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最後の国、スイッタ国
いざ密林へ
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思い返してみれば。
結婚式の終盤でハカムに攫われたり。
その後、色々あって。
この世界の危機を救わないと! って思って。
世界を水と緑で満たすために廻りたいって言ったの、アーディルはすぐに賛成してくれたけど。
本来なら、イチャイチャしてるはずの時期だったんだ。
それもあって、訪れた国ではみんなして、貴重な砂漠の花をサービスをしてくれたのかな?
まだ新婚なのに、わざわざ救いに来てくれてありがとう、って感じで。
もっと早く、それを教えてくれよ!
いや結局、こうしてすぐに行動したのが正解だったんだけど。
「ミズキは異世界から来た身であり、我が国の決まりを知らぬ。古からの風習を押し付けるより、ミズキの想いを優先したかったのだ」
俺が。
違う世界から転生した、って告白をしたから。
なるべく、そういった決まりを押し付けないように、気を遣ってくれてたんだ。
何様俺様みたいだったアーディルが。
「……そうだったんだ。ありがとう、アーディル。大好きだよ。めちゃくちゃ愛してる」
回された腕に、頬ずりする。
この世界に生まれ変わって、本当に良かった。
最初に出会ったのがアーディルで良かった。
もう、前の人生を不幸だったとは思わない。
だって。
こうして、最愛の人と出会うことが出来たんだから。
†††
朝になって、目が覚めて。
オアシスの泉で顔を洗おうと、天幕を出て。
見上げれば、今日も雲一つない青空。
考えてみれば、それも当たり前なんだよな。
この世界には雲が発生するような水分が無いんだから。
ここに着いたのは昨日の夜だ。
月明りがあってもぼんやりとしていて、確認できなかったスィッタ国がある大陸のほうを見てみた。
遠くから見た時にも、ぼやけて良く見えなかったけど。
さすがにここまで近づけば、良く見えた。
この世界では、有り得ないものが。
なんだこれ……?
ぼやけていたのは、水蒸気によるものだったのだろうか?
この世界は、何故か水が涸れていて。
地表は一面、砂漠に覆われた世界、のはずだった。
だから。
神様からオアシスを産む能力を与えられた俺が。
この世界を水と緑で満たそう、昔は地球のように7割が水だった状態に復活させよう、と思った。
そして。
オアシスを作りながら、世界を巡ったんだけど。
……俺はまだ、ここでは何もしてない。
なのに。
スィッタ国があるというその大陸は、すでに緑に覆われていたんだ。
立ち昇る水蒸気で、大陸を覆い隠すほどの水分もあるようだ。
これ、どうなってるんだ!?
†††
「大陸の中心部に、次元の亀裂を確認しました!」
ラシッドが言った。
亀裂こそ、僅かなものだけど。
その穴は、水分だけを集めて、吸い込んでいるようだ。
この中継地で作ったオアシスの水……というか水蒸気も。
目に見えるほどの量ではないけど、その亀裂へ吸い込まれているのが確認できたという。
前に言っていた、とある可能性。
奇しくも、その予想が当たってしまっていたようだ。
この世界にも、質量保存の法則があるのなら。
世界中から”水”が完全に消えるのはおかしい。どこかに偏って存在している訳でもない。
では、大量の水は、どこに消えたのか。
もしかしたら、この世界のどこかに亀裂でも入っていて。
他の世界にでも水が流れてしまっているのでは? という話をしたんだけど。
事実、亀裂は存在していた。
この世界が砂漠化した原因は、ここにあったんだ。
この大陸の中心部にあるという亀裂から、水分が吸い込まれているんだけど。
何故かここの周囲だけは無事、というか。
世界中の水分が集められている影響なのか、まるで、熱帯雨林のようになっている。
「……塞げるか?」
アーディルも、真剣な顔で大陸を見ている。
「ここからでは……難しいですね。もう少し近寄ってみて、詳しい状況を分析してみないと」
ラシッドが答えて。
「では、急ぎ渡ろう」
「はい、ただちに」
「待った、その前に、食事!」
すぐにでも出発しようとしたアーディルたちを止めた。
「ちゃんと食べて、万全を期してから行こう? 腹が減っては戦は出来ぬ、ってね」
「確かに、空腹の状態ではろくに動けず、頭も回らなくなるものだ。私の愛らしきマラークは正しい」
ぎゅっと抱き締められた。
アーディルは俺に甘すぎない?
「慧眼です。……それは、天界の諺ですか?」
ラシッドは、天界にも戦があるのですか? と首を傾げつつ、諺をメモしていた。
確か、昔の中国の、戦いについての指南書だったっけ?
他は、三十六計逃げるに如かず、くらいしか知らないけど。
†††
ご飯をしっかり食べてから、大陸への橋作りを手伝った。
橋を渡ってる途中から、むわっ、と熱気が伝わって来た。
乾燥したところなら、日陰に入れば涼しく感じるけど。大量の湿気を帯びていると不快指数は跳ね上がる。
火山地帯にあるサラーサ国も、こんな感じだったっけ。
でも、ここはそれ以上だ。日本の梅雨並みかも。
実際、暑さに慣れているはずのアラブやインドの人が日本の暑さにギブアップすることも少なくないとか。
湿度、60%以上あるもんな……。
どうやらジャングルの中には、鳥や動物もいるようだ。
俺たちの気配を感じて警戒しているのか、ギャアギャアと騒いでいる。
ここには、他の国では滅びた生き物が残っているのかもしれない。
……ということは。
結婚式の終盤でハカムに攫われたり。
その後、色々あって。
この世界の危機を救わないと! って思って。
世界を水と緑で満たすために廻りたいって言ったの、アーディルはすぐに賛成してくれたけど。
本来なら、イチャイチャしてるはずの時期だったんだ。
それもあって、訪れた国ではみんなして、貴重な砂漠の花をサービスをしてくれたのかな?
