長身美形なイタリアマフィアになってた、美少女みたいに小さくて可愛かった幼馴染から売り専と間違われて監禁Ｈされた上に求婚されてしまいました。

機内にて

崇は先に浴室に入って。

ごそごそと、何かをしている気配がした。
何だろう？


しばらくして、出てきて。
ひょい、と抱き上げられて浴室へ。

いい香りがするな、と思ったら。
浴槽には真っ赤なバラの花びらが浮いていた。

フェラーリに乗ってきた時に持ってた花束をちぎって、浴槽に入れたらしい。


バラ風呂かあ。
ゴージャスだなあ。ちぎるのはもったいないとは思うけど。

さすがに一抱えもあるバラの花束を持ち込んだ状態で飛行機には乗れないだろうし。シチリアに着く頃には枯れてるだろう。
有効活用ってやつかも？


＊*＊*＊


「ん、いい匂い。……fragrareフラグラーレ？」
『Rispostaリスポスタ correttaコレッタ、正解だ』

corretta正しいだけでも成立するが、試験問題などに対する返答ならRispostaをつけたほうが第三者には伝わりやすいね、とか先生みたいに言って。
満足そうに、僕に頷いてみせた。

得意げな顔をしてるの、ちょっとかわいい。

教師と生徒っぽいプレイでも良かったかも、とか言ってる。
……いや、乗らないよ？

色々、思うところはなくはないけど。

幸せだから、いいか。


お風呂から上がったら。
何故か乱れたシーツが替えられていて。綺麗に整っている。

崇は風呂に入ってからずっと一緒だったし。
まさかこんな時間にホテルの人がベッドメイクを？　って思ったら。

スイート・ルームっていうのは続きの部屋、って意味で。ニ部屋以上ある部屋のことで。
ここは二つ寝室があって。

もう一つの寝室にはロレンツォが待機してるって聞いて、思わず悲鳴を上げそうになってしまった。
隣にいるならいるって教えてよ！！


用心棒兼アンダーボスって職務上、ボスの側に控えてるのは仕方ないんだろうけど。
ベッドメイクまでさせるなんて。申し訳なくない？

え？　命令してない？
勝手に替えてくれてたの？　手を煩わせないようにって親切心だろうって？

うーん、それならいいのかな……？


全部聞かれてたと思うと、恥ずかしすぎて死ねるレベルなんだけど！
マフィアのボスを伴侶にする以上、それには慣れなくちゃいけないのかも。

でも、まだそこまでは開き直れないよ。


＊*＊*＊


その後。

ようやく手に入れたって大喜びな崇に、二回も三回も抱かれて。
気を失うように寝て。

目が覚めたら、飛行機の中だった。


……どうやって運ばれてきたかは、知らないほうがいいに違いない。
今回は日本人の客室乗務員のお姉さんが、微笑ましそうな顔をしてこっちを見ていたのでセーフ。

何がセーフなんだかわかんないけど、多分セーフ。


イタリアに行く飛行機に乗るのは明日になったよ、とはメールしたけど。
特に母さんたちに搭乗時間とか報せてなかったので、そんな状態で家族から見送られなかっただけマシだったかもしれない。

後輩から貰ったクッキーは、お行儀悪いけど、いくつかベッドの中で食べた。
でも、全部は食べられないし、機内に持ち込めないので、部下の人にあげてしまったって。

気持ちは充分いただいたよ。


さすがに、またＶＩＰが乗り合わせるような奇跡はなかったけど。
好きな人と乗る飛行機は、また格別だった。

もちろんファーストクラスの乗り心地も良かったのもある。
でも、それだけじゃなくて。

同乗者って、旅の良し悪しを決めるんだなって。


崇は紫の入った灰色の三つ揃えスーツがすごく格好良くて。
そのまま雑誌の表紙にしたいくらい決まってる。

さりげなくつけてる腕時計もヴァレンティーノ製かな？　先の尖ったイタリア風の靴も格好良い。


ふと自分の姿を見れば、ヴァレンティーノのカジュアルを上から下まで身に着けた状態だった。
さすがに制服はあの状態じゃね……。

このシャツ一枚、十数万円だっけ……。


まあ薬指の指輪が一番アレなんだけどね！

どうやって出国審査とか税関とか通過したんだろ……。
それも抱っこされたままで。


制服姿だったら人攫い感マシマシだね！


＊*＊*＊


サービスのドリンクは、僕はアイスグリーンティーと和菓子で、崇はシャンパンだ。
まあまあランクの高いやつだって。

ワイナリーとかも持ってるんだっけ。
お酒の味にはうるさいようだ。


出発する国によって、出される内容も色々違うんだなあ。
機内食にも和食があったし。

僕は洋食で牛肉にしたけど。
崇は、洋食の魚で。付け合せのショートパスタを食べながら、そういえば日本のピザ屋を見て驚いたって話になって。

本場のピザについて教えてくれた。


イタリアでは、一枚700円程度が普通で。日本のは高すぎるって。

単価の高い会社が最初に日本に来たから、それが基準になったんじゃないかって言ってた。
あと人件費とか、物価の違いもあるかも。


イタリアでは手掴みじゃなく、ナイフとフォークを使って、一人で一枚食べるもので。滅多にシェアはしないものだとか。

基本、そんなに大きくないし、具が少ないので、イタリアのピッツァは一枚ぺろりと食べられるけど。
日本のは大きいし、具が多くて一人じゃ食べられそうにない、って。

おそらくアメリカで魔改造されたんだろうと言ってた。

あと、ピザと言ったら地名だから、食べ物の方はピザじゃなくてピッツアと言え！　だって。
こだわりがあるんだなあ。


ピッツァ話に熱くなってるから、空いた皿を下げに来た客室乗務員のお姉さんが笑いを噛み殺してた。

かわいいところあるでしょ？
僕のパートナーだよ。えへへ。


屋敷の厨房には専用の窯もあるから、マンマに本場のピッツァを作ってもらおうか、って言われた。連絡を入れてくれるそうだ。

今からすごく楽しみだ。


ああ、でも色々な種類を一度に食べたいから、この際シェアも許して欲しい！
それか全部乗せでお願い！


＊*＊*＊


『食いしん坊だとは思っていたけど。学校でもおやつを作って食べていたんだって？　マンマ・ルチアに日本の菓子を教えてあげるといい。喜ぶぞ』
部活動で、パウンドケーキを作ってた時の写真を指差された。

あ、いつの間に。
僕の卒業アルバム、機内に持ち込まないでよ！？　僕だってまだ見てないのに！


イタリアの学校には部活動はないので、日本のドラマやアニメとかで観て、わりと憧れられてるらしい。
え、じゃあ放課後は何やってるの？

帰るの？　帰宅部じゃん。


「あれ？　ハーバード大学にも、部活なかったの？」
アメリカの学校ってフットボールとかチア部とか、部活動でランクつけたり学生同士で無意味なマウント取り合ったりして盛り上がってそうなイメージだけど。

『あったんだろうけど、よく知らない。そんな余裕もなかったからね』


とにかく、人脈を増やせるだけ増やして、知識を可能なだけ詰め込んで。
一刻も早く、ファミリーを掌握できるだけの権力を得ることだけを考えてたんだって。

それで、実際に数年で今の地位を得ることが出来てるんだから凄い。
天才なだけじゃなく、努力家なんだ。


それも全部、僕のためか。
信じられないよね。