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Ⅰ
美しき伯爵、目覚める
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現在俺は、5歳の子供だ。
今いる場所は、魔法王国ルミエールのベリエ領にある大きなお城で。
生まれ変わった俺の名前は、アンリ・アントワーヌ・ガブリエル・ド・ジュスタン。アンリ・アントワーヌ・ガブリエルまでが名前で、ジュスタンが家名らしい。
このキラッキラした名前を付けてくれたのは、畏れ多くも国王陛下、オーレリアン・サン=ブランさんである。
かわいい俺ちゃんは、国王の大のお気に入りだったりするので、たびたび王城にご招待されて、とても可愛がられている。
でもって俺はここ、ルミエール王国のベリエ領を治める伯爵、という身分だ。といっても、今はほとんどの仕事を代理人がやってるんだけど。だってまだ5歳だもん。
もうこの時点で異世界だってわかる親切さ。
ルールも何も、全然違うしな。
*****
ここは魔法王国の名の通り、魔法特化の国だ。
見た感じでは文化レベル的に中世くらいの、いわゆる、剣と魔法の世界というのか。
この国では、魔法の能力のみ重視されていて。それこそ魔力の強弱で人生の明暗が分かれてしまう、厳しい世界だ。
そして、身体の色が濃いと、色素じゃなく、こっちでは魔素が多いとされて、神の如く崇められる。
この世界では”黒”が神聖視されているからだ。
アジア人ならだいたい黒髪黒目標準装備だから、日本人の俺としてはあんまり納得がいかないけど。
この世界の人がアフリカとか行ったら大変だ。
黒い髪か黒い目、どちらかを持っていれば、庶民であろうが罪人の子であろうが生まれた時点で王の居るお城に招待され、領地と公爵の爵位を授けられ。衣食住に不自由のない人生が約束されているのである。
だがしかし。
たとえ王族であろうと、魔素が薄いと蔑まれて。
最悪の場合、下働きにまで身分を落とされてしまうそうだ。ガガーン! そんなのってないよ!
そんなシビアな世界で。
俺は肌こそ陶磁器のように白いが、黒い髪と黒い目を持って生まれてきたのである。
髪と目が黒なんて、何世紀に一度生まれるかどうかの希少性だという。その上、お人形さんみたいに整った顔で。
そう、生まれながらのチート持ち。もう人生勝ったも同然。
成功の約束された勝ち組って感じなんだが。
前世の記憶を取り戻すまでの俺ちゃんは、そうでもなかった。
*****
実の親の記憶はなく。
物心ついた時には、周囲は赤の他人ばかり。
自分は、世界一不幸な子供だと思っていた。
親の顔も名も知らない自分は親から捨てられたのだと思って、うじうじ悩んでいた。
もしかしたら、俺だけ先祖返りか突然変異でこうなっただけで、両親は魔素の薄い庶民だったのかもしれない。
風の噂に、今世での俺の両親は国から多額の恩賞を頂いて、他国に移り住んだと聞いた。
魔素の薄い庶民だとしたら。生まれた子供が希少種だったばかりに、いきなり貴族になってこんなお城に住むよう言われたら、思わず逃げたくなる気持ちはわからないでもない。
マナーだのなんだの、色々嫌みを言われて見下されるの確定だもんな。それに、ドロドロした権力争いに巻き込まれるのも御免だろう。
偉い人に子供を託して、一生遊んで暮らせるだけの金を貰って逃げたほうが、自分の身の安全は確保できるし。
現在の俺としては、特に何の感慨もない。
記憶もないし。まあ元気ならいいんじゃね? って感じ。前世でも家族運、あんまり良くなかったし。
前世で色々恵まれなかった分、神様が新しい人生をくれたんだったりしてな。やったー。
しかし。こうして何の不自由もない、見目麗しくも愛され美少年に生まれ変わったというのに。
何で思い出しちゃったかな、前世の記憶なんて!
中身が中年キモオタな美少年なんて、残念過ぎじゃろがい!!
今いる場所は、魔法王国ルミエールのベリエ領にある大きなお城で。
生まれ変わった俺の名前は、アンリ・アントワーヌ・ガブリエル・ド・ジュスタン。アンリ・アントワーヌ・ガブリエルまでが名前で、ジュスタンが家名らしい。
このキラッキラした名前を付けてくれたのは、畏れ多くも国王陛下、オーレリアン・サン=ブランさんである。
かわいい俺ちゃんは、国王の大のお気に入りだったりするので、たびたび王城にご招待されて、とても可愛がられている。
でもって俺はここ、ルミエール王国のベリエ領を治める伯爵、という身分だ。といっても、今はほとんどの仕事を代理人がやってるんだけど。だってまだ5歳だもん。
もうこの時点で異世界だってわかる親切さ。
ルールも何も、全然違うしな。
*****
ここは魔法王国の名の通り、魔法特化の国だ。
見た感じでは文化レベル的に中世くらいの、いわゆる、剣と魔法の世界というのか。
この国では、魔法の能力のみ重視されていて。それこそ魔力の強弱で人生の明暗が分かれてしまう、厳しい世界だ。
そして、身体の色が濃いと、色素じゃなく、こっちでは魔素が多いとされて、神の如く崇められる。
この世界では”黒”が神聖視されているからだ。
アジア人ならだいたい黒髪黒目標準装備だから、日本人の俺としてはあんまり納得がいかないけど。
この世界の人がアフリカとか行ったら大変だ。
黒い髪か黒い目、どちらかを持っていれば、庶民であろうが罪人の子であろうが生まれた時点で王の居るお城に招待され、領地と公爵の爵位を授けられ。衣食住に不自由のない人生が約束されているのである。
だがしかし。
たとえ王族であろうと、魔素が薄いと蔑まれて。
最悪の場合、下働きにまで身分を落とされてしまうそうだ。ガガーン! そんなのってないよ!
そんなシビアな世界で。
俺は肌こそ陶磁器のように白いが、黒い髪と黒い目を持って生まれてきたのである。
髪と目が黒なんて、何世紀に一度生まれるかどうかの希少性だという。その上、お人形さんみたいに整った顔で。
そう、生まれながらのチート持ち。もう人生勝ったも同然。
成功の約束された勝ち組って感じなんだが。
前世の記憶を取り戻すまでの俺ちゃんは、そうでもなかった。
*****
実の親の記憶はなく。
物心ついた時には、周囲は赤の他人ばかり。
自分は、世界一不幸な子供だと思っていた。
親の顔も名も知らない自分は親から捨てられたのだと思って、うじうじ悩んでいた。
もしかしたら、俺だけ先祖返りか突然変異でこうなっただけで、両親は魔素の薄い庶民だったのかもしれない。
風の噂に、今世での俺の両親は国から多額の恩賞を頂いて、他国に移り住んだと聞いた。
魔素の薄い庶民だとしたら。生まれた子供が希少種だったばかりに、いきなり貴族になってこんなお城に住むよう言われたら、思わず逃げたくなる気持ちはわからないでもない。
マナーだのなんだの、色々嫌みを言われて見下されるの確定だもんな。それに、ドロドロした権力争いに巻き込まれるのも御免だろう。
偉い人に子供を託して、一生遊んで暮らせるだけの金を貰って逃げたほうが、自分の身の安全は確保できるし。
現在の俺としては、特に何の感慨もない。
記憶もないし。まあ元気ならいいんじゃね? って感じ。前世でも家族運、あんまり良くなかったし。
前世で色々恵まれなかった分、神様が新しい人生をくれたんだったりしてな。やったー。
しかし。こうして何の不自由もない、見目麗しくも愛され美少年に生まれ変わったというのに。
何で思い出しちゃったかな、前世の記憶なんて!
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