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お色直し
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『このおっぱいは、いったいどういった技術なのかしら……?』
僕の胸を間近で見て悩ましい顔をしている愛理さんの問いに、ジーナが仕組みを耳打ちしてる。
仲良いなあ。こっちも姉妹みたい。
でも、どっちが姉なんだろう。
そういえば、ジーナの年齢知らないや。
愛理さんは、崇と同い年だけど。女性に年齢を訊くのはちょっと 憚られるし……。
『なるほど、美人三姉妹か……。誰が長女になるんだ?』
崇は真顔で納得したように頷いて。
遠慮なく、愛理さんとジーナに年齢を訊いた。
女性の心理を一切 慮らないのはさすがだ。……っってちょっと待って。
三姉妹って何!?
*****
『私、私。26歳』
ジーナが正直に手を挙げる。
26歳かあ。
もっと若く見えるのに。やっぱり外国の人の年齢はわかんないや。
『えーと。私が今日で18歳になるから、8つ上?』
『え、あんた昨日まで17歳だったの!?』
驚いてる。
『あれ、言ってなかったっけ?』
ジーナは拳を固めて。
『あのStronzo。観光客、しかも未成年を攫ったわけか。……ちょっと兄貴の鳩尾蹴ってくる』
あ、トーニオもまだいるんだ。
どこだろ?
っていうか剥がされた爪もまだ生え変わってないみたいだし、敵対組織から折られた方の肋骨は完治はしてないっていうし。
蹴るのはやめてあげて。
『それで崇と再会できたみたいなものだし、もう気にしてないよ。それに、制裁はもう充分受けたと思うよ?』
あんた甘すぎだよ、ってジーナに頭を撫でられた。
愛理さんからも。
晃司義兄さんとミケーレがいいな、ってあからさまに羨ましそうな顔をしてこっちを見てる。
優しいお姉さんたちにも囲まれて、幸せ者だよね。
えへへ。
近くで話を聞いていたカメラ係が、この女性達はどういう人間関係なのかと困惑してるけど。
まあいいか。
写真は崇の検閲を通したものじゃないと掲載を許可しないというので、愛理さんとジーナも普通に撮られてて。
後で記念にデータ頂戴、と絡んでた。
*****
ミケーレにお色直しだよ、って呼ばれて。
え、今更? と思いながら着いて行ったら。
更衣室に用意されていたのは、可愛い系だけど、男物の服だった。
ってことは。
奏太・ヴァレンティーノとして紹介するってこと?
「……いいの?」
「サリーの希望だよ。むしろ披露宴は今からが本番だしね」
ミケーレがウインクをして。
ドレス一式はまだクリーニングしないで置いといて、と頼むと。
意味深な笑みを浮かべられた。
そうだよ。
もう一回着て、新婚といえばお約束のあれをやるんだよ。
お姫様抱っこで寝室へ! ってやつ。
「じゃあ装飾は外して、シンプルなドレスにしておくか。すぐ済むけど、先に会場行ってて」
あ、取り外し式になってるんだ。
そうだね、宝石ごと洗えないもんね……。
「ありがとう。余計な手間をかけさせちゃってごめんね」
「お祝いついでだし、いいってことよ」
今、司会は晃司義兄さんにバトンタッチしてるんだって。
仲良く話してると思ったら、そういう打ち合わせもしてたのか。
なるほど。
僕についてくれてる東郷さんが、会場のドアを開けてくれて。
薄暗い会場に入った途端。
スポットライトが当たった。
『花嫁のお色直しが終わったようです。女装も可愛いかったけど、いつもの奏太が一番だよ! 可愛い俺の義理の弟!』
晃司義兄さんが投げキッスしてきた。
ああ、イタリアの空気に毒されてきている……。
まだ残っていた招待客が、女装発言にざわめいてる。
晃司義兄さんは、僕の素性を説明している。
崇の幼馴染みだとか。
イタリア語、上手だ。でも、ミケーレにそっくりで笑ってしまう。
あ、崇も着替えてたんだ。
お揃いっぽいデザインのスーツだ。ミケーレにはいっぱい感謝しないとね。
手を拡げて待ってる崇の腕に飛び込んで。
お帰り、って。
頬やこめかみに、キスされた。
*****
『それでは皆様、左手上方にご注目下さい。新しい門出を迎える二人の、思い出のアルバムです』
ホールが再び薄暗くなって。
会場の白い壁をスクリーンに、二人の赤ん坊からの姿がスライドで映されていった。
崇の写真は、飛び飛びで。
生まれた時と、3歳の祝い着を着た無表情の崇が映った。話には聞いていたけど、ここまで表情が違うんだ。
4歳からは、赤ん坊の僕を抱っこして、嬉しそうに笑ってる小さな崇の姿に変わる。
崇から聞いた話、そのまんまだ。
この写真は、百合おばさんからの提供かな?
