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謎の幹部会議
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第二の皿、メインの肉・魚料理が来る前に。
少しいいだろうか、と。
比較的近い席についている壮年の男性が手を上げた。
「bene」
崇が頷くと、その男は僕を見て。
『本日はボスからpromessa sposaを紹介いただける、との話でしたが。隣の方でしょうか? 失礼ながら、少年のように見えるのですが?』
プロメッサ・スポーザ?
約束の、スポーザ……って何だっけ。スポーツはスポルトだしなあ。
「Non è una promessa sposa、 Lui è un uomo per essere mia moglie」
崇が何か言ったけど。
考え事してたし、早口だったせいでほとんど聞き取れなかった。
崇の発言で。
途端に、幹部たちがざわついた。
ミケーレだけは楽しそうにニヤニヤしている。
何て言ったんだろ?
ええと、確か、プロメッサ・スポーザではない、彼はモーリエになる男だ、とか何とか。
あ、思い出した。
Maritoが夫で、妻がmoglieだ。
……ん? 妻になる、男? 何それ。
聞き間違ったかな?
*****
『お前は知っていたのか、ミケーレ?』
厳しい顔でミケーレに言ったのは。
老けたけど、忘れもしないあの顔。マリオ……崇の伯父さんだ。
つまり、ミケーレのお父さん。
あ、崇の名前で探せなかった場合、マリオおじさんの名前で探せばよかったのかな?
いや、それも下手したらまずいことになるか……。
マフィアだもんな。
万が一、聞いた相手が敵対してる組織とかだったら危ない。
って、それは崇でも同じだった。
マフィアだって知らなかったとはいえ。一歩間違ったら、男娼として売られるより酷いことになってたかもしれないのか。
知らないって怖い。
崇はパン、と手を叩いて。
『話は食事の後だ』
みんなが沈黙した後、扉が開いて。
第二の皿が運ばれてきた。
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ。
フィレンツェ風Tボーンステーキだ。
うわあ、ボリュームがすごい……。
でも僕の前に来た料理は、Tボーンステーキではなく、タリャータだった。
牛の肩ロースをステーキにしてカットしたもの。
僕はそんなにたくさんの肉は食べられないから、マンマが気を利かせてボリュームダウンしてくれたのかな?
ありがたい。
その上、最高に美味しい。後でお礼を言わなくちゃ。
『マンマ・ルチアからも特別扱いか、』
マリオおじさんの声が聞こえたけど。
特別扱いっていうか、マンマが優しいだけだよ。
*****
デザートはTiramisùだ。私を元気付けて! って意味のデザート。
型にエスプレッソコーヒーを染み込ませたビスケットを敷き詰めて。
その上からカスタードソースとマスカルポーネチーズを合わせたザバイオーネ・クリームを流して固めて、表面にココアパウダーをかけたもの。
ああもう、マスカルポーネの風味が最高すぎて悶えそう……!
染み込んだエスプレッソの苦味も絶妙で。
お腹いっぱいなのに、いくらでも食べられそうだ。
むしろこのザバイオーネ・クリームなら飲める。
ジョッキでいける。
……崇、何でそんな幼子を見るような目で見てるの……?
あ、口許にココアパウダーがついてた?
やだな、見てないで早く言ってよ。恥ずかしい。
いや、いいって、自分で拭けるから!
もうそんな子供じゃないし!
食後のコーヒーが運ばれてきて。
マリオおじさんが咳払いした。
『ボスの気持ちは、充分に理解した。確かに、この子は特別なようだ』
だがアメリカやフランスにいる幹部や部下たちに面目が立たないのでは、最近は珍しくもないかもしれないが、やはり後継者がいないことには、とか言ってる。
仕事の話かな?
ミケーレが手を挙げて。
『俺とジュリアの子供にeredeさせるから問題ないって言ってたよ』
『ああ、それなら……』
『マリオの子と、パパ・ダーリオの妹の子供なら、文句は出ないだろう』
何の話だろう、と首を傾げていたら。
ジュリアというのは崇の従兄妹で。
故人である崇の父親、ダーリオの妹の娘さんだという。
もしかして、ミケーレとそのジュリアさんが結婚するの?
今はフランスにいるけど、しばらくしたら親子で挨拶に来るだろう、って。
近いうちに、二人の婚約パーティでもあるのかな?
それはおめでとう。
さっき言ってた式ってそのことだったのかな?
*****
『だが、古いといわれようが、ファミリーとしては、男のmoglieを認めるわけには……』
『男じゃなければ問題ないなら、表向きにはお嬢さんになってもらえばいいと思いまーす』
ミケーレがニヤニヤしながら言ってる。
何で僕に向けてウインクしてるの?
『なにをバカな、』
『でも、似合いそうじゃない?』
幹部たちがざわざわしてる。
何の話だろう。
さっぱり流れがわかんない。
「奏太。smoking……タキシードじゃないと嫌?」
突然、崇に声を掛けられた。
タキシードって。
夕食の時の服の話かな?
「別に服にこだわりはないけど……みっともないと思われない格好で、似合えば何でもいいんじゃない?」
七五三みたいになってたら嫌だけど。
崇が用意してくれたこの服は身体に合ってるようで、素敵だと思う。
趣味がいいんだろうな。
崇の服も、すごく似合っていて素敵だ。
『似合うものなら、問題はないとのことだ』
おお、とまたざわめきが拡がる。
え、まさか、僕の服の話だったの? 何でそれでみんなざわついてるの?
『じゃあ知り合いのディセニャトーレを呼んで、最高のものを仕立てよう。では、そういうことで。解散』
ミケーレが手を叩いた。
『お前が締めるな、ミケーレ』
崇の突っ込みに、笑いが起こった。
あれ? さっきまでみんな深刻そうな様子だったのに。
一転して、和やかな雰囲気に……。
結局、何の話だったんだろ。
少しいいだろうか、と。
比較的近い席についている壮年の男性が手を上げた。
「bene」
崇が頷くと、その男は僕を見て。
『本日はボスからpromessa sposaを紹介いただける、との話でしたが。隣の方でしょうか? 失礼ながら、少年のように見えるのですが?』
プロメッサ・スポーザ?
約束の、スポーザ……って何だっけ。スポーツはスポルトだしなあ。
「Non è una promessa sposa、 Lui è un uomo per essere mia moglie」
崇が何か言ったけど。
考え事してたし、早口だったせいでほとんど聞き取れなかった。
崇の発言で。
途端に、幹部たちがざわついた。
ミケーレだけは楽しそうにニヤニヤしている。
何て言ったんだろ?
ええと、確か、プロメッサ・スポーザではない、彼はモーリエになる男だ、とか何とか。
あ、思い出した。
Maritoが夫で、妻がmoglieだ。
……ん? 妻になる、男? 何それ。
聞き間違ったかな?
*****
『お前は知っていたのか、ミケーレ?』
厳しい顔でミケーレに言ったのは。
老けたけど、忘れもしないあの顔。マリオ……崇の伯父さんだ。
つまり、ミケーレのお父さん。
あ、崇の名前で探せなかった場合、マリオおじさんの名前で探せばよかったのかな?
いや、それも下手したらまずいことになるか……。
マフィアだもんな。
万が一、聞いた相手が敵対してる組織とかだったら危ない。
って、それは崇でも同じだった。
マフィアだって知らなかったとはいえ。一歩間違ったら、男娼として売られるより酷いことになってたかもしれないのか。
知らないって怖い。
崇はパン、と手を叩いて。
『話は食事の後だ』
みんなが沈黙した後、扉が開いて。
第二の皿が運ばれてきた。
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ。
フィレンツェ風Tボーンステーキだ。
うわあ、ボリュームがすごい……。
でも僕の前に来た料理は、Tボーンステーキではなく、タリャータだった。
牛の肩ロースをステーキにしてカットしたもの。
僕はそんなにたくさんの肉は食べられないから、マンマが気を利かせてボリュームダウンしてくれたのかな?
ありがたい。
その上、最高に美味しい。後でお礼を言わなくちゃ。
『マンマ・ルチアからも特別扱いか、』
マリオおじさんの声が聞こえたけど。
特別扱いっていうか、マンマが優しいだけだよ。
*****
デザートはTiramisùだ。私を元気付けて! って意味のデザート。
型にエスプレッソコーヒーを染み込ませたビスケットを敷き詰めて。
その上からカスタードソースとマスカルポーネチーズを合わせたザバイオーネ・クリームを流して固めて、表面にココアパウダーをかけたもの。
ああもう、マスカルポーネの風味が最高すぎて悶えそう……!
染み込んだエスプレッソの苦味も絶妙で。
お腹いっぱいなのに、いくらでも食べられそうだ。
むしろこのザバイオーネ・クリームなら飲める。
ジョッキでいける。
……崇、何でそんな幼子を見るような目で見てるの……?
あ、口許にココアパウダーがついてた?
やだな、見てないで早く言ってよ。恥ずかしい。
いや、いいって、自分で拭けるから!
もうそんな子供じゃないし!
食後のコーヒーが運ばれてきて。
マリオおじさんが咳払いした。
『ボスの気持ちは、充分に理解した。確かに、この子は特別なようだ』
だがアメリカやフランスにいる幹部や部下たちに面目が立たないのでは、最近は珍しくもないかもしれないが、やはり後継者がいないことには、とか言ってる。
仕事の話かな?
ミケーレが手を挙げて。
『俺とジュリアの子供にeredeさせるから問題ないって言ってたよ』
『ああ、それなら……』
『マリオの子と、パパ・ダーリオの妹の子供なら、文句は出ないだろう』
何の話だろう、と首を傾げていたら。
ジュリアというのは崇の従兄妹で。
故人である崇の父親、ダーリオの妹の娘さんだという。
もしかして、ミケーレとそのジュリアさんが結婚するの?
今はフランスにいるけど、しばらくしたら親子で挨拶に来るだろう、って。
近いうちに、二人の婚約パーティでもあるのかな?
それはおめでとう。
さっき言ってた式ってそのことだったのかな?
*****
『だが、古いといわれようが、ファミリーとしては、男のmoglieを認めるわけには……』
『男じゃなければ問題ないなら、表向きにはお嬢さんになってもらえばいいと思いまーす』
ミケーレがニヤニヤしながら言ってる。
何で僕に向けてウインクしてるの?
『なにをバカな、』
『でも、似合いそうじゃない?』
幹部たちがざわざわしてる。
何の話だろう。
さっぱり流れがわかんない。
「奏太。smoking……タキシードじゃないと嫌?」
突然、崇に声を掛けられた。
タキシードって。
夕食の時の服の話かな?
「別に服にこだわりはないけど……みっともないと思われない格好で、似合えば何でもいいんじゃない?」
七五三みたいになってたら嫌だけど。
崇が用意してくれたこの服は身体に合ってるようで、素敵だと思う。
趣味がいいんだろうな。
崇の服も、すごく似合っていて素敵だ。
『似合うものなら、問題はないとのことだ』
おお、とまたざわめきが拡がる。
え、まさか、僕の服の話だったの? 何でそれでみんなざわついてるの?
『じゃあ知り合いのディセニャトーレを呼んで、最高のものを仕立てよう。では、そういうことで。解散』
ミケーレが手を叩いた。
『お前が締めるな、ミケーレ』
崇の突っ込みに、笑いが起こった。
あれ? さっきまでみんな深刻そうな様子だったのに。
一転して、和やかな雰囲気に……。
結局、何の話だったんだろ。
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