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亀裂
異世界の神になる
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じゃあ。
亀裂に吸い込まれた人たちが、無事な姿で戻って来れたのも。
俺が、向こう側で生きてたらいいな、って願ったから?
……アーディルの腕。
イルハム王の魔法攻撃で消し飛んだ部分も。元通りになって、くっついた。
瀕死状態だったのに、こうして目を覚ましたのも。
俺が。
死なないで、目を覚ましてって。
心の底から、強く願ったから?
でも、それって。
まるで。
本当に、”神様の力”みたいじゃないか。
†††
『左様。儂はおぬしをこの世界の神として遣わしたのじゃ。正直、いくつもの世界を儂だけで管理するのは面倒じゃったのでの』
「……え~……」
うわあ、神様ってば、とんでもないことをぶっちゃけちゃったよ。
色々な世界を掛け持ちして大変だから。
与える幸運値を間違えるミスもあったって?
そうだね。
一番それを身をもって知ってるのは、不運で死んだ俺だもんね。
……ん?
今、俺を。
この世界の神として遣わした、って言った!?
俺、神様になっちゃってたの!?
いつの間に!?
「嘘。俺が、この世界の神様になったって。本当に!?」
『神は嘘など言わぬ。先程、そやつに対し、”死ぬな”と命じたであろう? 故に、そやつは死なぬ身となった。おぬしは神に成ったため、不死である。仕方なく、儂が自らそれを伝えに来る羽目になったのじゃぞ』
神様はふん、と鼻息を荒げた。
さっき俺がした願いで。
アーディルが、”死なない”身体になってしまったから。
そういえば、俺……神島瑞樹はもう、神になったのでこの先死ぬことはないから、死後の世界には来れないんだった、と気付いたみたいだ。
それで、神様が俺にそれを教えるために、わざわざこの世界まで来てくれたんだ。
それは本当にありがとうだけど。
そんな、心底面倒くさそうに言わないで欲しい……。
†††
『こやつならば、と目をかけ折角任せた世界を滅ぼそうなどど考えるから、わざわざこの儂が来る羽目になったのじゃぞ? おぬしがこの世界より大事だと思う者は、もはやおぬしがそう願わぬ限りは死なぬ。もう二度と、役目を放り投げるでないぞ!』
「はい、すみませんでした……!!」
怒られちゃった。
そりゃそうか。
だって俺、本気でこの世界滅ぼそうとしたもん。
いや、でも。
そういうお役目だったなんて、知らなかったし……。
……そっか。
じゃあ、俺がこの世界を救おうとしたの、間違ってなかったんだ。
それこそが、俺に与えられた役目だったんだ。
良かった。
「あれ? ”強く願ったことが叶う”ってことは。もし俺が、『死んじゃえ』って言ったら。その相手、本当に死んじゃうの? こわっ!」
冗談でも言ったり、思ったら駄目なのか。
これからは、うっかり呪ったりしないように、重々気を付けないと。
リア充爆発しろとか。
あれ? でも、今は俺がリア充なんでは?
『ふ、おぬしがそうしてヒトの死を怖れる限りは問題あるまい。……ゆめ、忘れるでないぞ』
神様の姿が、真っ青な空に薄れて消えていく。
「あ、神様……、ありがとうございます!」
まだちゃんと、声を出して。
神様に対して、感謝の気持ちを伝えてなかった。
声に出さなくても伝わってるからって。
「えー」くらいの反応しか、ろくに口に出せてなかった。
いくら口に出して思いを伝えるのが苦手だからって、失礼過ぎる。
「俺をこの世界に送ってくれて。アーディルと出逢わせてくれて、ありがとう。こんな俺には身に余るような、とんでもない能力だけど。願ったことを叶える能力を与えてくれたお陰で、こうして、大事な人を死なせないで済んだから」
感謝の言葉なんて、何度言っても足りないくらいなのに。
†††
『おぬしの感謝の言葉は全て、届いておるわい。儂は神じゃからな。届き過ぎてうるさい。もう礼など良いわ』
神様の声だけが聞こえた。
声、届いていたんだ。
それは何かちょっと、恥ずかしいな……。
もう神になったんだし。後は自分でどうにかしろ、これからはシャットアウトする、って?
ひ、酷い……。
『……しかし、そやつは本当におぬししか目に入っておらぬほど好きなのじゃな……すっかり元気だというのに。この儂、神を目の前にしておきながら、膝から起きようともせんとは……』
呆れたきったような声。
これだけは言い足りなかったようだ。
アーディルがずっと、俺の膝の上から動かないって?
だって。
それでこそアーディルなんだから、しょうがない。
ワーヒド国の王族は神様の子孫だって言われてて。
自分は神様と同等だと思ってるせいもあるだろうけど。
アーディルは、前から俺のこの能力のことを『創世の力』だと言ってたから。
薄々、気付いてたのかもしれない。
俺としては、神様から直接、俺がこの世界の神様になってたんだって聞いても、アーディルがあまりにアーディルのままだったから、嬉しかった。
だって。
この世界に送られた時点でもう神様になってたんだって言われても。
俺は俺のままで。やっぱりまだ、そんな自覚もないし。
神様としてやってく自信なんて、これっぽっちもなかったりして。
何も変わらない。
あ、でもこれからは危険な思想や言葉には気を付けないといけないんだった。
変なことを考えて、それが現実になってしまったらまずい。
突拍子もない妄想はしないでおこう。
亀裂に吸い込まれた人たちが、無事な姿で戻って来れたのも。
俺が、向こう側で生きてたらいいな、って願ったから?
