7 / 20
亜樹:夜空のような
しおりを挟む
20年前の約束。
今でも鮮明に覚えている。
あれは、奈津がイタリアに連れて行かれる日の前日だった。
奈津はいつものように、僕のベッドにもぐりこんで。
遠いところに行くなんて嫌だ、と泣いていた。
体温の高い子供。
泣いているせいか、更に熱く感じた。
「あきちゃん、ケッコンして。そうしたら、ずっといっしょにいられるんでしょ?」
僕とずっと一緒にいたいから、離れたくないから結婚しようというのか。
そんな奈津が可愛いと思ったけど。
当時はまだ日本では法的に、男同士での結婚は無理だった。
法改正後の今でも実の兄弟間での結婚なんて認められないだろう。
男同士で、ましてや兄弟でなんて、結婚はできないんだよ。
何度言っても。
奈津は絶対ケッコンするんだ、と言って。きかなかった。
涙で潤む榛色の瞳に、とうとう根負けして。
「20年経っても。相変わらず僕のことが好きだったら、いいよ」
そう言って。
指きりげんまんしたのだった。
20年もの間。
奈津は、今までそれを、ずっと、本気にして。覚えていて。
約束のときが来たから。
それで、日本に帰ってきたのか……?
僕と、”結婚”するために……?
◆◇◆
奈津は、ベッドに横たわる僕を見下ろして。
舌なめずりをしていた。
それは、まるで獲物を前にした肉食獣のように見えた。
しなやかな肉食獣を思わせる、無駄の無い筋肉に覆われた逞しい身体。
獲物を捕らえるのに適した、長く、力強い腕。
僕に抵抗などできないことは、もうわかっている。
さっき、思い知らされた。
ナカでナマ出ししたいからと言われて。
とんでもない場所を洗われた。
必死で逃げようとしたのに。
動けなかった。
考え直せ、と言っても。
聞いてはくれないだろう。
奈津は20年もの間、気持ちを変えなかったのだから。
イタリアでは、とてもモテていたと聞いた。
この容姿だ。イタリアだけじゃなく、日本でだって確実にモテるだろう。老若男女問わず。
それなのに。
こんな、ぽっちゃりで冴えない、35歳のオッサンを。どうして抱こうとなんて思えるのだろうか。理解できない。
「亜樹……」
奈津は、愛おしそうに僕の名を呼ぶ。
そういえば。
今は呼び捨てになっているけど。
いつからだろう?
奈津が、僕を『おにいちゃん』と呼ばなくなったのは。
気が付いたら、呼び方が『あきちゃん』になっていた。
今は、『亜樹』で。
僕の記憶の中の奈津は。
いつでも僕だけを、ずっと見ていた。
◆◇◆
ラブローションとかかれたボトルから、とろっとした液体を出して。
手であたためてから、僕の胸に、マッサージをするように塗りつけた。
体温であたためられたそれは、変な感触だった。
ベッドには、あらかじめ大きめのタオルが敷かれていた。
汚れても、洗えるようにだろう。
準備万端だ。
服を脱いで、無防備な姿になった状態の僕を襲おうと、計画していたのだ。
「っ、」
胸の先は、風呂でのいたずらで少し腫れていた。
そこをまた、ぐりぐりと弄られる。
ローションでぬるぬるするのが何だか変な感じだ。
女の子じゃあるまいし、そんなところを弄られても気持ち良くなるわけがないのに。
ぬるついた指は、そのまま下に降りて行き、僕の性器を弄り、擦った。
認めたくはないが。
自分でするよりもずっと気持ちよかった。
奈津はローションを足して。
睾丸も愛撫された。
むき出しの弱点であるそこを、やわやわと触れられるのが気持ちいいということを初めて知った。
そして、いやらしく動く指は、お尻に狙いを定めた。
さきほど丹念に洗われてしまったせいか、簡単に侵入を許してしまう。
最初は、人差し指。
慣らす指を増やしていって。
自分のものが入るほどここを慣らしたら。
入れるつもりなのだ。
風呂場で目にした、奈津のあの、凶悪に大きいものを。
あんなの、入る訳ないのに。
きっと裂けてしまう。
◆◇◆
ぐちゅぐちゅと、聞くに堪えない水音をさせて。
そこを拡げられていく。
奈津の性器を受け入れられるように。
男同士で。
いや、実の兄弟なのに。
どうしてこんなことをするのか。
何度訊いても、答えは返ってこない。
聞こえるのは、興奮しきった呼吸だけ。
ずるり、と三本の指が引き抜かれて。
奈津は僕の両脚を抱え上げ、そそり立ったものをあてがおうとした。
実の弟に抱かれるのを。
明るい照明の下、見ているのはつらい。
「……電気、消して……」
断られるかと思ったが。
奈津は素直に頷いて、壁のスイッチに手を伸ばした。
天井に、ぼんやりと星が浮かぶ。
蓄光シールの星空。
20年前の、あの夜のように。
今でも鮮明に覚えている。
あれは、奈津がイタリアに連れて行かれる日の前日だった。
奈津はいつものように、僕のベッドにもぐりこんで。
遠いところに行くなんて嫌だ、と泣いていた。
体温の高い子供。
泣いているせいか、更に熱く感じた。
「あきちゃん、ケッコンして。そうしたら、ずっといっしょにいられるんでしょ?」
僕とずっと一緒にいたいから、離れたくないから結婚しようというのか。
そんな奈津が可愛いと思ったけど。
当時はまだ日本では法的に、男同士での結婚は無理だった。
法改正後の今でも実の兄弟間での結婚なんて認められないだろう。
男同士で、ましてや兄弟でなんて、結婚はできないんだよ。
何度言っても。
奈津は絶対ケッコンするんだ、と言って。きかなかった。
涙で潤む榛色の瞳に、とうとう根負けして。
「20年経っても。相変わらず僕のことが好きだったら、いいよ」
そう言って。
指きりげんまんしたのだった。
20年もの間。
奈津は、今までそれを、ずっと、本気にして。覚えていて。
約束のときが来たから。
それで、日本に帰ってきたのか……?
僕と、”結婚”するために……?
◆◇◆
奈津は、ベッドに横たわる僕を見下ろして。
舌なめずりをしていた。
それは、まるで獲物を前にした肉食獣のように見えた。
しなやかな肉食獣を思わせる、無駄の無い筋肉に覆われた逞しい身体。
獲物を捕らえるのに適した、長く、力強い腕。
僕に抵抗などできないことは、もうわかっている。
さっき、思い知らされた。
ナカでナマ出ししたいからと言われて。
とんでもない場所を洗われた。
必死で逃げようとしたのに。
動けなかった。
考え直せ、と言っても。
聞いてはくれないだろう。
奈津は20年もの間、気持ちを変えなかったのだから。
イタリアでは、とてもモテていたと聞いた。
この容姿だ。イタリアだけじゃなく、日本でだって確実にモテるだろう。老若男女問わず。
それなのに。
こんな、ぽっちゃりで冴えない、35歳のオッサンを。どうして抱こうとなんて思えるのだろうか。理解できない。
「亜樹……」
奈津は、愛おしそうに僕の名を呼ぶ。
そういえば。
今は呼び捨てになっているけど。
いつからだろう?
奈津が、僕を『おにいちゃん』と呼ばなくなったのは。
気が付いたら、呼び方が『あきちゃん』になっていた。
今は、『亜樹』で。
僕の記憶の中の奈津は。
いつでも僕だけを、ずっと見ていた。
◆◇◆
ラブローションとかかれたボトルから、とろっとした液体を出して。
手であたためてから、僕の胸に、マッサージをするように塗りつけた。
体温であたためられたそれは、変な感触だった。
ベッドには、あらかじめ大きめのタオルが敷かれていた。
汚れても、洗えるようにだろう。
準備万端だ。
服を脱いで、無防備な姿になった状態の僕を襲おうと、計画していたのだ。
「っ、」
胸の先は、風呂でのいたずらで少し腫れていた。
そこをまた、ぐりぐりと弄られる。
ローションでぬるぬるするのが何だか変な感じだ。
女の子じゃあるまいし、そんなところを弄られても気持ち良くなるわけがないのに。
ぬるついた指は、そのまま下に降りて行き、僕の性器を弄り、擦った。
認めたくはないが。
自分でするよりもずっと気持ちよかった。
奈津はローションを足して。
睾丸も愛撫された。
むき出しの弱点であるそこを、やわやわと触れられるのが気持ちいいということを初めて知った。
そして、いやらしく動く指は、お尻に狙いを定めた。
さきほど丹念に洗われてしまったせいか、簡単に侵入を許してしまう。
最初は、人差し指。
慣らす指を増やしていって。
自分のものが入るほどここを慣らしたら。
入れるつもりなのだ。
風呂場で目にした、奈津のあの、凶悪に大きいものを。
あんなの、入る訳ないのに。
きっと裂けてしまう。
◆◇◆
ぐちゅぐちゅと、聞くに堪えない水音をさせて。
そこを拡げられていく。
奈津の性器を受け入れられるように。
男同士で。
いや、実の兄弟なのに。
どうしてこんなことをするのか。
何度訊いても、答えは返ってこない。
聞こえるのは、興奮しきった呼吸だけ。
ずるり、と三本の指が引き抜かれて。
奈津は僕の両脚を抱え上げ、そそり立ったものをあてがおうとした。
実の弟に抱かれるのを。
明るい照明の下、見ているのはつらい。
「……電気、消して……」
断られるかと思ったが。
奈津は素直に頷いて、壁のスイッチに手を伸ばした。
天井に、ぼんやりと星が浮かぶ。
蓄光シールの星空。
20年前の、あの夜のように。
0
お気に入りに追加
464
あなたにおすすめの小説
好きか?嫌いか?
