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砂漠の獅子は幼き寵姫を愛す
新しい世界を築くために
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「ああ、愛らしい、わたしの新。わたしのものだ。生涯、離さぬぞ」
愛おしい新を抱き締め。
腹の奥に、精を注ぎ込んだ。
孕むことのない、無駄な行為と呼ぶものもいよう。
だが、この身にわたしの精の味を。においを。
教えてやりたい。
わたしのものだという証を。
「アサド、大好きだよ」
新もわたしの背に手を回し、口付けをくれた。
愛している。新。
†††
発情期の獅子は、一日に百回の交尾をするという。
わたしもそのくらい愛したかったが。
新はまだ初心者であるし、無理だというので手加減した。
だが、それでも新にとってみたら多すぎるのだという。
もっと深く愛し合うには、新の身体はまだ小さいのだろうか?
獅子の姿でも愛してみたいが。それは可哀相だ。
獅子、というか猫科の動物の性器には、爪と同じ成分で出来ているトゲがあるのだ。
それはメスの産卵を促し、他のオスが交尾できないよう傷付けるためだという。
愛しい新を傷つけるのは却下である。
交尾といえば。
ラースは新に、男同士であっても別種族でも、わたしほど獣の力があれば、孕ませることができると話したそうである。
わたしは知らなかったので、過去の文献を調べたが。
実際、過去には男同士でツガイになり、子を成した者もいたという。
「アサドの子なら、ぜったい可愛いよね」
新は、自分の腹で子を孕むことを恐れてはいないようだ。
それほどに愛されているのだと、感動した。
新にとっては未知の生物であろう、半人半獣のわたしを受け入れたどころか。国の未来のため、その子まで孕もうと覚悟をしてくれているのだ。
大切にせねばならない。
子のことは、しばらくは蜜月を味わって。
大臣らから跡継ぎについてせっつかれたら考えよう。
それまでは、二人で過ごしたい。
†††
ペトラの工場は、設計図を貸し出す形で、使用料を払わせる方式にしたようだ。
さすがである。永遠に金を搾り取る計画だとは。
しかし、小国には阿漕な値段では貸し出さないというので、これで水不足に悩む国が減れば良いと思う。
自分の考案した工場が原因で父を亡くしたナミル王子は、しばらくの間へたれていたが。
そんな情けない男にこの国の王は相応しくない、ペトラを我が国に吸収するぞと脅したところ、奮起したようで。
ペトラ国は、15歳になった王子が無事引き継いだ。
ナミル王子は頭も回るし、獣の力は前王よりも強い。
この先何があろうと、乗り越えていけることだろうと願っている。
新は、わたしの手伝いを少しずつ覚えながら、ラースに政治など、色々なことを教わっているようだ。
賢い子である。
すぐにわたしの片腕となってくれるだろう。
身長も、少し伸びたようだ。
相変わらず可愛らしいが。
可憐な花が開いていくさまを、こうして傍で見ていられるのは僥倖である。
†††
結婚式は、来年挙げることにした。
前ペトラ王と、我が国の兵士達の喪が明けた後、大々的に祝おうと準備を進めている。
現ペトラ王であるナミルにも招待状を送るが。来るだろうか?
わたしを見ると警戒するようで、耳を伏せるのだ。
少々いじめ過ぎたか。
ともあれ。
我が国は、新が訪れたことにより、活気が溢れている。
川の神のいとし子である新が、王の伴侶となるのだ。
明るい未来を、誰もが思い浮かべているのだろう。
わたしも、民の期待に応えるべく、努力せねば。
新も頑張っているのだから。
愛する伴侶と。
新しい世界を、共に築こう。
おわり
愛おしい新を抱き締め。
腹の奥に、精を注ぎ込んだ。
孕むことのない、無駄な行為と呼ぶものもいよう。
だが、この身にわたしの精の味を。においを。
教えてやりたい。
わたしのものだという証を。
「アサド、大好きだよ」
新もわたしの背に手を回し、口付けをくれた。
愛している。新。
†††
発情期の獅子は、一日に百回の交尾をするという。
わたしもそのくらい愛したかったが。
新はまだ初心者であるし、無理だというので手加減した。
だが、それでも新にとってみたら多すぎるのだという。
もっと深く愛し合うには、新の身体はまだ小さいのだろうか?
獅子の姿でも愛してみたいが。それは可哀相だ。
獅子、というか猫科の動物の性器には、爪と同じ成分で出来ているトゲがあるのだ。
それはメスの産卵を促し、他のオスが交尾できないよう傷付けるためだという。
愛しい新を傷つけるのは却下である。
交尾といえば。
ラースは新に、男同士であっても別種族でも、わたしほど獣の力があれば、孕ませることができると話したそうである。
わたしは知らなかったので、過去の文献を調べたが。
実際、過去には男同士でツガイになり、子を成した者もいたという。
「アサドの子なら、ぜったい可愛いよね」
新は、自分の腹で子を孕むことを恐れてはいないようだ。
それほどに愛されているのだと、感動した。
新にとっては未知の生物であろう、半人半獣のわたしを受け入れたどころか。国の未来のため、その子まで孕もうと覚悟をしてくれているのだ。
大切にせねばならない。
子のことは、しばらくは蜜月を味わって。
大臣らから跡継ぎについてせっつかれたら考えよう。
それまでは、二人で過ごしたい。
†††
ペトラの工場は、設計図を貸し出す形で、使用料を払わせる方式にしたようだ。
さすがである。永遠に金を搾り取る計画だとは。
しかし、小国には阿漕な値段では貸し出さないというので、これで水不足に悩む国が減れば良いと思う。
自分の考案した工場が原因で父を亡くしたナミル王子は、しばらくの間へたれていたが。
そんな情けない男にこの国の王は相応しくない、ペトラを我が国に吸収するぞと脅したところ、奮起したようで。
ペトラ国は、15歳になった王子が無事引き継いだ。
ナミル王子は頭も回るし、獣の力は前王よりも強い。
この先何があろうと、乗り越えていけることだろうと願っている。
新は、わたしの手伝いを少しずつ覚えながら、ラースに政治など、色々なことを教わっているようだ。
賢い子である。
すぐにわたしの片腕となってくれるだろう。
身長も、少し伸びたようだ。
相変わらず可愛らしいが。
可憐な花が開いていくさまを、こうして傍で見ていられるのは僥倖である。
†††
結婚式は、来年挙げることにした。
前ペトラ王と、我が国の兵士達の喪が明けた後、大々的に祝おうと準備を進めている。
現ペトラ王であるナミルにも招待状を送るが。来るだろうか?
わたしを見ると警戒するようで、耳を伏せるのだ。
少々いじめ過ぎたか。
ともあれ。
我が国は、新が訪れたことにより、活気が溢れている。
川の神のいとし子である新が、王の伴侶となるのだ。
明るい未来を、誰もが思い浮かべているのだろう。
わたしも、民の期待に応えるべく、努力せねば。
新も頑張っているのだから。
愛する伴侶と。
新しい世界を、共に築こう。
おわり
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