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西の国の王
西の国へ
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とりあえず、最初は交流のある西の国に交渉に行くことにした。
アレクに書いてもらった、王様への親書も持ってく。
友好国の西の国の交渉が終わったら、ちょっと怖いけど、次は南の国。一番情報の少ない北の国はラストだ。
三つの国を周って、国の様子をみながら物々交換&停戦の提案をしてみる。
神の島を真ん中にして東西南北の位置に国があるから、本当は時計回りまたは反時計回りで行きたいところだけど。一番安全だと考えるルートが西、南、北の順らしい。
”黒くて小さい神の御使い”なら、危害を与えられることは絶対ないし、話くらいは聞いてもらえるだろう、という目論見だ。
自分の身の安全は保障されてると思えば、こわくない。……たぶん。
†††
異動のため、竜馬を一頭くれるって言われたけど。乗り方とか教わらないとダメっぽい。
難しそうだな。
せめて鞍とか手綱は無いのかな、と見ていると。
背後から、渋い声が聞こえた。
『神のいとし子、黒く小さきあるじよ。我が背に乗られませい。竜馬より疾く駆けようぞ』
言ってる内容も渋い。
そう、黒ポメ(何故か馬)だった。
”言解の魔法”のおかげで、黒ポメの言葉も理解できるようになったみたいだ。
これはほんとに嬉しい。
『東の果て、青の砂漠で彷徨い、病に斃れ。此処で死を迎えるが定めと諦めていた我に、唯一の食料を譲って下さった。その御恩、生涯御身に仕えることで返したく候』
とか言われた。武士かな? 魔法の翻訳がおかしいのかな?
生涯って……。
重い。重すぎるよ。感謝の気持ちが。
なんか、感動して泣いてる人もいるんですけど。
いや、だって夢だと思ってたし。
何にも考えてなかっただけなんだよね。
そこまで感謝されてしまうと、かえってごめんなさいと謝りたくなる。
でも、大好きなわんこが一緒に来てくれるのは、正直心強いし、嬉しい。
黒ポメの背中、乗り心地最高だったし。
また、あのもふもふに乗れるのかと思うと、ウキウキしてくる。
「ありがとな。じゃあ好意に甘えさせてもらうよ。……まずは友好国の、西の国へ!」
『承知』
……だから、声もセリフも渋いってば。
†††
黒ポメ(仮名)に、名前はあるのかと聞いたら。
『あるじの好きなように呼ばれるが良い』
と渋い声で言われたので。
じゃあそのまんま、クロポメと呼ぶことにしたら、しっぽをぶんぶん振って喜んでくれた。
神聖な黒を名前に入れてもらって、光栄だそうだ。
声は渋いけど、かわいい。
安定感のある、もふもふ天国なクロポメの背中に乗って、大きな湖の上をびゅんびゅん走っている。
水の上って走れるんだ。さすがファンタジーだなあ。
本当は、真ん中にある島を突っ切れば早いんだろうけど。
さすがに神の塔の島には畏れ多くて近づけないようだ。
だから湖を走ってるんだな。
湖のほとりに、いくつか村みたいな集落が見えて。
ちょっと寄ってみたいな、と気になったけど。
残念ながら、今は用事が先だ。
†††
あっという間に、西の国に到着した。
西の国は、緑色が多い国だった。緑色……つまり、水源が豊かなんだ。
海だけじゃなく、綺麗な湖も大小いっぱいある。
海水や淡水の魚介類が豊富に獲れて、植物も少し、生えているようだ。
差し迫った飢えとかないから、心に余裕もあるようで。
停戦協定もすんなり通ったんだろうな。
竜馬に乗って休戦協定を申し込みに行ったらわりとすぐまとまった、ってアレクが言ってたっけ。
まさか、単身で乗り込んだの……?
西の国の建物は、中華風で、ちょっと和風? なテイストだった。
屋根は瓦みたいなものに覆われて、門は赤というか朱塗りで、黒と金色の装飾。
緑色で西の国、と書かれた達筆な看板。
このカラーリングは、何となく中華街っぽくて落ち着く。
見慣れた色使いに餓えていたんだなあ。
一歩間違えたら下品になりそうな色使いなのに、絶妙なバランスを保っている。これもインスタ栄え以下略。
『異世界より神使が召喚された。王を呼び、歓待せよ』
城門の前でお座りしたクロポメの渋い声が響き渡った。
ああ、こんなこと言ってたんだ。
しばらくして。
三叉の、魚を獲るやつみたいな武器を持った、薄い緑色の鎧をつけた青白い肌の兵士たちが慌てて出てきた。
みんな武器を自分の左横に置いて。土下座というか、平伏する。
……既視感あふれる光景だ。
そして。
やっぱり銅鑼の音が響き渡った。
ゴワ~~~~~ン。
神使を迎える時にはみんなそうするって、決まった作法なのかな?
まだサンプルが東とここしか無いから、断定は出来ないけど。
おっと、来た来た、来ましたよ。西の王様だ。
黒に金色の糸で縁取られた、中華風の服を着ている。
服に入ってる竜馬っぽい刺繍は緑系統の色でされていた。帯は黄緑色だ。
王様は基本的にみんな黒い衣装で、他の人は淡い色の服なのは各国共通なのかも。
黒は王様とか、身分が高くないと身に着けられないからな。
話に聞いた通りの銀灰色の髪は、頭の上で結ってあるのに、さらに腰まである長さで。
額には、瞳と同じ色の宝石。
理知的な、緑というより、深い海のような碧色の瞳。
青白い肌。
おお、これぞ異世界、って感じだ。リアルなCGみたい!
