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Ⅱ
美しき伯爵の身体の秘密
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「あんた、もしかして……、」
ロロは真顔だ。
……何だ?
殺気を感じた。
「トロー伯。今すぐに、その方から離れなさい」
いつの間にか、少し離れた場所にいたアンドレが、すぐ近くに来ていた。
厳しい声。
今まで見たことがないような表情をして、ロロの首に剣を当てていた。頸動脈。完全に殺る気だ。
世話係が、身分の高い伯爵に対して、剣を向けるとは。
それよりも。
いつも優しいアンドレが、こんな反応をしたことに驚いた。
*****
「おいおい番犬さん、殺気を抑えろよ。ご主人様がびっくりしてるぜ」
などと言いながら。
大袈裟に両手を上に挙げてみせ。にやにやしたロロが俺から離れた。
こんな、辺り一帯の空気が凍り付くような殺気を向けられて、平気な顔をしているとは。
こいつ、心臓に毛が生えてるのか?
「どうしたアンドレ? こやつはただ、ふざけていただけだろうに」
剣を向けるのは大袈裟だろう、と窘めると。
アンドレは、気まずそうな顔をしている。
ロロは、訝し気な顔をして俺を見た。
「なんか本人、自覚ないみたいだけど。……まさか、教えてないのか?」
「? 何の話だ?」
二人で、アンドレを見る。
「……アンリ様が16歳になられたら、お教えするつもりだったのです」
アンドレは不承不承、という感じで言った。
「ここでは何ですから。他に耳目の無いところへ移動しましょう」
パチリと指を鳴らすと。
次の瞬間。
図書室に移動していた。
移動魔法だ。
魔素の薄いものには使えるはずもない、高等魔法を。詠唱破棄で。
*****
アンドレの話によると。
俺は、この世界で”完全体”と呼ばれる種類の身体を持って生まれて来たという。
男性と女性、両方の性を持つ。男性器と女性器を持つ人間。
雌雄同体。または半陰陽。その気になれば、単体でも生殖可能だという。
俗にいう、フタナリってやつだ。
知らなかった。
自分がそんな特殊な身体だったなんて。今まで全く気付いてなかった。
アンドレが出した本によれば、ふぐりの下辺りに女性器があるみたいだけど。
そんなとこ、触らないし。
そうか。
赤ん坊だった俺のオムツを替えていたアンドレは、当然ながら、知っていたわけだ。
”完全体”からは、魔素の多い子が生まれやすいらしく。”完全体”の子が産まれたら、国の宝レベルで大切にされるという。
国王が自ら名付け親になって、ちょくちょく俺の面倒を見てくれているのは、そのせいでもあったのか。
小さいから、自分からいらないって言ったけど。
13歳頃からあてがわれるはずの性指南役を勧められなかったはずだ。
トップシークレットだったんだし。
いくら鍛えようが、ムキムキマッチョボディにならないのも、”完全体”というのはどうしても中性的な容姿で固定されてしまうせいだとか。
体の変化も、16歳前後に少し胸が膨らんでくるくらいだろう、と予想されている。
外見だけなら、胸だけ小太りな少年みたいになるのか? 中学生の時、ぽっちゃりした男の胸、よってたかって揉みまくられてたっけ。あんな感じか?
じゃあ俺のちんこがミニマムなのも、”完全体”ってやつだからなの!?
成長期が過ぎてもこのままで。一生、大きくならないの!?
どこが完全体なのか教えて欲しいんだけど!
親指姫サイズなミニちんこのまま、ジジイになっちゃうの!?
ん? ジジイでもないのか?
っていうか、おかしくね? 普通、フタナリって、オッパイもどーんとでかくてちんこもジャンボサイズに決まってるだろ!? 巨乳巨根がスタンダードじゃね? 常識で考えて。
俺の読んでいた薄い本の記述が間違っていたとでもいうのか?
巨乳巨根なフタナリっ娘同人誌の読みすぎデスカ!?
ひどい!
そんなのってないよ!!
