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亜樹:仕事中にて
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先日SNSにアップした写真が、まさかの伸びだった。
SNSは、宣伝のために、アカウントを作って。
なるべく何か注目されるような話題を作るよう、嘘でも何でもいいから呟けって担当さんから言われたけど。
フォロワーもそう多くないから、宣伝効果なんかないと思う。
売れた単行本の数より少なかったし。
それが。
今まで見たこともないリツイート数になっていたのだ。
驚くことに、フォロワーも倍以上増えていた。
帰国した初日に奈津が作った夕ご飯の写真を、20年ぶりにイタリアから帰ってきた弟が作ってくれた、とコメントをつけて載せただけなのに。
”SNSやってらしたんですね。フォローします!”という、新規の読者フォロワーも増えたのは嬉しかった。
偶然誰かがリツイートしたのを見て知ったという。
今日の朝ごはんも撮っておけば良かったかな?
奈津に言ったら。
それが宣伝になるならどんどん撮れ、むしろ自分を撮ってもいいぞ、とか言ってくれたけど。
こんなイケメンな弟がいるなんて知られたら、大騒ぎになるのは確定だろうからやめておく。
騒ぎ立てられて自宅を特定とかされたら、近所にも迷惑になるだろうし。
宣伝よりも、保身の方が大事だ。
しかし、奈津の料理は、確かに凄い。
まるでプロが作ったみたいに見える。味もすごく美味しいし。
朝ごはんがやたら甘いのにはまだ慣れなくて、ちょっと困るけど。
今朝はミルクでハートマークが描かれたカプチーノだった。器用だ。
デザインカプチーノとか、自宅で作れるものなの?
と思ったら、イタリアから送った荷物の中に、ミルクフォーマーとかいう専用の道具が入ってたらしい。本格的だ。
それにしても、いつの間に届いて、いつ受け取ったんだろう。
イタリアからの荷物。
僕が寝てる間かな? 全然気がつかなかった。
油断をすると、奈津に抱かれてるか、寝てるか、何かを食べてるかの三日間だった。
流されてる場合じゃなかった。
すっかり、奈津に抱かれる快楽を覚えこまされてしまった。
ナマでされて、ナカに出される快楽も。
兄弟でこんな爛れた関係。赦されないのに。
◆◇◆
ネームを描いていたら、奈津が寄って来た。
頭を使うときは糖分を必要とするから甘いものを食べろ、と言ってケーキを持ってきてくれたんだけど。
そのケーキがまた、とんでもなかった。
奈津の手作りではなく、お店で作られたシロモノだというのだから更にとんでもない。
その上。
結婚おめでとう、奈津ちゃん&亜樹ちゃん、とか書かれていた。
砂糖菓子で作られた花婿と花嫁の人形と、クラッカーと生クリーム製の教会付きだ。
十字架はホワイトチョコだった。
商店街のケーキ屋の四代目、パティシエールで有名な賞を取ったというヨーコちゃんが結婚祝いだと言って、作ってくれたんだという。
無料で? 注文してもいないのに?
どうして……。
先代の時はサヴァランと苺ショートが人気の老舗ケーキ屋だったのに。
味も、ちゃんと美味しかったのも、何だか悔しい。
もちろん、写真は撮らなかった。
せっかく作ってもらったのに悪いけど、撮れないよ!
証拠隠滅して胃の中に収めるしかない。
奈津は、めでたく結婚しました、と商店街の人に報告したらしい。
ようやく身も心も結ばれたって?
結ばれてないから。
もう絶対、外出しない。
商店街の人と会っちゃったら、恥ずかしくて死ねる。
◆◇◆
「ところでさ。亜樹のペンネーム、夏野千秋って、俺の……奈津の千川亜樹、って意味?」
奈津から、やけに色っぽい表情で見詰められて。
心音が跳ね上がった。
「ち、違うから。適当につけただけ!」
違うって言ってるのに。
奈津の見る目が、やたら甘い。
キスされそうになって。
「ネ、ネームの途中だから……、」
と胸板を押したら。
「A dopo.」
と言って。
ウインクして、呆気なく離れた。
……日本語で言ってくれなきゃ、わかんないよ。
「ああ、また後で、って言ったんだ。悪ぃ、油断するとつい」
うっかりすると、ほぼネイティブになったイタリア語が出てしまうんだ、と言って。
奈津が昼食を持ってきてくれた。
今日の昼食は、ワンプレートのランチだ。
見た目も綺麗で、美味しそう。
早速写真を撮って。
「ありがとう。いただきます」
食べるのももったいないけど、食べてしまう。
ああ、美味しい。
この味に慣れてしまったら、もうインスタント食品なんか食べられない。
何でこんな美味しいんだろう。
微妙な塩加減とか?
「隠し味は溢れんばかりの亜樹への愛情に決まってるだろ?」
にやりと笑った。
また、そんなこと言って。
◆◇◆
「亜樹はホント美味そうに食うよな。作り甲斐があるってもんだ」
嬉しそうに、僕が食べているのを見ている。
「あれ? 奈津の分は?」
食卓に用意されてるの、僕の分だけみたいだ。
「俺は作りながらつまんでるから。もう食った」
と、肩を竦めてみせた。
「つまみ食いとか、お行儀悪いぞ」
立ったままの食事は消化にも悪いと言って叱ると。
「だって、作ってたら腹が減ったんだもん。しょうがないだろ」
と。
いたずらっこみたいに歯を見せて笑った。
こうしてると、可愛いとこのある弟なんだけど。
……普通の弟で、いてくれたらいいのに。
もう、無理なのかな。
SNSは、宣伝のために、アカウントを作って。
なるべく何か注目されるような話題を作るよう、嘘でも何でもいいから呟けって担当さんから言われたけど。
フォロワーもそう多くないから、宣伝効果なんかないと思う。
売れた単行本の数より少なかったし。
それが。
今まで見たこともないリツイート数になっていたのだ。
驚くことに、フォロワーも倍以上増えていた。
帰国した初日に奈津が作った夕ご飯の写真を、20年ぶりにイタリアから帰ってきた弟が作ってくれた、とコメントをつけて載せただけなのに。
”SNSやってらしたんですね。フォローします!”という、新規の読者フォロワーも増えたのは嬉しかった。
偶然誰かがリツイートしたのを見て知ったという。
今日の朝ごはんも撮っておけば良かったかな?
奈津に言ったら。
それが宣伝になるならどんどん撮れ、むしろ自分を撮ってもいいぞ、とか言ってくれたけど。
こんなイケメンな弟がいるなんて知られたら、大騒ぎになるのは確定だろうからやめておく。
騒ぎ立てられて自宅を特定とかされたら、近所にも迷惑になるだろうし。
宣伝よりも、保身の方が大事だ。
しかし、奈津の料理は、確かに凄い。
まるでプロが作ったみたいに見える。味もすごく美味しいし。
朝ごはんがやたら甘いのにはまだ慣れなくて、ちょっと困るけど。
今朝はミルクでハートマークが描かれたカプチーノだった。器用だ。
デザインカプチーノとか、自宅で作れるものなの?
と思ったら、イタリアから送った荷物の中に、ミルクフォーマーとかいう専用の道具が入ってたらしい。本格的だ。
それにしても、いつの間に届いて、いつ受け取ったんだろう。
イタリアからの荷物。
僕が寝てる間かな? 全然気がつかなかった。
油断をすると、奈津に抱かれてるか、寝てるか、何かを食べてるかの三日間だった。
流されてる場合じゃなかった。
すっかり、奈津に抱かれる快楽を覚えこまされてしまった。
ナマでされて、ナカに出される快楽も。
兄弟でこんな爛れた関係。赦されないのに。
◆◇◆
ネームを描いていたら、奈津が寄って来た。
頭を使うときは糖分を必要とするから甘いものを食べろ、と言ってケーキを持ってきてくれたんだけど。
そのケーキがまた、とんでもなかった。
奈津の手作りではなく、お店で作られたシロモノだというのだから更にとんでもない。
その上。
結婚おめでとう、奈津ちゃん&亜樹ちゃん、とか書かれていた。
砂糖菓子で作られた花婿と花嫁の人形と、クラッカーと生クリーム製の教会付きだ。
十字架はホワイトチョコだった。
商店街のケーキ屋の四代目、パティシエールで有名な賞を取ったというヨーコちゃんが結婚祝いだと言って、作ってくれたんだという。
無料で? 注文してもいないのに?
どうして……。
先代の時はサヴァランと苺ショートが人気の老舗ケーキ屋だったのに。
味も、ちゃんと美味しかったのも、何だか悔しい。
もちろん、写真は撮らなかった。
せっかく作ってもらったのに悪いけど、撮れないよ!
証拠隠滅して胃の中に収めるしかない。
奈津は、めでたく結婚しました、と商店街の人に報告したらしい。
ようやく身も心も結ばれたって?
結ばれてないから。
もう絶対、外出しない。
商店街の人と会っちゃったら、恥ずかしくて死ねる。
◆◇◆
「ところでさ。亜樹のペンネーム、夏野千秋って、俺の……奈津の千川亜樹、って意味?」
奈津から、やけに色っぽい表情で見詰められて。
心音が跳ね上がった。
「ち、違うから。適当につけただけ!」
違うって言ってるのに。
奈津の見る目が、やたら甘い。
キスされそうになって。
「ネ、ネームの途中だから……、」
と胸板を押したら。
「A dopo.」
と言って。
ウインクして、呆気なく離れた。
……日本語で言ってくれなきゃ、わかんないよ。
「ああ、また後で、って言ったんだ。悪ぃ、油断するとつい」
うっかりすると、ほぼネイティブになったイタリア語が出てしまうんだ、と言って。
奈津が昼食を持ってきてくれた。
今日の昼食は、ワンプレートのランチだ。
見た目も綺麗で、美味しそう。
早速写真を撮って。
「ありがとう。いただきます」
食べるのももったいないけど、食べてしまう。
ああ、美味しい。
この味に慣れてしまったら、もうインスタント食品なんか食べられない。
何でこんな美味しいんだろう。
微妙な塩加減とか?
「隠し味は溢れんばかりの亜樹への愛情に決まってるだろ?」
にやりと笑った。
また、そんなこと言って。
◆◇◆
「亜樹はホント美味そうに食うよな。作り甲斐があるってもんだ」
嬉しそうに、僕が食べているのを見ている。
「あれ? 奈津の分は?」
食卓に用意されてるの、僕の分だけみたいだ。
「俺は作りながらつまんでるから。もう食った」
と、肩を竦めてみせた。
「つまみ食いとか、お行儀悪いぞ」
立ったままの食事は消化にも悪いと言って叱ると。
「だって、作ってたら腹が減ったんだもん。しょうがないだろ」
と。
いたずらっこみたいに歯を見せて笑った。
こうしてると、可愛いとこのある弟なんだけど。
……普通の弟で、いてくれたらいいのに。
もう、無理なのかな。
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