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王様はホワイトタイガー
王様と市場へ行く
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食事の後、サラームが診察に来た。
『だいぶ良くなっているようです。食事を取ったのもよかったのかと。もう、点滴もしなくて大丈夫でしょう』
聴診器とか使わなくても、手をかざすだけでわかるようだ。
医者泣かせだな。
サラームは30歳だという。
もっと若く見える。肌とかつやつやだし。栄養状態が良いせいか?
ナミル王は、さっきから俺の虎枕になってくれている。
真っ白でふかふかの腹毛が気持ちいい。
『王、よかったですね?』
ふん、と鼻息で返事して、しっぽでぽすぽすベッドを叩いている。
可愛い。
『ナナミは、私のこの姿が可愛いのだというぞ』
『ええっ!?』
ん? 何で非難の眼差しを向けるの?
†††
こういう風に、完全に虎の姿になれるのは、とても力が強いというあかしで。
虎人でも、代を重ねるごとに完全に虎になれる人は減って行って。今では虎の耳やしっぽも出ない人もいるらしい。
人間と交雑したのかな? って、人間と交尾したとして、妊娠が可能なのかって疑問がわくけど。
レオポンとかって一代限りで、繁殖できないし。
サラームも虎人だけど、変身まではできないという。
その代わり、魔力は多く治癒能力が高いので、重宝されてるそうだ。
ナミル王は、すごいだろう、と得意そうに鼻を上向かせている。
そうなんだ。
虎になれるのってすごいんだな。
可愛いな。よしよし。
『雄雄しく、勇ましい姿ですのに……』
『私は嬉しい』
すりすりされる。
可愛いけど、頬を舐めるのはやめてほしい。
舌がざらざらしてて痛い。
え、虎の舌がざらざらしているのは肉を骨からこそげ落とすためだって?
今その情報聞かせる必要あった? こええよ!
†††
太くてもふもふな虎のしっぽを抱き締めてたら。
『明日、市場を見に行くか?』
ナミル王に聞かれた。
「市場?」
『欲しいものがあれば何でも買ってやろう』
おお、何か石油王みたいなセリフを……。
実際、王様なんだけど。
このままここに閉じ込められるものだと思ってたけど。
外に連れてってくれるのか。
市場か。
オリエンタルな感じなのかな? どんな物を売ってるんだろう。
異世界の市場ってどんなだか、興味はあるっちゃあるかな。
「何があるんだろ……」
『色々だ』
色々じゃわかんないよ。
ま、いいか。
「ん、じゃ、楽しみにしとく……おやすみ」
柔らかい毛に包まれて、眠った。
ふかふかでふわふわで。
幸せな気分で。ぐっすり眠れた。
†††
「なにこれ……」
思わず呟いたら。
ナミル王が真顔で答えた。
『市場だ』
いや、市場だってのはわかってるよ?
ナミル王はただの市場、っていうけど。
市場というより、ひとつの街くらいの規模があった。
あまりに大きな規模過ぎて、びっくりしたんだ。
国と国との境にあるので、色々な国から出店してるらしい。
それこそ、何でも揃ってるとか。
大道芸人みたいのもいるし。
翼の生えた、竜みたいのいるけど。売り物なのか、あれ?
そういえば、ここに来るのに乗せられたのも、馬みたいな竜だったな。
竜騎って呼んでた。
その竜騎も売ってた。
……一匹28マーゴ? 高いのか安いのかわかんないな。
卵がひと籠3ニア? お菓子も一個1ニアらしい。
見た感じ、ニアが最小単位みたいだな。
とりあえず、だいたい1ニア100円、ってとこで考えていいかな?
100ニア=1オンで、100オン=1マーゴらしいから。
ええと、1マーゴが百万円として。
28マーゴは、二千八百万になるのか……?
たっか! 竜騎高い!
更に1000マーゴ=1アルゴとかいう単位があるみたいだけど。
さすがに硬貨では持ち歩けないから、小切手とかでの取引になるとか。
何に使うんだよ、そんな金額……。
いや、俺のレート計算が間違ってる可能性もあるけど。
最高でも、1ニア500円くらいだと思う。
†††
「紙と鉛筆って、いくらくらい?」
『紙はこのくらいの大きさのものが100枚で1ニア、鉛筆は2本で1ニアだ』
B5くらいの大きさを手で示した。
紙、意外と安いな……。この世界じゃ紙のもとになるパピルスとかパルプは豊富にあるのかな?
