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敵対組織のアジトにて
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『いや、その足でヴァレンティーノに垂れ込まれちゃ困るからな。あんたの人質として連れて行こう』
男たちに、逃げ道を塞がれる。
嘘。
こんな時間から、街中で堂々と人攫い!?
どういう訳か、通行人はいないみたいだ。……人払いでもしたのかな?
『何なら、その客の倍払うから、俺たちと遊んでもらおうか』
『俺、二番目でもいいぜ』
周りの男が、下卑た笑いを浮かべていた。
僕の胸元を、いやらしい目つきで覗き込んで見ている。
……うわ、気持ち悪っ!
痴漢に狙われた女の人って、こんな最悪な気持ちになるんだって知った。
視線だけでも、充分セクハラに思えるよ……。
『だめだよ。その子の水揚げは、私が認めた男だって決めてんだ。気安く触るんじゃないよ、』
ジーナが睨むと。
こわいこわい、と言ってへらへらと笑っている。
完全にバカにしてるような、嫌な感じだ。
黒服の男たちによって、ジーナと僕は、ワンボックスカーに押し込まれてしまった。
*****
ジーナは、巻き込んでごめん、と僕に謝ったけど。
実際、トーニオとジーナを巻き込んでしまったのは、僕のようなものだ。
知らなかったとはいえ、街中で軽はずみにヴァレンティーノの首領である崇の名前を出したりしたから。
こんな奴等に目をつけられて。
トーニオも敵対組織に攫われちゃったんだ。
……いや、待った。
そもそも悪いのは、麻薬に手を出した、この敵対組織じゃない?
覚醒剤密造とか、最低最悪の犯罪組織じゃないか。
ヴァレンティーノの先々々代とやらも、壊滅寸前まで追い込んだなら、いっそ根こそぎ壊滅させちゃえば良かったのに。生温いよ。
とか物騒な考えに至るけど。
生き残りが女子供だったら、手を出せないかも、と思った。
壊滅までは追い詰めなかったのは、案外、そういう理由だったのかもしれない。
しばらくして。
どこか町外れの一軒家らしきところの前で、車が停まって。
車から降りるよう言われる。
僕がトーニオに攫われた時は、目隠しされたっけ。
あれは、相手がどこの誰だかは知らない方がいいだろう、って配慮ではあったんだろう。
絶対に逆らうなよ、とも警告してたし。
……最初から口封じするつもりだから、僕達にアジトの場所を知られても構わない、と。
あえて目隠しもしなかったし何も隠してない、とかだったら嫌だなあ。
*****
中に入って。
地下室っぽい部屋に行くと。
トーニオは、簡素なベッドに寝かされていた。
ぐったりしてるようだけど、息はあるみたい。
背中が少し上下に動いてる。
『兄貴、大丈夫?』
ジーナの声に、トーニオが目を開けた。
『……ジーナ? 何故ここに……。あんたら、まさか。ジーナにまで手を、』
苦しそうな顔で、男を睨みつけた。
『妹さんは、自分からついてきてくれたんだがね? ……さあて、そろそろ正直に話す気になったか?』
帽子の男はつかつかと、トーニオのところへ歩いていって。
胸のあたりをぽんぽんと叩いた。
多分、骨折してる場所だ。
自分たちは何もしてない、っていうけど。
こうやって、痛む場所をわざと痛めつけてたんだろう。最低な奴等だ。
『うぐっ……、』
兄の苦しむ姿を見て。
ジーナは側にいた男の手を振り払って兄の元に駆け寄った。
