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神の塔にて

ミッションコンプリート?

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クロポメの猛ダッシュにより、かなり早く東の国の宮城きゅうじょうへ着いた。


何故かアレクが門の前で待っていて、こっちに手を振っている。
ちょうど出かけるところだったのかな?

俺の方を見て。
両手を広げて、おいでカモン! な体勢なので。

これは千載一遇のチャンス! とばかりにクロポメから降りて。
猛ダッシュで走り寄った。

砂地だから走りにくいけど。


「おかえり、私のかわいいレイ……く、」

勢いつけて、腹に頭突きをかましてやったけど。
体重不足かスピード不足か、後ろに倒れるまではいかなかった。

残念無念。


「ふふ、なかなか激しい愛情表現だね。異世界の流儀かな?」
アレクは少しも変わらない、完璧な笑顔だった。

くそ、ノーダメージか……!


代わりに俺の頭にダメージが。
んもー、腹筋硬いよ!

でも、これ以上頭が悪くなることはないだろう。
よし、セーフだ。

少しもセーフじゃない気がするけどセーフ。


†††


「……アレク、俺のこと騙してたよね?」
頑張って、睨んでみせる。

怒ってるんだからな? って態度を示さないといけない。
この綺麗な顔を見てると、つい表情が緩んでしまいそうになるけど。

負けるな俺! 頑張れ俺!

「ん? なんのことかな?」
そんな風にかわいく小首を傾げてみせてもダメだから!


「額にちゅーする必要、なかったんじゃん!」
「ああ、それ。触れればいいものだけど。本来、伴侶にかけるものだからね」

ちゅーしたかったから、ちゅーして石をつけたんだと。
悪びれなく言われてしまった。

このセクハラ王ってば、全くもう!


「何でそれ、最初に言っておいてくれなかったの……?」

伴侶にかけるものだって、言ってくれればよかったのに。
そしたら、余計な恥をかかないですんだのに。

「何とかなっただろう?」
涼しい顔して。


まあ確かに、何とかなったけど。

一応、急いでたなら仕方ないねって納得してもらえたけど。
俺は納得できないんです!!


「最初から色々説明してしまうと、旅の楽しさが減ると思ったんだ。すまない」

ええっ?
そういう理由で?


†††


「……もう、いいけどさ……」
アレクの笑顔を見てたら、怒れなくなっちゃう。


……あれ?
気付けば、いつの間にか、アレクの俺に対する言葉遣いが。だいぶ砕けたものになってる。

親しさが増したみたいで。何となく、嬉しいかも。


「そういや何でアレク、門の前にいたわけ? これからどっか出掛けるとこだったの?」
なら出掛けなくていいのかな、と思っていたら。

アレクはまぶしいほどの笑顔で。
「ああ、遠見の鏡でレイトの様子は逐一観察していたからね。来るのが見えたので、待ち構えていたんだ」


……何ですと?

遠見の鏡ってナニ? 覗きアイテム?
見てたの!?


西のはあざとい、南のがロリコンじゃなくて助かった、北では危なかった、レイトの唇が無事でよかった、とかつぶやいてる。

何やってんのこの人!?


ストーカー!
おまわりさん、この人、ストーカーです! それもガチなやつ!!


†††


……心配してくれていたんだ、と思おう。

「じゃあ、休戦条約と四国間物流の件がうまくいったの、見てくれた?」
見上げると。

夏の太陽よりも輝いて見える笑顔。この世界太陽無いけど。

久しぶりでも破壊力が高い。
まぶしい……。

やっぱり美形の笑顔は尊い……。

「ああ、よくやってくれた。さすがは私の黒き小さな神の子だ」
よしよし、と頭を撫でられた。

アレクのものじゃないけどね!


「はいこれ、西と南と北からの親書ね!」
かなり分厚くなってしまった親書を、アレクに手渡したら。


ピコーン! パパラパッパパー!


って。
……この音は。


例のフラグ音!?
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