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ツガイは異世界の王子
手の中の宝石
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「ナナミの手は、魔法のようだな。このように様々な素晴らしいものを生み出せるとは」
ナナミの描いた布のパターン案とやらは、どれも素晴らしい。
見ていたら、城の者も寄ってきて眺め出し。皆、感心している。
ヤークートやサラームも、魅入られたように見ている。
「いや、そんな感心されるほどじゃないよ……?」
ナナミは謙虚過ぎる。
「謙遜するな。私は嘘を言わぬ。ナナミの描くものは、どれも美しい」
頑ななまでに、自分というものを持っている。
その真っ直ぐな性格を映し出しているような線を描く。その線は、我々を美酒のように魅了するのである。
これは才能……一種、異能ともいえよう。
†††
「そ、そう? ……えへへ、何か嬉しい」
小首を傾げ、熱を持った耳朶を弄りながら照れているナナミの、なんという愛らしさよ。
思わず抱き締めてしまう。
「このような愛らしいものが、よくぞ今まで無垢な身体でいられた。平和な異世界に感謝をせねば……!」
21の今になるまで、女も男も知らずに生きてきたとは。到底信じられぬ。
ナナミの周りには、修行僧しかいなかったのだろうか?
発情期でなくとも、抱きたくてたまらなくなるくらいであるのに。
だが、そのような世界で幸いであった。
まっさらな身体のまま、私の元へ来てくれたのだから。
「この世界、そんなに危ないの……?」
一番危険なのは、目の前の男であるのに。
ナナミは私の背に、手を回して。
「じゃあこれからは、ナミルが俺を守ってくれよな。強い虎なんだろ?」
私を見上げ、笑った。
その信頼に、応えなければ。
「ああ、私がナナミを守ろう」
アサドよりも。
誰よりも強い王となろう。
ナナミの身も心も、総て守ってみせよう。
心から、この世界に来て良かった、と思わせるほど。
†††
「はい」
ナナミは私に枷を私、手を出した。
絵を描く時に、手枷を外したのだ。
しかし。
「これは、もう、つけずともよいが」
首の飾りは防犯上の問題もあり、外すわけにはいかないが。
手枷は、もう必要ないのではないか。
「……繋いでおかないと、俺、逃げちゃうかもよ?」
ナナミはカンドゥーラの裾を持ち。
ひらひらと、胡蝶のように舞っている。
そのまま、何処かへ飛び去ってしまいそうで。
恐ろしくなった。
捕まえて、飛び立たぬようその羽を。二本の脚を。叩き切ってやりたい衝動に駆られるが。
半分の、人としての理性がそれを押し留める。
「なら、仕方ないな」
ナナミの手を捕らえ。その細い両腕に手枷をつけた。
「いつまでも飛び立たず、永久に共にいておくれ。私の可愛い小鳥」
手枷をつけた手の甲に、口付けを落とす。
ナナミは嬉しそうに、私の嵌めた手枷を見ている。
こうして捕えても。まだ不安はある。
ナナミはどんな目に遭おうが屈服しない、強い心を持っている。
なのに、こうして私に囚われたがるのだ。
しかし。囚われたのは、ナナミではなく。
恐らく。
†††
「おいで、」
”薔薇の間”まで、ナナミの手を引いてやる。
ナナミがそう望むのなら。
鎖に繋ぎ、何度でもこの部屋へ閉じ込めてやろう。
私にだけ、可愛く鳴いてもらうために。
寝台に座ったナナミは、カンドゥーラの裾を持ち上げ、白い足を出した。
ナナミの前に跪き、細い足首に足枷を嵌め、寝台と繋いでやる。
ナナミには、理由が必要なのだろう。
自分が、ここにいてもいい理由。
本来はそうではないのに、男に抱かれる理由。
欲しいものを買い与えてもらえる理由。
こうやって、王の手によりあえて束縛されることで自分の精神に折り合いをつけているのではないかとサラームは言った。
頑なで、真面目な性格であるが故に。
望むものは総て手に入る、王の后という立場の自分を、どうしても受け入れられないのでしょう、と。
しかし。
私は王であり、ナナミはそのツガイだ。
そこは、私も譲れない。
「これでもう、どこにも逃げられないね?」
鎖をつけた足を持ち上げ。ナナミは蕩けそうな笑みを浮かべた。
私には、これはこれで幸せそうに見えるのだが。
本心では納得していないのだろうか?