『ちょっと、兄貴に乱暴しないで。……兄貴、ヴァレンティーノの何を聞かれたんだか知らないけど、とっとと喋っちゃえばいいだろ!』
トーニオは、胸を押さえて黙り込んでいる。
『我々が聞きたいのは、ヴァレンティーノのカポのお気に入りの話だ。商品として出す前に、荷物を取り上げて、そいつの名前くらいは見たんだろう? 中国人か、日本人か、人種くらいはわかるんじゃないか?』
夜中、ヴァレンティーノの屋敷から出てきた手下が、トーニオの仕事部屋に押し入って。
荷物を回収して行ったのを見た仲間がいるという。
……まだ、敵対組織に僕の情報を知られた訳じゃなかったのか。
名前も年齢も、知られてなかった。
トーニオが、黙っていてくれたから。
*****
『ヴァレンティーノのカポのお気に入りだって……?』
ジーナは、それが僕のことだと気付いたようだ。
一瞬こっちを見ようとした視線を、ぐるりと回した。
『あいつフロッチョだろ? 兄貴の店で良く買ってるってね。……で、兄貴からそいつの話を聞き出して、どうしようっての?』
『そりゃあ、隙を見て、丁重にこちらにお迎えして。薬で気持ち良くなってもらって、みんなで可愛がってやるのさ』
『そのデータをヴァレンティーノのカポに送りつけて、高く売りつけたりしてな?』
『搾り取れなくなったら、カポを呼び出して、廃人になった恋人と涙のご対面をさせて……仲良く埋めてやるとか?』
それを聞いて、ジーナは真っ青になった。
男達は、恐ろしい計画を妄想して。
楽しそうに笑っている。
あまりにゲスすぎて、もう言葉が出ないレベルだ。
麻薬に手を出すような組織だし、まともな感性があるはずもないか。
トーニオは、ヴァレンティーノの報復が怖いんじゃなくて。
もしかして。
自分が話せば、どんな結果になるのか予想がついていたから、情報を吐かなかったの?
『だから、そいつは、財布くらいしか持ってなかった、って言っただろうが。大事な荷物は、アルベルゴにでも置いといたんだろ。……痛い思いまでして情報隠して、俺に何の得があるんだよ。こっちは骨、折られてんだぞ?』
トーニオは、顔色がすごく悪くなっている。
折れた肋骨を叩かれてたし。
内臓に刺さったりして、傷付いてるのかも。
早く病院に連れてってあげないと、危ないんじゃないかな……。
男たちに、逃げ道を塞がれる。
嘘。
こんな時間から、街中で堂々と人攫い!?
どういう訳か、通行人はいないみたいだ。……人払いでもしたのかな?
『何なら、その客の倍払うから、俺たちと遊んでもらおうか』
『俺、二番目でもいいぜ』
周りの男が、下卑た笑いを浮かべていた。
僕の胸元を、いやらしい目つきで覗き込んで見ている。
……うわ、気持ち悪っ!
痴漢に狙われた女の人って、こんな最悪な気持ちになるんだって知った。
視線だけでも、充分セクハラに思えるよ……。
『だめだよ。その子の水揚げは、私が認めた男だって決めてんだ。気安く触るんじゃないよ、』
ジーナが睨むと。
こわいこわい、と言ってへらへらと笑っている。
完全にバカにしてるような、嫌な感じだ。
黒服の男たちによって、ジーナと僕は、ワンボックスカーに押し込まれてしまった。
*****
ジーナは、巻き込んでごめん、と僕に謝ったけど。
実際、トーニオとジーナを巻き込んでしまったのは、僕のようなものだ。
知らなかったとはいえ、街中で軽はずみにヴァレンティーノの首領である崇の名前を出したりしたから。
こんな奴等に目をつけられて。
トーニオも敵対組織に攫われちゃったんだ。
……いや、待った。
そもそも悪いのは、麻薬に手を出した、この敵対組織じゃない?
