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一歩前へ
豹変
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「……忘れろ」
「え?」
「私たちは媚薬のせいで、おかしくなっていたのだ。あれは、いわば医療行為のようなものだった」
身体を重ねてしまうことになったのは、媚薬のせいだ。正気ではなかった。
治療のようなものだった、と思えば。
忘れられるはずだ。
時間が経てば。いずれは。
「……何も無かったことにしよう、というのかい?」
「当たり前だろう。自分の立場を考えろ」
ショックを受けているようなパトリシオの顔を見たくなくて、顔を背けた。
*****
「っ、」
乱暴に、ベッドに押し倒された。
「ま、待て。冷静になれ、パトリシオ。話を、」
「……言ったはずだよ? その名前で呼んだらお仕置きだって」
私を見下ろすパトリシオの顔は、感情が抜け落ちたようで。
それは、初めて見る表情だった。
「あうっ、」
すでに固くなっていた性器を、強引に捩じ込まれる。
一息に、根元まで。
何度も抱かれて。
朝までパトリシオのものを受け入れていたそこは、難なく巨大な剛直を呑み込んでしまった。
「ほら、ここはちゃんと、私の形を覚えてる」
耳元で囁かれる。
「上の口と違って、こっちは正直で良い子だね。私に絡みついて、離したくないって言ってる」
「ひ、……ああっ、」
陰茎の突起で、中をゴリゴリと擦られて。
その刺激で、濡れているのがわかる。
乱暴にされているのに。
どうして。
気が遠くなるほど、気持ち良い。
「ああ、きゅうきゅう締め付けて来る。そんなに子種が欲しい? 好きなだけ、注いであげよう。君が私の子を孕むまで」
声は、あくまでも優しかった。
*****
薄い腹が膨らむほど注がれて。
風呂で、掻き出されたことを思い出す。
あの、大量すぎる精液を。
腹の奥に叩きつけられるように射精されて。
何度も達した。
「……もう、私のものだ」
紫水晶のような瞳は、興奮のせいか赤みを帯び、炯々と輝いている。
その美しい目は、私しか映していないのだ。
「愛している。絶対に、離さない」
狂気を感じるほど、求められて。
私は、喜んでいた。
何という事だ。
私は、いつの間にか、この男のことを。
この上なく愛しいと思っていたのだ。
「リッキー、……愛している」
想いのまま、告げると。
パトリシオの動きが止まった。
「えっ……穂波。それは、本当?」
そんな、途端に嬉しそうな顔をして。可愛い男だな。
「だから。……話を、聞けというに!」
「!?」
私は、パトリシオの身体を勢いよくベッドの外へ投げ飛ばしてやった。
巴投げである。
見事に決まった。
パトリシオは、受け身も取れず、床に落ちたようだ。
痛そうな声が上がった。
乱暴に抱いた罰だ。馬鹿者め。
*****
もし、パトリシオが”国王の番”を寝取ったと国王本人に知られたら、どうなるか。
色々な可能性を想定しておかねばならない。
私は、破談になるかもしれない。
その場合、できたら元の世界に戻してもらいたいが。
もし国王がツガイに執着していて更に初物好きなら、身体だけまた再構築される可能性がある。そうだとしたら全力でお断りしたい。
パトリシオは爵位を剥奪され、良くて国外追放。
最悪の場合、打ち首になるかもしれない。
拷問まではされないと思いたいが。
この世界の罰則がどのようなものか、知らないからな。
間違いなく、このアンブロージョ領は取り上げられ、国に接収されるだろう。
そうなったら、領内の民はどうなる?
この城で働く者は?
