長身美形なイタリアマフィアになってた、美少女みたいに小さくて可愛かった幼馴染から売り専と間違われて監禁Ｈされた上に求婚されてしまいました。

早くも禁断症状に陥る

「稲葉の血を残せなくてごめん。でも、他の誰よりも、崇と一緒にいたいんだ」


顔も覚えていない頃に事故死してしまった実の父親は、三男で婿養子だったそうだから。
父親側は長男と次男がいるので大丈夫だろうけど。

母さんの血筋は、もう僕以外はみんな途絶えてるって話だ。


「まあ、稲葉の血なら大丈夫だと思うけどね。あんたが幸せなら、それでいいんじゃないの？」
母さんは自分のお腹を撫でた。

「……ええっ、まさか、」
そこに、妹か弟が！？


安定するまではまだ内緒だからね、と言われた。

そっかあ。
色々と驚かせちゃって、ホントにごめん……。


「義兄さんたちも、弟か妹が出来たら喜ぶだろうな。血の繋がらない僕ですら、すごく可愛がってくれたし」

「……それはどうかしらね……」
母さんは遠い目をした。


え、どういうこと？

「晃司義兄さんにはたまにからかわれるけど。二人とも基本的に優しいよ。年齢が離れた弟だからかなあ？」
「この天然ボケっぷりがツボなのかしらね……誰に似たのやら」

実の息子をボケ呼ばわりとか、失礼じゃない？


＊*＊*＊


部屋に戻って。

ずっと携帯の電源をオフにしっぱなしだったことを思い出して。
電源を入れたら。

何十件か、メールとかメッセージが入ってた。
全部崇だった。


なかなか返信が来ないので、心配してる様子で。

余計なことをしたから怒ってるの？　って。
いやいや、怒ってないよ！


慌てて、自宅着いてることを返信する。
それはもう、ヴァレンティーノの調査班から報告を受けて知ってるだろうけど。

指輪を見られて。
帰ってから今まで家族会議をしてたってこと。

家族会議の内容は、崇と結婚するって報告だということ。

あと、席の変更と、指輪をありがとう。
驚いたけど、嬉しかった、と打ったら、すぐに返事が返ってきた。

既読つくの早っ！


早く上達したいし、勉強したいから。
メールとかのやり取りはイタリア語でしようって約束をした。

これからは、メッセージを読むのも書くのも、スカイプとかで話すのもイタリア語になる。
恋人と話すのが、上達への一番の近道らしいし。


こっちはまだ辞書を見ながらだから、打つのは遅くなるけど。
僕も早く返せるようになりたいな。

自動翻訳にはなるべく頼らないようにしないと。
直訳しかされないから、あまり参考にはならないようだし。


騒ぎになりそうなので”フェラーリでお迎え計画”は中止にして欲しい、って打ったら、変装して行くから大丈夫だ、ってすぐ返信が来た。

……変装してまで、そんなに決行したいんだ、あれ。
まあ、内心としては、すごく見たいけど。


帰りの飛行機でリアル王子様と会ったよ、って書いたら。
崇も知ってる人だったみたい。

ローマ空港でＶＩＰが乗り換え待ちしてるって、話題になってたとか。
有名人だったんだ。

まああれだけ美形じゃ、マスコミも放っておかないか。
でも日本に来てるはずなのに、ニュースとかやってないなあ。お忍びだったのかな？


ファーストクラスのドリンクにヴァレンティーノのチョコがついててそれがすごくおいしかったこと。
ヴァレンティーノカンパニーの話になった時。あっちも崇のことを知ってて、新しい代表はすごく有能だって褒めてたよ、って書いたら。

当然だねフフン、みたいな顔文字が返ってきた。こういうお茶目な面もあるんだ。
何だかかわいい。


この会話ログを見たら、誰も相手が”氷の帝王”だとは思わないよね……。


＊*＊*＊


イタリアでも、メールでの略語があって。
今平気？　電話してもいい？　って言葉、ci seiチ セイ?　がc6?　になるとか教えてもらった。

イタリア語でCをチー、６をセイって読むから。蟻ありが糖とう！　みたいなものかも。

大好き、ti voglioティ ヴォリオ beneベーネはtvbだって。これはそれマジ？　がそマ？　になるみたいなものかな？


愛してる、は略さずにちゃんと口で言うよ、って。
んもー。

文章でも何か、雰囲気が甘いんだけど！！


電話をすれば、声は聞けるんだけど。
でも、まだ別れてから半日ちょっとしか経ってないのに。

声なんか聞いたらもっと寂しくなって。
電話越しじゃなくて、早く、直接声が聞きたくなっちゃう。


禁断症状、早すぎじゃない？
とか思ってたら。

崇から「今、隣りに君がいなくてとても寂しい。早く直接声を聞きたいし、会いたい、抱き締めたい」って。


僕も同じ気持ちだよ。
Mi ミ piaceピアチェrebbeレッベ vederti ヴェデルティ。あなたに早く会いたい、って返す。

崇ってば。
「今すぐ攫いに行っていい？」、なんて。

冗談でも書かないで欲しい。会いたいに決まってるだろ。


でも。
良いよ、って書いたら、すぐにでも駆けつけて来てくれそうだ。

それはだめ。
ちゃんと勉強して、イタリアの大学に行って。

少しでも崇の役になれたらいい。
僕なんかが言うのはおこがましいだろうけど。

何か、手助けをしたいんだ。ずっと側にいたいから。


散々悩んで。
”Incontriaインコントリアmoci モッチin un イン ウンsognoソニョ”。夢の中で会いましょう、と打った。

メッセージの最後には、”baciバッチ”。たくさんのキスを。


Buonaおやすみ notteなさい。いい夜を。
イタリアはまだ、夕方だけど。


＊*＊*＊


翌朝。
何もつけていない左手の薬指を寂しく思いながら、学校へ向かった。


婚約指輪は、卒業式の日までは晃司義兄さんのとこの宝石用金庫で預かってもらうことになった。

あんなとんでもない貴重品を学校につけていく訳にはいかないし。
金額を聞いちゃったら、つけて歩くのも怖いんだもん。