24 / 38
獅子の王の寵愛
王様の養い子
しおりを挟む
アサドは裸のまま起き上がって、ベッドから降りた。
ベルを鳴らすと、すぐにアーキルという名前のお兄さんが来て。
アサドに服を着せている。あれは呼び鈴だったんだ。
裸なのに、堂々としてるなあ。
立派な身体だからかな?
どこから見ても、完璧って感じ。
ぼくは恥ずかしくて、あんな風に服を着せてもらうのは無理だ。
あっという間に立派な格好になった。
金色の刺繍をしてある、白いひらひらした服で、王冠を被ってる。王様みたいだ。
『どうだ?』
ぼくの前で、得意そうにくるりと回ってみせた。
「すごくかっこいい」
『そうか』
嬉しそうににっこり笑って。
頭を撫でられる。
アサドはかっこよくて優しくて、素敵なひとだなあ。
†††
何となく、偉いんだろうなって思ってたけど。
アサドは、この国の王様なんだって。やっぱりすごく偉かったんだ。
そして、ぼくは王様の養い子、ということになっていた。
お父さんとは、ちょっと違うらしいんだけど。
どういうことかな?
ラースという名前の先生を紹介された。
礼儀作法とか、国のこととかを教えてくれる先生らしい。
『ラースと申します。どうぞよろしくお願いします』
優雅に手を合わせ、頭を下げた。
黒くて長い髪を結い上げて。裾の長い着物を着た、綺麗なお兄さんだ。
肌の色は、ここの人たちより薄くて、目は薄い茶色。
何となく、中華風だなあ、って言葉が頭に浮かんだけど。
中華って、なんだっけ?
「よろしくお願いします」
ぼくもラース先生がしたように礼をしたら。
『これは、使用人が主にする礼なのです。主は鷹揚に頷いてみせるだけで良いのですよ』
困った顔をされてしまった。
「ええと、教えてもらうのに、そんな横柄な態度でいいんですか?」
『ええ。貴方はこの国で二番目の立場になるので、誰にも媚び諂 う必要はございません』
えっ、この国で二番目!?
王様の養い子って、そんな偉い立場なの!?
ぼく、ただアサドに拾われただけの。
名前以外、身元も何もわからない子供なのに。
それでいいの?
ラース先生には、美しい歩き方とか、座り方とか。
優雅に見える所作とかも教わるようだ。
王様の養い子って、貴族みたいな作法を覚える必要があるらしい。
†††
休憩という名の、美しいお茶の飲み方講座を挟んで。
次に、この国の歴史を教わった。
川から流れてきた一族がここに王国を築き、ゲヘトと名付けた。
川の恵みで国は発展し、大きくなり、国土はこの世界最大の規模になった。
竜巻で飛ばされてきた一族もあるそうだ。
その国とは今は友好国だって。
ゲヘトの一族がここに来てから今までの間、たくさんの争いがあったという。
それは水源を巡った争いだったり、内戦だったり。
一族はとても強く、負け知らずだったけど。
内戦の時は、三分の一くらいの人が死んだらしい。
波乱万丈だ。
ラース先生は話が上手くて、つい聞き入ってしまう。
『感心していただけるのはありがたいですが、お口は閉じてくださいね』
ぽかんと口を開けて聞いてた。
慌てて閉じる。
『そんな、噛み締めなくてもよろしいのですよ、』
ラース先生は、くすくすと笑っている。
32歳だっていうけど、もっと若く見えるし、可愛らしいと思う。
†††
ゲヘトの王は、代々善政を布いていて。国民から慕われているという。
ラース先生は親のいない子だったけど。施設で保護されて教育を受けて、先生になって。
今では王の養い子の教育を任されるようにまでなれたのが嬉しくて、前王と現王に感謝しきれないほど感謝していると言った。
身分で職業差別されないのは、とても珍しいことなんだって。
現王……アサドは国民にとって素晴らしい王様だけど。
他の国からは、残忍な王だと思われてるらしい。
攻め込んできた部族は、女の人や子供がいても、全員処刑してしまうから。
でもそれは、過去に憐れに思って引き取った子供に養い親が殺された事件が多くあったからだって。
どんな小さな子供でも、親の恨みは忘れない。だから。
どんなに無害に見えたとしても、反逆の元になりそうな芽は摘み取っておくんだって。
「でも、それって攻め込んでくる他の国が悪いんじゃないの? 逆恨みじゃない?」
『水の無い国は、他国から水を買わないといけないのですが、貧しい部族では満足に水を買うこともできないのです』
ラース先生は、細い眉をひそめた。
別に高い金で水を売ってるわけじゃないのに、仲介の業者が上乗せして、高額な金を要求するみたいだ。
でも、国々を渡り歩く仲介の業者がいないと、遠くの部族まで水は回らない。
ボランティアでは食べていけない。生きていくには、利益を得ないと。
「そうか。手間賃か。運ぶのが大変なら、仕方ないのかな」
『悲しいことです……』
みんな、色々な事情を抱えて生きてきてるんだな。
でも、隣のペトラ国で、海水を真水に換える工場を発明して。
試運転して、成功したという。
その機械が世界に広まれば、水に困らなくなりそうなんだって。
ゲヘトとペトラは友好国なので、工場に出資もしてるそうだ。
この国は、充分水に恵まれてるのに。
他の国のことも考えてるんだ。えらいなあ。
ベルを鳴らすと、すぐにアーキルという名前のお兄さんが来て。
アサドに服を着せている。あれは呼び鈴だったんだ。
裸なのに、堂々としてるなあ。
立派な身体だからかな?
どこから見ても、完璧って感じ。
ぼくは恥ずかしくて、あんな風に服を着せてもらうのは無理だ。
あっという間に立派な格好になった。
金色の刺繍をしてある、白いひらひらした服で、王冠を被ってる。王様みたいだ。
『どうだ?』
ぼくの前で、得意そうにくるりと回ってみせた。
「すごくかっこいい」
『そうか』
嬉しそうににっこり笑って。
頭を撫でられる。
アサドはかっこよくて優しくて、素敵なひとだなあ。
†††
何となく、偉いんだろうなって思ってたけど。
アサドは、この国の王様なんだって。やっぱりすごく偉かったんだ。
そして、ぼくは王様の養い子、ということになっていた。
お父さんとは、ちょっと違うらしいんだけど。
どういうことかな?
ラースという名前の先生を紹介された。
礼儀作法とか、国のこととかを教えてくれる先生らしい。
『ラースと申します。どうぞよろしくお願いします』
優雅に手を合わせ、頭を下げた。
黒くて長い髪を結い上げて。裾の長い着物を着た、綺麗なお兄さんだ。
肌の色は、ここの人たちより薄くて、目は薄い茶色。
何となく、中華風だなあ、って言葉が頭に浮かんだけど。
中華って、なんだっけ?
「よろしくお願いします」
ぼくもラース先生がしたように礼をしたら。
『これは、使用人が主にする礼なのです。主は鷹揚に頷いてみせるだけで良いのですよ』
困った顔をされてしまった。
「ええと、教えてもらうのに、そんな横柄な態度でいいんですか?」
『ええ。貴方はこの国で二番目の立場になるので、誰にも媚び諂 う必要はございません』
えっ、この国で二番目!?
王様の養い子って、そんな偉い立場なの!?
ぼく、ただアサドに拾われただけの。
名前以外、身元も何もわからない子供なのに。
それでいいの?
ラース先生には、美しい歩き方とか、座り方とか。
優雅に見える所作とかも教わるようだ。
王様の養い子って、貴族みたいな作法を覚える必要があるらしい。
†††
休憩という名の、美しいお茶の飲み方講座を挟んで。
次に、この国の歴史を教わった。
川から流れてきた一族がここに王国を築き、ゲヘトと名付けた。
川の恵みで国は発展し、大きくなり、国土はこの世界最大の規模になった。
竜巻で飛ばされてきた一族もあるそうだ。
その国とは今は友好国だって。
ゲヘトの一族がここに来てから今までの間、たくさんの争いがあったという。
それは水源を巡った争いだったり、内戦だったり。
一族はとても強く、負け知らずだったけど。
内戦の時は、三分の一くらいの人が死んだらしい。
波乱万丈だ。
ラース先生は話が上手くて、つい聞き入ってしまう。
『感心していただけるのはありがたいですが、お口は閉じてくださいね』
ぽかんと口を開けて聞いてた。
慌てて閉じる。
『そんな、噛み締めなくてもよろしいのですよ、』
ラース先生は、くすくすと笑っている。
32歳だっていうけど、もっと若く見えるし、可愛らしいと思う。
†††
ゲヘトの王は、代々善政を布いていて。国民から慕われているという。
ラース先生は親のいない子だったけど。施設で保護されて教育を受けて、先生になって。
今では王の養い子の教育を任されるようにまでなれたのが嬉しくて、前王と現王に感謝しきれないほど感謝していると言った。
身分で職業差別されないのは、とても珍しいことなんだって。
現王……アサドは国民にとって素晴らしい王様だけど。
他の国からは、残忍な王だと思われてるらしい。
攻め込んできた部族は、女の人や子供がいても、全員処刑してしまうから。
でもそれは、過去に憐れに思って引き取った子供に養い親が殺された事件が多くあったからだって。
どんな小さな子供でも、親の恨みは忘れない。だから。
どんなに無害に見えたとしても、反逆の元になりそうな芽は摘み取っておくんだって。
「でも、それって攻め込んでくる他の国が悪いんじゃないの? 逆恨みじゃない?」
『水の無い国は、他国から水を買わないといけないのですが、貧しい部族では満足に水を買うこともできないのです』
ラース先生は、細い眉をひそめた。
別に高い金で水を売ってるわけじゃないのに、仲介の業者が上乗せして、高額な金を要求するみたいだ。
でも、国々を渡り歩く仲介の業者がいないと、遠くの部族まで水は回らない。
ボランティアでは食べていけない。生きていくには、利益を得ないと。
「そうか。手間賃か。運ぶのが大変なら、仕方ないのかな」
『悲しいことです……』
みんな、色々な事情を抱えて生きてきてるんだな。
でも、隣のペトラ国で、海水を真水に換える工場を発明して。
試運転して、成功したという。
その機械が世界に広まれば、水に困らなくなりそうなんだって。
ゲヘトとペトラは友好国なので、工場に出資もしてるそうだ。
この国は、充分水に恵まれてるのに。
他の国のことも考えてるんだ。えらいなあ。
10
お気に入りに追加
586
あなたにおすすめの小説
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる