長身美形なイタリアマフィアになってた、美少女みたいに小さくて可愛かった幼馴染から売り専と間違われて監禁Ｈされた上に求婚されてしまいました。

帰国サプライズ

空港に向かってたはずが。
車が到着したのは、ヴァレンティーノが所有しているらしい飛行場だった。


どういうことかと思ったら。

乗換えの手続きが面倒だろう、と、プライベートジェットでローマ空港まで送ってくれるという。
チケットももうキャンセルしてあるし、ローマの空港へも連絡済だって。

そんなものまで所有していたことや、ロレンツォが小型ジェット機も操縦できることにびっくりしてる場合じゃなかった。


わざわざ悪いよ、と言ったら。

『君と長くいられる時間を延ばせることができるのなら何でもする。私にとって、君と過ごす時間の一分一秒が最高の幸せであり、喜びなのだから』
とか。

何なのもう！　照れ死にさせるつもりなの！？　


ロレンツォはもはや無反応だった。

自分のボスが恋人といちゃいちゃする姿なんか、仕事でも見たくはないだろうに。
ほんと、ごめんね……。

操縦に専念してください。


＊*＊*＊


ローマ空港に着いて。

空港のVIPフロアに連れて行かれてしまったのは、一般人に紛れて待ってる訳にはいかないからかな？
マフィアだし。

でも、荷物検査とか出国検査とかかなりスルーされた。
麻薬とかにクリーンな一家だから、信頼されてるのかなあ？


改めて崇に、わざわざ送ってくれてありがとう、とお礼を言って。
ロレンツォにも、運転や操縦してくれてありがとう、と言ったら。

『Di nienteお気になさらず。首領カポの大切な方を送迎するのは私にとってとても光栄な役目です。ci またvediamo近いうちに prestoお会いしましょう』
と、訛りのないイタリア語で言ってくれた。

僕がシチリア訛りだと聞き取れないから、練習してくれてたんだって。
いい人……！

なんか、すごく嬉しい。

「Grazie本当に moltoありがとう……！」


……崇、忠実な側近をそんな目で睨んじゃだめノン・ベネ。
ロレンツォは、ジェット機を整備してくるので、失礼、と言ってフロアから音もなく去って行った。


たぶん、気を遣って、搭乗時間まで二人きりにしてくれたんだよね。
ありがとう。


＊*＊*＊


崇はさっそく距離を詰めて来た。
恋人同士の距離に。

一応、側近の前だから、少しは遠慮してたんだ？


『ああ、これから君と二ヶ月もの長い間、会えないというのか。……明日からは目覚めても君は私の隣には居ないのかと思うと、今から眠るのが恐ろしくて胸が張り裂けてしまいそうだ』
はあ、と憂鬱そうに溜息を吐いている。

大袈裟だよ！

「でも、卒業して、こっちに戻ってきたら、ずっと一緒だよ？」
そう言うと。

とても嬉しそうに微笑んだ。


『そうだな。その日を楽しみに待つとしよう』

「Aspetta a首を lungo e長く aspettaして？」
『cosìそう、giraffaキリンよりも長くなってしまうかも』

「寂しくなっても、浮気しちゃ駄目だよ？」
睨むと。

崇はお手上げ、のポーズをした。

『それは、心から反省している。私の総てはもう、君だけのものだ』
頬と、口に軽くキスをされる。

「僕も、崇のものだよ」
同じように、キスを返す。


いくら人目がないからといって、こんな恥ずかしいやり取りが普通に出来るようになってしまうとは。
人生ってわからないものだなあ。


＊*＊*＊


そろそろ時間です、とスタッフが迎えに来たので。
服に乱れはないか、慌ててチェックした。

よし、大丈夫。


イタリアと日本は７時間の時差がある。
日本の方が早いから、早めに戻らないといけないのが困るな。

計算間違えたら、始業式に間に合わなくなっちゃう。

ローマから成田へのフライト時間は約12時間だ。
長時間座ってるのは疲れるけど。

眠れるといいな。


「じゃあね、崇。Ci vediamoまた後で！」

割と有名なaddioアッディーオやArriveアリヴェderciデルチはどっちもさよなら、お元気でって意味だけど。
長いお別れみたいになるから、あまり言われたくないんだって。

だから、お別れの挨拶はチ・ヴェディアーモまたね。
英語だとSee youに当たる言葉にしたんだ。


『Ciaoチャオ、Buon 良いviaggio旅を』
崇も、軽く言って。

微笑みながら手を振った。


うん。スタッフの人も思わず赤面しちゃうほどイケメンだよね。
その上、声も良いんだから。

もはや同性として嫉妬する気も起きないレベル。
むしろ、そんな表情他人に見せちゃだめ、って思う。


＊*＊*＊


他の客室乗務員が、「Compagniaコンパーニア di ディValentinoヴァレンティーノのAmminiアッミニstratoreストラーレ delegatoデレガートにお見送りされるなんて、あの子何者なの！？」と話してるのが聞こえた。

案内スタッフが咳払いをして。
彼女たちは慌てて口を閉じていた。


……ん？　ヴァレンティーノが企業コンパニーア？　ファミリア一家じゃなくて？
ええと、アッミニストラーレ・デレガートは代表取締役、だっけ。

……え？　マフィアだよね！？
どう考えても間違いなく、立派なシチリアン・マフィアだったよね！？


そういえば。
畑や牧場以外にも、色々会社とか持ってるって言ってたっけ。

表の顔、ってやつかな？
マフィアだってことは、マフィア同士しか知らない感じ？


内心の動揺を抑えつつ、スタッフに案内されたのは。
ファーストクラスの座席だった。


……サプライズ過ぎる。

席をファーストクラスにバージョンアップさせただなんて。
聞いてないし！

道理でわざわざスタッフが席までご案内してくれた訳だよ！
普通はされないよね。

超VIPの知り合いだもんね！　言えないけど、本当は恋人っていうか婚約者だけども。


表の顔が有名企業の代表取締役じゃ、そりゃ、結婚するのも一大事だよ！
正月休みに幹部も集合して、マジ会議しちゃうよ！

そんなの知らずに、のん気にマンマの料理味わってた僕ってどうなの。
美味しかったです。

あの時に全ての事情を理解してたら、緊張で食事も喉を通らなかったに違いない。
あいつすごい心臓だな、って、絶対思われた！

女装？　似合えば良いよーって。
ナニサマだよ！


頭を抱えてゴロゴロしたいけど、耐える。
だって、ファーストクラスだから！