コピー紙並みだ。コピー紙はもっと安いか?
「紙と鉛筆が欲しいんだけど……」
ナミル王は笑顔で頷いた。
『わかった。あるだけ買おう』
いや、店にあるだけ買い占めなくていいから! 石油王かよ!!
王様だから、似たようなもんだけど。
本格的な画材屋さんも存在していた。
絵筆や羽ペン、鉛筆だけじゃなく、絵の具もあるし、デッサン用の木炭もあった。
木炭は1本1ニアか。
木炭が鉛筆よりも高いのは何でだろう? 特別な木で作った木炭なのか?
木を削って作ったようなパレット。イーゼルもある。粘土や石膏もあるようだ。
絵具は稀少な岩や宝石を砕いたものもあり、高価なものから安いものもあった。アメフラシの吐き出した紫、カイガラムシを潰して作った赤? グロいな……。
画材屋って、見てるだけでも楽しいもんだ。
異世界でもこういうのはあまり変わらないんだな。異世界から迷い込んできた人が作ったのかな? こっちで発明されたものかな?
『そういえば、ナナミは絵の学校へ通っていたらしいな。一通り、買い揃えるか?』
俺が望めば、店を丸ごと買い占めそうな勢いを感じる……。
いやいや、望まないよ?
「あ、俺は油絵とかじゃなくて、デザイン科のテキスタイル……えーと、洋服の模様とか考えるほうの学科だったんだ。実家が布屋で」
ナミル王の布をつまんで。
「たとえば、こういう黒い布でも、織りを複雑にしてゴージャスにするとか。光が当たると模様が浮き出て見えたりするとかカッコイイだろ?」
この布も、手触りで高級品だとわかるけど。
織り自体は単純と言うか、普通だ。
あまり複雑なことはできないのかな?
『ほう』
ナミル王は、興味を覚えたようだ。
『だいぶ良くなっているようです。食事を取ったのもよかったのかと。もう、点滴もしなくて大丈夫でしょう』
聴診器とか使わなくても、手をかざすだけでわかるようだ。
医者泣かせだな。
サラームは30歳だという。
もっと若く見える。肌とかつやつやだし。栄養状態が良いせいか?
ナミル王は、さっきから俺の虎枕になってくれている。
真っ白でふかふかの腹毛が気持ちいい。
『王、よかったですね?』
ふん、と鼻息で返事して、しっぽでぽすぽすベッドを叩いている。
可愛い。
『ナナミは、私のこの姿が可愛いのだというぞ』
『ええっ!?』
ん? 何で非難の眼差しを向けるの?
†††
こういう風に、完全に虎の姿になれるのは、とても力が強いというあかしで。
虎人でも、代を重ねるごとに完全に虎になれる人は減って行って。今では虎の耳やしっぽも出ない人もいるらしい。
人間と交雑したのかな? って、人間と交尾したとして、妊娠が可能なのかって疑問がわくけど。
レオポンとかって一代限りで、繁殖できないし。
サラームも虎人だけど、変身まではできないという。
その代わり、魔力は多く治癒能力が高いので、重宝されてるそうだ。
ナミル王は、すごいだろう、と得意そうに鼻を上向かせている。
そうなんだ。
虎になれるのってすごいんだな。
可愛いな。よしよし。
『雄雄しく、勇ましい姿ですのに……』
『私は嬉しい』
すりすりされる。
可愛いけど、頬を舐めるのはやめてほしい。
舌がざらざらしてて痛い。
え、虎の舌がざらざらしているのは肉を骨からこそげ落とすためだって?
今その情報聞かせる必要あった? こええよ!
