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おまけ/そして、10年後。
二人の天使
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「れーとー、」
「かーしゃまー」
俺の子供たちが駆け寄ってきた。
犬耳にしっぽの生えた、かわいい子供たちだ。
「ああ、足元に気をつけて。転んだらイタイイタ~イ、だよ」
しゃがんで、子供達を抱きとめる。
黒い髪に茶色の耳、金色の目がウリエルで。金色の髪に黒い耳、黒い目がミカエルだ。
王は、代々~エルとつくのが決まりなんだとか。
王子である二人もそうすると聞いて。
その上、俺が名付けて欲しい、と言われたので。
悩みに悩んだ末、おそれおおくも、元の世界の大天使の名前を頂いてしまったわけだ。
本来、この世界の人間は一ヶ月で卵から孵って、すぐに蛹になって、二ヶ月で10歳の姿で出てきて、15で成人だっていうけど。
俺が異世界人だったせいか、出てきた時はビー玉みたいな卵だったのが、半年かけてバスケボールくらい大きくなって。
中から、珠のようなケモミミの赤ん坊が二人も出てきたのである。
それにはアレクもびっくりしていたけど。
二人して、大喜びで抱き合った。
†††
今、二人は2歳と6ヶ月になる。
成長は、人間と同じくらいなようでゆっくりだ。
それだけに、子育ては大変だけど。
子供たちの可愛い姿を、通常より長く見れるんだと思えば。それも幸せだ。
「ウリ、ミカ、お勉強は進んでる?」
神官のナーサルが、二人の教育係を買って出てくれて。
王としての教育を施すと息巻いていた。
俺とアレクが国の仕事をしている間、ナーサルに世話をまかせっきりになってしまうのは申し訳ないけど。
ナーサルは光栄だって言って、喜んでくれてる。
「あい、」
ウリエルはおとなしい子だ。俺にこくりと頷いてみせた。
「がんばるー」
ミカエルは耳をぱたぱたさせている。
かわいい。
さすがは俺とアレクの子供。
まさに天使だ。
「!」
ウリエルが、ぴるぴると耳を動かせると。
俺の腕から飛び出した。
ウリエルの大好きなあの人が来たんだな、と察した。
†††
「りゅし!」
「やあ、ご機嫌いかがかな?」
やっぱり。
予想通り、北の国王、リュシエルが遊びに来ていた。
歩くたびに、背中の羽がふぁさふぁさと揺れてる。
相変わらず宝塚みたいにゴージャスな姿だ。
「げんきー」
ウリエルはしっぽをぶんぶん振って、リュシエルに飛びついた。
リュシエルは、俺の子供が生まれてから、異世界人ハーフの生態に興味深々なのか、ちょくちょく遊びに来てる。
そんなリュシエルに、ウリエルはやたら懐いているのだ。
大好きなリュシエルにひっついてご機嫌なウリエルを、ミカエルが羨ましそうに見ていた。
ミカエルは、ネフェルたんに懐いてたっけ。
ネフェルたんも、ミカエルのことを可愛がってくれてる。
「ネフェルも、もうすぐ遊びに来るって言ってたよ」
「ほんと!?」
教えると、嬉しそうに耳を立てた。
……うちの子、大きくなったら余所の国にもらわれていってしまうんじゃないだろうか……。
いや、二人はまだまだ幼児だし。結婚とか、ずっと先の話だ。
考えすぎだよな?
†††
「せっかくリュシエルが手土産に氷を持ってきてくれたし。カキ氷食べようか?」
「はーい」
「あい!」
二人は元気よく返事した。
「僕もご相伴に預かっても?」
「もちろん!」
リュシエルもすっかりカキ氷が好物になったようで、嬉しい。
毎度のことなので、気を利かせたナーサルがかき氷の道具を持ってきてくれた。
手動の氷かきに、ガラスの器とスプーン、フルーツなどなど。
紫の芝生の上にテーブルを置いて。
氷を削るのはミカエル、フルーツのトッピングはウリエルがはりきって受け持ってる。
「うんしょ、うんしょ、」
「イチゴ、メロン、パイン、」
一生懸命な姿に、みんな笑顔になる。
「おや、北の王。また参られたのか。……ヒマなのかな?」
「失礼な、公務の一環だよ?」
サボリ……もといひと休みしにきた、一言多いアレクも一緒に。
みんなでカキ氷を食べた。
†††
南の国で作ったガラスの器。
東の国産の果物で作ったシロップに、これまた俺が名付けることになったフルーツ。
北の国で採れた氷。
舌休めには、西の国のお菓子(赤いウニを揚げたやつ)を添えた、いわば全国共同制作的なカキ氷は、めでたくも世界的に大人気商品となった。
「きれいねー、」
「ねー、」
ミカエルもウリエルも、ガラス製の器がお気に入りだ。
ピンクの空の下で、七色に光るガラス。
沖縄旅行でガラス工房を見たのを思い出して、あの環境ならガラス製作に向いてそうだと思ったら、大当たりだった。
色とりどりのガラス製品を、あちこちの国で目にする機会も増えてきた。
窓にも使いたいけど、残念ながら、まだそこまでの技術には至ってない。板ガラスって難しいんだな。
西も、海産物の輸出が好調で。赤いウニの養殖も始めてるらしい。
北の国は、青い砂が減って瘴気も消えれば、あの茶色がかった赤い霧が晴れて、将来的には凍土でなくなるはずだけど。
寒い国だというのは変わらないそうなので、北海道を思い返して、他にもコラボ商品を思案中だ。
みんな、上手くいくといいな。
「ん、美味しかった」
リュシエルがナプキンで口元を拭いた。
「かーしゃまー」
俺の子供たちが駆け寄ってきた。
犬耳にしっぽの生えた、かわいい子供たちだ。
「ああ、足元に気をつけて。転んだらイタイイタ~イ、だよ」
しゃがんで、子供達を抱きとめる。
黒い髪に茶色の耳、金色の目がウリエルで。金色の髪に黒い耳、黒い目がミカエルだ。
王は、代々~エルとつくのが決まりなんだとか。
王子である二人もそうすると聞いて。
その上、俺が名付けて欲しい、と言われたので。
悩みに悩んだ末、おそれおおくも、元の世界の大天使の名前を頂いてしまったわけだ。
本来、この世界の人間は一ヶ月で卵から孵って、すぐに蛹になって、二ヶ月で10歳の姿で出てきて、15で成人だっていうけど。
俺が異世界人だったせいか、出てきた時はビー玉みたいな卵だったのが、半年かけてバスケボールくらい大きくなって。
中から、珠のようなケモミミの赤ん坊が二人も出てきたのである。
それにはアレクもびっくりしていたけど。
二人して、大喜びで抱き合った。
†††
今、二人は2歳と6ヶ月になる。
成長は、人間と同じくらいなようでゆっくりだ。
それだけに、子育ては大変だけど。
子供たちの可愛い姿を、通常より長く見れるんだと思えば。それも幸せだ。
「ウリ、ミカ、お勉強は進んでる?」
神官のナーサルが、二人の教育係を買って出てくれて。
王としての教育を施すと息巻いていた。
俺とアレクが国の仕事をしている間、ナーサルに世話をまかせっきりになってしまうのは申し訳ないけど。
ナーサルは光栄だって言って、喜んでくれてる。
「あい、」
ウリエルはおとなしい子だ。俺にこくりと頷いてみせた。
「がんばるー」
ミカエルは耳をぱたぱたさせている。
かわいい。
さすがは俺とアレクの子供。
まさに天使だ。
「!」
ウリエルが、ぴるぴると耳を動かせると。
俺の腕から飛び出した。
ウリエルの大好きなあの人が来たんだな、と察した。
†††
「りゅし!」
「やあ、ご機嫌いかがかな?」
やっぱり。
予想通り、北の国王、リュシエルが遊びに来ていた。
歩くたびに、背中の羽がふぁさふぁさと揺れてる。
相変わらず宝塚みたいにゴージャスな姿だ。
「げんきー」
ウリエルはしっぽをぶんぶん振って、リュシエルに飛びついた。
リュシエルは、俺の子供が生まれてから、異世界人ハーフの生態に興味深々なのか、ちょくちょく遊びに来てる。
そんなリュシエルに、ウリエルはやたら懐いているのだ。
大好きなリュシエルにひっついてご機嫌なウリエルを、ミカエルが羨ましそうに見ていた。
ミカエルは、ネフェルたんに懐いてたっけ。
ネフェルたんも、ミカエルのことを可愛がってくれてる。
「ネフェルも、もうすぐ遊びに来るって言ってたよ」
「ほんと!?」
教えると、嬉しそうに耳を立てた。
……うちの子、大きくなったら余所の国にもらわれていってしまうんじゃないだろうか……。
いや、二人はまだまだ幼児だし。結婚とか、ずっと先の話だ。
考えすぎだよな?
†††
「せっかくリュシエルが手土産に氷を持ってきてくれたし。カキ氷食べようか?」
「はーい」
「あい!」
二人は元気よく返事した。
「僕もご相伴に預かっても?」
「もちろん!」
リュシエルもすっかりカキ氷が好物になったようで、嬉しい。
毎度のことなので、気を利かせたナーサルがかき氷の道具を持ってきてくれた。
手動の氷かきに、ガラスの器とスプーン、フルーツなどなど。
紫の芝生の上にテーブルを置いて。
氷を削るのはミカエル、フルーツのトッピングはウリエルがはりきって受け持ってる。
「うんしょ、うんしょ、」
「イチゴ、メロン、パイン、」
一生懸命な姿に、みんな笑顔になる。
「おや、北の王。また参られたのか。……ヒマなのかな?」
「失礼な、公務の一環だよ?」
サボリ……もといひと休みしにきた、一言多いアレクも一緒に。
みんなでカキ氷を食べた。
†††
南の国で作ったガラスの器。
東の国産の果物で作ったシロップに、これまた俺が名付けることになったフルーツ。
北の国で採れた氷。
舌休めには、西の国のお菓子(赤いウニを揚げたやつ)を添えた、いわば全国共同制作的なカキ氷は、めでたくも世界的に大人気商品となった。
「きれいねー、」
「ねー、」
ミカエルもウリエルも、ガラス製の器がお気に入りだ。
ピンクの空の下で、七色に光るガラス。
沖縄旅行でガラス工房を見たのを思い出して、あの環境ならガラス製作に向いてそうだと思ったら、大当たりだった。
色とりどりのガラス製品を、あちこちの国で目にする機会も増えてきた。
窓にも使いたいけど、残念ながら、まだそこまでの技術には至ってない。板ガラスって難しいんだな。
西も、海産物の輸出が好調で。赤いウニの養殖も始めてるらしい。
北の国は、青い砂が減って瘴気も消えれば、あの茶色がかった赤い霧が晴れて、将来的には凍土でなくなるはずだけど。
寒い国だというのは変わらないそうなので、北海道を思い返して、他にもコラボ商品を思案中だ。
みんな、上手くいくといいな。
「ん、美味しかった」
リュシエルがナプキンで口元を拭いた。
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