2 / 47
砂漠にて
ファンシーな砂漠で迷子になる
しおりを挟む
……なんだこれ?
いったい、何がどうして、どうなって。
俺は、こんなとこにいるんだ?
もし俺が生粋のアメリカ人なら頭を抱えてオーマイガッ! って叫んでただろう。
でも俺はごく普通の日本人なので、あんぐりと口をあけて、ただガクゼンとするばかりだ。
空は可愛らしいパステルピンク。足元の砂はパステルブルー。
明るいのに、何故か空に太陽は無かった。
まるでペンキでベタ塗したみたいに、一面パステルピンクの空。太陽が無いのに、何でこんなに明るいんだ? 光源はどこだよ!?
こんなの、常識で考えてありえないでしょ!?
ここがテーマパークだとしても、何の意味があるんだかわかんない。だって、他に何もないんだから。
†††
茫然自失の状態っていうのは、こういうことなのかな?
気がついたら、見渡す限り、ピンクの空と、パステルプルーの砂。それだけしか存在しない世界に、気が付いたらぽつんと一人でいたんだから。おろおろしてもしょうがないよね!
と、誰もいないのに自分に言い訳してみたり。
……うう。いい加減、目がチカチカしてきそうだ。
パステルカラーは意外と目に優しくなかった。
砂が波みたいだし、見た感じは砂漠っぽいんだけど。太陽が無いせいかな? 暑くもないし、寒くもない。
太陽が無かったら氷河期じゃんとか突っ込まない。白夜みたいな感じなのかもしれないし。
砂にしては妙にさくさくした感覚なので、足元の砂をよく見てみたら。パステルブルーの砂のようなものは、小さなお星様のかたちをしていた。
なんだこりゃ。
ここはメルヘンの世界かな?
いや、でも星の砂とかは実際に存在するものだしな……。
思わず空に向かって「ヒャッホー!」とか叫んでみたが。
何も返って来ない。
当たり前だ。
こだまは山の反響だし、地平線でこだまが返って来たら逆にこわい。ナニに跳ね返ってんだよって感じだ。
第一、「ヒャッホー」じゃなくて「ヤッホー」だし。
ちなみに「ヤッホー」はドイツ語だって兄ちゃんから聞いた。
†††
とりあえず。
俺の頭がどうにかなってないか確認するためにも、情報を整理することにしよう。
まず、俺の名前。
中条麗人、私立高校の三年生だ。もちろん男子。
麗しい人、だなんて退廃的かつ耽美感漂う名前は間違っても日本人の平凡なツラした男につけるべき名前じゃないと思う。キラキラネームって言われるに決まってる。っていうか言われた。
100%からかいの対象になることは明白であろうことは予測できるだろうに。
こんな名前をつけた両親を小一時間説教したいもんだが。
父の佳人はナイスミドルとか言われてるし。母の麗美もご近所で評判の美人なのだった。二人とも名前負けしてない。ずるい。
”佳人”も美しい人、美女って意味だ。佳人薄命とかいうアレ。
オヤジは男なのに何でそんな名前を付けたんだか。名付け親である祖父ちゃんに訊いてみたかったが、俺が赤ん坊の時にどちらも他界してた。残念無念。
兄の美人や姉の麗華だって、そのキラキラしい名前に見合う美形だったりする。しかも皆、揃いも揃って眉目秀麗、文武両道の完璧超人ときた。
この場合、俺が予想外の失敗作なんだろう。
俺だけもらわれっ子だったりして。やだもう泣きたい。
そんな、何のとりえもないパンピー・オブ・パンピーな俺が。気がついたらこんなファンタジー全開な場所で、何故か学ランをきっちり身に着けた状態で突っ立っていたのだ。
多少言動がおかしくなるほど動揺しても仕方ないと思う。
男でも半泣きになったって許されるかもしれない。
いや、俺は決してチキンな訳じゃない。ビビってないです。
これは心の汗です!
†††
それにしても。
今、季節は夏真っ盛りなはずなのに。
何で俺は学生服、しかも冬服なんて暑苦しいものを着ているんだろうか?
砂漠で真っ黒な学生服とか、普通なら太陽光線独り占め、目玉焼きだって焼けちゃう状態だよ? ここは暑くないけど。
更に言えば。俺は夏休み初日、ヤッター夏休みだーとはしゃいでうっかり家の階段から転げ落ちてしまい、右足を骨折して。骨の中に金属の棒を入れる手術をした。
全治二ヶ月。少なくとも今月中は退院できないって言われたし。
只今入院中、まだ病院のベッドで寝ていたはず。
本来、受験を控えた大事な時期だろうけど。うちは幼稚園から大学までエスカレーター式なので受験とかないから良かった。
いや良くない。高校生活最後の貴重な夏休みが台無しである。別にどこにも遊びに誘われてないし出かける予定もないけど。やったねぼっちだね!
そんな悲しい現実は置いといて。
ギプスで固定されてたはずなのに。普通に立ってるし。
どこも痛くない。
……まさか。
俺ってば手術後、院内感染とかで死んでて。
ここは死後の世界だったり……とか。しないよな……?
いやいや、夢だ。
これは夢だよ! 普通に夢に決まってるじゃん!
