11 / 20
亜樹:仕事中にて
しおりを挟む
先日SNSにアップした写真が、まさかの伸びだった。
SNSは、宣伝のために、アカウントを作って。
なるべく何か注目されるような話題を作るよう、嘘でも何でもいいから呟けって担当さんから言われたけど。
フォロワーもそう多くないから、宣伝効果なんかないと思う。
売れた単行本の数より少なかったし。
それが。
今まで見たこともないリツイート数になっていたのだ。
驚くことに、フォロワーも倍以上増えていた。
帰国した初日に奈津が作った夕ご飯の写真を、20年ぶりにイタリアから帰ってきた弟が作ってくれた、とコメントをつけて載せただけなのに。
”SNSやってらしたんですね。フォローします!”という、新規の読者フォロワーも増えたのは嬉しかった。
偶然誰かがリツイートしたのを見て知ったという。
今日の朝ごはんも撮っておけば良かったかな?
奈津に言ったら。
それが宣伝になるならどんどん撮れ、むしろ自分を撮ってもいいぞ、とか言ってくれたけど。
こんなイケメンな弟がいるなんて知られたら、大騒ぎになるのは確定だろうからやめておく。
騒ぎ立てられて自宅を特定とかされたら、近所にも迷惑になるだろうし。
宣伝よりも、保身の方が大事だ。
しかし、奈津の料理は、確かに凄い。
まるでプロが作ったみたいに見える。味もすごく美味しいし。
朝ごはんがやたら甘いのにはまだ慣れなくて、ちょっと困るけど。
今朝はミルクでハートマークが描かれたカプチーノだった。器用だ。
デザインカプチーノとか、自宅で作れるものなの?
と思ったら、イタリアから送った荷物の中に、ミルクフォーマーとかいう専用の道具が入ってたらしい。本格的だ。
それにしても、いつの間に届いて、いつ受け取ったんだろう。
イタリアからの荷物。
僕が寝てる間かな? 全然気がつかなかった。
油断をすると、奈津に抱かれてるか、寝てるか、何かを食べてるかの三日間だった。
流されてる場合じゃなかった。
すっかり、奈津に抱かれる快楽を覚えこまされてしまった。
ナマでされて、ナカに出される快楽も。
兄弟でこんな爛れた関係。赦されないのに。
◆◇◆
ネームを描いていたら、奈津が寄って来た。
頭を使うときは糖分を必要とするから甘いものを食べろ、と言ってケーキを持ってきてくれたんだけど。
そのケーキがまた、とんでもなかった。
奈津の手作りではなく、お店で作られたシロモノだというのだから更にとんでもない。
その上。
結婚おめでとう、奈津ちゃん&亜樹ちゃん、とか書かれていた。
砂糖菓子で作られた花婿と花嫁の人形と、クラッカーと生クリーム製の教会付きだ。
十字架はホワイトチョコだった。
商店街のケーキ屋の四代目、パティシエールで有名な賞を取ったというヨーコちゃんが結婚祝いだと言って、作ってくれたんだという。
無料で? 注文してもいないのに?
どうして……。
先代の時はサヴァランと苺ショートが人気の老舗ケーキ屋だったのに。
味も、ちゃんと美味しかったのも、何だか悔しい。
もちろん、写真は撮らなかった。
せっかく作ってもらったのに悪いけど、撮れないよ!
証拠隠滅して胃の中に収めるしかない。
奈津は、めでたく結婚しました、と商店街の人に報告したらしい。
ようやく身も心も結ばれたって?
結ばれてないから。
もう絶対、外出しない。
商店街の人と会っちゃったら、恥ずかしくて死ねる。
◆◇◆
「ところでさ。亜樹のペンネーム、夏野千秋って、俺の……奈津の千川亜樹、って意味?」
奈津から、やけに色っぽい表情で見詰められて。
心音が跳ね上がった。
「ち、違うから。適当につけただけ!」
違うって言ってるのに。
奈津の見る目が、やたら甘い。
キスされそうになって。
「ネ、ネームの途中だから……、」
と胸板を押したら。
「A dopo.」
と言って。
ウインクして、呆気なく離れた。
……日本語で言ってくれなきゃ、わかんないよ。
「ああ、また後で、って言ったんだ。悪ぃ、油断するとつい」
うっかりすると、ほぼネイティブになったイタリア語が出てしまうんだ、と言って。
奈津が昼食を持ってきてくれた。
今日の昼食は、ワンプレートのランチだ。
見た目も綺麗で、美味しそう。
早速写真を撮って。
「ありがとう。いただきます」
食べるのももったいないけど、食べてしまう。
ああ、美味しい。
この味に慣れてしまったら、もうインスタント食品なんか食べられない。
何でこんな美味しいんだろう。
微妙な塩加減とか?
「隠し味は溢れんばかりの亜樹への愛情に決まってるだろ?」
にやりと笑った。
また、そんなこと言って。
◆◇◆
「亜樹はホント美味そうに食うよな。作り甲斐があるってもんだ」
嬉しそうに、僕が食べているのを見ている。
「あれ? 奈津の分は?」
食卓に用意されてるの、僕の分だけみたいだ。
「俺は作りながらつまんでるから。もう食った」
と、肩を竦めてみせた。
「つまみ食いとか、お行儀悪いぞ」
立ったままの食事は消化にも悪いと言って叱ると。
「だって、作ってたら腹が減ったんだもん。しょうがないだろ」
と。
いたずらっこみたいに歯を見せて笑った。
こうしてると、可愛いとこのある弟なんだけど。
……普通の弟で、いてくれたらいいのに。
もう、無理なのかな。
SNSは、宣伝のために、アカウントを作って。
なるべく何か注目されるような話題を作るよう、嘘でも何でもいいから呟けって担当さんから言われたけど。
フォロワーもそう多くないから、宣伝効果なんかないと思う。
売れた単行本の数より少なかったし。
それが。
今まで見たこともないリツイート数になっていたのだ。
驚くことに、フォロワーも倍以上増えていた。
帰国した初日に奈津が作った夕ご飯の写真を、20年ぶりにイタリアから帰ってきた弟が作ってくれた、とコメントをつけて載せただけなのに。
”SNSやってらしたんですね。フォローします!”という、新規の読者フォロワーも増えたのは嬉しかった。
偶然誰かがリツイートしたのを見て知ったという。
今日の朝ごはんも撮っておけば良かったかな?
