75 / 91
ジャングル風呂
ジャングルにお風呂をつくる
しおりを挟む
お風呂作りたいな、と思ってラシッドを見たら。
ふらふらしていた。だいぶお疲れのようだ。
橋を架けたり、亀裂を塞いだりと、今日はかなり魔力を使ったもんな。
更に、へこんだ土地を平らにもしてくれたんだし。
通常、魔力には限りがあるみたいだ。MPみたいなもんか。
じゃあ、俺がやってみようかな。
何でもできるなら、土魔法だって使えるんだろうし。
水脈を確認してみたら。
地上はジャングルに覆われてるけど、地下水脈自体は枯れかけていたので、水量を増やす。
露天風呂だとアレだ。
ここ、太陽光であっためる方式だと、虫とかが寄りそうだし。ボウフラとかわいたらやだし。
地熱も無いから、薪で沸かす形式にしよう。
地下水を汲み上げられるようにして。
ここも、銭湯風にしちゃおうかな。
土を固めて、土台の建物を作る。
浴室に、更衣室。
更衣室には、木製の棚も作る。脱衣籠も作っちゃえ。
ボイラー室みたいなのを作って。
排気用の煙突も必要だよな。
そこで温めたお湯を運ぶパイプを風呂場まで繋げて……と。
お湯が出る蛇口は、竜にしちゃえ。
浴槽と床はモザイクタイルだ。
でもって、ジャングルが良く見えるように、大きなガラスを張って。
浴槽の後ろの壁には、銭湯名物の絵もつけちゃえ。
タイルで。
麓に桜咲く富士山を背にジャングルを見られるお風呂って、最高に贅沢じゃないか?
そう思うのは、俺だけかもしれないけど。
……よし。
†††
「できたー」
やった。
本当に、俺一人でできちゃった。
「ええっ!?」
見れば、ラシッドや兵士たちも驚いていた。
特にラシッドは、愕然としている。
しまった。
また国一番の魔法使いとしてのプライドを傷つけてしまったのかも。
回復させて、ラシッドにお願いしたほうが良かったかな?
「マラーク様、土魔法も自在だったのですか……?」
「いや、試してみたら、できた」
是非、俺が作った施設を見学させて欲しいとお願いされたので。
どうぞ、と案内する。
「これは……湯を沸かすための装置、ですよね……? このような画期的な構造、初めて見ました。しかし、こんな大量の鉄など、どこに……?」
ラシッドは興味深そうにボイラー室を見てる。
ボイラーは見たことがなかったようだ。
まあ、灼熱の砂漠だもんな……。
わざわざお湯を沸かさなくても、ちょっと外に出せば熱湯になるから、こういうのは必要ないか。
でも、これからは寒い地域とかで必要になると思う。
後で広めなくちゃ。
「へえ、こんなの作れるのか。魔法ってすげえな」
カマルは面白そうに、きょろきょろしている。
魔法は習ってなかったようだ。
「……そういえば、スィッタ国のスルタンが使用した攻撃魔法は、今となっては各国で禁術と指定されている古代の魔術でした」
アーディルに報告してる。
ラシッドは、その場に残った魔力を計測すれば、そこでどんな魔法が使われたのかわかるという。
すごいな。
そういえば俺も、水脈が探れるんだし。そういう探査だってやろうと思えば可能だったのか。
気が付かなかった。
ラシッドは、スィッタ国は長い間鎖国状態だったので、今は危険なため世界的に使用禁止になった禁術も未だに使われているのではないか、と予測していた。
ああ、確かにそうだろう。
色々な国で禁止されているのも納得だ。物凄い威力だった。
あんなの、対人戦で使うものじゃない。
戦車みたいな、硬くて大きなものに対して使うような魔法として生み出されたんじゃないかな。
恐竜とか? ずっと昔はもっと栄えてたらしいし。
何にしろ、現在は必要がないものだ。封印させないと。
†††
「お妃さま、御仕度整いました」
天幕のベッドの支度も終わって。
セーレムは、着替えとタオルを用意してくれたようだ。
王様同士で話し合っていたらしいアーディルも一緒に来た。
「アシャラ国のお二人とスィッタ国のお二人には、私から使用方法を説明致しますので」
セーレムは、ラシッドたちを更衣室から追い出しながら言った。
あ、そういえば中継地点ではスペースの問題で、お風呂作ってなかったんだっけ。目一杯オアシス作っちゃったから。
これが初風呂になるわけか。
「うん、お願い」
「はい」
セーレムは俺に、笑顔で礼をしてみせた。
亀裂を塞ぐのにも参加してたし。若いのに、本当に働き者だ。
アーディルにもそう言うと。
そうだな、と頷いて。
「セーレムはラシッドの息子だが。生真面目なところがよく似ている」
「えっ!? セーレムって、ラシッドの息子だったの!?」
それ、初耳だよ!?