私は社長だ。
社長というのは、会社という国を統べる者、いわば一国の王のようなものだ。
王が政治を行うように、社長には、会社を発展させ、運営し、社員の生活を守る義務がある。
我が社に派遣社員はいない。全て正社員で、定年までの給料に福利厚生。成績優秀者には特別賞与も出している。
……それはともかく。
突然、働き先が無くなるようなことはあってはならない。
真面目に働いている者に罪はないのだ。
一時の劣情に負け、無茶な真似をして。他人の人生まで巻き込むのは得策ではない。
上に立つ者としての責任を投げ出してはいけない。
*****
「だから。とりあえず、媚薬でこうなったことは、事故だと思って、一旦、忘れろ。いいな?」
噛んで含めるように言い聞かせる。
「…………」
パトリシオはしたたかに打った腰を痛そうにさすりつつ。あからさまに不満を隠せない顔をして聞いている。
「そして、堂々と王城へ行き。国王と直談判しようと思う」
こちらの都合も考えず、勝手に異世界に召喚し。
身体も改造した上に、運命だのツガイだの言われても。私の知ったことではない。
私には、そのような身勝手に文句を言い、求婚を断る権利があるはずだ。
この国の国民ではないのだから、国王に従わねばならない理由などない。
この世界の法律など知ったことか。
いや。
むしろ運命のツガイだというのなら、部下を寄越すのではなく、本人が直接迎えに来い、と言いたい。
何故なら。
白馬に乗った騎士と出逢ってしまい、うっかり心を奪われてしまう可能性もあるのだから。
「え?」
「私たちは媚薬のせいで、おかしくなっていたのだ。あれは、いわば医療行為のようなものだった」
身体を重ねてしまうことになったのは、媚薬のせいだ。正気ではなかった。
治療のようなものだった、と思えば。
忘れられるはずだ。
時間が経てば。いずれは。
「……何も無かったことにしよう、というのかい?」
「当たり前だろう。自分の立場を考えろ」
ショックを受けているようなパトリシオの顔を見たくなくて、顔を背けた。
*****
「っ、」
乱暴に、ベッドに押し倒された。
「ま、待て。冷静になれ、パトリシオ。話を、」
「……言ったはずだよ? その名前で呼んだらお仕置きだって」
私を見下ろすパトリシオの顔は、感情が抜け落ちたようで。
それは、初めて見る表情だった。
「あうっ、」
すでに固くなっていた性器を、強引に捩じ込まれる。
一息に、根元まで。
何度も抱かれて。
朝までパトリシオのものを受け入れていたそこは、難なく巨大な剛直を呑み込んでしまった。
「ほら、ここはちゃんと、私の形を覚えてる」
耳元で囁かれる。
「上の口と違って、こっちは正直で良い子だね。私に絡みついて、離したくないって言ってる」
「ひ、……ああっ、」
陰茎の突起で、中をゴリゴリと擦られて。
その刺激で、濡れているのがわかる。
乱暴にされているのに。
どうして。
気が遠くなるほど、気持ち良い。
「ああ、きゅうきゅう締め付けて来る。そんなに子種が欲しい? 好きなだけ、注いであげよう。君が私の子を孕むまで」
声は、あくまでも優しかった。
*****
薄い腹が膨らむほど注がれて。
風呂で、掻き出されたことを思い出す。
あの、大量すぎる精液を。
腹の奥に叩きつけられるように射精されて。
何度も達した。
「……もう、私のものだ」
紫水晶のような瞳は、興奮のせいか赤みを帯び、炯々と輝いている。
その美しい目は、私しか映していないのだ。
「愛している。絶対に、離さない」
狂気を感じるほど、求められて。
私は、喜んでいた。
何という事だ。
私は、いつの間にか、この男のことを。
この上なく愛しいと思っていたのだ。
「リッキー、……愛している」
想いのまま、告げると。
パトリシオの動きが止まった。
「えっ……穂波。それは、本当?」
そんな、途端に嬉しそうな顔をして。可愛い男だな。
「だから。……話を、聞けというに!」
「!?」
私は、パトリシオの身体を勢いよくベッドの外へ投げ飛ばしてやった。
巴投げである。
見事に決まった。
パトリシオは、受け身も取れず、床に落ちたようだ。
痛そうな声が上がった。
乱暴に抱いた罰だ。馬鹿者め。
*****
もし、パトリシオが”国王の番”を寝取ったと国王本人に知られたら、どうなるか。
色々な可能性を想定しておかねばならない。
私は、破談になるかもしれない。
その場合、できたら元の世界に戻してもらいたいが。
もし国王がツガイに執着していて更に初物好きなら、身体だけまた再構築される可能性がある。そうだとしたら全力でお断りしたい。
パトリシオは爵位を剥奪され、良くて国外追放。
最悪の場合、打ち首になるかもしれない。
拷問まではされないと思いたいが。
この世界の罰則がどのようなものか、知らないからな。
間違いなく、このアンブロージョ領は取り上げられ、国に接収されるだろう。
そうなったら、領内の民はどうなる?
この城で働く者は?
私は社長だ。
社長というのは、会社という国を統べる者、いわば一国の王のようなものだ。
王が政治を行うように、社長には、会社を発展させ、運営し、社員の生活を守る義務がある。
我が社に派遣社員はいない。全て正社員で、定年までの給料に福利厚生。成績優秀者には特別賞与も出している。
……それはともかく。
突然、働き先が無くなるようなことはあってはならない。
真面目に働いている者に罪はないのだ。
一時の劣情に負け、無茶な真似をして。他人の人生まで巻き込むのは得策ではない。
上に立つ者としての責任を投げ出してはいけない。
*****
「だから。とりあえず、媚薬でこうなったことは、事故だと思って、一旦、忘れろ。いいな?」
噛んで含めるように言い聞かせる。
「…………」
パトリシオはしたたかに打った腰を痛そうにさすりつつ。あからさまに不満を隠せない顔をして聞いている。
「そして、堂々と王城へ行き。国王と直談判しようと思う」
こちらの都合も考えず、勝手に異世界に召喚し。
身体も改造した上に、運命だのツガイだの言われても。私の知ったことではない。
私には、そのような身勝手に文句を言い、求婚を断る権利があるはずだ。
この国の国民ではないのだから、国王に従わねばならない理由などない。
この世界の法律など知ったことか。
いや。
むしろ運命のツガイだというのなら、部下を寄越すのではなく、本人が直接迎えに来い、と言いたい。
何故なら。
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