アレクに書いてもらった、王様への親書も持ってく。
友好国の西の国の交渉が終わったら、ちょっと怖いけど、次は南の国。一番情報の少ない北の国はラストだ。
三つの国を周って、国の様子をみながら物々交換&停戦の提案をしてみる。
神の島を真ん中にして東西南北の位置に国があるから、本当は時計回りまたは反時計回りで行きたいところだけど。一番安全だと考えるルートが西、南、北の順らしい。
”黒くて小さい神の御使い”なら、危害を与えられることは絶対ないし、話くらいは聞いてもらえるだろう、という目論見だ。
自分の身の安全は保障されてると思えば、こわくない。……たぶん。
†††
異動のため、竜馬を一頭くれるって言われたけど。乗り方とか教わらないとダメっぽい。
難しそうだな。
せめて鞍とか手綱は無いのかな、と見ていると。
背後から、渋い声が聞こえた。
『神のいとし子、黒く小さきあるじよ。我が背に乗られませい。竜馬より疾く駆けようぞ』
言ってる内容も渋い。
そう、黒ポメ(何故か馬)だった。
”言解の魔法”のおかげで、黒ポメの言葉も理解できるようになったみたいだ。
これはほんとに嬉しい。
『東の果て、青の砂漠で彷徨い、病に斃れ。此処で死を迎えるが定めと諦めていた我に、唯一の食料を譲って下さった。その御恩、生涯御身に仕えることで返したく候』
とか言われた。武士かな? 魔法の翻訳がおかしいのかな?
生涯って……。
重い。重すぎるよ。感謝の気持ちが。
なんか、感動して泣いてる人もいるんですけど。
いや、だって夢だと思ってたし。
何にも考えてなかっただけなんだよね。
そこまで感謝されてしまうと、かえってごめんなさいと謝りたくなる。
でも、大好きなわんこが一緒に来てくれるのは、正直心強いし、嬉しい。
黒ポメの背中、乗り心地最高だったし。
また、あのもふもふに乗れるのかと思うと、ウキウキしてくる。
「ありがとな。じゃあ好意に甘えさせてもらうよ。……まずは友好国の、西の国へ!」
『承知』
……だから、声もセリフも渋いってば。
†††
黒ポメ(仮名)に、名前はあるのかと聞いたら。
『あるじの好きなように呼ばれるが良い』
と渋い声で言われたので。
じゃあそのまんま、クロポメと呼ぶことにしたら、しっぽをぶんぶん振って喜んでくれた。
神聖な黒を名前に入れてもらって、光栄だそうだ。
声は渋いけど、かわいい。
安定感のある、もふもふ天国なクロポメの背中に乗って、大きな湖の上をびゅんびゅん走っている。
水の上って走れるんだ。さすがファンタジーだなあ。
本当は、真ん中にある島を突っ切れば早いんだろうけど。
さすがに神の塔の島には畏れ多くて近づけないようだ。
だから湖を走ってるんだな。
湖のほとりに、いくつか村みたいな集落が見えて。
ちょっと寄ってみたいな、と気になったけど。
残念ながら、今は用事が先だ。
†††
あっという間に、西の国に到着した。
西の国は、緑色が多い国だった。緑色……つまり、水源が豊かなんだ。
海だけじゃなく、綺麗な湖も大小いっぱいある。
海水や淡水の魚介類が豊富に獲れて、植物も少し、生えているようだ。
差し迫った飢えとかないから、心に余裕もあるようで。
停戦協定もすんなり通ったんだろうな。
竜馬に乗って休戦協定を申し込みに行ったらわりとすぐまとまった、ってアレクが言ってたっけ。
まさか、単身で乗り込んだの……?
西の国の建物は、中華風で、ちょっと和風? なテイストだった。
屋根は瓦みたいなものに覆われて、門は赤というか朱塗りで、黒と金色の装飾。
緑色で西の国、と書かれた達筆な看板。
このカラーリングは、何となく中華街っぽくて落ち着く。
見慣れた色使いに餓えていたんだなあ。
一歩間違えたら下品になりそうな色使いなのに、絶妙なバランスを保っている。これもインスタ栄え以下略。
『異世界より神使が召喚された。王を呼び、歓待せよ』
城門の前でお座りしたクロポメの渋い声が響き渡った。
ああ、こんなこと言ってたんだ。
しばらくして。
三叉の、魚を獲るやつみたいな武器を持った、薄い緑色の鎧をつけた青白い肌の兵士たちが慌てて出てきた。
みんな武器を自分の左横に置いて。土下座というか、平伏する。
……既視感あふれる光景だ。
そして。
やっぱり銅鑼の音が響き渡った。
ゴワ~~~~~ン。
神使を迎える時にはみんなそうするって、決まった作法なのかな?
まだサンプルが東とここしか無いから、断定は出来ないけど。
おっと、来た来た、来ましたよ。西の王様だ。
黒に金色の糸で縁取られた、中華風の服を着ている。
服に入ってる竜馬っぽい刺繍は緑系統の色でされていた。帯は黄緑色だ。
王様は基本的にみんな黒い衣装で、他の人は淡い色の服なのは各国共通なのかも。
黒は王様とか、身分が高くないと身に着けられないからな。
話に聞いた通りの銀灰色の髪は、頭の上で結ってあるのに、さらに腰まである長さで。
額には、瞳と同じ色の宝石。
理知的な、緑というより、深い海のような碧色の瞳。
青白い肌。
おお、これぞ異世界、って感じだ。リアルなCGみたい!
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