まだ新婚なのに、わざわざ救いに来てくれてありがとう、って感じで。
もっと早く、それを教えてくれよ!
いや結局、こうしてすぐに行動したのが正解だったんだけど。
「ミズキは異世界から来た身であり、我が国の決まりを知らぬ。古からの風習を押し付けるより、ミズキの想いを優先したかったのだ」
俺が。
違う世界から転生した、って告白をしたから。
なるべく、そういった決まりを押し付けないように、気を遣ってくれてたんだ。
何様俺様みたいだったアーディルが。
「……そうだったんだ。ありがとう、アーディル。大好きだよ。めちゃくちゃ愛してる」
回された腕に、頬ずりする。
この世界に生まれ変わって、本当に良かった。
最初に出会ったのがアーディルで良かった。
もう、前の人生を不幸だったとは思わない。
だって。
こうして、最愛の人と出会うことが出来たんだから。
†††
朝になって、目が覚めて。
オアシスの泉で顔を洗おうと、天幕を出て。
見上げれば、今日も雲一つない青空。
考えてみれば、それも当たり前なんだよな。
この世界には雲が発生するような水分が無いんだから。
ここに着いたのは昨日の夜だ。
月明りがあってもぼんやりとしていて、確認できなかったスィッタ国がある大陸のほうを見てみた。
遠くから見た時にも、ぼやけて良く見えなかったけど。
さすがにここまで近づけば、良く見えた。
この世界では、有り得ないものが。
なんだこれ……?
ぼやけていたのは、水蒸気によるものだったのだろうか?
この世界は、何故か水が涸れていて。
地表は一面、砂漠に覆われた世界、のはずだった。
だから。
神様からオアシスを産む能力を与えられた俺が。
この世界を水と緑で満たそう、昔は地球のように7割が水だった状態に復活させよう、と思った。
そして。
オアシスを作りながら、世界を巡ったんだけど。
……俺はまだ、ここでは何もしてない。
なのに。
スィッタ国があるというその大陸は、すでに緑に覆われていたんだ。
立ち昇る水蒸気で、大陸を覆い隠すほどの水分もあるようだ。
これ、どうなってるんだ!?
†††
「大陸の中心部に、次元の亀裂を確認しました!」
ラシッドが言った。
亀裂こそ、僅かなものだけど。
その穴は、水分だけを集めて、吸い込んでいるようだ。
この中継地で作ったオアシスの水……というか水蒸気も。
目に見えるほどの量ではないけど、その亀裂へ吸い込まれているのが確認できたという。
前に言っていた、とある可能性。
奇しくも、その予想が当たってしまっていたようだ。
この世界にも、質量保存の法則があるのなら。
世界中から”水”が完全に消えるのはおかしい。どこかに偏って存在している訳でもない。
では、大量の水は、どこに消えたのか。
もしかしたら、この世界のどこかに亀裂でも入っていて。
他の世界にでも水が流れてしまっているのでは? という話をしたんだけど。
事実、亀裂は存在していた。
この世界が砂漠化した原因は、ここにあったんだ。
この大陸の中心部にあるという亀裂から、水分が吸い込まれているんだけど。
何故かここの周囲だけは無事、というか。
世界中の水分が集められている影響なのか、まるで、熱帯雨林のようになっている。
「……塞げるか?」
アーディルも、真剣な顔で大陸を見ている。
「ここからでは……難しいですね。もう少し近寄ってみて、詳しい状況を分析してみないと」
ラシッドが答えて。
「では、急ぎ渡ろう」
「はい、ただちに」
「待った、その前に、食事!」
すぐにでも出発しようとしたアーディルたちを止めた。
「ちゃんと食べて、万全を期してから行こう? 腹が減っては戦は出来ぬ、ってね」
「確かに、空腹の状態ではろくに動けず、頭も回らなくなるものだ。私の愛らしきマラークは正しい」
ぎゅっと抱き締められた。
アーディルは俺に甘すぎない?
「慧眼です。……それは、天界の諺ですか?」
ラシッドは、天界にも戦があるのですか? と首を傾げつつ、諺をメモしていた。
確か、昔の中国の、戦いについての指南書だったっけ?
他は、三十六計逃げるに如かず、くらいしか知らないけど。
†††
ご飯をしっかり食べてから、大陸への橋作りを手伝った。
橋を渡ってる途中から、むわっ、と熱気が伝わって来た。
乾燥したところなら、日陰に入れば涼しく感じるけど。大量の湿気を帯びていると不快指数は跳ね上がる。
火山地帯にあるサラーサ国も、こんな感じだったっけ。
でも、ここはそれ以上だ。日本の梅雨並みかも。
実際、暑さに慣れているはずのアラブやインドの人が日本の暑さにギブアップすることも少なくないとか。
湿度、60%以上あるもんな……。
どうやらジャングルの中には、鳥や動物もいるようだ。
俺たちの気配を感じて警戒しているのか、ギャアギャアと騒いでいる。
ここには、他の国では滅びた生き物が残っているのかもしれない。
……ということは。
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