大企業グループ次期総代のこの私が異世界の王のツガイとして召喚されるなんてこれは悪い夢に違いない。

篠崎笙

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媚薬に溺れる

蜜夜が明けて

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一度では終われない、と言っていた通り。
媚薬による身体の興奮は、なかなか治まらなかった。

私よりも、パトリシオの方が効いていたのか。朝になっても抜いてもらえず。
挿入したままの状態で、朝食を運ばせていた。


異世界の人間には、羞恥心が存在しないのだろうか?
私の身体は、上掛けによって隠されていたが。彼自身は全裸のままで応対しても平気そうだった。

貴族というものは、靴紐すら自分で結ばないものだと聞く。
うちでもそこまで世話をさせるのは、せいぜい小学生に上がる前までである。


それなら、着替えや風呂の世話もすべて人任せなのだろう。なので、羞恥心など持たずに育つのかもしれない。
恥の文化で育った日本人には理解できないが。


*****


「美味しい?」
口移しで果物を食べさせられた。

腹の奥を、大きく固いモノで穿たれながらでは、味などわかるはずもない。
胃まで押し上げるほどの圧迫感があるのだから。


いい加減、下働きの人間にも、国王のツガイを寝取ったことがバレただろうに。
ずいぶんと余裕があるものだ。

告げ口でもされたらどうするのだろうか。
それとも、使用人には逆らったら自爆するような魔法でも掛けているとか?


「それはまた……物騒なことを考えるね」
パトリシオに訊いてみたら、くっくっと笑われた。

その振動ですら感じてしまうから、挿入したまま笑うのはやめて欲しい。

「しかし、」
「……いいから。今は私を感じていなさい」

ベッドに押し倒される。


心地好い、人の重さと温もり。
人肌とは、これほど心地好いものだったのか。

相手がこの男だからそう感じるのか。
私には、まだわからない。


この感情が、愛情なのかどうかすら。


*****


「やぁ、……ん、あっ、」
仰向けになったパトリシオの上に乗せられ、下から突き上げられる。

騎乗位、という名称は知っている。
こちらでも、そのような言い方をするらしい。これなら乗馬も上手そうだ、と言われた。


ここに来るまでに取らされていた向かい合わせの格好は、いわゆる駅弁スタイルに似ているが。さすがにこちらに駅弁は無いだろう。

馬に乗せている時、本当は挿入したまま走らせたかったなどと言われ。
つい、その光景を想像してしまった。


に貫かれながら、あの激しい振動を?

「ふふ、きゅって締まった。想像した?」
パトリシオはとろりと微笑んだ。

……この遊び人め。


体位を変えられ、私が下になる。
パトリシオは私をぎゅっと抱き締め、根元まで挿入したまま、中をこねくり回すように腰を揺すった。

そうされると。
どうしようもなく感じてしまう。


「ここ、すっかり私の形を覚えてしまったね。どうしようか?」

「……?」
どうしよう、と言われても。

「穂波はもう、すっかり私のものになった、ってことだよ」

「っ、」
強く首筋に吸い付かれる。

同じようにされて、身体のあちこちに赤い痕が残された。
これは、自分のものだという印だと言いながら。


もういい加減、媚薬とやらの効果も切れているだろうに。

好きだとか愛している、などと。
戯れのように囁かれながら、何度も貫かれた。


*****


傍らの温もりが身動ぎする気配に、目を覚ました。
だが、まだ眠いので胸板に顔を埋めると。

くすりと笑って。
逞しい腕に抱きかかえられる。

パトリシオは上体を起こし、ごそごそと何かしているようだ。食事の時間だろうか?


何日、抱かれていたのだろう。
私が目を覚ますと、待ち構えていたように貫かれて。

合間に何度か食事を摂らされ。
風呂に運ばれている間に、シーツを交換されていたことは覚えている。

今も身体はべとついていないので、寝ている間に風呂に入れられたか拭われたかしたのだろう。


まだ、足の間にパトリシオが入っているような違和感が残っている。
入っていないことに、少し物足りないような気分になっている自分に驚いた。

すっかり抱かれる側の身体になってしまっているのか。


薄く目を開けてみると。
パトリシオは、私を抱きかかえながら、手紙を読んでいた。

ひと時でも手放したくない、という気概を感じ。微笑ましく思った。


*****


窓は開いていて。
明るい日差しが差し込んでいる。

結んでいない長い銀髪が、陽の光を受け輝いているように見える。


彫刻のように整った、男らしい横顔。髪は長いが、どう見ても女には見えない。
なのに。

何故私は、さしたる抵抗もなく彼を受け入れてしまったのだろうか。


女の肌に嫌悪感を抱いてはいたが。ゲイではなかった。
男に触れられるのも嫌だった。

かといって、ゲイを嫌悪もしているわけでもない。
愛する末弟が男と結婚したというのもあるが。そういう人もいるだろう、という認識だった。

自分に好意を向けられたり、害さえ無ければ問題ない。


潔癖症の一種か、接触恐怖症なのかと思っていた。
だが、彼の腕に抱かれるのは心地好く、素肌が触れ合うのにも嫌悪感はなかった。

これは、何なのか。


「まだ抱き足りないのに……、」
パトリシオは残念そうに呟いて。手紙をくしゃりと丸め、窓の外に放り投げた。

……こら、ポイ捨て禁止!


言解魔法とやらで会話は通じるようになっていたものの、何が書かれているのか、文字まではわからなかったが。
いい加減、王城へ来いという内容の手紙だったようだ。


当たり前だ。
私は国王の”運命の番”として召喚されたのだから。
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