覚醒剤密造とか、最低最悪の犯罪組織じゃないか。
ヴァレンティーノの先々々代とやらも、壊滅寸前まで追い込んだなら、いっそ根こそぎ壊滅させちゃえば良かったのに。生温いよ。
とか物騒な考えに至るけど。
生き残りが女子供だったら、手を出せないかも、と思った。
壊滅までは追い詰めなかったのは、案外、そういう理由だったのかもしれない。
しばらくして。
どこか町外れの一軒家らしきところの前で、車が停まって。
車から降りるよう言われる。
僕がトーニオに攫われた時は、目隠しされたっけ。
あれは、相手がどこの誰だかは知らない方がいいだろう、って配慮ではあったんだろう。
絶対に逆らうなよ、とも警告してたし。
……最初から口封じするつもりだから、僕達にアジトの場所を知られても構わない、と。
あえて目隠しもしなかったし何も隠してない、とかだったら嫌だなあ。
*****
中に入って。
地下室っぽい部屋に行くと。
トーニオは、簡素なベッドに寝かされていた。
ぐったりしてるようだけど、息はあるみたい。
背中が少し上下に動いてる。
『兄貴、大丈夫?』
ジーナの声に、トーニオが目を開けた。
『……ジーナ? 何故ここに……。あんたら、まさか。ジーナにまで手を、』
苦しそうな顔で、男を睨みつけた。
『妹さんは、自分からついてきてくれたんだがね? ……さあて、そろそろ正直に話す気になったか?』
帽子の男はつかつかと、トーニオのところへ歩いていって。
胸のあたりをぽんぽんと叩いた。
多分、骨折してる場所だ。
自分たちは何もしてない、っていうけど。
こうやって、痛む場所をわざと痛めつけてたんだろう。最低な奴等だ。
『うぐっ……、』
兄の苦しむ姿を見て。
ジーナは側にいた男の手を振り払って兄の元に駆け寄った。
『ちょっと、兄貴に乱暴しないで。……兄貴、ヴァレンティーノの何を聞かれたんだか知らないけど、とっとと喋っちゃえばいいだろ!』
トーニオは、胸を押さえて黙り込んでいる。
『我々が聞きたいのは、ヴァレンティーノのカポのお気に入りの話だ。商品として出す前に、荷物を取り上げて、そいつの名前くらいは見たんだろう? 中国人か、日本人か、人種くらいはわかるんじゃないか?』
夜中、ヴァレンティーノの屋敷から出てきた手下が、トーニオの仕事部屋に押し入って。
荷物を回収して行ったのを見た仲間がいるという。
……まだ、敵対組織に僕の情報を知られた訳じゃなかったのか。
名前も年齢も、知られてなかった。
トーニオが、黙っていてくれたから。
*****
『ヴァレンティーノのカポのお気に入りだって……?』
ジーナは、それが僕のことだと気付いたようだ。
一瞬こっちを見ようとした視線を、ぐるりと回した。
『あいつフロッチョだろ? 兄貴の店で良く買ってるってね。……で、兄貴からそいつの話を聞き出して、どうしようっての?』
『そりゃあ、隙を見て、丁重にこちらにお迎えして。薬で気持ち良くなってもらって、みんなで可愛がってやるのさ』
『そのデータをヴァレンティーノのカポに送りつけて、高く売りつけたりしてな?』
『搾り取れなくなったら、カポを呼び出して、廃人になった恋人と涙のご対面をさせて……仲良く埋めてやるとか?』
それを聞いて、ジーナは真っ青になった。
男達は、恐ろしい計画を妄想して。
楽しそうに笑っている。
あまりにゲスすぎて、もう言葉が出ないレベルだ。
麻薬に手を出すような組織だし、まともな感性があるはずもないか。
トーニオは、ヴァレンティーノの報復が怖いんじゃなくて。
もしかして。
自分が話せば、どんな結果になるのか予想がついていたから、情報を吐かなかったの?
『だから、そいつは、財布くらいしか持ってなかった、って言っただろうが。大事な荷物は、アルベルゴにでも置いといたんだろ。……痛い思いまでして情報隠して、俺に何の得があるんだよ。こっちは骨、折られてんだぞ?』
トーニオは、顔色がすごく悪くなっている。
折れた肋骨を叩かれてたし。
内臓に刺さったりして、傷付いてるのかも。
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