奈津に言ったら。
それが宣伝になるならどんどん撮れ、むしろ自分を撮ってもいいぞ、とか言ってくれたけど。
こんなイケメンな弟がいるなんて知られたら、大騒ぎになるのは確定だろうからやめておく。
騒ぎ立てられて自宅を特定とかされたら、近所にも迷惑になるだろうし。
宣伝よりも、保身の方が大事だ。
しかし、奈津の料理は、確かに凄い。
まるでプロが作ったみたいに見える。味もすごく美味しいし。
朝ごはんがやたら甘いのにはまだ慣れなくて、ちょっと困るけど。
今朝はミルクでハートマークが描かれたカプチーノだった。器用だ。
デザインカプチーノとか、自宅で作れるものなの?
と思ったら、イタリアから送った荷物の中に、ミルクフォーマーとかいう専用の道具が入ってたらしい。本格的だ。
それにしても、いつの間に届いて、いつ受け取ったんだろう。
イタリアからの荷物。
僕が寝てる間かな? 全然気がつかなかった。
油断をすると、奈津に抱かれてるか、寝てるか、何かを食べてるかの三日間だった。
流されてる場合じゃなかった。
すっかり、奈津に抱かれる快楽を覚えこまされてしまった。
ナマでされて、ナカに出される快楽も。
兄弟でこんな爛れた関係。赦されないのに。
◆◇◆
ネームを描いていたら、奈津が寄って来た。
頭を使うときは糖分を必要とするから甘いものを食べろ、と言ってケーキを持ってきてくれたんだけど。
そのケーキがまた、とんでもなかった。
奈津の手作りではなく、お店で作られたシロモノだというのだから更にとんでもない。
その上。
結婚おめでとう、奈津ちゃん&亜樹ちゃん、とか書かれていた。
砂糖菓子で作られた花婿と花嫁の人形と、クラッカーと生クリーム製の教会付きだ。
十字架はホワイトチョコだった。
商店街のケーキ屋の四代目、パティシエールで有名な賞を取ったというヨーコちゃんが結婚祝いだと言って、作ってくれたんだという。
無料で? 注文してもいないのに?
どうして……。
先代の時はサヴァランと苺ショートが人気の老舗ケーキ屋だったのに。
味も、ちゃんと美味しかったのも、何だか悔しい。
もちろん、写真は撮らなかった。
せっかく作ってもらったのに悪いけど、撮れないよ!
証拠隠滅して胃の中に収めるしかない。
奈津は、めでたく結婚しました、と商店街の人に報告したらしい。
ようやく身も心も結ばれたって?
結ばれてないから。
もう絶対、外出しない。
商店街の人と会っちゃったら、恥ずかしくて死ねる。
◆◇◆
「ところでさ。亜樹のペンネーム、夏野千秋って、俺の……奈津の千川亜樹、って意味?」
奈津から、やけに色っぽい表情で見詰められて。
心音が跳ね上がった。
「ち、違うから。適当につけただけ!」
違うって言ってるのに。
奈津の見る目が、やたら甘い。
キスされそうになって。
「ネ、ネームの途中だから……、」
と胸板を押したら。
「A dopo.」
と言って。
ウインクして、呆気なく離れた。
……日本語で言ってくれなきゃ、わかんないよ。
「ああ、また後で、って言ったんだ。悪ぃ、油断するとつい」
うっかりすると、ほぼネイティブになったイタリア語が出てしまうんだ、と言って。
奈津が昼食を持ってきてくれた。
今日の昼食は、ワンプレートのランチだ。
見た目も綺麗で、美味しそう。
早速写真を撮って。
「ありがとう。いただきます」
食べるのももったいないけど、食べてしまう。
ああ、美味しい。
この味に慣れてしまったら、もうインスタント食品なんか食べられない。
何でこんな美味しいんだろう。
微妙な塩加減とか?
「隠し味は溢れんばかりの亜樹への愛情に決まってるだろ?」
にやりと笑った。
また、そんなこと言って。
◆◇◆
「亜樹はホント美味そうに食うよな。作り甲斐があるってもんだ」
嬉しそうに、僕が食べているのを見ている。
「あれ? 奈津の分は?」
食卓に用意されてるの、僕の分だけみたいだ。
「俺は作りながらつまんでるから。もう食った」
と、肩を竦めてみせた。
「つまみ食いとか、お行儀悪いぞ」
立ったままの食事は消化にも悪いと言って叱ると。
「だって、作ってたら腹が減ったんだもん。しょうがないだろ」
と。
いたずらっこみたいに歯を見せて笑った。
こうしてると、可愛いとこのある弟なんだけど。
……普通の弟で、いてくれたらいいのに。
もう、無理なのかな。
2
お気に入りに追加
470
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。
水鳴諒
BL
目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった
無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。
そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。
チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる