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砂漠の王との結婚
砂漠で王様と入浴
しおりを挟む「マラークは、何と贅沢な水の使い方をするのか。天界では水が豊富なのか?」
お湯で満たされた広い浴槽を見て、アーディルが感嘆した。
砂漠の国じゃ、確かにそうだろうな。
水を贅沢に使い過ぎて、国民が激怒しそう。
でも、これからは。
俺の能力があれば、いくらでも水を湧きださせることが可能だし。希望があれば、ここの国民の家全部に浴槽を普及させて、お風呂の良さを教えることも可能なんだよな。
「んー、まあ温泉とかも湧くし、みんなわりと風呂好きだよ」
日本は世界的にも、水と緑に恵まれている国だと聞いた。
外国にはバスタブで風呂に入らない、シャワーだけで済ます国もあるらしいし。日本の水は軟水だけど、外国の多くは硬水で、風呂に入ると肌荒れするとかなんとか。
†††
湯が張られた浴槽に手を入れてみる。
ちょうどいい温度だった。
身体は魔法で清められてるけど。掛け湯をしてから、湯船に浸かった。
ゆっくりと手足を伸ばして、リラックスする。
「ふぃ~、」
やっぱり風呂は気持ち良い。
この世界では、もうボイラーが故障して水になったり熱湯になったりもしないだろう。安心して浸かれる。
「アーディルも入れば?」
広いし、何十人でも入れそうだ。
一人で入るのももったいないので、アーディルも呼んだら。
恐る恐る、お湯をつついて。
「罰が当たりそうだ……」
とか言いながら。そろそろと、面白いくらい慎重に入って来た。
神様のお使いだと思ってる俺に手を出すほうが罰当たりだと思うけど。
そんな俺の視線に気づいて、アーディルは苦笑した。
「罰当たりは今更だな?」
その、少年みたいな笑顔に。
アーディルってもしかして、意外と若いのかも、と思った。
広い浴槽に、長い手足を投げ出して。
目を細めて、気持ち良さそうにうっとりしている。
「これは、確かに心地好いな……ミズキの中のほうがずっと心地好いが」
何言ってんだか。
アーディルの横顔に、思わず見惚れてしまう。
こんなとんでもない美形から、何度も求められて、抱かれちゃったなんて。
未だに信じられない。
夢じゃないことは、まだ身体に残ってる激しい行為の名残でもわかってるけど。
俺の視線に気づいたのか、目が合って。
ふっ、と微笑まれてしまった。
なんだよ。その、幸せそうな笑顔は。
恥ずかしいなあ。
照れ隠しに、濡れた髪が頬に張り付いてるのをどかしてやる。
「ミズキ……」
世にも美しい顔が近づいてくる。
「ん、」
口にキスされるかと思ったら、額にされた。
「ずっと、私の元に居てくれるな?」
抱き寄せられて。
「そなたが居なくなったら、この施設も無用のものとなってしまうのだぞ?」
動物がなつくみたいに、頬を寄せて来る。
†††
ああ、そうか。
この人、俺のこと、本当に好きなんだ。
それがわかったら。
不器用な男だなあ、と思った。
どこにも行かせたくないから無理矢理攫って。
資格を奪おうと、犯した。
抱かれてもこの能力を奪えないことがわかったら、作った施設が無駄になってもいいのか、とか言って。
手段が俺様で強引なのは、生まれながらの王族だからかもしれないけど。
ちょっと可愛いな、と思ってしまった。
「なるほど。ミズキの言う”さっぱりする”という言葉の意味が理解できた気がするぞ」
手でお湯をすくって顔を洗って。アーディルは笑顔を向けた。
そうなんだよ。
いくら魔法で汚れを除いて綺麗にしてもらっても、こうして水で洗ったような爽快感は得られなかったんだよな。
理解を得られて嬉しい。
「成程、ミズキの肌がやわらかいのは、水で清めているからなのだな」
アーディルは俺の頬をつついた。
砂漠の民は、ほとんど砂で洗うからか、肌が固くて強靭なようだ。
砂でなんて洗ったら痛いだろうし、肌荒れしちゃうよ。肌荒れどころか怪我しそう。
「ずっと触れていたくなる肌だ……」
痛いくらいの視線を感じる。
アーディルみたいな肉体美ならともかく、俺の貧相な身体なんて見ても面白くないのに。
アーディルの髪の毛は、見事な金髪だ。
でも下の毛は、少し濃い色をしてる。毛が薄いとか言われたけど。これに比べたら、そりゃ薄いよ……。
そこからご立派なモノが勃ち上がって、お湯に揺らめいている様子が見えてしまい、思わず視線を逸らした。
あんなにいっぱいしたのに。
まだ、その気になれるんだ。
どれだけ精力有り余ってるんだよ。絶倫すぎる。
「ひゃ、」
アーディルの手が、俺のお尻を撫でて。中指が、その狭間を探っている。
「まだ、やわらかいな。……ここに入っても良いか?」
逞しい胸板に引き寄せられて。
これからまた抱かれるとわかっていても。
どうしてだか、嫌だとは言えない。
もう、嫌だとも思えない。
それどころか、いちいち訊かなくてもいいのに、なんて思ってる。
†††
俺ってば、身体だけじゃなくて、心まで。すっかりアーディルのものにされちゃったのかな?
初めて、俺を抱き締めてくれた人だから。
俺のことを愛してるって言ってくれた、初めての人だから……?
無理矢理攫われて、拘束されたのに。好意を示されて即落ちとか。
我ながらチョロ過ぎでは?
アーディルは俺を抱き寄せて、そのまま動かないでいる。
俺の返事待ちだろうか?
でも。良いよ、っていうのも何だか恥ずかしいし。
じっと見つめられるのも照れるので。
返事をする代わりに目を閉じて、アーディルの胸板にもたれかかると。
瞼にそっと、優しくキスをされた。
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