秋元智也
BL
ある日、女子に振られてやけくそになって自分の運命の相手を
怪しげな老婆に占ってもらう。
そこで身近にいると宣言されて、虹色の玉を渡された。
眺めていると、後ろからぶつけられ慌てて掴むつもりが飲み込んでしまう。
翌朝、目覚めると触れた人の心の声が聞こえるようになっていた!
クラスでいつもつっかかってくる奴の声を悪戯するつもりで聞いてみると
なんと…!!
そして、運命の人とは…!?
冥府への案内人
伊駒辰葉
BL
!注意!
タグはBLになってますが、百合もフツーも入り交じってます。
地雷だという方は危険回避してください。
ガッツリなシーンがあります。
主人公と取り巻く人々の物語です。
群像劇というほどではないですが、登場人物は多めです。
20世紀末くらいの時代設定です。
ファンタジー要素があります。
ギャグは作中にちょっと笑えるやり取りがあるくらいです。
全体的にシリアスです。
色々とガッツリなのでR-15指定にしました。
悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~
トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。
しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。
貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。
虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。
そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる?
エブリスタにも掲載しています。
第一王子から断罪されたのに第二王子に溺愛されています。何で?
藍音
BL
占星術により、最も国を繁栄させる子を産む孕み腹として、妃候補にされたルーリク・フォン・グロシャーは学院の卒業を祝う舞踏会で第一王子から断罪され、婚約破棄されてしまう。
悲しみにくれるルーリクは婚約破棄を了承し、領地に去ると宣言して会場を後にするが‥‥‥
すみません、シリアスの仮面を被ったコメディです。冒頭からシリアスな話を期待されていたら申し訳ないので、記載いたします。
男性妊娠可能な世界です。
魔法は昔はあったけど今は廃れています。
独自設定盛り盛りです。作品中でわかる様にご説明できていると思うのですが‥‥
大きなあらすじやストーリー展開は全く変更ありませんが、ちょこちょこ文言を直したりして修正をかけています。すみません。
R4.2.19 12:00完結しました。
R4 3.2 12:00 から応援感謝番外編を投稿中です。
お礼SSを投稿するつもりでしたが、短編程度のボリュームのあるものになってしまいました。
多分10話くらい?
2人のお話へのリクエストがなければ、次は別の主人公の番外編を投稿しようと思っています。
【完結】おじさんはΩである
藤吉とわ
BL
隠れ執着嫉妬激強年下α×αと誤診を受けていたおじさんΩ
門村雄大(かどむらゆうだい)34歳。とある朝母親から「小学生の頃バース検査をした病院があんたと連絡を取りたがっている」という電話を貰う。
何の用件か分からぬまま、折り返しの連絡をしてみると「至急お知らせしたいことがある。自宅に伺いたい」と言われ、招いたところ三人の男がやってきて部屋の中で突然土下座をされた。よくよく話を聞けば23年前のバース検査で告知ミスをしていたと告げられる。
今更Ωと言われても――と戸惑うものの、αだと思い込んでいた期間も自分のバース性にしっくり来ていなかった雄大は悩みながらも正しいバース性を受け入れていく。
治療のため、まずはΩ性の発情期であるヒートを起こさなければならず、謝罪に来た三人の男の内の一人・研修医でαの戸賀井 圭(とがいけい)と同居を開始することにーー。
本当の兄弟になる方法
霧乃ふー 短編
BL
今日はこの国で成人式が行われた。このスノウ王国では、まれに成人式で神から魔法が与えられることがある。
僕が神から授けられた祝福は催眠魔法だった。
僕はその催眠魔法を使い……
お疲れ騎士団長の癒やし係
丸井まー(旧:まー)
BL
騎士団長バルナバスは疲れていた。バルナバスは癒やしを求めて、同級生アウレールが経営しているバーへと向かった。
疲れた騎士団長(40)✕ぽよんぽよんのバー店主(40)
※少し久しぶりの3時間タイムトライアル作品です!
お題は『手触り良さそうな柔らかむちむちマッチョ受けかぽよぽよおじさん受けのお話』です。
楽しいお題をくださったTectorum様に捧げます!楽しいお題をありがとうございました!!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる