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ハネムーンへ
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崇は、大学をスキップしないで卒業することにした。
大学では、時間の許す限り目一杯勉強して。出来る限りの知識を吸収して。
コネクションも広げていった。
そうした苦労を乗り越えて、今の地位を得たんだ。
崇は18歳で、シチリアに帰ってきて。
正式にヴァレンティーノ一家の首領の座と企業を継いだ。
その時、ロレンツォと”血の兄弟”の契りを交わして、右腕にした。
そのことに反対の意見もあったけど。
駄に囀る者より一番信用が出来る男だと言って、通したんだって。
ちょうどその頃、服飾学校を出てきたミケーレとも”血の兄弟”の契りを交わして。
適材適所、と。
抗争の参加免除の代わりに、一家の財政を賄うよう命じた。
かなり厳しい条件だけど。
そう言いながら、全体的に企業の売り上げを伸ばして。一家の財政を支えたりしてたんだ。すごいなあ。
「素敵なボスを得て、ヴァレンティーノは幸せだね?」
『最高の伴侶を得るために頑張っただけだが』
そんなこと言っちゃって。
「じゃあ、今まで頑張ったご褒美に、」
崇の唇にキスをして。
「Cos'altro vuoi che faccia?」
崇が望むなら。
何でも聞いてあげたい。
*****
チャオ、って頬にキスされて、目が覚める。
『Stamattina mi sono svegliato con il tuo profumo sullo stesso letto .Sono statomolto contento……』
……聞かなかったことにしたい。
耳元で、囁くように。
”今朝は同じベッドの上で、君の香りで目が覚めてとても幸せだ”とか何とか朝っぱらからかっ飛んだセリフが聞こえたけど。
きっと気のせい。
昨夜は色々。……崇のを、口でするとか。
恥ずかしいことやらされちゃったし。されちゃった。
まだ眠いし。
このまま寝ちゃおう……。
『ところで、Luna di Mieleのことを話したいのだけれど。起きてるよね?』
頬をつつかれる。
ルナ・ディ・ミエーレ。
蜂蜜の月、つまりハネムーンのことだ。
新婚旅行はviaggio di nozzeだけど。
どこの国も、幸せな期間を甘~い蜂蜜にたとえるのかな?
仕方ない。
諦めて起きよう。
「……Ciao、Mio marito」
僕の顔を覗き込んでいた崇の頬にキスを返す。
結婚してよかった、ってしみじみ喜びを噛み締めてるのはいいけど。
自分でそう呼んで欲しい、って言ったんだからね?
私の旦那様、って。
早く主題を言ってくれないかな……。
*****
『いわゆる”ハネムーン”を蜂蜜の月というのは、古来より蜂蜜酒が精力剤として使われていたので、それを飲み精力をつけて励んだことからであって、甘いのは関係ない』
訂正された……。
いくら考えてる事がわかりやすいからって、心を読むのはやめて欲しい。
『そうそう、そのLuna di Mieleだが。知り合いから大型客船を買ったので、それで世界一周とかどうだろう?』
「何そのどっかの砂漠の王子様みたいな新婚旅行」
ファーストクラスで出逢った砂漠の王子様は、パートナーが船酔いするからって断念してたけど。
『それだ。帰国する際、君も会ったその彼、私の知り合いなのでね。話を聞いて、使わないのなら結婚祝いも兼ねて言い値で買い取るがどうか、と申し出たんだが。吹っかけてもいいものを、未使用なのに20%引きで譲ってくれたんだ』
ちょっとお得な買い物しちゃった、みたいな軽い言い方してるけど。
それで、買っちゃったの……?
砂漠の王子様が結婚記念に買うような、豪華客船を……?
豪華客船って、そんな気楽に売り買いできるものなの!?
いくらだか、想像もつかないんだけど!
『ヴァレンティーノは、旅行会社も持ってるの?』
『いや、無いが』
ジェット機やヘリコプターはいくつか所有してるけど、全部社用や自家用だって。
それもすごいなあ。でも。
「他に使い道が無い物、買っちゃったの!?」
思わず日本語で叫んでしまった。
石油王じゃあるまいし、って言いそうになったけど。
そういえば、石油王よりお金持ちだった。
*****
『そうだな、この際旅行会社を立ち上げてみるのもいいか。宇佐美家恒例の家族旅行も私が請け負うことにしよう』
思いつきで会社を作ろうとしている……!?
「色々手を広げすぎじゃない? 大丈夫? 崇はこの世に一人しかいないんだよ?」
崇は苦笑して。
『私は別にワンマン経営をして業績を伸ばしたわけではないよ。極力無駄を省いて、能力のある者を責任ある立場に置き、業績を伸ばした者に評価しただけだ』
容赦が無いだの冷酷だの文句を言っているのは、切られた無能だけだろうって言うけど。
厳しい……。
ヴァレンティーノが狭き門なわけだよ。残っていられるのは、真に優秀な人だけだもん。
でも、崇には厳しくても、努力してこの人に着いて行こうって思わせるカリスマがあるよね。
厳しいだけじゃ、こうも人心掌握できないもん。
『どうした?』
僕の視線に、微笑んでくれる。
『ん、素敵な旦那様を得て、幸せだなって思った』
あ、照れてる。
照れた顔も、可愛くてかっこいいな。
近付いてくる唇に、目を閉じて。
そこで、コツコツコツ、と。
ノックが響いた。
『失礼、マンマ・ルチアが早く朝食を摂るように、とご立腹です』
ロレンツォが、申し訳なさそうに伝えて。
*****
『いや、新婚だぞ。……新婚だぞ!?』
二回言った。
崇も、感情的に憤ることがあるんだね……。
『奏太様は昨日、あまり召し上がれなかったご様子なので』
ああ。コルセットがきつくて、あまり食べられなかったんだ。
よく見てるなあ。
『わかった。すぐ行く』
判断が早かった。
さっと着替えて。
僕の支度も済ませてしまう。
幼児じゃないんだから、もう自分で着れるけど。
離れ離れになって、したくて我慢してた分を取り戻したい気持ちならしょうがないかな、って思って。受け入れることにする。
相変わらず、僕のことを一番に考えて、何よりも優先させようとしてくれる、そんな崇が大好きだよ。
これからも、ずっと一緒にいようね。
でも、あんまり無駄遣いはしないでね?
何も無くても。
崇が側にいてくれる。
それだけで、僕は幸せなんだから。
おわり
大学では、時間の許す限り目一杯勉強して。出来る限りの知識を吸収して。
コネクションも広げていった。
そうした苦労を乗り越えて、今の地位を得たんだ。
崇は18歳で、シチリアに帰ってきて。
正式にヴァレンティーノ一家の首領の座と企業を継いだ。
その時、ロレンツォと”血の兄弟”の契りを交わして、右腕にした。
そのことに反対の意見もあったけど。
駄に囀る者より一番信用が出来る男だと言って、通したんだって。
ちょうどその頃、服飾学校を出てきたミケーレとも”血の兄弟”の契りを交わして。
適材適所、と。
抗争の参加免除の代わりに、一家の財政を賄うよう命じた。
かなり厳しい条件だけど。
そう言いながら、全体的に企業の売り上げを伸ばして。一家の財政を支えたりしてたんだ。すごいなあ。
「素敵なボスを得て、ヴァレンティーノは幸せだね?」
『最高の伴侶を得るために頑張っただけだが』
そんなこと言っちゃって。
「じゃあ、今まで頑張ったご褒美に、」
崇の唇にキスをして。
「Cos'altro vuoi che faccia?」
崇が望むなら。
何でも聞いてあげたい。
*****
チャオ、って頬にキスされて、目が覚める。
『Stamattina mi sono svegliato con il tuo profumo sullo stesso letto .Sono statomolto contento……』
……聞かなかったことにしたい。
耳元で、囁くように。
”今朝は同じベッドの上で、君の香りで目が覚めてとても幸せだ”とか何とか朝っぱらからかっ飛んだセリフが聞こえたけど。
きっと気のせい。
昨夜は色々。……崇のを、口でするとか。
恥ずかしいことやらされちゃったし。されちゃった。
まだ眠いし。
このまま寝ちゃおう……。
『ところで、Luna di Mieleのことを話したいのだけれど。起きてるよね?』
頬をつつかれる。
ルナ・ディ・ミエーレ。
蜂蜜の月、つまりハネムーンのことだ。
新婚旅行はviaggio di nozzeだけど。
どこの国も、幸せな期間を甘~い蜂蜜にたとえるのかな?
