底辺オタクがチート性能ガチ盛りなフタナリ美形に転生~魔法王国の王様に俺はなる!

篠崎笙

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忠実なる世話係アンドレ

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「……っ、」

うう、あったまいてえ!
当たり前か。だってめっちゃ血ィ出てるし!

さっき、三階のベランダでぼけっと庭を眺めてたら。
手すりが壊れて、石畳の歩道に頭から落っこちたのを思い出した。

幼児は重心が頭にあるから、コケるときも頭から行くんだよな。これ経験則。


頭蓋骨割れてるだろこれ。
限界を超える痛みのせいで、逆に意識を失えない状態のようだ。脳内麻薬プリーズ!


*****


一人になりたい、とか言って人払いしちゃったせいか、誰も来ないので。
自力で、負った傷を治すことにする。

「L'anesthésie……cicatriser」

……よし。
痛みは消え、傷も癒えたようだ。


頭だけじゃなく、全身も打ってたんだな。
何とか手も、動くようになった。

あー、治癒魔法がある世界で良かった!

即死でさえなければ、何とかなる。
まあ死んでもすぐになら蘇生魔法もあるにはあるが。失敗すると灰になるからな……。ワンチャンあるだけマシか?

危ない危ない。あやうくまた死ぬところだった。

今度の人生は享年5歳とか、童貞以前に悲しすぎるっつーの。
せっかく色々恵まれた美少年に生まれ変わったんだから、新しい人生を謳歌しちゃる。


「よっと、……あれ?」
起き上がろうとして、くらっとめまいがした。

さすがに血を流しすぎたようだ。
傷は治せても、失った血液は戻らないからな。水魔法で血を回収してもいいけど、なんかばっちいから戻すのヤだ。


仕方ない。
移動魔法で食堂にでも行くか、と考えていたら。


*****


「アンリ様!?」
パタパタと、駆ける音がして。

キラキラしい美少年が陽光に輝く金髪を靡かせ、こっちに向かって走って来た。
物音に気付いて、様子を見に来たのだろう。


アンドレ・ジャン=バティスト。
俺の世話係で、金髪碧眼の正統派美少年である。今年10歳。小学4年相当にしては背が高いのは、外国人だからかな。

どう考えてもこっちの方がご主人様に見えるっていうか。王子様みたいな容姿だよな……。
こっちじゃ黒が尊いせいで、常識が違うんだけど。

色が薄いと魔素も薄いというが。こいつの場合、魔力はそこそこ持ってるのに。
金髪碧眼色白に生まれたというだけで、問答無用で世話係として俺の下に寄越されたようだ。
この世界、やっぱおかしいわ。


「お部屋にいらしたはずでは? ……まさか、」

俺のいた部屋を見上げ。
ベランダの手すりが壊れているのに気付いたようだ。

「あんなに高い場所から? ああ、血がこんなに……お怪我は?」

アンドレは、地面や俺の服に染み込んでる大量の血を見て。
真っ青になって、取り乱している。


「案ずるな。傷はもう癒した」
涙目で治療魔法を展開しようとしているアンドレを、手で制す。

「ああ、御髪おぐしにも血が……、洗い落としましょう。その前に、何か血肉になりそうなものをご用意しますね」
貧血で歩けないと判断したようで、ひょい、と抱き上げられた。


血が足りなくて、歩くのもだるいから、運んでもらえるのはありがたいが。
中身は中年男なので、さすがに王子様のような美貌の少年にお姫様抱っこされるのは気恥ずかしかったりする。
せめておんぶにして……!?


アンドレは俺のオムツも替えてるし、赤ん坊からの延長で接してるんだろうけど。


*****


俺をお姫様抱っこして歩くアンドレの腕も足取りも揺るぎなく。
抜群の安定感である。

俺がまだ5歳のちびっこで軽くて、アンドレが”公爵の世話係”としての訓練を受けていても。さすがに10歳の腕力では、こう簡単に抱いて運ぶことはできないだろう。

重力魔法を併用しているのだ。
さり気なくやっているが、かなりの高等技術だったりする。

この年で、ここまで魔法を使いこなしてるのに。
見た目だけで差別されるとは、この世はまさに不条理なり。


俺は勝ち組だけど。ヤッター。
って、そんなに嬉しいばかりでもないんだけどな。
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