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東の国の王

この世界について

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「しばらくこの国に滞在されますか? 好きなだけ居て下さっても構いませんよ。末永く大切にしますので」
アレクはキラキラ笑顔で寄って来た。


……何で俺の腰に手を添えるのかなあ。

この人、いちいち俺にすることが、まるでお姫様にでもするような態度なんだよな。
まさか俺が女の子に見えてるわけじゃないよな?

今のところ、ここではまだ、女の人の姿は見えないけど。
いるよな? アラブの人みたいに布を被っててわからないだけかな?

後宮に千人単位でいそう。


「末永く大切にする」って。普通は、結婚相手とかに言うもんじゃないの? 異世界だから、常識が違うのかもしれないけど。

どういうつもりで言ったのか、聞きたいけど。
今のところは聞かない方がいい気がする。


アレクの顔を見たらドキドキしてしまうのがわかりきってるので。
窓の外に視線をやった。


兵士から餌を貰ってる、ドラゴンみたいな生き物がいるのが見えた。
さすがファンタジー、魔法の世界だ。

あとで触らせてもらってもいいかな? いいよな!


「あれは……?」
指差すと。

「竜馬です」


そっか。
リョウマかあ。

……海援隊とか作りそうだね?


†††


とりあえず、この世界の常識を一通り教わるまでの間、ここにいさせてもらうことにした。

いくら俺が神様のお使いでレジェンドレアな存在でも、非常識な真似をしては失礼になるからな。
まずは情報集めだ。


最初は、お城の中を案内してもらうことになった。
かなり広いため、今日中に全部は回りきれないというので、さっき聞いた”異世界から流れてきたもの”を見せてもらうことにした。

異世界からてきた漂流物は、ここでは宝物扱いされてるようで、宝物庫に厳重に保管されていた。分厚い扉の前にガードマンというか、兵士が数人見張りに立ってるくらいだ。


お宝っていうから、見る前はわくわくしてたんだけど。
ペットボトルとか、空き缶や空き瓶とか。錆びた電池とか、カットマネキンの首とか。

俺にとってはそのへんの海岸に落ちてそうなゴミみたいなものばかりだった。

特に何かに使えそうなものは無いようだった。
リサイクルしようにも、直し方とか知らないのでどうしようもない。お手上げだ。
ここでは貴重品扱いだから、失敗も出来ないしな。


流木や、人面石みたいのもいくつか飾ってあって。ますます海辺の漂着物コレクションみが強い……。
どうせ集めるなら、綺麗な石とかにしようよ!


謎のカタマリとか、俺には判別不能な物体もあったので、この中には、俺の世界のとは違う、他の世界から来た漂流物もあるのかもしれない。
どっちみちゴミにしか見えないんだけど。


俺は、気がついたら”死の砂漠”にいた。前後の記憶はない。

この漂流物たちは、どうやって、この国に流れ着いたのかな?
ここは、四方が壁に囲まれてる世界だっていうのに。


不思議だ。


†††


地図とかあったら見たい、と言ったら。
この世界では賢者的な役割だという、神官のナーサルに、この世界の地図を見せてもらった。

ここでは地図はとても貴重なものらしい。
厳重に、箱に入ってた。


銀色の髪と蒼い目の青年ナーサルも、やたら美形で、背が高かった。
異世界ってばイケメンパラダイスなんだな。俺はイケメンに囲まれても嬉しくないけど。

ナーサルは俺を見て、頬を染めていた。

アレクほどじゃないけど、こんな美形なら黙っててもモテそうなのに。
嬉しそうに、神使様の世話係はかなりの競争率だった、とか言われても困る。


何なの? 男限定のモテ期ですか?
……周りが超絶美形ばっかだと見慣れちゃって、俺みたいなフツメンが、新鮮に感じるのかもしれないな!

もういいや、勉強だ勉強!


気を取り直して、地図を見る。
四方が壁で。中央にある島を取り囲むように、四つの大陸がある。

四つの大陸はそれぞれ繋がっている。

中央の島には、天まで届くほどの黒い”神の塔”がそびえたっているという。
バベルの塔みたいで、縁起悪い気がするけど。こっちでは、黒は神聖な色なんだもんな……。
仏壇みたいなものだと考えればいいのかな?


で。
天空には、神の国がある、と信じられてる。


†††


四方が壁に囲まれた世界か……。

ほんとにここ、異世界なんだな。
丸くない、平らな土地なら、日没とかどうなるんだろう、と思ったら。

そもそも太陽が存在してなくて。ピンク色の空自体が光ってるんだって。
夜は無いの?

ドームとか、箱庭みたいな感じかな?


ん? でも、地平線って、地球が丸いから見えるんであって。
平らだと、向こう側が見えるんじゃなかったっけ?

何で砂漠から、この国とかが見えなかったんだろ。
蜃気楼とか、空気の壁で遮断でもされてんの?

……って、聞いてもわかんないか。
常識からして違うんだもんな。


近くに行くまでは他の国とかが良く見えないのは、ここでは当たり前なことのようだ。

壁の外は、誰も見たことがなくて。
もしかしたら、壁の外は一面、死の砂漠なのではないか。壁に亀裂ができていて、それが中に溢れてきたのではないか。
とナーサルは考えているらしい。

最近の砂漠の侵食も、そのせいではないか、って。
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