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永遠
ストーカーはサービス過剰
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あ、ウーロン茶、もう残り少ないな。
次はこの、梅シロップソーダっていうの頼んでみようかな。
美味しそう。
ウーロン茶を飲み終わって。
店員さんを呼んで、注文しようと思ったら。
ちょうどグラスをいくつか抱えた店員さんが来た。
*****
「梅シロップソーダご注文のお客様はー」
「こっちです」
手を挙げた曽根は、僕を示して。
僕の目の前に、その梅シロップソーダのグラスが置かれた。
曽根の前にはウーロン茶が。
ということは。僕が飲むように、曽根が注文したのか。
そして曽根は、梅シロップソーダのグラスの水気を紙ナプキンで拭き取っている。
だから、さっきから何なんだよ。その細やかな気配りは。
銀座のホステスか!
いや、男だからホストかな? ホストってチャラい印象あるから、違和感あるけど。
「……オレ、今これ頼もうとしたんだけど。何でわかったんだ?」
「目の動きで。良かった。当たってたかな」
目の動き……視線で!? 本当に? 観察力半端ないな!
というか、もう始まっていたのか。例の、僕の行動観察とやらは。
ビシバシ視線を感じたのも、気のせいじゃなかったようだ。
グラスの水気を拭いたのは、手が濡れたり水滴が落ちて服が濡れるだろうからだって?
女の子じゃないんだから、そんなの別に気にしないのに。
その後も、ソフトドリンクの注文だけでなく。食べたいと思ったものを皿に盛ってくれたり、至れり尽くせりの扱いをされた。
人間行動学の研究でもしてるのか、先を読むのが上手いのか。
はたまた僕が単純でわかりやすいのか。
まるで、有能な執事に傅かれてるような感じだ。
*****
その様子を見ていた宮島が、こっちを見て呟いた。
「女王様と下僕、爆誕だな……」
「誰が女王様だ!?」
「僕は下僕でかまわないが?」
曽根は下僕呼ばわりを訂正しないどころか、まんざらでもない様子だった。
「いや、かまわなくないだろ。かまえ」
「構い倒していいのか?」
あれ?
「そっ、そういう意味じゃないってば!」
慌てて否定する。
「ヤダ、トワくんカワイー」
「ダメだよー、ファンには優しくしてあげなきゃ」
女の子たちはきゃわきゃわ笑っている。何だか嬉しそうなのは何故だろう。
「あー、確かに。サービスする側じゃなくて、傅かれる方のが似合うかもな」
「伊角、俺もハーレムに入れてー」
周囲の男メンツまでおかしなことを言いだした。
「女の子ならまだしも、男に傅かれるのはごめんだね」
手でしっしっ、と追い払う仕草をする。
「えー、トワくん意外とオレ様系?」
「オラオラ系似合わなーい」
「あ、私メイド服持ってるよ!」
「ユカちゃんのメイド姿、超見たい!」
「あんたは下心見え見えだからダメ」
「伊角はいいのかよ」
「当たり前でしょ?」
……何だか話の流れがおかしくなっているような。
でも、その後は空気が悪くなることもなく。
盛り上がったまま、コンパは終わったのだった。
*****
「曽根っちゴチー」
「ゴチっした」
目一杯飲み食いした連中は、軽く礼を言った。
十万単位の代金を自腹で払ってくれた相手に、軽すぎないか?
