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一歩先のこと

一番の幸せは

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……ああ、そうか。


俺は。
生まれ変わったら誰かから必要とされたい、感謝されたい、と。口では言っていたけど。

心の奥底では。

誰かに愛されたいって、願ってたんだ。

名前も知らない、大勢の人からじゃなく。
たった一人。唯一、自分だけを必要としてくれる、一人の人間から愛されたかったんだ。

だから、アーディルが俺だけを愛してくれるのが嬉しくて。
真っ直ぐに気持ちを向けてくれるアーディルを愛すことを、幸せだと感じている。


でも、あの時。
神様には、そんな願いは言えなかった。

だって。
そんな望み、俺には贅沢過ぎると思ったんだ。

生まれた時に親からも捨てられて。
笑えるくらい、不幸な人生で。皆から厄病神扱いされてきて。

そんな願いは、俺には手の届かないものだったから。


でも。
神様は、俺のそんな気持ちをちゃんとわかってくれていて。

だから、に送ってくれたんだ。

あえてこの砂漠の世界を選んで。
そこで必要な、唯一無二の能力まで与えてくれて。

俺の運命のひと。
アーディルと、出逢わせてくれた。


不幸だった前の人生があってこその幸せだろうか?
なら、あまりあるご褒美だ。


ありがとう、神様。

リセットなんてとんでもない。
アーディルと出逢わせてくれただけでも、充分幸せだ。


心から感謝してる。


†††


ここで何度もしたらのぼせちゃう、って言ったら。
アーディルは浴槽から半分以上身体を乗り出して、をした。

隣の自室に移動する暇も惜しいくらい、欲しいんだって言われた。
俺も、欲しい。


湯冷めしちゃいそうになったら、また浴槽に引っ張り込まれて。
それがエンドレスだ。

さすがに、俺の方の体力が限界で。


「あ、ひぁ、ああっ、も、ゆるして、」
弱音を吐いたけど。

「っく、……すまぬ、」
どうにも止まらんのだ、と苦し気に呟いた。

アーディルは17歳。やりたい盛りな年頃だった。

俺もまだ、そういう時期なはずなんだけど。
アーディルは砂漠育ちで、そもそも基礎体力だって格段に違う。

その上、男でも孕ませることに特化して進化した、という砂漠の国の王族の精力には、さすがについていけない。


激しく抜き差しされて。
腰を打ち付けられる度、ザバザバとお湯が波打って。

お湯が汚れちゃう、って言ったら。
アーディルは魔法で精液を抽出して。真珠みたいに丸めてお湯から取り出していた。

それが、コロコロとまだ浴槽の中や外に沢山転がってる。


……いや、愛の証だとか、美しく言葉を飾っても。
あれ、精液だよな? あんなにいっぱい。

どれだけ絶倫なんだよ!?


†††


お尻が痛い、って言ったらさすがにやめてくれると思うけど。

もういい加減、擦られ過ぎて、痛くなってもおかしくないだろうに。
何故だか、全然痛くない。


俺の身体も、いつの間にかこの世界に順応してきたのかもしれない。
後ろで、愛する人を受け入れられるように。


「は、ああっ、や、あっ、ん、奥、やぁ、」
大きいので中をやや乱暴にゴリゴリ擦られる度に、感じてしまう。

もう、出し切っちゃって、出ないのに。
絶頂が何度も押し寄せて来て。

気持ち良すぎて、頭がおかしくなりそう。


「ああっ、やぁ、あん、イっちゃう、も、やだぁ、動くの、だめぇ、」
思ってるのと反対のことを言ってしまう。

「ミズキ、……奥へ、誘い込むように絞られるぞ……、」
うっとりしたような声。

美しい王様が。
俺の身体で、この上ない快楽を得ているのがわかる。


俺の中。
我を忘れるくらい、気持ち良いんだ?

嬉しくて、ハイになってきた。


そのせいか、正気じゃ言えないような台詞も言えてしまう。
後で恥ずかしくなって、ベッドの上でゴロゴロ転がって悶えそうなことでも。

「アーディル、俺のナカ、きもちいぃ……?」

「っ、ああ。熱く包まれ、天界にいるのではないかと思うほど。叶うなら、こうしてミズキを抱いたまま、一生、抜かずにいたい……」
うっとりしている。


一生は、困るけど。
アーディルも、俺の中に入ってるだけで気持ち良くなってくれるのは嬉しい。

もっと、俺で気持ち良くなって欲しい。

俺が、そうしたい。


アーディルの両頬に手を添えて。
自分から、キスをする。


「……!? ミ、ミズキ!?」

目を見開いて。何を驚いているんだろう?
俺が積極的だから?


自覚はなかったけど。俺、結構貪欲だったみたいだ。

もう、不運のせいで未来を。これからのことを諦めなくてもいいんだ。
もっと欲しがっても、いいよな?


前世では、色々諦めてきた人生だったけど。

アーディルには、本当の俺のことを知っていてもらいたい、と思った。
だから。
話すことにした。

今までのことを、全部。


それでも、アーディルは俺のことを絶対に見放したりしない。
そう、確信できるから。


†††


「俺、本当は、天使なんかじゃないんだ」


天使じゃないどころか。
前の世界で、俺は。

「この世界に来る前まで、俺はずっと厄病神扱いされてきたんだ」

厄病神イラー・アルシャルだと? ミズキが?」
怪訝そうな顔をした。


「うん。厄病神とか死神とか呼ばれてた。ここじゃない、異世界で。……神様の手違いで、幸運がゼロの状態で生まれたんだって。それで、そこにいるだけで、あらゆる不運に巻き込まれる人生だったから。生まれてすぐに両親も死んで、養護施設で育った。俺の傍にいると必ず不幸に巻き込まれるから、誰も俺に近寄らなかった」

いや、誰も、は正確じゃないか。
この顔に惹かれた変質者やストーカーくらいだ。何も知らずに寄って来たのは。

それでも、この不幸体質を知った途端、みんな尻尾を巻いて逃げ出したけど。
今は、それで良かったと思う。
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