って、細い手足で悪かったな!! 体質的にマッチョになれないだけでち!
で、12歳の時に俺の身体のことを知ったロロは、内心小躍りしたいくらい大喜びしていたらしい。
”完全体”なら、貴族同士で結婚することも可能。むしろ推奨されるから。
話をしてる間、ロロはずっと真剣な顔をしていたと思っていたが。
嬉しくて、つい、にやつきそうになってしまいそうな顔を必死で引き締めていたからだそうだ。
「それまで、白い肌をこれほど美しいと感じたことはなかった」
はにかんだように笑う。
まあ、色白の肌なんて、この世界では有難がられないもんな。むしろ残念がられる。
元の世界じゃ「色の白いは七難隠す」って言われたもんだが。
ガングロヤマンバギャルとか、当時は嫌われてたっけ。でもあれメイクなんだっけ? 今は一周回ってオタクに優しいギャルなんていう非実在ギャルが局地的に流行ってたけど。
ねえよ。夢見んな。
こっちは日光に当たっても何故か日焼けとかしないし、色の白い者が色を濃くするのは重罪になるんだよな。逆はアリだけど。
*****
「その人の周囲だけ、輝いて見えた。それが”陛下のお気に入り”だと噂のベリエ伯爵だと聞いて。こんな綺麗なのに男だったのか、とびっくりした」
でも、ロロは俺が男だと知っても、それほどショックではなかったようだ。
この世界では、男同士の結婚もアリだもんな。
ただし、伯爵同士の結婚は、ほぼありえない。
子孫に爵位を継続させるため、嫡子である以上、子供を作る必要があるからだ。
俺は兄弟がいないし。ロロは長男だ。
本来なら、立場的に結婚が許されない間柄になる。
ロロは、俺と出会うその時まで、自分が国王になろう、などという野望は抱いてなかったそうだ。
伯爵のまま、安泰に一生を過ごすつもりだったという。
国王なんて職業、面倒くさそうだったので。
なまじ代々貴族の家系から生まれてきてしまったため、間近で骨肉相食む貴族同士のドロドロした醜い争いを見てきたせいもあった。
でも、誰かの下に仕えるのはまっぴら御免だと思っていた。
その時、自分の心を奪った、ただ一人。
その人になら、仕えたい。傍にいたいと思った。
そう、誰であろう。俺だ。
当時8歳。
初めての恋のときめきに胸を焦がしたロロ少年が思いついた作戦は。
”アンリのことを王様にして、自分がアンリの王佐、つまり王の補佐役の座に収まること”だった。
それなら、ずっと一緒に居られると思ったからだ。
だけどいきなり今知り合ったばかりの伯爵から「将来は是非この国の国王になって、自分を王佐にして欲しい」なんて言われたら、何か悪だくみでもしてるのかと疑われるだろう、と考えたロロは。
まずは”国王の座を狙うライバル”として接することに決めたのだった。
なんと小賢しい8歳児だろう。おそろしい子……!
*****
まさか、ロロがそんなことを考えてたなんて、全然気づかなかった。
ライバル宣言してる割には友好的で、人懐っこい子供だなあ、とは思ってたけど。
俺が国王になったら、王佐の座を狙う者は星の数ほどいるだろうと想定して。
王佐の座に収まるために、王佐としての勉強だけでなく、国王の仕事を理解するための勉強もしつつ、心身を鍛え。
周囲の貴族を着々と支配下に置いて。決して自分のことは軽視できないよう、心を多く占める存在になろう、と努力したという。
顔を覚えてもらうために、三日と置かず通って。
俺が国王になるために、領主としての仕事だけでなく、寸暇を惜しんで帝王学、マナーやダンスなどの教養を学んだり、折れそうなくらい細い手足なのに、頑張って剣を振ってたり。
日々努力してる姿を見て、更に惚れたとか。
アラヤダ照れる。
って、細い手足で悪かったな!! 体質的にマッチョになれないだけでち!
で、12歳の時に俺の身体のことを知ったロロは、内心小躍りしたいくらい大喜びしていたらしい。
”完全体”なら、貴族同士で結婚することも可能。むしろ推奨されるから。
話をしてる間、ロロはずっと真剣な顔をしていたと思っていたが。
嬉しくて、つい、にやつきそうになってしまいそうな顔を必死で引き締めていたからだそうだ。
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