などと脳内ソウルジェムを曇らせていたら。
ロロは真顔だ。
……何だ?
殺気を感じた。
「トロー伯。今すぐに、その方から離れなさい」
いつの間にか、少し離れた場所にいたアンドレが、すぐ近くに来ていた。
厳しい声。
今まで見たことがないような表情をして、ロロの首に剣を当てていた。頸動脈。完全に殺る気だ。
世話係が、身分の高い伯爵に対して、剣を向けるとは。
それよりも。
いつも優しいアンドレが、こんな反応をしたことに驚いた。
*****
「おいおい番犬さん、殺気を抑えろよ。ご主人様がびっくりしてるぜ」
などと言いながら。
大袈裟に両手を上に挙げてみせ。にやにやしたロロが俺から離れた。
こんな、辺り一帯の空気が凍り付くような殺気を向けられて、平気な顔をしているとは。
こいつ、心臓に毛が生えてるのか?
「どうしたアンドレ? こやつはただ、ふざけていただけだろうに」
剣を向けるのは大袈裟だろう、と窘めると。
アンドレは、気まずそうな顔をしている。
ロロは、訝し気な顔をして俺を見た。
「なんか本人、自覚ないみたいだけど。……まさか、教えてないのか?」
「? 何の話だ?」
二人で、アンドレを見る。
「……アンリ様が16歳になられたら、お教えするつもりだったのです」
アンドレは不承不承、という感じで言った。
「ここでは何ですから。他に耳目の無いところへ移動しましょう」
パチリと指を鳴らすと。
次の瞬間。
図書室に移動していた。
移動魔法だ。
魔素の薄いものには使えるはずもない、高等魔法を。詠唱破棄で。
*****
アンドレの話によると。
俺は、この世界で”完全体”と呼ばれる種類の身体を持って生まれて来たという。
男性と女性、両方の性を持つ。男性器と女性器を持つ人間。
雌雄同体。または半陰陽。その気になれば、単体でも生殖可能だという。
俗にいう、フタナリってやつだ。
知らなかった。
自分がそんな特殊な身体だったなんて。今まで全く気付いてなかった。
アンドレが出した本によれば、ふぐりの下辺りに女性器があるみたいだけど。
そんなとこ、触らないし。
そうか。
赤ん坊だった俺のオムツを替えていたアンドレは、当然ながら、知っていたわけだ。
”完全体”からは、魔素の多い子が生まれやすいらしく。”完全体”の子が産まれたら、国の宝レベルで大切にされるという。
国王が自ら名付け親になって、ちょくちょく俺の面倒を見てくれているのは、そのせいでもあったのか。
小さいから、自分からいらないって言ったけど。
13歳頃からあてがわれるはずの性指南役を勧められなかったはずだ。
トップシークレットだったんだし。
いくら鍛えようが、ムキムキマッチョボディにならないのも、”完全体”というのはどうしても中性的な容姿で固定されてしまうせいだとか。
体の変化も、16歳前後に少し胸が膨らんでくるくらいだろう、と予想されている。
外見だけなら、胸だけ小太りな少年みたいになるのか? 中学生の時、ぽっちゃりした男の胸、よってたかって揉みまくられてたっけ。あんな感じか?
じゃあ俺のちんこがミニマムなのも、”完全体”ってやつだからなの!?
成長期が過ぎてもこのままで。一生、大きくならないの!?
どこが完全体なのか教えて欲しいんだけど!
親指姫サイズなミニちんこのまま、ジジイになっちゃうの!?
ん? ジジイでもないのか?
っていうか、おかしくね? 普通、フタナリって、オッパイもどーんとでかくてちんこもジャンボサイズに決まってるだろ!? 巨乳巨根がスタンダードじゃね? 常識で考えて。
俺の読んでいた薄い本の記述が間違っていたとでもいうのか?
巨乳巨根なフタナリっ娘同人誌の読みすぎデスカ!?
ひどい!
そんなのってないよ!!
などと脳内ソウルジェムを曇らせていたら。
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