せめてありがとう、ごちそうさまくらいちゃんと言えよ。
……なんて思っても、言えないけど。
「じゃあまた明日な」
「あ、明日自主休講なんで代返よろしくー」
「今夜は眠らせないってかぁ?」
仲良くなった男女が数人抜けて。夜の街に消えていくのを見送る。
いいなあ。
ちょっと羨ましい。
両脇を男に挟まれはしていたものの。
テーブルを挟んだ向こうから、女の子に話しかけられはしてた。けど、メンツの中にはビビッと来る子は居なかったんだよな。
向こうも、ちゃんと付き合う気はなくて。僕の見た目にしか興味ないようだし。
贅沢を言うようだけど。
付き合うなら、金銭感覚とか色々ちゃんとした子が良い。
一時の遊びみたいに軽く誘われるのは、チャラチャラしたようなキャラを作ってるせいだろう。
でも、遊びみたいに身体を重ねたくはない。
キス以上の行為をするのは、結婚を前提に考えた付き合いをしてからだと思う。
考えが古いのかなあ?
男女交際に夢を持ち過ぎなのか。
*****
「トワ君、二次会来ない?」
ほろ酔いの女の子に誘われた。
「明日オレ、一時限目からだから。ごめんな?」
かわいこぶって小首を傾げながら手を合わせて謝ってみたり。
「やーんカワイー」
「意外に真面目なとこもヨシ! 許す!」
きゃらきゃら笑っている女の子たちに、あんまり飲みすぎないようにな、と優しく声をかけて、手を振る。
「曽根はぁ?」
ほぼ酔っぱらいな宮島が曽根を見た。
奢ってくれたから、一応形式上声を掛けたけど、来ることは望んでない様子だ。
空気を読まずに行くって言ったら迷惑そうな顔されるんだろうなあ、と勝手に想像して胃が痛くなる。
決して空気を読んだ訳ではないだろうけど。
曽根は誘いをきっぱり断った。
「僕はこれから伊角君を無事に家まで送り届けるという非常に重要な用件があるので、ここで失礼する」
いや聞いてない。
曽根に家まで送られるとかいう話は一切聞いてないんだけど。
今、初めて知ったんだけど。
「…………おー、がんばれ」
宮島は思考停止したのか、棒読みみたいに言った。
「ああ、最善を尽くすつもりだ」
こっちは無意味にやる気満々だった。
何を頑張るんだろうか。
曽根も酔ってるのかな?
ウーロン茶しか飲んでなかった気もするけど。
次はこの、梅シロップソーダっていうの頼んでみようかな。
美味しそう。
ウーロン茶を飲み終わって。
店員さんを呼んで、注文しようと思ったら。
ちょうどグラスをいくつか抱えた店員さんが来た。
*****
「梅シロップソーダご注文のお客様はー」
「こっちです」
手を挙げた曽根は、僕を示して。
僕の目の前に、その梅シロップソーダのグラスが置かれた。
曽根の前にはウーロン茶が。
ということは。僕が飲むように、曽根が注文したのか。
そして曽根は、梅シロップソーダのグラスの水気を紙ナプキンで拭き取っている。
だから、さっきから何なんだよ。その細やかな気配りは。
銀座のホステスか!
いや、男だからホストかな? ホストってチャラい印象あるから、違和感あるけど。
「……オレ、今これ頼もうとしたんだけど。何でわかったんだ?」
「目の動きで。良かった。当たってたかな」
目の動き……視線で!? 本当に? 観察力半端ないな!
というか、もう始まっていたのか。例の、僕の行動観察とやらは。
ビシバシ視線を感じたのも、気のせいじゃなかったようだ。
グラスの水気を拭いたのは、手が濡れたり水滴が落ちて服が濡れるだろうからだって?
女の子じゃないんだから、そんなの別に気にしないのに。
その後も、ソフトドリンクの注文だけでなく。食べたいと思ったものを皿に盛ってくれたり、至れり尽くせりの扱いをされた。
人間行動学の研究でもしてるのか、先を読むのが上手いのか。
はたまた僕が単純でわかりやすいのか。
まるで、有能な執事に傅かれてるような感じだ。
*****
その様子を見ていた宮島が、こっちを見て呟いた。
「女王様と下僕、爆誕だな……」
「誰が女王様だ!?」
「僕は下僕でかまわないが?」
曽根は下僕呼ばわりを訂正しないどころか、まんざらでもない様子だった。
「いや、かまわなくないだろ。かまえ」
「構い倒していいのか?」
あれ?
