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旅も中盤
アシャラ国へ
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世界地図でいうと南極大陸辺りにあるアシャラ国とは、どの国ともほぼ没交渉で。
報せは出したけど、まだ返事が来ないとか。
オーストラリア的な位置にあるスィッタ国なんて、そもそも断崖絶壁にあるらしくて、大トカゲでは行けない上に、何もかも謎に包まれた国だという。
今の所、国への行き方もまだ決まってないくらいだ。
この世界、空を飛べる魔法とかは無いのかな?
魔法で”目”を飛ばして地図は作れたらしいけど。
スィッタ国の周辺はぼんやりとしていて、よく見えなかったそうだ。
ハムサ国のピラミッドもどきに、籠を上昇させる魔法があったっけ。
でも、複雑な動きはできませんって言ってたな。
この南極大陸的な大陸はやたら広くて。
中央辺りにあるらしいアシャラ国に着くまでには、ティスア国から二泊した距離にあるようだ。
その間にオアシスをいくつか作ったけど。
海に沈むかもしれないので、控えめにしておいた。下手すれば氷漬けになる可能性もあるし。
†††
「わー、星が綺麗だー」
「ああ。今宵はことさら輝いて見えるな」
こっちの世界に来てから、星空の良さを知った、というか。
空気が澄んでるせいか、やたら星がいっぱい見えるんだよな。まさに満天の星空だ。
当たり前だけど。見慣れた星座は、一つも無かった。
アーディルたちは向かう方向を確かめるのに目印にしてる星があるみたいで。いくつか教えて貰ったけど、複雑すぎて、いまいちどれだかわからない……。
みんな同じように光って見える。一等星ばかりだよ。
せめて北極星くらい目立ってくれれば、わかりやすいのに……。
っていうか。星座って、かなり無理あるよな。
俺が覚えてるの、せいぜいオリオン座と北斗七星、冬の大三角形くらいだ。
まあ、夜空を見上げてるアーディルの方が、星空よりもずっとずっと、綺麗なんだけど。
そんなの、恥ずかしくて言えない。
「あと二ヶ国か。あっという間だったなあ」
各国に滞在した時間は、ほぼ一日だけという、慌ただしい旅だった。
もう、六か国もの会談が滞りなく済んだだなんて。まだ信じられないよ。
気候や地形とかが大々的に変わるのって、かなり大事だと思うし。
王様って、みんなプライドが高いと思ってた。
だから、もっと話し合いが難航するかと予想してたんだよな。
一触即発、戦争になっちゃったらどうしよう、とか。
心配してたのが嘘のようだ。
でも、意外と腰が低いというか、フレンドリーな王様が多かった。
サラーサ国のウサーマ王をはじめ、ハムサ国のナエフ王、ヤスミン王子。サブア国のワシム王、サマニア国のアドル王、ティスア国のターヒル王。
みんな、信心深かったからかな?
アルバ国のヤシム王は戦好きというより、単なる喧嘩好きだったな。脳筋というか。
強くない王には王である資格なし! って主張で。
この世界じゃ、一理あるかもしれない。
ただ優しいだけの王じゃ、様々な脅威から国民を守れないだろうし。
一国の王様になるのって大変だ。
オアシスを毒で汚したり、他の国まで乗っ取っちゃったハカムが特殊だっただけ?
今頃牢屋でおとなしくしてるだろうか。脱獄してたりして。
やっぱり、死刑になっちゃうのかな……。
ツチノコをあんなにお利口さんに改良する能力を、悪い事じゃなくて平和的に有効利用してくれていればなあ。
もったいない。
軽く50度を超してるだろう灼熱の砂漠をほぼ世界一周するという、過酷な旅だったけど。
温度遮断の魔法のかかった布を被ってるし。数時間置きにオアシスを作っては休憩を入れつつ進んでるのもあってか。
乗ってる人間だけじゃなく、大トカゲやツチノコもまだまだ元気いっぱいだ。
特にツチノコが張り切って砂クジラを発見するなりポイポイ捕まえてくれるので、たんぱく質豊富な食事になって、栄養満点なのもあるかも?
でも、ツチノコの大活躍にニーリーがへこんじゃって。
もう食肉になるしか……、とか言ってたらしくて。ツチノコがニーリーを慰めてるところに遭遇してしまった。
いつの間にか、不思議生物の間で友情が芽生えている……。
「俺の大切な人を乗せて走るんだから、自信もって、しっかりしてくれよ。ちゃんとニーリーのこと、信頼してるんだからな?」
と背中をぽんぽんしたら、復活した。
振り返ったら。
アーディルがやたら嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
「大切な人、か。それはもしかして、私のことか?」
そうだよ。
アーディルは俺の一番大切な人だよ。
そんなの、いい加減わかってるくせに!
全くもう。
聞き耳立てないでくれるかな!
†††
明日にはアシャラ国に着くけど。
今度は、今まで見たいにそう簡単にはいかないだろう。
だって、位置的には南極大陸になる訳で。
もしかしたら、世界で一番、過酷な環境に置かれることになる可能性の高い場所だ。
最悪、国の場所を移動してもらうことになるかも。
代替地としては、位置的にインドネシア辺りか、ニュージーランド辺りの土地だろうか?
寒くなりそうな場所なら、いっぱい空いてるんだけど。
あんまり環境が変わっても困るだろうし。
どのくらいの人口で、どんな国民性なのかも不明なんだよな……。
「どうした? 地図を見て、溜息なぞ吐いて」
背後から抱き締められる。
「あっ、」
アーディルは、俺が見ていた地図を取り上げて。
物思いの元などこうしてくれる、とばかりに放り投げた。
王宮の秘密の小部屋にあったのを、俺が書き写したやつだけど。
これ、本来は持ち出し厳禁の超重要機密文書なのに!