ラシッドも年齢が年齢だし、子供がいても、おかしくはないだろうけど。
でも、ラシッドには全然似てないな。
セーレムはかわいいし。母親似なのかもしれない。
そうか。
ラシッドの息子だったのか。だから魔法も使えたのかな?
「セーレムを産んだ、母親……って言っていいのかな? その人、俺も知ってる人だったりする?」
つい興味本位で聞いてしまったら。
「……いや、ラシッドの妻は前王の側近でもあった。主を護ろうとして、共に」
アーディルは、淡々と言ったけど。
それって。
アーディルのお父さんは、ワーヒド国の前王で。
二年前、ハカムに暗殺されたんだ。
じゃあ、ラシッドの奥さんでセーレムのお母さんって。
アーディルのお父さんと一緒にハカムに暗殺されて、命を落としたんだ。
セーレムやラシッド本人に聞かなくて良かった。
思い出すのもつらいだろう。
……ハカムめ。
あいつ、本当にろくなことしないな!
ふらふらしていた。だいぶお疲れのようだ。
橋を架けたり、亀裂を塞いだりと、今日はかなり魔力を使ったもんな。
更に、へこんだ土地を平らにもしてくれたんだし。
通常、魔力には限りがあるみたいだ。MPみたいなもんか。
じゃあ、俺がやってみようかな。
何でもできるなら、土魔法だって使えるんだろうし。
水脈を確認してみたら。
地上はジャングルに覆われてるけど、地下水脈自体は枯れかけていたので、水量を増やす。
露天風呂だとアレだ。
ここ、太陽光であっためる方式だと、虫とかが寄りそうだし。ボウフラとかわいたらやだし。
地熱も無いから、薪で沸かす形式にしよう。
地下水を汲み上げられるようにして。
ここも、銭湯風にしちゃおうかな。
土を固めて、土台の建物を作る。
浴室に、更衣室。
更衣室には、木製の棚も作る。脱衣籠も作っちゃえ。
ボイラー室みたいなのを作って。
排気用の煙突も必要だよな。
そこで温めたお湯を運ぶパイプを風呂場まで繋げて……と。
お湯が出る蛇口は、竜にしちゃえ。
浴槽と床はモザイクタイルだ。
でもって、ジャングルが良く見えるように、大きなガラスを張って。
浴槽の後ろの壁には、銭湯名物の絵もつけちゃえ。
タイルで。
麓に桜咲く富士山を背にジャングルを見られるお風呂って、最高に贅沢じゃないか?
そう思うのは、俺だけかもしれないけど。
……よし。
†††
「できたー」
やった。
本当に、俺一人でできちゃった。
「ええっ!?」
見れば、ラシッドや兵士たちも驚いていた。
特にラシッドは、愕然としている。
しまった。
また国一番の魔法使いとしてのプライドを傷つけてしまったのかも。
回復させて、ラシッドにお願いしたほうが良かったかな?
「マラーク様、土魔法も自在だったのですか……?」
「いや、試してみたら、できた」
是非、俺が作った施設を見学させて欲しいとお願いされたので。
どうぞ、と案内する。
「これは……湯を沸かすための装置、ですよね……? このような画期的な構造、初めて見ました。しかし、こんな大量の鉄など、どこに……?」
ラシッドは興味深そうにボイラー室を見てる。
ボイラーは見たことがなかったようだ。
まあ、灼熱の砂漠だもんな……。
わざわざお湯を沸かさなくても、ちょっと外に出せば熱湯になるから、こういうのは必要ないか。
でも、これからは寒い地域とかで必要になると思う。
後で広めなくちゃ。
「へえ、こんなの作れるのか。魔法ってすげえな」
カマルは面白そうに、きょろきょろしている。
魔法は習ってなかったようだ。
「……そういえば、スィッタ国のスルタンが使用した攻撃魔法は、今となっては各国で禁術と指定されている古代の魔術でした」
アーディルに報告してる。
ラシッドは、その場に残った魔力を計測すれば、そこでどんな魔法が使われたのかわかるという。
すごいな。
そういえば俺も、水脈が探れるんだし。そういう探査だってやろうと思えば可能だったのか。
気が付かなかった。
ラシッドは、スィッタ国は長い間鎖国状態だったので、今は危険なため世界的に使用禁止になった禁術も未だに使われているのではないか、と予測していた。
ああ、確かにそうだろう。
色々な国で禁止されているのも納得だ。物凄い威力だった。
あんなの、対人戦で使うものじゃない。
戦車みたいな、硬くて大きなものに対して使うような魔法として生み出されたんじゃないかな。
恐竜とか? ずっと昔はもっと栄えてたらしいし。
何にしろ、現在は必要がないものだ。封印させないと。
†††
「お妃さま、御仕度整いました」
天幕のベッドの支度も終わって。
セーレムは、着替えとタオルを用意してくれたようだ。
王様同士で話し合っていたらしいアーディルも一緒に来た。
「アシャラ国のお二人とスィッタ国のお二人には、私から使用方法を説明致しますので」
セーレムは、ラシッドたちを更衣室から追い出しながら言った。
あ、そういえば中継地点ではスペースの問題で、お風呂作ってなかったんだっけ。目一杯オアシス作っちゃったから。
これが初風呂になるわけか。
「うん、お願い」
「はい」
セーレムは俺に、笑顔で礼をしてみせた。
亀裂を塞ぐのにも参加してたし。若いのに、本当に働き者だ。
アーディルにもそう言うと。
そうだな、と頷いて。
「セーレムはラシッドの息子だが。生真面目なところがよく似ている」
「えっ!? セーレムって、ラシッドの息子だったの!?」
それ、初耳だよ!?
ラシッドも年齢が年齢だし、子供がいても、おかしくはないだろうけど。
でも、ラシッドには全然似てないな。
セーレムはかわいいし。母親似なのかもしれない。
そうか。
ラシッドの息子だったのか。だから魔法も使えたのかな?
「セーレムを産んだ、母親……って言っていいのかな? その人、俺も知ってる人だったりする?」
つい興味本位で聞いてしまったら。
「……いや、ラシッドの妻は前王の側近でもあった。主を護ろうとして、共に」
アーディルは、淡々と言ったけど。
それって。
アーディルのお父さんは、ワーヒド国の前王で。
二年前、ハカムに暗殺されたんだ。
じゃあ、ラシッドの奥さんでセーレムのお母さんって。
アーディルのお父さんと一緒にハカムに暗殺されて、命を落としたんだ。
セーレムやラシッド本人に聞かなくて良かった。
思い出すのもつらいだろう。
……ハカムめ。
あいつ、本当にろくなことしないな!
2
お気に入りに追加
1,695
あなたにおすすめの小説

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる