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帰国、そして家族会議
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幼馴染がイタリアのマ……じゃなかった、世界的な大企業の代表取締役になってて。
ローマ空港まで自家用ジェット機で送ってくれて。
飛行機に乗ったら、座席が知らない内にグレードアップされてたって話をした。
何で今頃言うの! って母さんに怒られたけど。
それでか、と納得はしたみたいだ。
でも、僕だって崇が大企業の代取だって知ったの、この飛行機に乗ってからなんだから仕方ないじゃん!!
お城か美術館か、みたいな大豪邸に住んでたのも。
昔からのマフィアだからだと思って、納得してたんだもん……。
*****
「あ。ごめん。イタリアのお土産買うの忘れてた!」
うっかりお土産を買うことを失念してた。
空港で買おうと思ってたんだけど。
え、僕には買った? ハワイのチョコはもういらないよ?
日本の空港でも売ってるやつじゃんそれ。
「……ここまで案内してくれた黒服の人が、後日荷物と一緒に皆様へのお土産もご用意してますので郵送いたします、って言ってたわ。……いったい何をお送りされてしまうのかしらね……?」
高級すぎたら返礼に困るんだけど、と母さんは半目になっていた。
あれだ、ちょっと前に流行ったチベットスナギツネ。そっくり!
わあ、崇ってば気が利いてるなあ。
さすがは世界的大企業の代取だね! などとすっ呆けてみたり。
……言いにくい。
高校を卒業したらその代取と結婚しまあす! なんて。すごく言いにくいよ!!
しかも世間の目を誤魔化すために女装して、だよ? 言えないよ!
「あれ? 奏ちゃん、その指輪は?」
敦司義兄さんが訝しげな顔をして、僕の左手を指差した。
ん……?
指輪? 本当だ。
「何これ。いつの間に……」
あ、ローマ空港のVIP室でいちゃいちゃしてた時か!
今頃気付くとか、我ながら鈍すぎる!
*****
シンプルなデザインだけど、青い石と、青っぽいダイヤがついてる。
綺麗だな。
外して見てみると、内側に文字が彫ってあった。
ええと。
TからSへ。Tu sei mio per sempreだって。
……あなたは永遠にわたしのもの。
うわあ。
いつの間にこんな指輪、用意してたんだよ!?
これ、婚約指輪ってやつかな? 渡すなら、その場で言えってば。
んもー!
気付かなかった僕が悪いのかもだけど。
見てた指輪を、横から奪い取られて。
「アクアマリンは3月の誕生石だよね。……結婚指輪っぽいけど」
……何でルーペまで出してマジ顔で鑑定してるの、晃司義兄さん!? 道具持ち歩いてるの!?
さすがだよ本職、宝石商!
「うっわ、とんでもないわこれ。中央に最高品質のサンタマリア・アクアマリンのオーバルカットが2ct、ラインにアイスブルーダイヤのラウンドブリリアンカット1ctが2粒、同じく0.6ctが2粒。Pt900リング。このセクシーかつ優美なラインは”ミステリオーソ”の作品だね。もしこのカラーダイヤがトリートメントでも、仕入れ値USD80,000$は固い。市価ならその3倍くらいかな。……よくこれ出国審査や税関引っ掛からなかったね?」
晃司義兄さんのその言葉で。
母さんとお義父さん、敦司義兄さんが固まった。
え、どういうこと?
って集まる視線から、思わず顔を背ける。
*****
「か、返してー」
もう少し見たいのに、と渋る晃司義兄さんから指輪を返してもらって。
左の薬指に嵌めた。
違和感ないくらい、ぴったりだ。
ミステリオーソっていうのは、イタリアにある高級宝飾店のブランドの名前らしい。
箱もないのに、そこのデザインだってすぐわかるんだ。すごいな本職。
8万ドルって、日本円で8~9百万円くらいだっけ?
