長身美形なイタリアマフィアになってた、美少女みたいに小さくて可愛かった幼馴染から売り専と間違われて監禁Ｈされた上に求婚されてしまいました。

恋と、勘違いしていた。

この部屋は何なのか聞いたところ。


崇は、僕が二十歳になったら、強引にでもシチリアに攫ってしまおうという計画を立てていたらしい。
そのために作った部屋だって。

てっきり美人家庭教師に心惹かれてるものと考えていたので。まさか、自分に会いたくて勉強を頑張っていたとは思いもよらず。
再婚して以来、毎年正月は家族とハワイで過ごしていたし。調査の人も油断していた。

僕が冬休みにシチリアに単身で旅行をする計画を立てていたとは、誰も予想もしてなかった。

空港で別れたんだけど。
母さんたちは普段通り、ハワイの別荘へ行ったので。

後はハワイの調査班にバトンタッチしたものの。
現地で僕がいないことに気付いた調査の人は大慌てだったとか。


その時にはもう、僕はトーニオに拉致られて、男娼としてヴァレンティーノのお屋敷に連れて来られていたわけだ。


＊*＊*＊


トーニオは、初物なのでお手柔らかに、と言ったけど。

正直言って面倒だと思ってたようだ。慣れてない子が相手だと、満足できないので。
それではストレス解消にもならないから。

似てるな、とは思ったものの。
こんな場所に僕がいるとは思ってなかった崇は、男娼を抱こうとして。

似ている子が怯えて震えているのが可哀想になったので、丁寧に抱こうとした。
でも、挿入したら、抵抗されて。

タカシ、と名を呼ばれて。

まさかと思って、旧姓で確認したら。
それで間違いなく本人だと知って。

何故ここに！？　ってパニックになったけど。
名前を呼ばれたのが嬉しくて。

止められなくて、抱いちゃったとか。


崇は初めての行為の疲労で気を失ったように寝ている僕を見て。
すごく後悔したって。

でも、僕が目を覚まして、自分を崇本人だと確認したら、嬉しそうに笑ったし。
酷い目に遭わされたはずのトーニオを特に恨んでもいないように見えたので。

もしかしたら、僕の方も崇を好きで。
だから、抱かれたこと自体はそんなにショックではなかったのかもしれない、と考えた。


試しに、キスからやり直したい、と言ってキスをしてみたけど、嫌がらない。
触れても、怯えられてはいない。

だから、そのまま抱いた。


翌日も、恋人同士のおはようはチャオでいいよ、と言ったら。
すぐにチャオと応えてくれたし。

デートに連れて行っても楽しそうだった。

幹部会では、居並ぶマフィアの軍団にも怯える様子を見せないので、頼もしいなあと思いつつ。
式に、タキシードでなくてもいい？　と聞けば、似合えばいいと快諾してくれたから。

すっかり両想いだと思っていた。


でも。
改めてプロポーズをしたら。

顔色が真っ青になって。
もしかしたら。今まで、あまりに衝撃的なことが起こり過ぎていたために、現実逃避をしていただけではないかと思い立った。


思い返してみれば、まるで幼子みたいな反応で。
ぼんやりしていたな、と。

冷静にさせてはいけない、と思って抱いたけど。
心ここにあらずで。

身体だけでも、陥落させようと頑張ったって。


＊*＊*＊


『……で、翌朝、様子がおかしいので一人にして様子を見ていたら。君は母親のワンピースを着て、逃げてしまった』

それで、相談もせず逃げ出すほど疎まれているのかと思って。

少し早いけど、当初の計画を遂行しようと思ったそうだ。
僕を捕まえて、この屋敷に閉じ込める計画を。


どこから突っ込んだらいいのかわかんないけど。

二十歳になったら攫おうと思ってたって。
……まさかこの部屋、その為に作ったものだったの……？

あと、日本だけじゃなく、ハワイにまで調査班、派遣してるの？
ヴァレンティーノの関係者って、全世界にいるの？

普段は他の仕事をしてるなら、まあいいか。
よくないけど。


それから。
僕を尾行する様子の怪しい男を捕まえつつ、屋台村でやっと僕に追いついて。

プロポーズを断るのは、惚れた女がいるからか？　とかまを掛けてみたら、やはり家庭教師に惚れているようなので。
思わず真実を告げてしまい。

大嫌いだの絶交だの言われて、ものすごくショックだった、って言うけど。


「でも、あれはどう考えても崇が悪いよ？」
『そうだな。嫉妬でどうかしていた。……思い違いであればいいと願っていたのだが……』

「いや、崇が愛理さんに嫉妬すること自体、間違ってるよ。もう他人のプライベート勝手に調べちゃ駄目だからね？　セクハラだよ？」


『……私には関係ないからか？　手厳しいな』
寂しそうに笑ってるけど。

「そうじゃなくて。ずっと一人っ子だったから、勘違いしてた。好意は好意でも、敬愛だったってことに、やっと気づいたんだ」


『……え？』


＊*＊*＊


とりあえず。
昨日、屋台村のところから、何があったかを説明することにした。


崇から逃げていたところを助けてくれた女性が、偶然にも、トーニオの妹で。
事情を話したら、すごく親身になってくれて。

完璧に女装すればバレずに普通に逃げられるんじゃないか、って話になって。
あんな本格的な女装をすることになった。


変装は完璧で。
僕を探してるヴァレンティーノの部下達の目の前を歩いても、気付かれなかった。

バス通りまで出たら、敵対組織の連中に攫われたけど。
その目的はジーナで。

トーニオに対する人質としてだったから、僕の正体はバレてなかった。


敵対組織の潜伏場所に連れて行かれて。
トーニオは痛い目に遭わされても、僕の情報を話してなかったことを知った。

話したら、どんな酷い目にあうか、想像できたんだろう。

ジーナも、やつらの目的が僕だってわかってたのに。
僕を庇って、嘘をついてくれたんだ。

その上、崇からも僕を救い出そうとしてくれたんだって、説明した。


「それで。あの時、ジーナに抱いた気持ちと、愛理さんに抱いてた気持ちが同じものだって気がついたんだ」

『……ジーナにも恋をしたのか？』

「ちーがーうー」
訝しげな顔をしている崇の腕を、ぺちぺち叩く。

そんな見境なく惚れたりするほど、軽くないし！


「ジーナってかっこいいお姉さんだな、っていうのと、愛理さんって頭良くて勉強教えるのうまくてすごいな、っていう気持ちが同じで。恋愛感情とは別だってわかったの！」