大企業グループ次期総代のこの私が異世界の王のツガイとして召喚されるなんてこれは悪い夢に違いない。

篠崎笙

文字の大きさ
上 下
11 / 25
一歩前へ

豹変

しおりを挟む
「……忘れろ」

「え?」
「私たちは媚薬のせいで、おかしくなっていたのだ。あれは、いわば医療行為のようなものだった」


身体を重ねてしまうことになったのは、媚薬のせいだ。正気ではなかった。

治療のようなものだった、と思えば。
忘れられるはずだ。

時間が経てば。いずれは。


「……何も無かったことにしよう、というのかい?」

「当たり前だろう。自分の立場を考えろ」
ショックを受けているようなパトリシオの顔を見たくなくて、顔を背けた。


*****


「っ、」
乱暴に、ベッドに押し倒された。

「ま、待て。冷静になれ、パトリシオ。話を、」


「……言ったはずだよ? その名前で呼んだらお仕置きだって」
私を見下ろすパトリシオの顔は、感情が抜け落ちたようで。

は、初めて見る表情だった。


「あうっ、」
すでに固くなっていた性器を、強引に捩じ込まれる。

一息に、根元まで。

何度も抱かれて。
朝までパトリシオのものを受け入れていたそこは、難なく巨大な剛直を呑み込んでしまった。


「ほら、はちゃんと、私の形を覚えてる」
耳元で囁かれる。

「上の口と違って、こっちは正直で良い子だね。私に絡みついて、離したくないって言ってる」
「ひ、……ああっ、」


陰茎の突起で、中をゴリゴリと擦られて。
その刺激で、濡れているのがわかる。

乱暴にされているのに。
どうして。

気が遠くなるほど、気持ち良い。


「ああ、きゅうきゅう締め付けて来る。そんなに子種ゼラが欲しい? 好きなだけ、注いであげよう。君が私の子を孕むまで」
声は、あくまでも優しかった。


*****


薄い腹が膨らむほど注がれて。

風呂で、掻き出されたことを思い出す。
あの、大量すぎる精液を。

腹の奥に叩きつけられるように射精されて。
何度も達した。


「……もう、私のものだ」

紫水晶のような瞳は、興奮のせいか赤みを帯び、炯々と輝いている。
その美しい目は、私しか映していないのだ。

「愛している。絶対に、離さない」

狂気を感じるほど、求められて。
私は、喜んでいた。


何という事だ。
私は、いつの間にか、この男のことを。

この上なく愛しいと思っていたのだ。


「リッキー、……愛している」
想いのまま、告げると。

パトリシオの動きが止まった。


「えっ……穂波。それは、本当?」
そんな、途端に嬉しそうな顔をして。可愛い男だな。


「だから。……話を、聞けというに!」
「!?」

私は、パトリシオの身体を勢いよくベッドの外へ投げ飛ばしてやった。
巴投げである。

見事に決まった。


パトリシオは、受け身も取れず、床に落ちたようだ。
痛そうな声が上がった。

乱暴に抱いた罰だ。馬鹿者め。


*****


もし、パトリシオが”国王の番”を寝取ったと国王本人に知られたら、どうなるか。
色々な可能性を想定しておかねばならない。


私は、破談になるかもしれない。
その場合、できたら元の世界に戻してもらいたいが。

もし国王がツガイに執着していて更に初物好きなら、身体だけまた再構築される可能性がある。そうだとしたら全力でお断りしたい。

パトリシオは爵位を剥奪され、良くて国外追放。
最悪の場合、打ち首になるかもしれない。

拷問まではされないと思いたいが。
この世界の罰則がどのようなものか、知らないからな。

間違いなく、このアンブロージョ領は取り上げられ、国に接収されるだろう。

そうなったら、領内の民はどうなる?
この城で働く者は?


私は社長だ。
社長というのは、会社という国を統べる者、いわば一国の王のようなものだ。

王が政治を行うように、社長には、会社を発展させ、運営し、社員の生活を守る義務がある。
我が社に派遣社員はいない。全て正社員で、定年までの給料に福利厚生。成績優秀者には特別賞与も出している。

……それはともかく。

突然、働き先が無くなるようなことはあってはならない。
真面目に働いている者に罪はないのだ。


一時の劣情に負け、無茶な真似をして。他人の人生まで巻き込むのは得策ではない。
上に立つ者としての責任を投げ出してはいけない。


*****


「だから。とりあえず、媚薬でこうなったことは、事故だと思って、一旦、忘れろ。いいな?」
噛んで含めるように言い聞かせる。

「…………」
パトリシオはしたたかに打った腰を痛そうにさすりつつ。あからさまに不満を隠せない顔をして聞いている。

「そして、堂々と王城へ行き。国王と直談判しようと思う」


こちらの都合も考えず、勝手に異世界に召喚し。
身体も改造した上に、運命だのツガイだの言われても。私の知ったことではない。

私には、そのような身勝手に文句を言い、求婚を断る権利があるはずだ。

この国の国民ではないのだから、国王に従わねばならない理由などない。
この世界の法律など知ったことか。


いや。
むしろ運命のツガイだというのなら、部下を寄越すのではなく、本人が直接迎えに来い、と言いたい。

何故なら。
白馬に乗った騎士と出逢ってしまい、うっかり心を奪われてしまう可能性もあるのだから。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

騎士団長を咥えたドラゴンを団長の息子は追いかける!!

ミクリ21
BL
騎士団長がドラゴンに咥えられて、連れ拐われた! そして、団長の息子がそれを追いかけたーーー!! 「父上返せーーー!!」

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

処理中です...