長身美形なイタリアマフィアになってた、美少女みたいに小さくて可愛かった幼馴染から売り専と間違われて監禁Ｈされた上に求婚されてしまいました。

置かれた現状

『私の腕の中で、他のことを考えるのは許さない。全身で、私だけを感じなさい』
耳元で囁かれて。

胸の先をくにくにと捏ね回されて。
ぞくぞくして、中の崇を、きゅっと締め付けてしまう。

気持ち良くて。
崇の腕にしがみつく。


『そう、いい子だ。……私の、可愛い奏太。……この身体も、心も。私だけのものだろう？』
問われて。

別の意味でぞくりとした。

……まさか。
すでに僕の片思いの相手を知られてるんじゃないか？


唯一の弱点、って言うくらいだ。
家族構成や、出入りしている家庭教師とか。こっちの現状をある程度把握しててもおかしくはない。


『奏太は優しすぎる。トーニオの行方など、どうだっていいだろうに』
崇は平坦な声で呟いた。

……そっちか！


僕を攫ったとき。

連れて来たのが自分の所だったから良かったものの。
もしも他へ行かせていたら、僕が何と言おうとヤツは魚の餌だった、って怒ってる。

……ヴァレンティーノ・ファミリアーリはクリーンなマフィアだって言ってたの、覚えてる？

でも、逆に言えば、トーニオに攫われなかったら、こうやって再会できてたかどうか怪しいよ？
だからって、別にトーニオに感謝とかしないけど。


＊*＊*＊


『奏太の中に、出したいけど。……身体に良くないそうだから、自重しないとね』

二個目のプレゼルヴァティヴォコンドームを装着しながら崇が言った。
精液はアルカリ性だから、長い間放置すると炎症を起こすんだって。

ああ、またいらない知識を覚えてしまった。


っていうかそれ、さっきロレンツォから訊いたの？　ロレンツォって、そういうのに詳しいんだ。
生真面目そうなのに。意外。

女の人なら常に酸性に保たれてるので大丈夫らしい。

人体って不思議だ。
こんな大きいのがすっぽり入っちゃう、自分の身体も含めて。


……トーニオと言えば。
ヴァレンティーノの掟とやらを破ってまで。一般人の僕を拉致しちゃうくらい、どうして焦ってたんだろ？

そんなに人材がいなかったのかな？　時期的な問題？
年末年始だったからみんな帰省してたとか？


「崇は、何で東洋系の男の子ばっかり呼んでたの？　男の子以外はダメな人なの？　っていうか、金髪とかじゃダメなの？」
訊くと、心外そうな顔をした。


あんまり過去の話はしたくないけど。
大学生時代には一応、女の人とも経験したという。

え、それなのに、僕だけ他に経験するのは許さないって、ずるくない……？

でも、迫ってきた女の人の三人に一人は暗殺者だった、とかいうスリリングすぎる女性経験はしたくないな……。


崇も自分の性癖には悩んでいて。
色々試してみたけど、やっぱり抱きたいって思うのは僕だけだったって。

肉欲を発散するのに、せめて似た感じの感触が欲しくて。
東洋系の少年を呼んで、ほとんど顔は見ずに、後ろからしてたとか。


ただの性欲発散でしかない行為だから、愛情はないし妬かなくていいって？
別に妬いてないし。

そこまで詳しくは聞きたくなかったかな……。


＊*＊*＊


なるべく見ないようにしてるので、顔とかは覚えてないけど。
長く指名していることで”ボスのお気に入り”になっちゃうと、その子の身も危なくなるので、定期的に人を替えてたそうだ。

でも、崇のところへ出せるレベルの東洋人系の少年っぽい成人の男娼なんて、そうそう見つからないんじゃないかな。

何てったって、マフィアのボスだよ。ボス。
何か失礼があれば、魚の餌だ。


それでトーニオは焦って。
掟破りだけど、ちょうどボスの好みにぴったりだった観光客の僕に目をつけて攫ったのかもしれない。

そりゃボスの好みなのは当然だよな。本人なんだから。


あれ？
結局それって、崇のせいじゃないの……？


「ひぁ、や、ああっ、」
パンパンと音が鳴るくらい、激しく腰を叩きつけられた。

『あれほど言ったのに。他の男のことを考えていたね？　悪い子だ』

……自分から先にトーニオの話を振っておいて。
集中しろ、って怒るのはずるくない？


『奏太、愛している。……私の、大切な、奏太』
愛を囁かれながら。


揺さぶられて、突き上げられて。
それが、気持ちいいなんて。


こんなの、望んでないのに。


＊*＊*＊


朝になって。
身体がだるくて起きられないって言ったら。

僕の分の朝食をベッドサイドまで持って来てくれた。


でも、あまり食欲がない僕を、崇は心配そうに覗き込んだ。
『二日酔いだろうか……医者を呼んで診てもらう？』

お酒も飲んでないのに、何で二日酔いになるんだよ？
違うよ。


「……調子悪い理由、お医者さんに言うの、恥ずかしいから、やだ」
布団に潜り込むと。

崇に掛け布団の上から撫でられて。

『ああ、……そうか。無理をさせたのか。すまなかった』


そうだよ。
崇がみんな悪いんだ。

こんな展開、予想もしてなかった。


崇を探しには来たものの。
まさか初日に見つかるとか思ってなかった。

シチリアといっても、広いんだし。

何日かかけて探してみて。
運よく見つかったとして。顔を見れたらいいな、って。

それだけでも奇跡みたいなものだと。


子供の頃そのまんまの、美少女みたいな容姿のままでいるとまではさすがに思ってなかったけど。
お互い大きくなったな、みたいに喜び合って。

それで、今度は自力でお金貯めて来るよ、なんて言って。
番号教えあって、メールでやりとりしたり。

本場で使われてるイタリア語なんか教えてもらっちゃったりとか。
そんな風になったらいいなって。


＊*＊*＊


でも、本当は。
崇を見つけるのは無理だろうな、と内心では思ってた。


10年以上前に離れ離れになった幼馴染みと奇跡的に再会、だなんて。
物語じゃあるまいし、ありえない。

僕のことなんか、すっかり忘れてる可能性だってあった。

だから、幼馴染みの育った国を。シチリアの街並みを見て。
元気だといいな、って願いながら帰るだけで、満足しようと思ってたんだ。


なのに、現状はこうだ。
売春ブローカーのチンピラに拉致られて。銃で脅されて男娼として派遣されて。

売られた相手は、探していた崇本人で。
女の子みたいに可愛かった幼馴染みが、ガタイのいい、ファッションモデルも真っ青なイケメンに育ってただけじゃなく、イタリアマフィアの首領になってた。


誤解が解けて、再会を果たしたと思いきや。
ずっと好きだったって告白されて。そのままもう一回抱かれちゃって。

マフィアの幹部達の前でも、ボスの嫁として正式に紹介されちゃった。
……僕が女装して、崇と結婚式を挙げるって、幹部達に認識されたんだよな。


そんなつもり、全然なかったのに。

その上、僕までヴァレンティーノの敵対組織から目をつけられちゃって。
日本に戻るのも、危ないとか。


もう、どうしたらいいのかわかんないよ。