『誰にも渡さないぞ、って顔して。この頃から生意気にも所有権バッチリ主張してますね』
アハハ、って笑ってるのはジーナたちだ。
幸せいっぱい、って顔をしてる崇と僕の姿。
そして。
崇が8歳になって。
『二人は悲しい別れをすることになりました。サルヴァトーレ氏は、実はダーリオ・ヴァレンティーノ氏の実子だと判明し、ダーリオ氏亡き後、ヴァレンティーノの跡継ぎとなるために連れて行かれてしまったのです。幼い二人は、大人になって再会し、この約束を覚えていたら結婚しよう、と約束をしたそうです』
少々事情は違うけど。
そういうことになってるのかな? ヴァレンティーノ企業のカメラマンもまだ残ってるし。
イタリアに来てから撮ったらしい、崇の写真が映った。
……あからさまに死んだ目をしている……。
幼い子が、こんな表情をするなんて。
『こちら、最愛の幼馴染みから引き裂かれた当時のサルヴァトーレ氏です。やさぐれてます。まるでナイフ、いやハリネズミのようだった、とは彼の従兄弟であるミケーレ氏の言葉です』
晃司義兄さんは、カンペを見ながら言ってる。
確かにそうだった、と笑ったのは、ヴァレンティーノ一家の人たちだった。
崇を連れて行った当人、マリオお義父さんも苦笑してる。
僕の胸を間近で見て悩ましい顔をしている愛理さんの問いに、ジーナが仕組みを耳打ちしてる。
仲良いなあ。こっちも姉妹みたい。
でも、どっちが姉なんだろう。
そういえば、ジーナの年齢知らないや。
愛理さんは、崇と同い年だけど。女性に年齢を訊くのはちょっと 憚られるし……。
『なるほど、美人三姉妹か……。誰が長女になるんだ?』
崇は真顔で納得したように頷いて。
遠慮なく、愛理さんとジーナに年齢を訊いた。
女性の心理を一切 慮らないのはさすがだ。……っってちょっと待って。
三姉妹って何!?
*****
『私、私。26歳』
ジーナが正直に手を挙げる。
26歳かあ。
もっと若く見えるのに。やっぱり外国の人の年齢はわかんないや。
『えーと。私が今日で18歳になるから、8つ上?』
『え、あんた昨日まで17歳だったの!?』
驚いてる。
『あれ、言ってなかったっけ?』
ジーナは拳を固めて。
『あのStronzo。観光客、しかも未成年を攫ったわけか。……ちょっと兄貴の鳩尾蹴ってくる』
あ、トーニオもまだいるんだ。
どこだろ?
っていうか剥がされた爪もまだ生え変わってないみたいだし、敵対組織から折られた方の肋骨は完治はしてないっていうし。
蹴るのはやめてあげて。
『それで崇と再会できたみたいなものだし、もう気にしてないよ。それに、制裁はもう充分受けたと思うよ?』
あんた甘すぎだよ、ってジーナに頭を撫でられた。
愛理さんからも。
晃司義兄さんとミケーレがいいな、ってあからさまに羨ましそうな顔をしてこっちを見てる。
優しいお姉さんたちにも囲まれて、幸せ者だよね。
えへへ。
近くで話を聞いていたカメラ係が、この女性達はどういう人間関係なのかと困惑してるけど。
まあいいか。
写真は崇の検閲を通したものじゃないと掲載を許可しないというので、愛理さんとジーナも普通に撮られてて。
後で記念にデータ頂戴、と絡んでた。
*****
ミケーレにお色直しだよ、って呼ばれて。
え、今更? と思いながら着いて行ったら。
更衣室に用意されていたのは、可愛い系だけど、男物の服だった。
ってことは。
奏太・ヴァレンティーノとして紹介するってこと?