†††
太くてもふもふな虎のしっぽを抱き締めてたら。
『明日、市場を見に行くか?』
ナミル王に聞かれた。
「市場?」
『欲しいものがあれば何でも買ってやろう』
おお、何か石油王みたいなセリフを……。
実際、王様なんだけど。
このままここに閉じ込められるものだと思ってたけど。
外に連れてってくれるのか。
市場か。
オリエンタルな感じなのかな? どんな物を売ってるんだろう。
異世界の市場ってどんなだか、興味はあるっちゃあるかな。
「何があるんだろ……」
『色々だ』
色々じゃわかんないよ。
ま、いいか。
「ん、じゃ、楽しみにしとく……おやすみ」
柔らかい毛に包まれて、眠った。
ふかふかでふわふわで。
幸せな気分で。ぐっすり眠れた。
†††
「なにこれ……」
思わず呟いたら。
ナミル王が真顔で答えた。
『市場だ』
いや、市場だってのはわかってるよ?
ナミル王はただの市場、っていうけど。
市場というより、ひとつの街くらいの規模があった。
あまりに大きな規模過ぎて、びっくりしたんだ。
国と国との境にあるので、色々な国から出店してるらしい。
それこそ、何でも揃ってるとか。
大道芸人みたいのもいるし。
翼の生えた、竜みたいのいるけど。売り物なのか、あれ?
そういえば、ここに来るのに乗せられたのも、馬みたいな竜だったな。
竜騎って呼んでた。
その竜騎も売ってた。
……一匹28マーゴ? 高いのか安いのかわかんないな。
卵がひと籠3ニア? お菓子も一個1ニアらしい。
見た感じ、ニアが最小単位みたいだな。
とりあえず、だいたい1ニア100円、ってとこで考えていいかな?
100ニア=1オンで、100オン=1マーゴらしいから。
ええと、1マーゴが百万円として。
28マーゴは、二千八百万になるのか……?
たっか! 竜騎高い!
更に1000マーゴ=1アルゴとかいう単位があるみたいだけど。
さすがに硬貨では持ち歩けないから、小切手とかでの取引になるとか。
何に使うんだよ、そんな金額……。
いや、俺のレート計算が間違ってる可能性もあるけど。
最高でも、1ニア500円くらいだと思う。
†††
「紙と鉛筆って、いくらくらい?」
『紙はこのくらいの大きさのものが100枚で1ニア、鉛筆は2本で1ニアだ』
B5くらいの大きさを手で示した。
紙、意外と安いな……。この世界じゃ紙のもとになるパピルスとかパルプは豊富にあるのかな?
コピー紙並みだ。コピー紙はもっと安いか?
「紙と鉛筆が欲しいんだけど……」
ナミル王は笑顔で頷いた。
『わかった。あるだけ買おう』
いや、店にあるだけ買い占めなくていいから! 石油王かよ!!
王様だから、似たようなもんだけど。
本格的な画材屋さんも存在していた。
絵筆や羽ペン、鉛筆だけじゃなく、絵の具もあるし、デッサン用の木炭もあった。
木炭は1本1ニアか。
木炭が鉛筆よりも高いのは何でだろう? 特別な木で作った木炭なのか?
木を削って作ったようなパレット。イーゼルもある。粘土や石膏もあるようだ。
絵具は稀少な岩や宝石を砕いたものもあり、高価なものから安いものもあった。アメフラシの吐き出した紫、カイガラムシを潰して作った赤? グロいな……。
画材屋って、見てるだけでも楽しいもんだ。
異世界でもこういうのはあまり変わらないんだな。異世界から迷い込んできた人が作ったのかな? こっちで発明されたものかな?
『そういえば、ナナミは絵の学校へ通っていたらしいな。一通り、買い揃えるか?』
俺が望めば、店を丸ごと買い占めそうな勢いを感じる……。
いやいや、望まないよ?
「あ、俺は油絵とかじゃなくて、デザイン科のテキスタイル……えーと、洋服の模様とか考えるほうの学科だったんだ。実家が布屋で」
ナミル王の布をつまんで。
「たとえば、こういう黒い布でも、織りを複雑にしてゴージャスにするとか。光が当たると模様が浮き出て見えたりするとかカッコイイだろ?」
この布も、手触りで高級品だとわかるけど。
織り自体は単純と言うか、普通だ。
あまり複雑なことはできないのかな?
『ほう』
ナミル王は、興味を覚えたようだ。
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