フルカラーの夢なんかはじめて見たけど。
夢だってば!
いったい、何がどうして、どうなって。
俺は、こんなとこにいるんだ?
もし俺が生粋のアメリカ人なら頭を抱えてオーマイガッ! って叫んでただろう。
でも俺はごく普通の日本人なので、あんぐりと口をあけて、ただガクゼンとするばかりだ。
空は可愛らしいパステルピンク。足元の砂はパステルブルー。
明るいのに、何故か空に太陽は無かった。
まるでペンキでベタ塗したみたいに、一面パステルピンクの空。太陽が無いのに、何でこんなに明るいんだ? 光源はどこだよ!?
こんなの、常識で考えてありえないでしょ!?
ここがテーマパークだとしても、何の意味があるんだかわかんない。だって、他に何もないんだから。
†††
茫然自失の状態っていうのは、こういうことなのかな?
気がついたら、見渡す限り、ピンクの空と、パステルプルーの砂。それだけしか存在しない世界に、気が付いたらぽつんと一人でいたんだから。おろおろしてもしょうがないよね!
と、誰もいないのに自分に言い訳してみたり。
……うう。いい加減、目がチカチカしてきそうだ。
パステルカラーは意外と目に優しくなかった。
砂が波みたいだし、見た感じは砂漠っぽいんだけど。太陽が無いせいかな? 暑くもないし、寒くもない。
太陽が無かったら氷河期じゃんとか突っ込まない。白夜みたいな感じなのかもしれないし。
砂にしては妙にさくさくした感覚なので、足元の砂をよく見てみたら。パステルブルーの砂のようなものは、小さなお星様のかたちをしていた。
なんだこりゃ。
ここはメルヘンの世界かな?
いや、でも星の砂とかは実際に存在するものだしな……。
思わず空に向かって「ヒャッホー!」とか叫んでみたが。
何も返って来ない。
当たり前だ。
こだまは山の反響だし、地平線でこだまが返って来たら逆にこわい。ナニに跳ね返ってんだよって感じだ。
第一、「ヒャッホー」じゃなくて「ヤッホー」だし。
ちなみに「ヤッホー」はドイツ語だって兄ちゃんから聞いた。
†††
とりあえず。
俺の頭がどうにかなってないか確認するためにも、情報を整理することにしよう。
まず、俺の名前。
中条麗人、私立高校の三年生だ。もちろん男子。
麗しい人、だなんて退廃的かつ耽美感漂う名前は間違っても日本人の平凡なツラした男につけるべき名前じゃないと思う。キラキラネームって言われるに決まってる。っていうか言われた。
100%からかいの対象になることは明白であろうことは予測できるだろうに。
こんな名前をつけた両親を小一時間説教したいもんだが。
父の佳人はナイスミドルとか言われてるし。母の麗美もご近所で評判の美人なのだった。二人とも名前負けしてない。ずるい。
”佳人”も美しい人、美女って意味だ。佳人薄命とかいうアレ。
オヤジは男なのに何でそんな名前を付けたんだか。名付け親である祖父ちゃんに訊いてみたかったが、俺が赤ん坊の時にどちらも他界してた。残念無念。
兄の美人や姉の麗華だって、そのキラキラしい名前に見合う美形だったりする。しかも皆、揃いも揃って眉目秀麗、文武両道の完璧超人ときた。
この場合、俺が予想外の失敗作なんだろう。
俺だけもらわれっ子だったりして。やだもう泣きたい。
そんな、何のとりえもないパンピー・オブ・パンピーな俺が。気がついたらこんなファンタジー全開な場所で、何故か学ランをきっちり身に着けた状態で突っ立っていたのだ。
多少言動がおかしくなるほど動揺しても仕方ないと思う。
男でも半泣きになったって許されるかもしれない。
いや、俺は決してチキンな訳じゃない。ビビってないです。
これは心の汗です!
†††
それにしても。
今、季節は夏真っ盛りなはずなのに。
何で俺は学生服、しかも冬服なんて暑苦しいものを着ているんだろうか?
砂漠で真っ黒な学生服とか、普通なら太陽光線独り占め、目玉焼きだって焼けちゃう状態だよ? ここは暑くないけど。
更に言えば。俺は夏休み初日、ヤッター夏休みだーとはしゃいでうっかり家の階段から転げ落ちてしまい、右足を骨折して。骨の中に金属の棒を入れる手術をした。
全治二ヶ月。少なくとも今月中は退院できないって言われたし。
只今入院中、まだ病院のベッドで寝ていたはず。
本来、受験を控えた大事な時期だろうけど。うちは幼稚園から大学までエスカレーター式なので受験とかないから良かった。
いや良くない。高校生活最後の貴重な夏休みが台無しである。別にどこにも遊びに誘われてないし出かける予定もないけど。やったねぼっちだね!
そんな悲しい現実は置いといて。
ギプスで固定されてたはずなのに。普通に立ってるし。
どこも痛くない。
……まさか。
俺ってば手術後、院内感染とかで死んでて。
ここは死後の世界だったり……とか。しないよな……?
いやいや、夢だ。
これは夢だよ! 普通に夢に決まってるじゃん!
フルカラーの夢なんかはじめて見たけど。
夢だってば!
15
お気に入りに追加
590
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる