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媚薬に溺れる
わからないことばかり
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男に抱かれて。
尻を犯され、あられもない声を上げて。
こんなの、私じゃない。
そう思いながら。
満たされているような気にもなっていた。
*****
有栖川家の嫡子として、長男として。
模範たる態度をとらねばと。いつも気を張っていた。
日本を代表するグループ企業である家業を継ぐため、遊ぶ暇など一切なく。秒刻みのスケジュールを立てられ、厳しく育てられてきた。
長男として生まれ、その誇りもあった。
弱みは見せない。親にすら甘えてはいけないと。
だが。本当は、本心では。
私は誰かに甘えたかったのではないのか。
友人すら厳しく制限され。友情を抱いたことも無ければ、恋をしたこともなかった。
だから。私にはそういった感情が無いのだと思っていた。
跡継ぎを作るのは、嫡子の義務である。
いい加減、結婚をしなければならないとわかってはいたが。
見合いや紹介される相手は、財産や家柄しか目に入らず、男の財布しか見ていない女ばかりでうんざりするばかり。
それに、私には人を抱ける気がしなかった。他人に触れるのも嫌で。
性指南の女性に触れられた時は、嫌悪感でいっぱいになり、途中で吐いたほどだ。
唯一の例外が、末っ子の睦月だった。
家族の皆、可愛い末っ子には有栖川家の重圧を与えないよう気を配っていた。
自分たちのような目に遭わせたくなかった。
心の空洞を、末っ子の睦月を猫可愛がりすることで埋めようとしていたのかもしれない。
……ここは、私を知っている者などいない異世界で。
有栖川家の威光など届くはずもなく。
ここには金も権力も何も持たない、産まれたままの姿で現れたのだ。
中身はともかく。外見は、か弱そうな少年で。
その上、王のツガイとして呼ばれたのだ。
この世界でなら。
新たに人生を、やり直すことも可能なのでは?
*****
「あうっ、」
腰を強く突き上げられて。
また、パトリシオの腹を汚してしまった。
灼けつくような視線を感じた。
「何を考えていた? 今は、私だけを感じなさい」
甘く命じられ。
咎めるように淡い色の乳首をきゅっと摘ままれて。ぞくぞくするほど気持ち良い。
「ふふ、今、ここを弄ったら、ナカがきゅって締まった。痛いのも気持ち良いのかな? 可愛い」
目を細めて笑った。
「んう、」
噛みつかれるようなキスをされて。
「ん、っ、んむ、」
口を塞がれたまま、乱暴なくらい腰を突き上げられる。
この男、最初は騎士のように恭しい態度で、言葉遣いも丁寧だったというのに。
ベッドでは暴君のようではないか。
しかし、何故だかそれが嫌ではなかった。
実年齢は年下かもしれないが。
大きな身体に抱き締められるのも。妬いたような感情を見せられるのも、悪い気はしなかった。
「気持ち良い?」
「ん、……き、気持ち良い、」
「じゃあ、これは、どう?」
角度を変えて、突き上げられるのも。
何をされても気持ち良いばかりで。混乱してしまう。
私の身体は、どうなってしまったのか。
媚薬だという草のせいか。
男を受け入れられる身体に変わったせいなのか。
十代の頃だって、こんなに何度も達したことはない。
溜まったら夢精するくらいで、性に対して淡白な性質なのだと思っていたのに。
パトリシオの長い髪が頬や首をくすぐるのにすら、感じている。
こんな快楽を知って。
後戻りなど、できるのだろうか?
*****
「っ、パトリシオ、」
「違う、リッキー。今度パトリシオって呼んだら、お仕置きだ」
殺気とまではいかないが。尖った気配がした。
怒っている?
閨で名前を呼ばれて怒るとは。訳が分からない。
普通は、喜ぶものではないのか?
……自分の名前が嫌いなのだろうか?
そう呼んで欲しいのなら、別にやぶさかでないが。
「……リッキー?」
「そう。いい子だね」
嬉しそうに、頬にキスを落とされ。
ぎゅっと抱き締められる。
ああ。やはり。
甘やかされるのも、悪くない。
「リッキー、」
逞しいその背に手を回して、縋りつく。
「ああ、可愛い穂波。大切にするから……」
大切にする? 私を?
そうは言うが。
私は、国王の”運命の番”として召喚されたのではないのか。
今だけ。
ベッドの上だけの、他愛ない睦言なのだろうか?
真に受ける方が間違っている?
経験の薄い私には、彼の本意がわからない。
*****
パトリシオは、見るからにモテそうな美丈夫だ。
体つきも立派で、この若さで伯爵である。身分も良い。女の方が放っておかないだろう。
手管からして、かなり女性経験も積んでいそうだ。ひと時の戯れで、それくらいの睦言も言える程度には。
それが寂しく思えるほど、この腕に抱かれることに幸福感を覚えてしまっている。
こんな快楽を知って。
他の誰かと抱き合うことなど、できるのだろうか?
未だ顔も知らない国王とやらと結ばれるより、この男に攫われたいと思うのは。
薬のせいで、おかしくなっているのだろうか?
