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続いて母子会議
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再会した翌日に、崇から正式にプロポーズされて。
最初は僕も困惑して、返答を保留してたけど。
まあ色々あって。崇だけは特別なんだって気付いてOKしたんだ、って言った。
お金持ちだなあ、とは思ってたけど。
崇がいまや世界的な大企業の代表取締役だったって知ったのは、帰りの飛行機の中だったんだ。
ここだけ抜き取ると、何だか恋愛ものの主人公みたいだ。
リアルシンデレラ?
照れるなあ。
敦司義兄さんは奏ちゃんから男の恋人の惚気なんて聞きたくなかった、と嘆いている。
惚気じゃないもん。
崇がイケメンなのは、客観的事実だし!
晃司義兄さんは悪い男に誑かされてるんじゃないの? とか言うし。
そりゃ、善人かと聞かれたら悩むけど。
わ、悪くないもん。
ヴァレンティーノはクリーンな企業だもん!
*****
母さんは、ぽかんとしたままだ。
お義父さんは、しかし、そんな世界的有名企業に御木本崇、なんて名前の人はいたかなあ、と首を傾げていた。
貿易会社の会長さんなのに、崇の名前を知らないのかなあ、と思ったけど。
「あ。そういえば、今は名前が変わってたこと、言ってなかったっけ?」
「うん、聞いてないね」
みんな頷いた。
うっかりしてた。
「あのね、今の崇の名前、御木本崇じゃなくて、サルヴァトーレ・T・ヴァレンティーノって言うんだよ。イタリアに来て改名したんだって。発表して無いけど、Tは崇のTなんだ」
「サ、サルヴァトーレ・T・ヴァレンティーノ……!?」
お義父さんと敦司義兄さんは、顎が外れそうなほど驚いて。
「嘘。ヴァレンティーノって、あのヴァレンティーノ?」
あ、母さんも知ってるんだ。
宝飾や化粧品関係の会社もあるの? すごいなあ。
ブラッドオレンジやオリーブの畑、牧場があるのは知ってたけど。
そんなに手広くやってる企業だったんだ。
そりゃストレスも溜まるよ……。
「え、嘘でしょ!? ヴァレンティーノCEOと奏ちゃんが幼馴染みで、あの”氷の帝王”が奏ちゃんにプロポーズしたの!? マジで!?」
ぺちん、と額を叩いて。
「……ああ、そっか。”ミステリオーソ”にヴァレンティーノ、アイスブルーダイヤ、シチリア……マジだ……あれ、噂じゃなかったのか……!」
晃司義兄さんの中では、何か繋がったらしい。
何だろう、って思ったら。
*****
宝飾関係者の間で、つい先日。
稀少宝石のいくつかがシチリアに動いたようだぞ、って話題が上がっていて。
どうやらヴァレンティーノが、ミステリオーソっていう高級ブランド宝飾店のデザイナーに婚約指輪を緊急発注したとかで。
まさかあの”氷の帝王”がプロポーズでもするのかね? いやいや無いだろ、仕事に使うんじゃないか?
なんて噂話を、ちょうど仲間内でしてたとこだったそうだ。
僕が嵌めていた数千万はする婚約指輪の件もあって。
ヴァレンティーノの代表取締役が求婚したのは真実だ、と納得したようだ。
僕が今着てる服も、ヴァレンティーノのブランドにはグレードがあって。
その内の最高クラスのものだったようだ。
安いほうでもシャツ一枚で数万するとか聞いて震え上がった。
高いのはその十倍はするって。
じゃあ、靴から靴下まで全部で合計おいくらになるんだよ!? そりゃファーストクラスでも浮かないはずだよ! ブランドこわっ!
氷の帝王、か。
ファーストクラスで会った王子様もそう言ってたけど。
何でそんな二つ名で呼ばれてるの? って。
そういえば、拳銃を構えながら敵対組織の地下室に入ってきた時の崇は、確かに滅茶苦茶怖かったっけ。
普段仕事をしてる時とか、あんな感じなのかな?
そりゃロレンツォも、ボスの態度の激変に目を丸くもするよね……。
*****
「あ、僕と結婚するってことは、ここだけの秘密にしといてね。騒ぎになったら困るし」
お義父さんと敦司義兄さんは黙ったままこくこくと頷いて。
晃司義兄さんは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「言えるかって。全世界からマスコミが押し寄せてくるぞ……」
だよねー。
じゃあ卒業式に花束持ってフェラーリで迎えに来るのは止めさせたほうがいいか……。
大騒ぎだ。
「あとね、僕、大学は日本じゃなくて、イタリアの大学に行きたいんだけど。そのことも含めて、崇が卒業式の日に、うちに挨拶に来るって。よろしく」
ひええ、と悲鳴が上がった。
お義父さんたち、何でそんなに怖がってるの……。
いや、何となくわかるけど。
僕と一緒の時なら、怖くないと思うよ、たぶん。
お義父さんたちはそれぞれ自分の部屋に戻ったので。
居間に、母さんと二人きりになった。
後は母子で話し合えってことかな?
「そういえば、あんたって子は赤ん坊の頃からたあちゃんひと筋だったわねえ……」
母さんは全てを諦めたような溜め息を吐いた。
母さんを呼ぶよりも、崇のことをたあちゃん、と呼ぶほうが先だった、とか。
そんな記憶に無いことを、今更愚痴られても……。
*****
崇のおばさんとはシングルマザー同士で。
二人が働きに出ている間、よく僕の面倒を見てくれていたらしい。
崇は見た目が可愛いだけじゃなく、賢くてとてもいい子で。
当時、女の子なら是非お嫁に来てもらいたかった、って思ってたくらいだって。
二人で交わしていた約束も、当然聞いてたけど。
子供の口約束だから、まさか本当にそうなるとは思ってなかったと嘆かれた。
僕も、そうなるとは思ってなかったよ。
敬愛を、恋だと思い込もうとしてたり、自分の本当の心から目を背けたりもしてたのに。
子供の口約束を、大人になって本当に実現しちゃうとか。
人生ってわかんないもんだね。
お互い、気持ちが変わらないまま大人になったなんて、奇跡的だと思う。
純愛とは、ちょっと言い難いけど。
最初は僕も困惑して、返答を保留してたけど。
まあ色々あって。崇だけは特別なんだって気付いてOKしたんだ、って言った。
お金持ちだなあ、とは思ってたけど。
崇がいまや世界的な大企業の代表取締役だったって知ったのは、帰りの飛行機の中だったんだ。
ここだけ抜き取ると、何だか恋愛ものの主人公みたいだ。
リアルシンデレラ?
照れるなあ。
敦司義兄さんは奏ちゃんから男の恋人の惚気なんて聞きたくなかった、と嘆いている。
惚気じゃないもん。
崇がイケメンなのは、客観的事実だし!
晃司義兄さんは悪い男に誑かされてるんじゃないの? とか言うし。
そりゃ、善人かと聞かれたら悩むけど。
わ、悪くないもん。
ヴァレンティーノはクリーンな企業だもん!
*****
母さんは、ぽかんとしたままだ。
お義父さんは、しかし、そんな世界的有名企業に御木本崇、なんて名前の人はいたかなあ、と首を傾げていた。
貿易会社の会長さんなのに、崇の名前を知らないのかなあ、と思ったけど。
「あ。そういえば、今は名前が変わってたこと、言ってなかったっけ?」
「うん、聞いてないね」
みんな頷いた。
うっかりしてた。
「あのね、今の崇の名前、御木本崇じゃなくて、サルヴァトーレ・T・ヴァレンティーノって言うんだよ。イタリアに来て改名したんだって。発表して無いけど、Tは崇のTなんだ」
「サ、サルヴァトーレ・T・ヴァレンティーノ……!?」
お義父さんと敦司義兄さんは、顎が外れそうなほど驚いて。
「嘘。ヴァレンティーノって、あのヴァレンティーノ?」
あ、母さんも知ってるんだ。
宝飾や化粧品関係の会社もあるの? すごいなあ。
ブラッドオレンジやオリーブの畑、牧場があるのは知ってたけど。
そんなに手広くやってる企業だったんだ。
そりゃストレスも溜まるよ……。
「え、嘘でしょ!? ヴァレンティーノCEOと奏ちゃんが幼馴染みで、あの”氷の帝王”が奏ちゃんにプロポーズしたの!? マジで!?」
ぺちん、と額を叩いて。
「……ああ、そっか。”ミステリオーソ”にヴァレンティーノ、アイスブルーダイヤ、シチリア……マジだ……あれ、噂じゃなかったのか……!」
晃司義兄さんの中では、何か繋がったらしい。
何だろう、って思ったら。
*****
宝飾関係者の間で、つい先日。
稀少宝石のいくつかがシチリアに動いたようだぞ、って話題が上がっていて。
どうやらヴァレンティーノが、ミステリオーソっていう高級ブランド宝飾店のデザイナーに婚約指輪を緊急発注したとかで。
まさかあの”氷の帝王”がプロポーズでもするのかね? いやいや無いだろ、仕事に使うんじゃないか?
なんて噂話を、ちょうど仲間内でしてたとこだったそうだ。
僕が嵌めていた数千万はする婚約指輪の件もあって。
ヴァレンティーノの代表取締役が求婚したのは真実だ、と納得したようだ。
僕が今着てる服も、ヴァレンティーノのブランドにはグレードがあって。
その内の最高クラスのものだったようだ。
安いほうでもシャツ一枚で数万するとか聞いて震え上がった。
高いのはその十倍はするって。
じゃあ、靴から靴下まで全部で合計おいくらになるんだよ!? そりゃファーストクラスでも浮かないはずだよ! ブランドこわっ!
氷の帝王、か。
ファーストクラスで会った王子様もそう言ってたけど。
何でそんな二つ名で呼ばれてるの? って。
そういえば、拳銃を構えながら敵対組織の地下室に入ってきた時の崇は、確かに滅茶苦茶怖かったっけ。
普段仕事をしてる時とか、あんな感じなのかな?
そりゃロレンツォも、ボスの態度の激変に目を丸くもするよね……。
*****
「あ、僕と結婚するってことは、ここだけの秘密にしといてね。騒ぎになったら困るし」
お義父さんと敦司義兄さんは黙ったままこくこくと頷いて。
晃司義兄さんは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「言えるかって。全世界からマスコミが押し寄せてくるぞ……」
だよねー。
じゃあ卒業式に花束持ってフェラーリで迎えに来るのは止めさせたほうがいいか……。
大騒ぎだ。
「あとね、僕、大学は日本じゃなくて、イタリアの大学に行きたいんだけど。そのことも含めて、崇が卒業式の日に、うちに挨拶に来るって。よろしく」
ひええ、と悲鳴が上がった。
お義父さんたち、何でそんなに怖がってるの……。
いや、何となくわかるけど。
僕と一緒の時なら、怖くないと思うよ、たぶん。
お義父さんたちはそれぞれ自分の部屋に戻ったので。
居間に、母さんと二人きりになった。
後は母子で話し合えってことかな?
「そういえば、あんたって子は赤ん坊の頃からたあちゃんひと筋だったわねえ……」
母さんは全てを諦めたような溜め息を吐いた。
母さんを呼ぶよりも、崇のことをたあちゃん、と呼ぶほうが先だった、とか。
そんな記憶に無いことを、今更愚痴られても……。
*****
崇のおばさんとはシングルマザー同士で。
二人が働きに出ている間、よく僕の面倒を見てくれていたらしい。
崇は見た目が可愛いだけじゃなく、賢くてとてもいい子で。
当時、女の子なら是非お嫁に来てもらいたかった、って思ってたくらいだって。
二人で交わしていた約束も、当然聞いてたけど。
子供の口約束だから、まさか本当にそうなるとは思ってなかったと嘆かれた。
僕も、そうなるとは思ってなかったよ。
敬愛を、恋だと思い込もうとしてたり、自分の本当の心から目を背けたりもしてたのに。
子供の口約束を、大人になって本当に実現しちゃうとか。
人生ってわかんないもんだね。
お互い、気持ちが変わらないまま大人になったなんて、奇跡的だと思う。
純愛とは、ちょっと言い難いけど。
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