長身美形なイタリアマフィアになってた、美少女みたいに小さくて可愛かった幼馴染から売り専と間違われて監禁Ｈされた上に求婚されてしまいました。

マンマのピッツァ

『Ti alzi起きる？』
優しい声。


いつの間にか、眠っていたようだ。
目を開けたら、何故か崇の腕の中にいて。ブランケットが掛けられてた。

寝ぼけて、崇の席ブースに潜り込んで来たんだって。

慌てて席に戻ったら、客室乗務員のお姉さんがくすくす笑ってた。
うう、恥ずかしい……。


お目覚めに何かお飲み物はいかがですか？　って聞かれて。

「はい。カップチーノお願いします……」
目を覚ましたいけど、ブラックコーヒーは無理かな。


「ふふ。君はいくつになっても相変わらず甘えんぼだね？」
って、崇が優しく微笑むもんだから。

崇からブランケットを返された客室乗務員のお姉さんも赤面しちゃってるよ。
んもー。

崇以外に、こんな風に甘えたことないし！　耳目があるから、今は言えないけど！


寝ぼけて人の布団とかに潜り込むとか、初めてだし！
崇がいい匂いするのが悪いんだと思う。

うん。そうに違いない。


＊*＊*＊


カップチーノを飲み終えたところで、もうすぐ着陸態勢に入るので、シートベルトを着用してください、ってアナウンスが。
ちょうど良いタイミングで目が覚めたみたい。


シートベルトを装着しながら、ちらりと崇の横顔を見る。

……ほんとに、無茶苦茶いい男だよね。
横顔も完璧な美形だよ。

鼻がすっと通っていて、睫毛も長い。
頭も良い、顔も良い、背が高くてスタイルもいい、人望もあって商才もある。


何この完璧超人。本当に人類なの？
欠点って、僕のこと好きすぎるくらいじゃない？

それで色々台無しになるレベルで。


あ、こっち見た。
……だから、人前でそんな表情で笑うなってば。んもー。


飛行機が空港に着陸した。

今回は、ローマ空港じゃなくて、フィウミチーノ空港こと、レオナルド・ダ・ヴィンチ空港だ。
こっちにヴァレンティーノの自家用機を停めてあるんだって。


降りる段になって、すぐ後ろの席にロレンツォが座っていたことに気付いた。
そうだよね。用心棒で幹部だもんね。

でも、気配なさすぎだよ！？


ずっと近くには居たようだから、もう今更なんだけど。
顔を合わせたのが今なので。

「Buonブォン・ giornoジョルノ、Cheケ piacereピアチェーレ rivederlaリヴェデルラ」
こんにちは、また会えて嬉しいです、って挨拶をしたら。

『Sonoまた onorato diお目にかかれて rivederti光栄です』
と言って、薄く微笑んだ。

笑った。
笑ったよ！？　って崇を見上げたら、苦笑してた。


＊*＊*＊


崇が行動する時は、最低でも、二人の警護がつくのが当たり前で。

基本的には、ロレンツォが先に歩いて安全を確認して、
もう一人のボディーガードが後ろにつくらしい。

後は両脇を固めたり。警戒レベルによって違うそうだ。


自動車やジェット機も、毎回、爆発物や盗聴器などが着けられてないか、慎重すぎるくらい念入りにチェックするんだって。

マフィアのボスであり、世界的大企業ヴァレンティーノ・カンパニー代表取締役でもあるから。
身の危険のほかにも、情報の漏洩も気をつけなきゃいけないんだ。大変だなあ。


すごいプレッシャーで、気が休まる暇もないだろうな。

今まで狙撃されたこともあるらしいし。暗殺者に狙われたことなんて一度や二度じゃないっていう。
実際、崇の身体には、古傷がいっぱいあった。


そんな崇が、こんなに穏やかな表情をしているんだもん。驚くよね。

僕は大丈夫。
崇や、ロレンツォや、みんなが護ってくれてるって信じてるから。

怯えたりはしないよ。


＊*＊*＊


何事もなく、シチリアに到着！


澄んだ空、爽やかな空気。
やっと我が家へ帰ってきたぞー！　って言いたくなる。

ロレンツォの運転する車でヴァレンティーノのお屋敷へ向かった。


車窓を流れる景色は、日本のものとは違うものだ。
建物に、植物。空気も違う。

なのに。
何故か、故郷に戻ってきたような、懐かしい感じがするんだよね。

不思議だ。


『bentornatoおかえりなさい、可愛い子たち。ソータ、サリー』

「Sono ただa casaいま、マンマ・ルチア！」
思わず、手を広げて迎えてくれたマンマの胸に飛び込んだけど。

崇は文句を言わなかった。


『サリーもすっかりご機嫌が直ったようでなによりだね。さあ、ninoかわいい子。おやつを食べるお腹の余裕はあるかい？』

「Stoスト・ morendoモレンド di fame・ディ・ファーメ！」
お腹が空いて今すぐにでも死にそう！って言ったら。

それならたくさんご馳走を用意しなくちゃ、って笑ってくれた。

マンマはちょっと待っておいで、って。
大きな身体を揺らして、鼻歌をうたいながら厨房に入っていった。


『あ～あ、あんなに張り切っちゃって。お腹が破裂するほど食べさせられるぞ？』
『digestivoディジェスティーヴォの用意をしないと！』
お屋敷付きの人たちが声をかけてくる。

ディジェスティーヴォは胃薬……消化剤だって。


『ご馳走は、みんなで分け合うものでしょ？』
『そうだな。全員、食事前に屋敷の周りを一周でもして空腹アッファマーティにしておかないと』
崇も笑って言った。


こんなに幸せそうに笑う首領は初めてだ、めでたいことだ、って。
みんな喜んでる。

『奏太は、私達に幸せの風を運んでくれる天使だからね』

またそんなこと言って。
んもー。

部下の人に、首領カポが甘すぎて、空からお菓子カラメッラが降ってきそうだ、とか言われてるし！


＊*＊*＊


食堂に、みんな集まってきて。

念願の、本場のピッツァ！　しかもマンマ特製。
期待も最高潮に上がっちゃうよ。


本来はシェアしないのに。
これはここが一番美味しいとこだぞ、って言って。

みんなで少しずつ切り分けてくれたので、何種類か食べることができた。
みんな優しいなあ。

トマトソース、オリーブ、アーティチョーク、キノコやバジルの葉が乗ったカプリッチョーザ。
生ハム・ルッコラ・グラナチーズの乗ったパルマ。
モッツァレラチーズ・ベーコン・アスパラガス・半熟卵のビスマルクに、トリュフオイル、チーズ、色々なキノコを使ったフンギもシンプルなのに絶品！

キノコはイタリア語でfungoフンゴだけど、複数形だとFunghiフンギになるんだ。

クアトロ・フォルマッジも、モッツァレラチーズ・ゴルゴンゾーラ・パルミジャーノ・ゴーダチーズの４種類のチーズが絶妙なバランスで最高！

パタティーネっていう、マルゲリータピッツァに山盛りフライドポテトの乗ったのもあった。
豪快！


次々と焼き上がったピッツァが運び込まれてきて。
食堂がまるでピッツァパーティみたいな様相に。

トマトベースだけじゃなくて、ジェノバベースとか、色々な味があって。
いくら食べても飽きが来ない感じ。

折り畳んだもの、四角いもの。大皿に入れて焼いたもの。
生地もモチモチなパン生地からパリパリな薄いものまで。丸いパンっぽいのもあった。

具だけじゃなく、ベースの種類だけでも、こんないっぱいあるんだ。


「ピッツァottimo最高！」