仕方ない。
諦めて起きよう。
「……Ciao、Mio marito」
僕の顔を覗き込んでいた崇の頬にキスを返す。
結婚してよかった、ってしみじみ喜びを噛み締めてるのはいいけど。
自分でそう呼んで欲しい、って言ったんだからね?
私の旦那様、って。
早く主題を言ってくれないかな……。
*****
『いわゆる”ハネムーン”を蜂蜜の月というのは、古来より蜂蜜酒が精力剤として使われていたので、それを飲み精力をつけて励んだことからであって、甘いのは関係ない』
訂正された……。
いくら考えてる事がわかりやすいからって、心を読むのはやめて欲しい。
『そうそう、そのLuna di Mieleだが。知り合いから大型客船を買ったので、それで世界一周とかどうだろう?』
「何そのどっかの砂漠の王子様みたいな新婚旅行」
ファーストクラスで出逢った砂漠の王子様は、パートナーが船酔いするからって断念してたけど。
『それだ。帰国する際、君も会ったその彼、私の知り合いなのでね。話を聞いて、使わないのなら結婚祝いも兼ねて言い値で買い取るがどうか、と申し出たんだが。吹っかけてもいいものを、未使用なのに20%引きで譲ってくれたんだ』
ちょっとお得な買い物しちゃった、みたいな軽い言い方してるけど。
それで、買っちゃったの……?
砂漠の王子様が結婚記念に買うような、豪華客船を……?
豪華客船って、そんな気楽に売り買いできるものなの!?
いくらだか、想像もつかないんだけど!
『ヴァレンティーノは、旅行会社も持ってるの?』
『いや、無いが』
ジェット機やヘリコプターはいくつか所有してるけど、全部社用や自家用だって。
それもすごいなあ。でも。
「他に使い道が無い物、買っちゃったの!?」
思わず日本語で叫んでしまった。
石油王じゃあるまいし、って言いそうになったけど。
そういえば、石油王よりお金持ちだった。
*****
『そうだな、この際旅行会社を立ち上げてみるのもいいか。宇佐美家恒例の家族旅行も私が請け負うことにしよう』
思いつきで会社を作ろうとしている……!?
「色々手を広げすぎじゃない? 大丈夫? 崇はこの世に一人しかいないんだよ?」
崇は苦笑して。
『私は別にワンマン経営をして業績を伸ばしたわけではないよ。極力無駄を省いて、能力のある者を責任ある立場に置き、業績を伸ばした者に評価しただけだ』
容赦が無いだの冷酷だの文句を言っているのは、切られた無能だけだろうって言うけど。
厳しい……。
ヴァレンティーノが狭き門なわけだよ。残っていられるのは、真に優秀な人だけだもん。
でも、崇には厳しくても、努力してこの人に着いて行こうって思わせるカリスマがあるよね。
厳しいだけじゃ、こうも人心掌握できないもん。
『どうした?』
僕の視線に、微笑んでくれる。
『ん、素敵な旦那様を得て、幸せだなって思った』
あ、照れてる。
照れた顔も、可愛くてかっこいいな。
近付いてくる唇に、目を閉じて。
そこで、コツコツコツ、と。
ノックが響いた。
『失礼、マンマ・ルチアが早く朝食を摂るように、とご立腹です』
ロレンツォが、申し訳なさそうに伝えて。
*****
『いや、新婚だぞ。……新婚だぞ!?』
二回言った。
崇も、感情的に憤ることがあるんだね……。
『奏太様は昨日、あまり召し上がれなかったご様子なので』
ああ。コルセットがきつくて、あまり食べられなかったんだ。
よく見てるなあ。
『わかった。すぐ行く』
判断が早かった。
さっと着替えて。
僕の支度も済ませてしまう。
幼児じゃないんだから、もう自分で着れるけど。
離れ離れになって、したくて我慢してた分を取り戻したい気持ちならしょうがないかな、って思って。受け入れることにする。
相変わらず、僕のことを一番に考えて、何よりも優先させようとしてくれる、そんな崇が大好きだよ。
これからも、ずっと一緒にいようね。
でも、あんまり無駄遣いはしないでね?
何も無くても。
崇が側にいてくれる。
それだけで、僕は幸せなんだから。
おわり
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