ダイヤのオークションは主にアメリカでやるから、USドルで計算するのか。へえ、なるほど。
って。
「……嘘!? っていうかこれ、そんなに高価なものだったの?」
最高級のブルーダイヤって、天然で大きな物は滅多に出て来ないので超貴重品で。
もしも本物のブルーダイヤなら、1カラット一粒で3千万以上はするものなんだって。
人工で色をつけたものでも、80万以上? こわっ。
でも、多分本物だと思います……。
一発ネタに数千万の高級車買おうとするような人だもん。
出国も入国も、ほとんどスルー状態だったけど。
……どうすりゃいいの、こんな貴重品!? とおろおろしてたら。
晃司義兄さんに、慈悲の笑みで肩を叩かれた。
「大丈夫、奏ちゃんがしてたらガラス製のおもちゃにしか見えないから」
「本職から嫌な太鼓判捺された!」
*****
宇佐美の家に帰って。
家族会議が始まった。
何でそんな高価なもの貰って来ちゃったの、すぐ返してきなさい、という母さんをまあまあ、と宥めるお義父さん。
金額を鑑定した張本人の晃司義兄さんは、にやにやしながら様子を見てるし。
敦司義兄さんはおろおろしてる。
これ、特に理由もなく貰ったわけじゃないし。
正直に言うべきかな。
「えっと、再会した崇に、高校卒業して18歳になったら結婚して欲しいってプロポーズされちゃったんだ。それで、これ」
芸能人の結婚記者会見みたいに、薬指の指輪を見せた。
「まさか、OKしちゃったの、奏ちゃん!?」
「リアルシンデレラストーリーじゃん。男だけど」
真っ先に反応したのは敦司義兄さんと晃司義兄さんで。
母さんとお義父さんは、ただぽかんと口を開けて固まっている。
まあ、そうなるよね!
崇がマリオおじさんに連れて行かれる前に、崇と、もし二人が大人になってもこの約束を覚えていて。
お互い気持ちが変わらないまま、好きだったら嫁さんになって欲しい、って約束をしていたことを話した。
さすがにあっちで起こったこと全部は言えない。
トーニオに拉致られたり、崇に抱かれちゃったり、お屋敷から逃げ出してジーナと一緒に敵対組織に連れてかれた辺りは大幅にカットする。
無駄に心配させちゃうし。
実はマフィアだってことと、男娼に間違われてされちゃったことは一生の秘密にしておかなくては……。
運よく初日に崇と再会できて。
美少女みたいに可愛かった崇がファッションモデルも裸足で逃げ出すようなすっごいイケメンになってたことは、声を大にして言いたい。
あと、マンマ・ルチアの料理がどれもすごく美味しかったことも。
ローマ空港まで自家用ジェット機で送ってくれて。
飛行機に乗ったら、座席が知らない内にグレードアップされてたって話をした。
何で今頃言うの! って母さんに怒られたけど。
それでか、と納得はしたみたいだ。
でも、僕だって崇が大企業の代取だって知ったの、この飛行機に乗ってからなんだから仕方ないじゃん!!
お城か美術館か、みたいな大豪邸に住んでたのも。
昔からのマフィアだからだと思って、納得してたんだもん……。
*****
「あ。ごめん。イタリアのお土産買うの忘れてた!」
うっかりお土産を買うことを失念してた。
空港で買おうと思ってたんだけど。
え、僕には買った? ハワイのチョコはもういらないよ?
日本の空港でも売ってるやつじゃんそれ。
「……ここまで案内してくれた黒服の人が、後日荷物と一緒に皆様へのお土産もご用意してますので郵送いたします、って言ってたわ。……いったい何をお送りされてしまうのかしらね……?」
高級すぎたら返礼に困るんだけど、と母さんは半目になっていた。
あれだ、ちょっと前に流行ったチベットスナギツネ。そっくり!
わあ、崇ってば気が利いてるなあ。
さすがは世界的大企業の代取だね! などとすっ呆けてみたり。
……言いにくい。
高校を卒業したらその代取と結婚しまあす! なんて。すごく言いにくいよ!!
しかも世間の目を誤魔化すために女装して、だよ? 言えないよ!
「あれ? 奏ちゃん、その指輪は?」
敦司義兄さんが訝しげな顔をして、僕の左手を指差した。
ん……?
指輪? 本当だ。
「何これ。いつの間に……」
あ、ローマ空港のVIP室でいちゃいちゃしてた時か!
今頃気付くとか、我ながら鈍すぎる!
*****
シンプルなデザインだけど、青い石と、青っぽいダイヤがついてる。
綺麗だな。
外して見てみると、内側に文字が彫ってあった。
ええと。
TからSへ。Tu sei mio per sempreだって。
……あなたは永遠にわたしのもの。
うわあ。
いつの間にこんな指輪、用意してたんだよ!?