……アーディルの腕。
イルハム王の魔法攻撃で消し飛んだ部分も。元通りになって、くっついた。
瀕死状態だったのに、こうして目を覚ましたのも。
俺が。
死なないで、目を覚ましてって。
心の底から、強く願ったから?
でも、それって。
まるで。
本当に、”神様の力”みたいじゃないか。
†††
『左様。儂はおぬしをこの世界の神として遣わしたのじゃ。正直、いくつもの世界を儂だけで管理するのは面倒じゃったのでの』
「……え~……」
うわあ、神様ってば、とんでもないことをぶっちゃけちゃったよ。
色々な世界を掛け持ちして大変だから。
与える幸運値を間違えるミスもあったって?
そうだね。
一番それを身をもって知ってるのは、不運で死んだ俺だもんね。
……ん?
今、俺を。
この世界の神として遣わした、って言った!?
俺、神様になっちゃってたの!?
いつの間に!?
「嘘。俺が、この世界の神様になったって。本当に!?」
『神は嘘など言わぬ。先程、そやつに対し、”死ぬな”と命じたであろう? 故に、そやつは死なぬ身となった。おぬしは神に成ったため、不死である。仕方なく、儂が自らそれを伝えに来る羽目になったのじゃぞ』
神様はふん、と鼻息を荒げた。
さっき俺がした願いで。
アーディルが、”死なない”身体になってしまったから。
そういえば、俺……神島瑞樹はもう、神になったのでこの先死ぬことはないから、死後の世界には来れないんだった、と気付いたみたいだ。
それで、神様が俺にそれを教えるために、わざわざこの世界まで来てくれたんだ。
それは本当にありがとうだけど。
そんな、心底面倒くさそうに言わないで欲しい……。
†††
『こやつならば、と目をかけ折角任せた世界を滅ぼそうなどど考えるから、わざわざこの儂が来る羽目になったのじゃぞ? おぬしがこの世界より大事だと思う者は、もはやおぬしがそう願わぬ限りは死なぬ。もう二度と、役目を放り投げるでないぞ!』
「はい、すみませんでした……!!」
怒られちゃった。
そりゃそうか。
だって俺、本気でこの世界滅ぼそうとしたもん。
いや、でも。
そういうお役目だったなんて、知らなかったし……。
……そっか。
じゃあ、俺がこの世界を救おうとしたの、間違ってなかったんだ。
それこそが、俺に与えられた役目だったんだ。
良かった。
「あれ? ”強く願ったことが叶う”ってことは。もし俺が、『死んじゃえ』って言ったら。その相手、本当に死んじゃうの? こわっ!」
冗談でも言ったり、思ったら駄目なのか。
これからは、うっかり呪ったりしないように、重々気を付けないと。
リア充爆発しろとか。
あれ? でも、今は俺がリア充なんでは?
『ふ、おぬしがそうしてヒトの死を怖れる限りは問題あるまい。……ゆめ、忘れるでないぞ』
神様の姿が、真っ青な空に薄れて消えていく。
「あ、神様……、ありがとうございます!」
まだちゃんと、声を出して。
神様に対して、感謝の気持ちを伝えてなかった。
声に出さなくても伝わってるからって。
「えー」くらいの反応しか、ろくに口に出せてなかった。
いくら口に出して思いを伝えるのが苦手だからって、失礼過ぎる。
「俺をこの世界に送ってくれて。アーディルと出逢わせてくれて、ありがとう。こんな俺には身に余るような、とんでもない能力だけど。願ったことを叶える能力を与えてくれたお陰で、こうして、大事な人を死なせないで済んだから」
感謝の言葉なんて、何度言っても足りないくらいなのに。
†††
『おぬしの感謝の言葉は全て、届いておるわい。儂は神じゃからな。届き過ぎてうるさい。もう礼など良いわ』
神様の声だけが聞こえた。
声、届いていたんだ。
それは何かちょっと、恥ずかしいな……。
もう神になったんだし。後は自分でどうにかしろ、これからはシャットアウトする、って?
ひ、酷い……。
『……しかし、そやつは本当におぬししか目に入っておらぬほど好きなのじゃな……すっかり元気だというのに。この儂、神を目の前にしておきながら、膝から起きようともせんとは……』
呆れたきったような声。
これだけは言い足りなかったようだ。
アーディルがずっと、俺の膝の上から動かないって?
だって。
それでこそアーディルなんだから、しょうがない。
ワーヒド国の王族は神様の子孫だって言われてて。
自分は神様と同等だと思ってるせいもあるだろうけど。
アーディルは、前から俺のこの能力のことを『創世の力』だと言ってたから。
薄々、気付いてたのかもしれない。
俺としては、神様から直接、俺がこの世界の神様になってたんだって聞いても、アーディルがあまりにアーディルのままだったから、嬉しかった。
だって。
この世界に送られた時点でもう神様になってたんだって言われても。
俺は俺のままで。やっぱりまだ、そんな自覚もないし。
神様としてやってく自信なんて、これっぽっちもなかったりして。
何も変わらない。
あ、でもこれからは危険な思想や言葉には気を付けないといけないんだった。
変なことを考えて、それが現実になってしまったらまずい。
突拍子もない妄想はしないでおこう。
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