「ああ、逃がさない。閉じ込めて、私のものにする」
言い聞かせてやる。
ナナミが、心から私の伴侶だということを納得するまで。何度でも。
†††
「……此度の夜伽の褒美は、何が良い?」
「ん、木綿の布と、青の染料が足りなくなったから……」
「よし、では膝裏を自分で持ち、足を開くんだ」
ナナミは。
うっとりとした表情で、私の命じたことに従った。
広大な砂の中。
私がようやく見つけた宝石だ。
私の手中で、生涯大切に守ろう。決して壊れたりしないように。
おわり
ナナミの描いた布のパターン案とやらは、どれも素晴らしい。
見ていたら、城の者も寄ってきて眺め出し。皆、感心している。
ヤークートやサラームも、魅入られたように見ている。
「いや、そんな感心されるほどじゃないよ……?」
ナナミは謙虚過ぎる。
「謙遜するな。私は嘘を言わぬ。ナナミの描くものは、どれも美しい」
頑ななまでに、自分というものを持っている。
その真っ直ぐな性格を映し出しているような線を描く。その線は、我々を美酒のように魅了するのである。
これは才能……一種、異能ともいえよう。
†††
「そ、そう? ……えへへ、何か嬉しい」
小首を傾げ、熱を持った耳朶を弄りながら照れているナナミの、なんという愛らしさよ。
思わず抱き締めてしまう。
「このような愛らしいものが、よくぞ今まで無垢な身体でいられた。平和な異世界に感謝をせねば……!」
21の今になるまで、女も男も知らずに生きてきたとは。到底信じられぬ。
ナナミの周りには、修行僧しかいなかったのだろうか?
発情期でなくとも、抱きたくてたまらなくなるくらいであるのに。
だが、そのような世界で幸いであった。
まっさらな身体のまま、私の元へ来てくれたのだから。
「この世界、そんなに危ないの……?」
一番危険なのは、目の前の男であるのに。
ナナミは私の背に、手を回して。
「じゃあこれからは、ナミルが俺を守ってくれよな。強い虎なんだろ?」
私を見上げ、笑った。
その信頼に、応えなければ。
「ああ、私がナナミを守ろう」
アサドよりも。
誰よりも強い王となろう。
ナナミの身も心も、総て守ってみせよう。
心から、この世界に来て良かった、と思わせるほど。
†††
「はい」
ナナミは私に枷を私、手を出した。
絵を描く時に、手枷を外したのだ。
しかし。
「これは、もう、つけずともよいが」
首の飾りは防犯上の問題もあり、外すわけにはいかないが。
手枷は、もう必要ないのではないか。
「……繋いでおかないと、俺、逃げちゃうかもよ?」
ナナミはカンドゥーラの裾を持ち。
ひらひらと、胡蝶のように舞っている。
そのまま、何処かへ飛び去ってしまいそうで。
恐ろしくなった。
捕まえて、飛び立たぬようその羽を。二本の脚を。叩き切ってやりたい衝動に駆られるが。
半分の、人としての理性がそれを押し留める。
「なら、仕方ないな」
ナナミの手を捕らえ。その細い両腕に手枷をつけた。
「いつまでも飛び立たず、永久に共にいておくれ。私の可愛い小鳥」
手枷をつけた手の甲に、口付けを落とす。
ナナミは嬉しそうに、私の嵌めた手枷を見ている。
こうして捕えても。まだ不安はある。
ナナミはどんな目に遭おうが屈服しない、強い心を持っている。
なのに、こうして私に囚われたがるのだ。
しかし。囚われたのは、ナナミではなく。
恐らく。
†††
「おいで、」
”薔薇の間”まで、ナナミの手を引いてやる。
ナナミがそう望むのなら。
鎖に繋ぎ、何度でもこの部屋へ閉じ込めてやろう。
私にだけ、可愛く鳴いてもらうために。
寝台に座ったナナミは、カンドゥーラの裾を持ち上げ、白い足を出した。
ナナミの前に跪き、細い足首に足枷を嵌め、寝台と繋いでやる。
ナナミには、理由が必要なのだろう。
自分が、ここにいてもいい理由。
本来はそうではないのに、男に抱かれる理由。
欲しいものを買い与えてもらえる理由。
こうやって、王の手によりあえて束縛されることで自分の精神に折り合いをつけているのではないかとサラームは言った。
頑なで、真面目な性格であるが故に。
望むものは総て手に入る、王の后という立場の自分を、どうしても受け入れられないのでしょう、と。
しかし。
私は王であり、ナナミはそのツガイだ。
そこは、私も譲れない。
「これでもう、どこにも逃げられないね?」
鎖をつけた足を持ち上げ。ナナミは蕩けそうな笑みを浮かべた。
私には、これはこれで幸せそうに見えるのだが。
本心では納得していないのだろうか?
「ああ、逃がさない。閉じ込めて、私のものにする」
言い聞かせてやる。
ナナミが、心から私の伴侶だということを納得するまで。何度でも。
†††
「……此度の夜伽の褒美は、何が良い?」
「ん、木綿の布と、青の染料が足りなくなったから……」
「よし、では膝裏を自分で持ち、足を開くんだ」
ナナミは。
うっとりとした表情で、私の命じたことに従った。
広大な砂の中。
私がようやく見つけた宝石だ。
私の手中で、生涯大切に守ろう。決して壊れたりしないように。
おわり
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