「そっ、そういう意味じゃないってば!」
慌てて否定する。
「ヤダ、トワくんカワイー」
「ダメだよー、ファンには優しくしてあげなきゃ」
女の子たちはきゃわきゃわ笑っている。何だか嬉しそうなのは何故だろう。
「あー、確かに。サービスする側じゃなくて、傅かれる方のが似合うかもな」
「伊角、俺もハーレムに入れてー」
周囲の男メンツまでおかしなことを言いだした。
「女の子ならまだしも、男に傅かれるのはごめんだね」
手でしっしっ、と追い払う仕草をする。
「えー、トワくん意外とオレ様系?」
「オラオラ系似合わなーい」
「あ、私メイド服持ってるよ!」
「ユカちゃんのメイド姿、超見たい!」
「あんたは下心見え見えだからダメ」
「伊角はいいのかよ」
「当たり前でしょ?」
……何だか話の流れがおかしくなっているような。
でも、その後は空気が悪くなることもなく。
盛り上がったまま、コンパは終わったのだった。
*****
「曽根っちゴチー」
「ゴチっした」
目一杯飲み食いした連中は、軽く礼を言った。
十万単位の代金を自腹で払ってくれた相手に、軽すぎないか?
せめてありがとう、ごちそうさまくらいちゃんと言えよ。
……なんて思っても、言えないけど。
「じゃあまた明日な」
「あ、明日自主休講なんで代返よろしくー」
「今夜は眠らせないってかぁ?」
仲良くなった男女が数人抜けて。夜の街に消えていくのを見送る。
いいなあ。
ちょっと羨ましい。
両脇を男に挟まれはしていたものの。
テーブルを挟んだ向こうから、女の子に話しかけられはしてた。けど、メンツの中にはビビッと来る子は居なかったんだよな。
向こうも、ちゃんと付き合う気はなくて。僕の見た目にしか興味ないようだし。
贅沢を言うようだけど。
付き合うなら、金銭感覚とか色々ちゃんとした子が良い。
一時の遊びみたいに軽く誘われるのは、チャラチャラしたようなキャラを作ってるせいだろう。
でも、遊びみたいに身体を重ねたくはない。
キス以上の行為をするのは、結婚を前提に考えた付き合いをしてからだと思う。
考えが古いのかなあ?
男女交際に夢を持ち過ぎなのか。
*****
「トワ君、二次会来ない?」
ほろ酔いの女の子に誘われた。
「明日オレ、一時限目からだから。ごめんな?」
かわいこぶって小首を傾げながら手を合わせて謝ってみたり。
「やーんカワイー」
「意外に真面目なとこもヨシ! 許す!」
きゃらきゃら笑っている女の子たちに、あんまり飲みすぎないようにな、と優しく声をかけて、手を振る。
「曽根はぁ?」
ほぼ酔っぱらいな宮島が曽根を見た。
奢ってくれたから、一応形式上声を掛けたけど、来ることは望んでない様子だ。
空気を読まずに行くって言ったら迷惑そうな顔されるんだろうなあ、と勝手に想像して胃が痛くなる。
決して空気を読んだ訳ではないだろうけど。
曽根は誘いをきっぱり断った。
「僕はこれから伊角君を無事に家まで送り届けるという非常に重要な用件があるので、ここで失礼する」
いや聞いてない。
曽根に家まで送られるとかいう話は一切聞いてないんだけど。
今、初めて知ったんだけど。
「…………おー、がんばれ」
宮島は思考停止したのか、棒読みみたいに言った。
「ああ、最善を尽くすつもりだ」
こっちは無意味にやる気満々だった。
何を頑張るんだろうか。
曽根も酔ってるのかな?
ウーロン茶しか飲んでなかった気もするけど。
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