報せは出したけど、まだ返事が来ないとか。
オーストラリア的な位置にあるスィッタ国なんて、そもそも断崖絶壁にあるらしくて、大トカゲでは行けない上に、何もかも謎に包まれた国だという。
今の所、国への行き方もまだ決まってないくらいだ。
この世界、空を飛べる魔法とかは無いのかな?
魔法で”目”を飛ばして地図は作れたらしいけど。
スィッタ国の周辺はぼんやりとしていて、よく見えなかったそうだ。
ハムサ国のピラミッドもどきに、籠を上昇させる魔法があったっけ。
でも、複雑な動きはできませんって言ってたな。
この南極大陸的な大陸はやたら広くて。
中央辺りにあるらしいアシャラ国に着くまでには、ティスア国から二泊した距離にあるようだ。
その間にオアシスをいくつか作ったけど。
海に沈むかもしれないので、控えめにしておいた。下手すれば氷漬けになる可能性もあるし。
†††
「わー、星が綺麗だー」
「ああ。今宵はことさら輝いて見えるな」
こっちの世界に来てから、星空の良さを知った、というか。
空気が澄んでるせいか、やたら星がいっぱい見えるんだよな。まさに満天の星空だ。
当たり前だけど。見慣れた星座は、一つも無かった。
アーディルたちは向かう方向を確かめるのに目印にしてる星があるみたいで。いくつか教えて貰ったけど、複雑すぎて、いまいちどれだかわからない……。
みんな同じように光って見える。一等星ばかりだよ。
せめて北極星くらい目立ってくれれば、わかりやすいのに……。
っていうか。星座って、かなり無理あるよな。
俺が覚えてるの、せいぜいオリオン座と北斗七星、冬の大三角形くらいだ。
まあ、夜空を見上げてるアーディルの方が、星空よりもずっとずっと、綺麗なんだけど。
そんなの、恥ずかしくて言えない。
「あと二ヶ国か。あっという間だったなあ」
各国に滞在した時間は、ほぼ一日だけという、慌ただしい旅だった。
もう、六か国もの会談が滞りなく済んだだなんて。まだ信じられないよ。
気候や地形とかが大々的に変わるのって、かなり大事だと思うし。
王様って、みんなプライドが高いと思ってた。
だから、もっと話し合いが難航するかと予想してたんだよな。
一触即発、戦争になっちゃったらどうしよう、とか。
心配してたのが嘘のようだ。
でも、意外と腰が低いというか、フレンドリーな王様が多かった。
サラーサ国のウサーマ王をはじめ、ハムサ国のナエフ王、ヤスミン王子。サブア国のワシム王、サマニア国のアドル王、ティスア国のターヒル王。
みんな、信心深かったからかな?
アルバ国のヤシム王は戦好きというより、単なる喧嘩好きだったな。脳筋というか。
強くない王には王である資格なし! って主張で。
この世界じゃ、一理あるかもしれない。
ただ優しいだけの王じゃ、様々な脅威から国民を守れないだろうし。
一国の王様になるのって大変だ。
オアシスを毒で汚したり、他の国まで乗っ取っちゃったハカムが特殊だっただけ?
今頃牢屋でおとなしくしてるだろうか。脱獄してたりして。
やっぱり、死刑になっちゃうのかな……。
ツチノコをあんなにお利口さんに改良する能力を、悪い事じゃなくて平和的に有効利用してくれていればなあ。
もったいない。
軽く50度を超してるだろう灼熱の砂漠をほぼ世界一周するという、過酷な旅だったけど。
温度遮断の魔法のかかった布を被ってるし。数時間置きにオアシスを作っては休憩を入れつつ進んでるのもあってか。
乗ってる人間だけじゃなく、大トカゲやツチノコもまだまだ元気いっぱいだ。
特にツチノコが張り切って砂クジラを発見するなりポイポイ捕まえてくれるので、たんぱく質豊富な食事になって、栄養満点なのもあるかも?
でも、ツチノコの大活躍にニーリーがへこんじゃって。
もう食肉になるしか……、とか言ってたらしくて。ツチノコがニーリーを慰めてるところに遭遇してしまった。
いつの間にか、不思議生物の間で友情が芽生えている……。
「俺の大切な人を乗せて走るんだから、自信もって、しっかりしてくれよ。ちゃんとニーリーのこと、信頼してるんだからな?」
と背中をぽんぽんしたら、復活した。
振り返ったら。
アーディルがやたら嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
「大切な人、か。それはもしかして、私のことか?」
そうだよ。
アーディルは俺の一番大切な人だよ。
そんなの、いい加減わかってるくせに!
全くもう。
聞き耳立てないでくれるかな!
†††
明日にはアシャラ国に着くけど。
今度は、今まで見たいにそう簡単にはいかないだろう。
だって、位置的には南極大陸になる訳で。
もしかしたら、世界で一番、過酷な環境に置かれることになる可能性の高い場所だ。
最悪、国の場所を移動してもらうことになるかも。
代替地としては、位置的にインドネシア辺りか、ニュージーランド辺りの土地だろうか?
寒くなりそうな場所なら、いっぱい空いてるんだけど。
あんまり環境が変わっても困るだろうし。
どのくらいの人口で、どんな国民性なのかも不明なんだよな……。
「どうした? 地図を見て、溜息なぞ吐いて」
背後から抱き締められる。
「あっ、」
アーディルは、俺が見ていた地図を取り上げて。
物思いの元などこうしてくれる、とばかりに放り投げた。
王宮の秘密の小部屋にあったのを、俺が書き写したやつだけど。
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