長身美形なイタリアマフィアになってた、美少女みたいに小さくて可愛かった幼馴染から売り専と間違われて監禁Ｈされた上に求婚されてしまいました。

思いがけない再会

思わず崇に助けを求めた直後、男の動きが、ぴたっと止まった。


『今のは、日本語……？　何故、私の名を……、トーニオから聞いたのか？　いや、まさか、』
戸惑うような声。

トーニオって誰だろう。
あのチンピラみたいな男の名前かな？


あれ？
……今、自分のil mio名前 nome、って言った？


この人、鼻も高いし、顔つきからしてどう見てもイタリア人だけど。
偶然、タカシって名前だったのかな？

じゃあ、何であのチンピラは知らないって言ったんだろう？


＊*＊*＊


『君の名前を、教えてくれ』

「ひゃう、」
強引に上半身を仰向けにされて。

中に入っているものに、ごり、って抉られる感覚。
ぞくぞくして、涙が出た。


『っ、乱暴にして、すまなかった。……君は、成人で。ウサタ、という名ではなかったのか？』
眉間に皺を寄せて、至近距離で訊かれる。

さっきの男から、一応名前は聞いていたのかな？
かなり省略されてるようだけど。


「 noノ、宇佐美です……宇佐美、奏太……、今年で18だから、まだ成人じゃ……あ、イタリア語で言わないと……、」

ショックで吹っ飛んだのか。
覚えたはずのイタリア語が一瞬出て来なくて、悩んでいたら。

男は、綺麗な青い目を見開いた。


「宇佐美、奏太……？　まさか……以前の名は、稲葉奏太……？」

「え？　何で僕の、前の名前……。お母さんが６年前に再婚したから、苗字が変わったんだけど。……あれ？　今の日本語だった？」
今、日本語で話してたような気がする。


「Minchiaちくしょう！　mio dioなんてこった」
「え？」

「……くっ、ごめん、奏太。話は後で、」
そう言って。


崇と同名だという男は、僕の腰を掴んで。
めちゃくちゃに叩きつけてきた。

揺さぶられている内に、何だかそれが気持ち良く感じて。


覚えているのは、腰を掴む男の手の力強さ。
お腹の中をぐちゃぐちゃに掻き回される、何とも言えない奇妙な感覚。

お腹の奥に感じた、熱い飛沫。

何度も中に出されて。
僕も、男の手で射精させられて。


いつの間にか、意識を失っていた。


＊*＊*＊


ちゃぷ、と水音がして。

あたたかいお湯の中にゆらゆらと浮かんでいるような感覚。

気持ちいい。


背中には、固いものの感触が当たっている。
ほどよい弾力のある。

これは、何だろう？


「奏太？　気がついたか？　……悪かった。まさか、本・人・がこっちに来るとは思いもしていなかった。実物は、こんなに可愛かったなんて。本物の君を目の前にして。あまりの愛おしさから、止まらなくなってしまった。……どこか痛いところは？」
優しい手つきで、頭を撫でられている。

「……？」

振り向くと。
物凄くハンサムな男が、風呂の中で僕を抱っこしていた。

濡れて掻き上げたような髪少し額に残っていて。それがやたら色っぽい。
男性フェロモン多そうなイケメンだなあ。

固いと思ったのは、胸板か。
……この顔、どこかで見たような。

あ。
そうだ。

僕、この男に犯されたんだった。


思わず逃げようとしたら。
腕を掴まれて、引き寄せられてしまった。

「わからない？　崇だ。……御木本崇。今は、違う名前を名乗っているけど。奏太の幼馴染みの、崇だ」

日本語で。
どこか辛そうに、名を名乗った。


「ええっ！？」

自分を御木本崇だと名乗る男の顔を、良く観察する。
髪も眉も長い睫毛も真っ黒で。

憂いを帯びたような薄く青い瞳。
鼻筋の通った彫りの深い顔。薄い唇。

秀でた額。シャープな頬から顎のラインも完璧で。

身体つきもしっかりしてて、む、胸毛……。
うわ、腹筋すごい。


……うん、どこをどう見ても一部の隙も無い、イタリアのイケメンだ。

ほぼ別人って言うか。
面影のかけらすらないっていうか。

全然違うじゃないか！


＊*＊*＊


「でも。全然面影ないよ！？　昔は、美少女みたいに可愛かったし。髪も金髪っぽかったのに」

「髪は、どんどん黒くなったんだ。子供の頃だけ色素が薄いことは、良くあるらしい。顔は……そんなに変わったかな？」
顎の辺りに手を当てて、首を捻っている。

困ったような顔は、少しだけ……面影が無くもない、かな？
昔から、顔立ちはすごく整ってた。


じゃあ。
「ほんとに、崇、なの……？」

「ああ。奏太、会いたかった……！　大人になったら迎えに行こうと思っていたのに。まさか、そっちから会いに来てくれるなんて……！」
嬉しそうに、ぎゅっと抱き締められた。


固い胸板。
力強い腕。大きな身体。

もう、21歳なんだっけ？　すっかり大人の男になっちゃって。


声も、身体も。
顔も男前になっちゃって。

ずいぶん昔と変わったように見えるけど。
僕が大人になったら、会いに来てくれるつもりだったんだ。

……約束、覚えていてくれたんだ。
嬉しい。

だけど。


「崇は、観光客を拉致して脅して売春させるような人から、その……買・っ・て・たの……？」

なんていうか。……趣味は、人それぞれだけど。
犯罪は、いけないと思う。


崇はびくり、と身体を震わせた。
『ああ、そうだった。あいつには、私の大切な奏太に酷い真似をした報復を与えなければ……』
低い声で、イタリア語で呟いた。

「バ・ラ・して地中海で魚の餌にするのと、アランキャロッサブラッドオレンジの肥料にするのと、どちらがいいと思う？」
すごく魅力的な笑顔で言ったのだった。


それって。
……相手、死んじゃう前提だよね？

どぎついイタリアンジョークだよね！？


＊*＊*＊


「へ、平和的な方法で……」
お願いしたい。

人が死なない方向でどうかひとつ。
犯罪は良くないので、もう二度と誘拐して売春を強要するのはやめて欲しいけど。


「でも、奏太の首、ここ、火傷してる。スタンガンで眠らせて、拉致したんだ。そこまでして連れて来いなんて頼んでいない」
僕の首の後ろに触れた。

ああ、あの衝撃、スタンガンだったんだ。

「本来観光客に手を出すのもうちのフ・ァ・ミ・リ・ア・ー・リ・ではルール違反な上、私のものに傷をつけるなんて、最大の罪だよね？　罪には罰を与えないと」
微笑みながら言ってるけど。

ファミリア、は家族って意味で。ファミリアーリは家族の複数形。
……確か、こっちでは別の意味もあったような。

シチリアの、大物の隠し子……。
……まさか。


崇のお父さんって、シチリアンマフィアだったの！？