「……いいの?」
「サリーの希望だよ。むしろ披露宴は今からが本番だしね」
ミケーレがウインクをして。
ドレス一式はまだクリーニングしないで置いといて、と頼むと。
意味深な笑みを浮かべられた。
そうだよ。
もう一回着て、新婚といえばお約束のあれをやるんだよ。
お姫様抱っこで寝室へ! ってやつ。
「じゃあ装飾は外して、シンプルなドレスにしておくか。すぐ済むけど、先に会場行ってて」
あ、取り外し式になってるんだ。
そうだね、宝石ごと洗えないもんね……。
「ありがとう。余計な手間をかけさせちゃってごめんね」
「お祝いついでだし、いいってことよ」
今、司会は晃司義兄さんにバトンタッチしてるんだって。
仲良く話してると思ったら、そういう打ち合わせもしてたのか。
なるほど。
僕についてくれてる東郷さんが、会場のドアを開けてくれて。
薄暗い会場に入った途端。
スポットライトが当たった。
『花嫁のお色直しが終わったようです。女装も可愛いかったけど、いつもの奏太が一番だよ! 可愛い俺の義理の弟!』
晃司義兄さんが投げキッスしてきた。
ああ、イタリアの空気に毒されてきている……。
まだ残っていた招待客が、女装発言にざわめいてる。
晃司義兄さんは、僕の素性を説明している。
崇の幼馴染みだとか。
イタリア語、上手だ。でも、ミケーレにそっくりで笑ってしまう。
あ、崇も着替えてたんだ。
お揃いっぽいデザインのスーツだ。ミケーレにはいっぱい感謝しないとね。
手を拡げて待ってる崇の腕に飛び込んで。
お帰り、って。
頬やこめかみに、キスされた。
*****
『それでは皆様、左手上方にご注目下さい。新しい門出を迎える二人の、思い出のアルバムです』
ホールが再び薄暗くなって。
会場の白い壁をスクリーンに、二人の赤ん坊からの姿がスライドで映されていった。
崇の写真は、飛び飛びで。
生まれた時と、3歳の祝い着を着た無表情の崇が映った。話には聞いていたけど、ここまで表情が違うんだ。
4歳からは、赤ん坊の僕を抱っこして、嬉しそうに笑ってる小さな崇の姿に変わる。
崇から聞いた話、そのまんまだ。
この写真は、百合おばさんからの提供かな?
『誰にも渡さないぞ、って顔して。この頃から生意気にも所有権バッチリ主張してますね』
アハハ、って笑ってるのはジーナたちだ。
幸せいっぱい、って顔をしてる崇と僕の姿。
そして。
崇が8歳になって。
『二人は悲しい別れをすることになりました。サルヴァトーレ氏は、実はダーリオ・ヴァレンティーノ氏の実子だと判明し、ダーリオ氏亡き後、ヴァレンティーノの跡継ぎとなるために連れて行かれてしまったのです。幼い二人は、大人になって再会し、この約束を覚えていたら結婚しよう、と約束をしたそうです』
少々事情は違うけど。
そういうことになってるのかな? ヴァレンティーノ企業のカメラマンもまだ残ってるし。
イタリアに来てから撮ったらしい、崇の写真が映った。
……あからさまに死んだ目をしている……。
幼い子が、こんな表情をするなんて。
『こちら、最愛の幼馴染みから引き裂かれた当時のサルヴァトーレ氏です。やさぐれてます。まるでナイフ、いやハリネズミのようだった、とは彼の従兄弟であるミケーレ氏の言葉です』
晃司義兄さんは、カンペを見ながら言ってる。
確かにそうだった、と笑ったのは、ヴァレンティーノ一家の人たちだった。
崇を連れて行った当人、マリオお義父さんも苦笑してる。
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