これ、婚約指輪ってやつかな? 渡すなら、その場で言えってば。
んもー!
気付かなかった僕が悪いのかもだけど。
見てた指輪を、横から奪い取られて。
「アクアマリンは3月の誕生石だよね。……結婚指輪っぽいけど」
……何でルーペまで出してマジ顔で鑑定してるの、晃司義兄さん!? 道具持ち歩いてるの!?
さすがだよ本職、宝石商!
「うっわ、とんでもないわこれ。中央に最高品質のサンタマリア・アクアマリンのオーバルカットが2ct、ラインにアイスブルーダイヤのラウンドブリリアンカット1ctが2粒、同じく0.6ctが2粒。Pt900リング。このセクシーかつ優美なラインは”ミステリオーソ”の作品だね。もしこのカラーダイヤがトリートメントでも、仕入れ値USD80,000$は固い。市価ならその3倍くらいかな。……よくこれ出国審査や税関引っ掛からなかったね?」
晃司義兄さんのその言葉で。
母さんとお義父さん、敦司義兄さんが固まった。
え、どういうこと?
って集まる視線から、思わず顔を背ける。
*****
「か、返してー」
もう少し見たいのに、と渋る晃司義兄さんから指輪を返してもらって。
左の薬指に嵌めた。
違和感ないくらい、ぴったりだ。
ミステリオーソっていうのは、イタリアにある高級宝飾店のブランドの名前らしい。
箱もないのに、そこのデザインだってすぐわかるんだ。すごいな本職。
8万ドルって、日本円で8~9百万円くらいだっけ?
ダイヤのオークションは主にアメリカでやるから、USドルで計算するのか。へえ、なるほど。
って。
「……嘘!? っていうかこれ、そんなに高価なものだったの?」
最高級のブルーダイヤって、天然で大きな物は滅多に出て来ないので超貴重品で。
もしも本物のブルーダイヤなら、1カラット一粒で3千万以上はするものなんだって。
人工で色をつけたものでも、80万以上? こわっ。
でも、多分本物だと思います……。
一発ネタに数千万の高級車買おうとするような人だもん。
出国も入国も、ほとんどスルー状態だったけど。
……どうすりゃいいの、こんな貴重品!? とおろおろしてたら。
晃司義兄さんに、慈悲の笑みで肩を叩かれた。
「大丈夫、奏ちゃんがしてたらガラス製のおもちゃにしか見えないから」
「本職から嫌な太鼓判捺された!」
*****
宇佐美の家に帰って。
家族会議が始まった。
何でそんな高価なもの貰って来ちゃったの、すぐ返してきなさい、という母さんをまあまあ、と宥めるお義父さん。
金額を鑑定した張本人の晃司義兄さんは、にやにやしながら様子を見てるし。
敦司義兄さんはおろおろしてる。
これ、特に理由もなく貰ったわけじゃないし。
正直に言うべきかな。
「えっと、再会した崇に、高校卒業して18歳になったら結婚して欲しいってプロポーズされちゃったんだ。それで、これ」
芸能人の結婚記者会見みたいに、薬指の指輪を見せた。
「まさか、OKしちゃったの、奏ちゃん!?」
「リアルシンデレラストーリーじゃん。男だけど」
真っ先に反応したのは敦司義兄さんと晃司義兄さんで。
母さんとお義父さんは、ただぽかんと口を開けて固まっている。
まあ、そうなるよね!
崇がマリオおじさんに連れて行かれる前に、崇と、もし二人が大人になってもこの約束を覚えていて。
お互い気持ちが変わらないまま、好きだったら嫁さんになって欲しい、って約束をしていたことを話した。
さすがにあっちで起こったこと全部は言えない。
トーニオに拉致られたり、崇に抱かれちゃったり、お屋敷から逃げ出してジーナと一緒に敵対組織に連れてかれた辺りは大幅にカットする。
無駄に心配させちゃうし。
実はマフィアだってことと、男娼に間違われてされちゃったことは一生の秘密にしておかなくては……。
運よく初日に崇と再会できて。
美少女みたいに可愛かった崇がファッションモデルも裸足で逃げ出すようなすっごいイケメンになってたことは、声を大にして言いたい。
あと、マンマ・ルチアの料理がどれもすごく美味しかったことも。
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