それとも、初めて嫌悪感なく快楽を与えてくれた相手だからだろうか?
尻を犯され、あられもない声を上げて。
こんなの、私じゃない。
そう思いながら。
満たされているような気にもなっていた。
*****
有栖川家の嫡子として、長男として。
模範たる態度をとらねばと。いつも気を張っていた。
日本を代表するグループ企業である家業を継ぐため、遊ぶ暇など一切なく。秒刻みのスケジュールを立てられ、厳しく育てられてきた。
長男として生まれ、その誇りもあった。
弱みは見せない。親にすら甘えてはいけないと。
だが。本当は、本心では。
私は誰かに甘えたかったのではないのか。
友人すら厳しく制限され。友情を抱いたことも無ければ、恋をしたこともなかった。
だから。私にはそういった感情が無いのだと思っていた。
跡継ぎを作るのは、嫡子の義務である。
いい加減、結婚をしなければならないとわかってはいたが。
見合いや紹介される相手は、財産や家柄しか目に入らず、男の財布しか見ていない女ばかりでうんざりするばかり。
それに、私には人を抱ける気がしなかった。他人に触れるのも嫌で。
性指南の女性に触れられた時は、嫌悪感でいっぱいになり、途中で吐いたほどだ。
唯一の例外が、末っ子の睦月だった。
家族の皆、可愛い末っ子には有栖川家の重圧を与えないよう気を配っていた。
自分たちのような目に遭わせたくなかった。
心の空洞を、末っ子の睦月を猫可愛がりすることで埋めようとしていたのかもしれない。
……ここは、私を知っている者などいない異世界で。
有栖川家の威光など届くはずもなく。
ここには金も権力も何も持たない、産まれたままの姿で現れたのだ。
中身はともかく。外見は、か弱そうな少年で。
その上、王のツガイとして呼ばれたのだ。
この世界でなら。
新たに人生を、やり直すことも可能なのでは?
*****
「あうっ、」
腰を強く突き上げられて。
また、パトリシオの腹を汚してしまった。
灼けつくような視線を感じた。
「何を考えていた? 今は、私だけを感じなさい」
甘く命じられ。
咎めるように淡い色の乳首をきゅっと摘ままれて。ぞくぞくするほど気持ち良い。
「ふふ、今、ここを弄ったら、ナカがきゅって締まった。痛いのも気持ち良いのかな? 可愛い」
目を細めて笑った。
「んう、」
噛みつかれるようなキスをされて。
「ん、っ、んむ、」
口を塞がれたまま、乱暴なくらい腰を突き上げられる。
この男、最初は騎士のように恭しい態度で、言葉遣いも丁寧だったというのに。
ベッドでは暴君のようではないか。
しかし、何故だかそれが嫌ではなかった。
実年齢は年下かもしれないが。
大きな身体に抱き締められるのも。妬いたような感情を見せられるのも、悪い気はしなかった。
「気持ち良い?」
「ん、……き、気持ち良い、」
「じゃあ、これは、どう?」
角度を変えて、突き上げられるのも。
何をされても気持ち良いばかりで。混乱してしまう。
私の身体は、どうなってしまったのか。
媚薬だという草のせいか。
男を受け入れられる身体に変わったせいなのか。
十代の頃だって、こんなに何度も達したことはない。
溜まったら夢精するくらいで、性に対して淡白な性質なのだと思っていたのに。
パトリシオの長い髪が頬や首をくすぐるのにすら、感じている。
こんな快楽を知って。
後戻りなど、できるのだろうか?
*****
「っ、パトリシオ、」
「違う、リッキー。今度パトリシオって呼んだら、お仕置きだ」
殺気とまではいかないが。尖った気配がした。
怒っている?
閨で名前を呼ばれて怒るとは。訳が分からない。
普通は、喜ぶものではないのか?
……自分の名前が嫌いなのだろうか?
そう呼んで欲しいのなら、別にやぶさかでないが。
「……リッキー?」
「そう。いい子だね」
嬉しそうに、頬にキスを落とされ。
ぎゅっと抱き締められる。
ああ。やはり。
甘やかされるのも、悪くない。
「リッキー、」
逞しいその背に手を回して、縋りつく。
「ああ、可愛い穂波。大切にするから……」
大切にする? 私を?
そうは言うが。
私は、国王の”運命の番”として召喚されたのではないのか。
今だけ。
ベッドの上だけの、他愛ない睦言なのだろうか?
真に受ける方が間違っている?
経験の薄い私には、彼の本意がわからない。
*****
パトリシオは、見るからにモテそうな美丈夫だ。
体つきも立派で、この若さで伯爵である。身分も良い。女の方が放っておかないだろう。
手管からして、かなり女性経験も積んでいそうだ。ひと時の戯れで、それくらいの睦言も言える程度には。
それが寂しく思えるほど、この腕に抱かれることに幸福感を覚えてしまっている。
こんな快楽を知って。
他の誰かと抱き合うことなど、できるのだろうか?
未だ顔も知らない国王とやらと結ばれるより、この男に攫われたいと思うのは。
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