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祈
初めてのお泊り
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「食事などは? 普段は外食かな?」
毎食分、料亭やレストランから取り寄せるよう、連絡しておこうかと思ったのだが。
「ハウスキーパーとかは雇ってないよ。別に家事は嫌いじゃないし、自分で作る」
永遠は、大学に通いながら掃除洗濯もこなし。
食事の用意まで自分でしているという。
「自分で全ての家事をするのか……」
それは驚いた。
てっきり毎食、外食や、誰かに奢ってもらっているのだとばかり思っていた。
家事をする人が居なくて困っている、とひとこと言えば。
頼まずとも、率先してやりたがる女性は多いだろうに。女性だけでなく、男でも。
家族が留守がちなため、一人でも暮らせるように身に着けたのだろうか。
*****
「そろそろお風呂入ろうと思うけど。どうする?」
不意に訊かれ。
一瞬、一緒に風呂に入らないかと誘われているのかと勘違いした。
「……いいのか?」
思わず訊き返すと。永遠は真っ赤になった。
「いや、一緒に入ろうって誘ったわけじゃないから。先に入るかって」
慌てて訂正されてしまった。
何だ、風呂での様子も観察したかったのに。
さすがにそこまでは駄目か。
残念だ。
「後で、シャワーを貸してもらえれば」
「わかった。時間かかるかもしれないから、先にシャワー浴びてきて」
風呂場まで案内され、服は籠に入れるよう言われた。
「ではお先に」
脱衣所の前で別れる。
おっと、着替えを届けるように、板垣に連絡しておかなければ。
それと。
幸運にもこれより一週間、永遠の家に泊まれるようになった、ということも。
*****
永遠の使っているボディソープやシャンプーなどをチェックする。
女性好感度の高いブランドだ。それでいて鼻につくほどきつくない。
香りにも気を配っているのだろう。ますます好感度が上がる。
そろそろ上がろうかと思ったら。
「洗濯機の前の棚に着替え置いとくから」
永遠の声。
「ああ、もう出るところだ」
「!?」
浴室のドアを開けると。
永遠が、着替えを持ったまま固まっていた。
顔は真っ赤に染まっている。
その視線は、私の顔から、身体へ降り。
下半身で止まった。
「……うわあ」
目をまんまるくして、驚いている。
これは、それほど驚くようなものだろうか。
他人と比べたことなどないが。
永遠は真っ赤になったまま、視線を正面に戻した。
「はい、これ着替え! 板垣さんって人が持ってきてくれたから!」
脱いだものは回収されていた。
板垣に渡し、クリーニングに出したのだろう。
板垣は下着にバスローブだけでなく、タオルまで持参してきたようだ。
なるほど、余計な洗濯物を増やすのも申し訳ないからか。
さすが、できた秘書だ。
*****
バスローブを羽織り、脱衣所を出るのと同時に。
永遠は慌てた様子で脱衣所に飛び込んだ。
「あ、喉乾いたら冷蔵庫に入ってるお茶とか、適当に飲んでていいから!」
脱衣所から、声がする。
「ああ、ありがとう」
風呂上がりの気遣いも忘れないとは。
いい嫁になりそうだ。
しばらくして。
「背中でも流そうか?」
風呂に入っている永遠に声を掛けると。
慌てて湯船に飛び込んだような音がした。
「け、結構です! 気持ちだけ、ありがたくいただくから!」
セクハラ発言を、律義に返すとは。
本当に可愛い。
寝室は、永遠の兄の部屋を使うように案内された。
シーツなどは新しいものに取り換えてあり、板垣に渡された明日の分の着替えも、もうこちらに運んであるようだ。
細々と、よく動くものだ。性格上、そういう性分なのだろうが。
まるで自分が歓迎されているようで、嬉しい。
「じゃあ、おやすみ」
永遠が自分の部屋に戻ろうとするのを。
まだ別れがたくて、声を掛けた。
「君の部屋を見せてくれないか?」
「いいけど。……あんまり面白くないと思うよ」
そう言いながら、どうぞ、と自室のドアを開けてくれる。
ベッドのある部屋に、狼を招くとは。
全く、無防備すぎる。
*****
「綺麗に片付いているんだな」
家全体もそうだが。
きちんと掃除されて整理されている。
ハウスキーパーもいないのに、凄いものだ。
どうやら永遠の母親は過干渉で、息子の行動を把握したがる性分らしい。
なので勝手に掃除されないよう、綺麗にしておく癖がついてしまったという。
母親が毎日家にいたら、かなりのストレスとなっていただろう。
「うちの母親は、掃除などしたことないだろうな。多分、僕にそれほど興味もない」
何せ、家事どころか、実の息子の世話もしたことがないほどだ。
跡取りの男児を産んだのだからもういいだろう、とばかりに自由気ままに暮らしているようだ。今はどこで何をしているのかも知らない。こちらとしても、どうでもいい。
過干渉と無関心。
はたして、どちらがマシなのだろうか?
若い男同士らしく、エロ本の隠し場所の話などして。
ハードディスクに隠した画像。
永遠は、女性のヌードかもしれないが。
私の場合、お宝画像は、永遠の盗撮写真だと知られたら。
今すぐ部屋を追い出されるだろう。
毎食分、料亭やレストランから取り寄せるよう、連絡しておこうかと思ったのだが。
「ハウスキーパーとかは雇ってないよ。別に家事は嫌いじゃないし、自分で作る」
永遠は、大学に通いながら掃除洗濯もこなし。
食事の用意まで自分でしているという。
「自分で全ての家事をするのか……」
それは驚いた。
てっきり毎食、外食や、誰かに奢ってもらっているのだとばかり思っていた。
家事をする人が居なくて困っている、とひとこと言えば。
頼まずとも、率先してやりたがる女性は多いだろうに。女性だけでなく、男でも。
家族が留守がちなため、一人でも暮らせるように身に着けたのだろうか。
*****
「そろそろお風呂入ろうと思うけど。どうする?」
不意に訊かれ。
一瞬、一緒に風呂に入らないかと誘われているのかと勘違いした。
「……いいのか?」
思わず訊き返すと。永遠は真っ赤になった。
「いや、一緒に入ろうって誘ったわけじゃないから。先に入るかって」
慌てて訂正されてしまった。
何だ、風呂での様子も観察したかったのに。
さすがにそこまでは駄目か。
残念だ。
「後で、シャワーを貸してもらえれば」
「わかった。時間かかるかもしれないから、先にシャワー浴びてきて」
風呂場まで案内され、服は籠に入れるよう言われた。
「ではお先に」
脱衣所の前で別れる。
おっと、着替えを届けるように、板垣に連絡しておかなければ。
それと。
幸運にもこれより一週間、永遠の家に泊まれるようになった、ということも。
*****
永遠の使っているボディソープやシャンプーなどをチェックする。
女性好感度の高いブランドだ。それでいて鼻につくほどきつくない。
香りにも気を配っているのだろう。ますます好感度が上がる。
そろそろ上がろうかと思ったら。
「洗濯機の前の棚に着替え置いとくから」
永遠の声。
「ああ、もう出るところだ」
「!?」
浴室のドアを開けると。
永遠が、着替えを持ったまま固まっていた。
顔は真っ赤に染まっている。
その視線は、私の顔から、身体へ降り。
下半身で止まった。
「……うわあ」
目をまんまるくして、驚いている。
これは、それほど驚くようなものだろうか。
他人と比べたことなどないが。
永遠は真っ赤になったまま、視線を正面に戻した。
「はい、これ着替え! 板垣さんって人が持ってきてくれたから!」
脱いだものは回収されていた。
板垣に渡し、クリーニングに出したのだろう。
板垣は下着にバスローブだけでなく、タオルまで持参してきたようだ。
なるほど、余計な洗濯物を増やすのも申し訳ないからか。
さすが、できた秘書だ。
*****
バスローブを羽織り、脱衣所を出るのと同時に。
永遠は慌てた様子で脱衣所に飛び込んだ。
「あ、喉乾いたら冷蔵庫に入ってるお茶とか、適当に飲んでていいから!」
脱衣所から、声がする。
「ああ、ありがとう」
風呂上がりの気遣いも忘れないとは。
いい嫁になりそうだ。
しばらくして。
「背中でも流そうか?」
風呂に入っている永遠に声を掛けると。
慌てて湯船に飛び込んだような音がした。
「け、結構です! 気持ちだけ、ありがたくいただくから!」
セクハラ発言を、律義に返すとは。
本当に可愛い。
寝室は、永遠の兄の部屋を使うように案内された。
シーツなどは新しいものに取り換えてあり、板垣に渡された明日の分の着替えも、もうこちらに運んであるようだ。
細々と、よく動くものだ。性格上、そういう性分なのだろうが。
まるで自分が歓迎されているようで、嬉しい。
「じゃあ、おやすみ」
永遠が自分の部屋に戻ろうとするのを。
まだ別れがたくて、声を掛けた。
「君の部屋を見せてくれないか?」
「いいけど。……あんまり面白くないと思うよ」
そう言いながら、どうぞ、と自室のドアを開けてくれる。
ベッドのある部屋に、狼を招くとは。
全く、無防備すぎる。
*****
「綺麗に片付いているんだな」
家全体もそうだが。
きちんと掃除されて整理されている。
ハウスキーパーもいないのに、凄いものだ。
どうやら永遠の母親は過干渉で、息子の行動を把握したがる性分らしい。
なので勝手に掃除されないよう、綺麗にしておく癖がついてしまったという。
母親が毎日家にいたら、かなりのストレスとなっていただろう。
「うちの母親は、掃除などしたことないだろうな。多分、僕にそれほど興味もない」
何せ、家事どころか、実の息子の世話もしたことがないほどだ。
跡取りの男児を産んだのだからもういいだろう、とばかりに自由気ままに暮らしているようだ。今はどこで何をしているのかも知らない。こちらとしても、どうでもいい。
過干渉と無関心。
はたして、どちらがマシなのだろうか?
若い男同士らしく、エロ本の隠し場所の話などして。
ハードディスクに隠した画像。
永遠は、女性のヌードかもしれないが。
私の場合、お宝画像は、永遠の盗撮写真だと知られたら。
今すぐ部屋を追い出されるだろう。
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